2021年03月16日

『史学研究とゲーム研究の徒・蔵原大―遺稿と追悼―』(蔵原大遺稿集刊行会)の電子第2版および印刷版が完成

 『史学研究とゲーム研究の徒・蔵原大―遺稿と追悼―』(蔵原大遺稿集刊行会)の第2版が完成しました。これまでの誤字・脱字を修正し、発表後に「SF Prologue Wave」に出た追悼文をあとがきへの追記で紹介、そしてカンパ協力者を奥付でクレジットしています。電子版の無償頒布は継続し、カバーもダウンロード可能にして、手製本もできるようにいたしました。

 BOOTHにて、電子版の無料頒布を続けております。

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 印刷版もが届きました。石塚正英さん曰く、「内容はたんなる追悼の域をはるかに超えています。関心おありの方は、どうぞお読みください。大歓迎です」
 現物は、ものすごい迫力! 重さは5冊で7kgほどでした。関係者、カンパ協力者の皆さん、各種アーカイブ施設への発送作業をすでに開始しております。

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 Good Gamer's Groupのサイトより。遺稿集追悼文集の表紙を供えてくださいました。

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2021年01月28日

『日本現代卓上遊戯史記聞』シリーズ&『ゲーム探検隊』電子書籍版の紹介


 岡和田晃

 Analog Game Studiesと合流しているボードゲーム読書会@高田馬場では、これまで、『日本現代卓上遊戯史記聞』という電子書籍を、ニューゲームズオーダーより刊行して参りました。いずれも250円ないし500円と、お求めやすい価格になっております。


【日本現代卓上遊戯史紀聞について】
1950年代アメリカにおいて、「子供のための遊戯」から離れたホビーイスト達のための商業ゲーム出版が始まりました。人類文化と遊戯との関係に不可逆的な変化をもたらしたこの波は1970年代には日本に伝わり、ここでも極めて大きな影響を及ぼすことになります。またこの時代は、遊戯研究の分野において海外で大きな進展があった時期でもあり、呼応する形で日本でも遊戯研究の機運が高まりました。

「日本現代卓上遊戯史紀聞」は、商業ホビーゲームや遊戯研究の日本における受容に関わった人々に対するインタビューを通じて、この波がどのようなものであったのかを記録しようとする試みです。


日本現代卓上遊戯史紀聞 [1]安田均 - 安田 均
日本現代卓上遊戯史紀聞 [1]安田均 - 安田 均

日本現代卓上遊戯史紀聞 [2]草場純 - 草場 純
日本現代卓上遊戯史紀聞 [2]草場純 - 草場 純

日本現代卓上遊戯史紀聞 [1b]安田均/補遺 - 安田 均, 岡和田 晃
日本現代卓上遊戯史紀聞 [1b]安田均/補遺 - 安田 均, 岡和田 晃

 また、このたび、草場純の『ゲーム探検隊』も電子書籍として復刻しました。

ゲーム探検隊 - 草場 純, 南雲 夏彦, 赤桐 裕二, 本間 晴樹
ゲーム探検隊 - 草場 純, 南雲 夏彦, 赤桐 裕二, 本間 晴樹

ゲームはどのような仕組みで成立しているのか、様々な方向からアプローチしてみよう。広大で興味のつきないゲームの世界を旅するための、気楽なガイドブック。

※本書は、二〇〇七年に株式会社グランペールから刊行された『ゲーム探検隊 ―改訂新版―』を、部分的な修正のうえ再刊したものです(なお、同書は書苑新社から一九八九年に刊行された『ゲーム探検隊 ― ゲームのしくみを解き明かす知的興奮読本』の改訂版です)。底本として、二〇〇九年十一月発行の第二版を用いています。


 これらのリンクは、Amazon Kindleのものですが、PDF版もニューゲームズオーダーから発売されています。

 なお、『日本現代卓上遊戯史記聞』は、『安田均のゲーム紀行 1950-2020』でもご紹介いただきました。ありがとうございます。

安田均のゲーム紀行 1950-2020 - 安田 均
安田均のゲーム紀行 1950-2020 - 安田 均
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2021年01月20日

『史学研究とゲーム研究の徒・蔵原大―遺稿と追悼―』(蔵原大遺稿集刊行会)が発刊


 Analog Game Studiesのメンバー・蔵原大氏は、大変遺憾ながら、2020年2月に急逝しました。このたび、その遺稿追悼文集が完成いたしました。単体の論集としての強度がある一冊になったと自負しておりますし、Analog Game Studiesからの再録も多数、盛り込んでございます。
 正直なところ、2017年5月の『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷 SF・幻想文学・ゲーム論集』に続く、Analog Game Studiesメンバーが発刊した第2の論集がこういった形にならざるをえなかったことには複雑な思いもありますが(また、AGSが合流しているボードゲーム読書会@高田馬場では、〈日本現代卓上遊戯史紀聞〉シリーズを発刊していますが)、Analog Game Studies開設後の想いのようなものがわずかでも伝われば幸いです。(岡和田晃)

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《以下、BOOTHにある紹介文の転載です》

 2020年2月に急逝した、蔵原大氏の遺稿を精選・集成し、関係者30名の追悼文を添えた本文540頁の大著です。戦略学研究から出発し、ウォーゲーム史・シリアスゲームを通じた産官学の連携の研究といった分野で重要な仕事をなした故人の業績、および人柄を偲ぶよすがとして、次のリンク先にて、電子書籍版を非営利で無償頒布いたします。

【[編]石塚正英・岡和田晃、[発行]蔵原大遺稿集刊行会、2020年12月31日刊】

※なにぶん大部の本ということもあり、紙媒体で読みたい人もおられると思いますが、そうした方には、印刷・製本・発送に伴う実費のカンパをお願いしております(2021年2月末、印刷版を限定刊行予定)。詳しくはakiraokawada@gmail.comにまでご連絡下さい。

●目次

・刊行のあいさつ(石塚正英)
・『史学研究とゲーム研究の徒・蔵原大―遺稿と追悼―』解題(岡和田晃)

・第一部「単著論文」
 文民統制こそ国家生き残りのための戦略− 旧西ドイツ政軍関係の精神に学ぶ−
 二十世紀のウォーゲーミング(図上演習の方法論)に関する歴史
 戦略学「教育」の新潮流:紛争シミュレーション教育の理論・実践・政治的利用に関する考察
 近現代ウォーゲーム(兵棋演習)の概史――二百年の変遷

・第二部「共著論文」
 ネット時代における「政府広報ゲーム」の将来性:防衛省シリアスゲーム「自衛隊コレクション」はいかにして企画・制作されたか?

・第三部「翻訳」
 サクセサーズ(AH)ヒストリカルノート
 研究ノート 歴史上の紛争を表現するシミュレーション手法

・第四部「コラム・書評・レポート」
 ハウス=デバイテッド(GDW)リプレイ南北戦争
 −教訓は忘れ去られた−:戦艦大和のミッドウェー海戦
 【書評】石津朋之『リデルハートとリベラルな戦争観』
 米国立公文書館「第二次世界大戦関連デジタルアーカイブ」利用の手引き
 【書評】桃木至朗『わかる歴史・面白い歴史・役に立つ歴史』
 陸自シミュレーション演習はどこまで進んでいるのか――陸自幹部学校主催「総合安全保障セミナー」体験記――
 傷だらけの偉大な負け組に捧ぐ:「役割演技式競技」における「ヒーロー」とは何者であろうか?」
 戦略の迷走:『空の境界』と『キラーエンジェルズ』の場合
 【レビュー】秦郁彦編『太平洋戦争のif[イフ]』(2010)
 歴史学者の秦郁彦と戸高一成、ウォーゲームにて激突す!
 【レポート】DBA(De Bellis Antiquitatis):上古の戦場にようこそ!
 【レビュー】ベアトリス・ホイザー『クラウゼヴィッツ早分かり』(Beatrice Heuser, Reading Clausewitz,2002)
 【レビュー】『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase)さぁ黄昏の未来世界にようこそ!
 【レビュー】ダニガン『ウォーゲームズ・ハンドブック第三版』(J. F.Dunnigan, Wargames Handbook, 2000)
 【レビュー】ジェフリー・パーカー『フェリペ二世の大戦略』(Geoffrey Parker, The Grand Strategy of Philip II, 2000)"
 【レビュー】ジョン・キーガン『戦闘の顔』(John Keegan, The Face of Battle)
 『エクリプス・フェイズ』キャラクター作成術:「軍艦」と「パズル」と「古典」
 世界史プレゼンテーション「ポストナポレオン戦争」「武器」「移民」「将棋=チェスの世界史」「科学革命」
 ゲームと政治のつきあい方――行政広報ゲーム
 ウォーゲーム研究大会・参加談―イギリスで戦略をプレイするということ
 【ちょっと戦略研究】「狂犬」マティス将軍ってどんな人? (1)
 【ちょっと戦略研究】「狂犬」マティス将軍ってどんな人? (2)
 【ちょっと戦略研究】「狂犬」マティス将軍ってどんな人? (3―まとめ)
 【ちょっと戦略研究】「狂犬」マティス将軍ってどんな人? ( 補論) &「狂犬」トランプ
 ボードゲーム読書会『Lost Battles』レジュメ2018 年1 月
 ボードゲーム読書会『Lost Battles』レジュメ2018 年2 月
 ボードゲーム読書会『Lost Battles』レジュメ2018 年3 月
 ボードゲーム読書会『Zones of Control』レジュメ
 宗教とゲーム―頸城野から電脳空間へ―

・第五部「小説・戯曲」
 衛星タイタンのある朝
 「戦うショートショート」又はボーイ・ミーツ・ガール
 「真夏の夜の夢」作戦
 前夜
 女博士イオネスコの受難 リプレイ・忍殺バージョン

・第六部「関係者追悼文」
 蔵原大氏の急逝を悼む(石塚正英)
 蔵原追悼文(市川大河)
 蔵原大さんへ(大沢武彦)
 「戦友」を亡くして(岡和田晃)
 蔵原大氏を悼む(尾ア綱賀)
 追悼文(小野憲史)
 蔵原追悼文(金澤尚子)
 畏友蔵原大君を悼む(岸田伸幸)
 蔵原大氏追悼(草場純)
 ゲームの人、蔵原さん(黒木朋興)
 さようなら、蔵原さん(齋藤路恵)
 蔵原さんとデジタルコンテンツ(佐久間健)
 友になるまえに逝ってしまった友へ(佐藤修)
 蔵原さんのこと(沢田大樹)
 分類を拒むひと(助川幸逸郎)
 追悼文(鈴木香織)
 蔵原さんのこと(瀬戸利春)
 追悼文(高橋志行)
 蔵原大先輩の思い出(谷田雄一)
 蔵原大先生を追悼いたします(張永嬌)
 蔵原さんを偲んで(通堂あゆみ)
 蔵原大さんへ(仲知喜)
 平らな勾玉(西原志保)
 蔵原大氏追悼(伏見健二)
 「遊戯」とは何かを教えてくれた人 蔵原大さん(米田祐介)
 蔵原さん..心優しき善意の人(牧野元紀)
 美女剣士“ 無鉄砲” のダン・ワン( 弾丸) のキャラクターシートをあなたの分身とみて(待兼音二郎)
 「ゲームデザイン討論会」と蔵原さんの思い出(三宅陽一郎)
 蔵原大氏追悼(茂木謙之介)
 蔵原追悼文(八重樫尚史)
 世界の起源の泉(岡和田晃)

・あとがき(岡和田晃)
・蔵原大氏・フォトギャラリー
・著者編者プロフィール

 

【著者】
蔵原 大(くらはら・だい)
1972年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科後期博士課程単位取得退学。修士(人口学)。独立行政法人国立公文書館アジア歴史資料センター、東京大学大気海洋研究所学術支援専門職員、株式会社ジェイブレイン顧問、株式会社分析広報研究所嘱託職員、東京電機大学理工学部情報システムデザイン学系非常勤講師等を歴任する。戦略学研究から出発し、ウォーゲーム史・シリアスゲームを通じた産官学の連携の研究といった分野で重要な業績を遺した。
 主論文に「近現代ウォーゲーム( 兵棋演習) の概史 : 二百年の変遷」(「遊戯史学研究」25号、2013年)、「戦略学「教育」の新潮流:紛争シミュレーション教育の理論・実践・政治的利用に関する考察」(「戦略研究」第9号、2011年)、共著に『世界史プレゼンテーション』社会評論社, 2013年)、『ゲームクリエイターが知るべき97のこと(2)』(オライリー・ジャパン、2013年)ほか、また自身の思想を小説や戯曲としても表現し、代表作に「前夜」(「SF Prologue Wave」、2017年)がある。翻訳書にウィリアムソン・マーレー&リチャード・ハート・シンレイチ『歴史と戦略の本質 歴史の英知に学ぶ軍事文化』(上下巻、共訳、原書房、2011年)など。軍事問題研究会、日本アーカイブズ学会、戦略研究学会、日本デジタルゲーム学会、Analog Game Studies、遊戯史学会、ボードゲーム読書会@高田馬場、ゲームデザイン討論会、アルテス=リベラレス開発研究所、その他に参画。2020年2月急逝。

 

【編者】
石塚 正英(いしづか・まさひで)
1949年新潟県上越市生まれ。立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学、同研究科哲学専攻論文博士(文学)。1982年より、立正大学、専修大学、明治大学、中央大学、東京電機大学(専任、2020年3月退職)歴任。東京電機大学名誉教授。2008年〜、NPO 法人頸城野郷土資料室(新潟県知事認証)理事長(現在に至る)。著書に、『革命職人ヴァイトリング――コミューンからアソシエーションへ』『地域文化の沃土――頸城野往還』『マルクスの「フェティシズム・ノート」を読む――偉大なる、聖なる人間の発見』『ヘーゲル左派という時代思潮――A・ルーゲ/ L・フォイエルバッハ/ M・シュティルナー』『学問の使命と知の行動圏域』(以上、社会評論社)、『アミルカル・カブラル―アフリカ革命のアウラ』(柘植書房新社)、J・G・フレイザー『金枝篇』(監修、既刊7巻、国書刊行会)ほか。蔵原大氏を東京電機大学非常勤講師に招聘し、アルテス=リベラレス研究所を立ち上げ、また研究生活50周年記念誌『感性文化のフィールドワーク』(社会評論社)は、蔵原大氏生前最後の文業発表の場となった。

岡和田 晃(おかわだ・あきら)
1981年北海道上富良野町生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科で修士(文学)を取得。2007年より、ゲーム作家・研究家、文芸評論家として活動。2011年より、商業媒体で歴史コラム執筆。2015年より、共愛学園前橋国際大学、法政大学経済学部、東海大学文化社会学部等の非常勤講師を務める。2019年より、商業文芸雑誌の編集長、現代詩創作の仕事も開始。「ナイトランド・クォータリー」編集長。著書に、『「世界内戦」とわずかな希望―伊藤計劃・SF・現代文学』(第5回日本SF評論賞優秀賞を含む)『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷 SF・幻想文学・ゲーム論集』(以上、アトリエサード)、『反ヘイト・反新自由主義の批評精神――いま読まれるべき〈文学〉とは何か』(第50回北海道新聞文学賞佳作の改題、寿郎社)、『掠れた曙光』(茨城文学賞詩部門受賞、書苑新社)、『現代北海道文学論 来るべき「惑星思考(プラネタリティ)」に向けて』(編著、藤田印刷エクセレントブックス)、『幻想と怪奇の英文学W――変幻自在編』(共著、春風社)ほか、RPG『エクリプス・フェイズ』『トンネルズ&トロールズ』『ウォーハンマーRPG』『ダンジョンズ&ドラゴンズ』等関連の翻訳・創作も多数。Analog Game Studiesを立ち上げ、蔵原大氏と共闘した。

 

装丁・製作:松島梨恵
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2011年03月20日

デヴィッド・ヌーナン/ビル・スラヴィクシェクほか『ダンジョン・デルヴ』:「詰めD&D」集。DM指南に、そして新しい遊び方のために!

【新作紹介】デヴィッド・ヌーナン/ビル・スラヴィクシェクほか『ダンジョン・デルヴ』:「詰めD&D」集。DM指南に、そして新しい遊び方のために!
 岡和田晃

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 世界最初のRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)。その最新版であるD&D第4版は、現在でも精力的に日本語展開がなされていますが、展開の当初から、未訳のサプリメント(追加の設定資料集)に親しんでいるゲーマーたちの間で、ひそかに評価の高いサプリメントが存在しました。それが今回邦訳された『ダンジョン・デルヴ』Dungeon Delve,2009です。初出から2年あまり。待望のサプリメントがついに日本語でお目見えしたという次第です。
ダンジョン・デルヴ (ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版サプリメント) [大型本] / デヴィッド ヌーナン, ビル スラヴィクシェク (著); 待兼 音二郎, 鈴木 康次郎, 阿利浜 秀明, 見田 航介, 岡和田 晃 (翻訳); ホビージャパン (刊)
 なぜ、人気があるのでしょうか? それはおそらく、この『ダンジョン・デルヴ』が、ダンジョンマスター用の指南の書として機能しながら、D&Dの新しい遊び方を提示してくれるサプリメントでもあるためでしょう。その点、もう少し詳しく説明していこうと思います。


●ダンジョンマスター用の指南の書として

 D&Dは数ある会話型RPGの中でも、血沸き肉踊る戦闘の楽しみに重点を置いたシステムとなっています。そして、第4版になってからのD&Dは、戦闘システムに大胆な単純化と抽象化が施されたため、容易にルールを習得でき、手軽にダイナミックな戦闘が楽しめるようにもなりました。

 D&D第4版においてキャラクターは「パワー」という特殊能力を用いますが、このパワーはダメージを与えたりキャラクターを強制的に移動させたりする要素と、朦朧状態や支配状態などの「状態異常」を与える要素に大別されます。また「遭遇」という単位でゲーム内時間を抽象化することにより、戦闘やイベントの管理が手軽に行なえるようにもなっています。

 こうした諸々の刷新事項の中でも特筆すべきは、D&D第4版がチームワークを重視している点でしょう。PC一人ではとても敵わない強力な敵であっても、パーティ内の連携次第で、十分に打ち勝つことが可能であること。この楽しさといったら! 言い換えれば、D&D第4版での戦闘の醍醐味は、チームワークによって「遭遇」という名の苦難を乗り越える過程にほかならないのです。

 この「遭遇」は、白紙のマップに敵と味方を配置し、殴り合うだけの単純なものから、複雑なストーリー的ギミックや、地形効果などと組み合わせたものなど、さまざまなものが考えられますが、プレイヤーたちに嬉しい驚きを与えるためには、やはり「遭遇」の質にはこだわりたいもの。しかし慣れないうちには、なかなか面白い「遭遇」が思いつかないのもまた事実です。

 会話型RPG、特にD&Dを深く楽しむためには、優れたダンジョンマスター(略称DM、D&Dにおけるゲームマスター)の存在が大事になってきますが、D&D第4版において優れたDMたるには面白い「遭遇」を作成し、鮮やかに運用する技術がやはり、必要不可欠です。『ダンジョン・デルヴ』は、そうした技術を身につけるための指南の書として活用することができます。

 『ダンジョン・デルヴ』には、すぐに使える「遭遇」が、各レベル帯ごとに3つ、合計90(!)も収められているのですが、これらの「遭遇」には、それぞれストーリー的な背景設定や、運用のコツ、描写の仕方、拡張案が記されています。こうした情報を参考に運用を行なえば、自然とD&Dのダンジョンマスターとしての技術を上達させることが可能になります。


●手軽な遊び方の提示として

 また『ダンジョン・デルヴ』は、D&Dのより手軽な遊び方を提示するサプリメントともなっています。遠慮せず、『ダンジョン・デルヴ』に掲載されている「遭遇」を使って、D&Dをボードゲーム的な(プレイヤーとDMの)対戦ゲームとして遊んでしまいましょう! 1998年のGencon Game Fair(北米最大のゲーム・コンベンションの一つ)でお披露目された遊び方に由来するということからもわかるとおり、『ダンジョン・デルヴ』は、お祭りで行なわれるような――明快でダイナミックなスタイルに――めっぽう相性がよいのです。

 『ダンジョン・デルヴ』には、レベルごとに3つの遭遇が収められています。手持ちのリソースを考えながら、この3つの遭遇を生き延び、所与の目的を達成しましょう! 『ダンジョン・デルヴ』の遭遇は、決してやさしいものではありません。特に「デルヴ3」は、多くの冒険者を闇に葬った悪名高いデルヴです。不敵に笑うDMの鼻を明かしてやるか、無残にもダンジョンの果てで朽ちるのか。すべては、あなたの勇気と機知にかかっているのです!
 いわば本書は「詰めD&D」の問題集。もっとも、詰将棋のように一人で解法を模索するのではなく、仲間たちとワイワイ楽しむ類のものですが。

 練りに練った重厚長大なストーリーも面白いものですけれども、一方で手軽な戦闘ゲームとしてD&Dに親しむことにも、独特の面白さが存在します。いや、手軽な戦闘ゲームとして遊んでいたつもりが、その経過を振り返ってみると、ひとつの壮大な物語となっていたという、意外な驚きに出遭えるかもしれません。ひとつのゲーム経験が、かけがえのない「体験」へと昇華されること。それがD&Dを「遊んだ」ことだと、筆者は考えています。Analog Game Studiesはアナログゲームとその他の社会的要素を繋げることを目標としていますが、そのためにはまず、対象となるアナログゲームについてよく知らなければなりません。D&Dについて言えば、『ダンジョン・デルヴ』は、D&Dにに親しむ格好の機会を提供してくれるものと思います。

 いま、私は放課後『バーコード・バトラー』やカードダスに熱中していた小学生の時の自分に、「小難しいこと抜きで、もっともっと戦闘をしたい!」と戦闘に飢えていた中学生の時の自分に、『ダンジョン・デルヴ』をプレゼントしたいと切に思っています。当時有していた――今も静かに持続していますが――狂おしいまでの飢餓感に、このサプリメントは十分、答えてくれたに違いないからです。いや、社会人になった今でも、心ゆくまで戦闘を楽しみたいという機会は多いですし、「D&D Encounters」(後述)のような遊び方にも、『ダンジョン・デルヴ』は相性がよいとも思います。

 また、『ダンジョン・デルヴ』で導入された「遭遇3セット」という考え方は、「デルヴ形式」という名のもとに、公式アドベンチャーにおいても採用されています。どうもセッションにメリハリがないとお悩みのDMは、「遭遇3セット」というデルヴ形式の考え方を採用してみて下さい。長くもなく、かといって物足りなさもなく、この「遭遇3セット=デルヴ形式」が、D&D第4版のアドベンチャーを設計するにあたり、理想的なモデルとして機能するとわかるはずです。イベントでも応用することはできるでしょう。


●42種類の新モンスター!

 『ダンジョン・デルヴ』に登場するモンスターは、『モンスター・マニュアル』のほかにも、『Open Grave』、『次元界の書』、『ドラコノミコン:クロマティック・ドラゴン』に収録されたものが登場しています。

 しかし、それだけではなく、『ダンジョン・デルヴ』では、新しいモンスターが42種類も、お目見えします。モンスター好きには、見過ごすことはできないでしょう。


●調整してみましょう!

 『ダンジョン・デルヴ』の原書は2009年の2月に発売されたサプリメントであるため、『ダンジョン・マスターズ・ガイドII』等に掲載された、モンスターの調整や罠のアップデート等は反映されていません。最新の適正難易度で挑みたいDMは、適宜調整を加える必要があります。

 また、それ以外にも『ダンジョン・デルヴ』には、モンスターのカスタマイズ案やプレイヤーの人数に合わせた調整案が掲載されております。こちらも参考にしてみて下さい。

 なお、『ダンジョン・デルヴ』で紹介されているダンジョン・タイルには絶版のものもあるようですが、他のタイルでも代用が利くものも多いですし、手書きのマップ等でも比較的楽に再現することが可能です。
ダンジョン・デルヴ (ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版サプリメント) [大型本] / デヴィッド ヌーナン, ビル スラヴィクシェク (著); 待兼 音二郎, 鈴木 康次郎, 阿利浜 秀明, 見田 航介, 岡和田 晃 (翻訳); ホビージャパン (刊)

●関連リンク集

・『ダンジョン・デルヴ』に、さらに興味が出てきた人は、ホビージャパンのD&D日本語版公式サイトにプレビューが掲載されていますので、ぜひご覧ください。http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/delve/index.html

・また、吉井徹さまによる「ゆるゆるSpeak Easy」第42回では、コミック形式で『ダンジョン・デルヴ』の踏み込んだ説明が描かれています。
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/speak_easy/speak_easy42.htm

・現在、全世界でD&D Encountersというイベントが実施されています。これは、D&Dの発売元であるWizards of the Coast社が主催する世界的なイベントで、毎週水曜日に1セッション=1遭遇という形でアドベンチャーをこなすという形でD&Dのキャンペーン・ゲーム(続きもののドラマのように連続したストーリーの冒険)を行なうというものです。詳しくは、会話型RPGを中心としたアナログゲーム総合情報誌「Role&Roll」Vol.78にレポートが寄せられていますが、D&D Encountersのように、「1遭遇=1セッション」という形で、『ダンジョン・デルヴ』を遊んでみるのも面白いかもしれません。また、オンライン・セッションとの相性も抜群のようです。
Role&Roll Vol.78 [大型本] / アークライト (編集); 新紀元社 (刊)

・アドベンチャーにおけるキャラクター表現に、より深みを与えたい人には、P・ローランさまの「もう一人の自分 ―ANOTHER SELF― 〜AD&D(R)におけるキャラクター・ジェネレーションへの一考察〜」が役に立ちます。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/187513308.html
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2011年03月14日

ウォーゲーム講義のテキスト:奥出阜義『ハンニバルに学ぶ戦略思考』(2011)

【新作紹介】ウォーゲーム講義のテキスト:奥出阜義『ハンニバルに学ぶ戦略思考』(2011)
 蔵原大
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 今回は、首都大学で行われているウォーゲーム講義のテキストを紹介します。

ハンニバルに学ぶ戦略思考

ハンニバルに学ぶ戦略思考

  • 作者: 奥出阜義
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2011.02
  • メディア: ソフトカバー



 首都大学オープンカレッジでは、元自衛官の奥出阜義講師による「MM講義」が連年行われています。MM=Map Maneuver(図上演習)ですが、簡単に言えばウォーゲーム(戦争を模擬した競技)のことです。評者も2009年に参加したこの講義、毎年20名ほどの受講生を集めてきました。2011年始めに出された上記の『ハンニバルに学ぶ戦略思考』はその講義内容をまとめたものです。

「戦略の父ハンニバルに学ぶ戦略決断力 ビジネスを勝利に導く体験型MMゲーム」

 しかしなぜ「ハンニバル」なのかって? それについては本をお読みになればお分かりになるかと思いますが、少し種明かしをしますと、講義では古代地中海世界の将軍「ハンニバル・バルカ」の「ロールプレイング」をしていることに関係しています(むろん遊びではなく経営戦略等に類する話です)。

 ちなみにウォーゲームを活用した大学講義については以前にも「ウォーゲームを製作する歴史学の講義:フィリップ・セイビンの革新的試み」で取り上げましたが、日本ではまだまだ珍しい。まして一般参加可能となると中々ないですね。皆さんもこの機に聴講をお考えになられてはいかがでしょう。

 ところでこうした教育の事例については、学術雑誌『戦略研究9』に掲載された「戦略学「教育」の新潮流――「紛争シミュレーション教育」の理論・実践・政治的利用に関する考察――」という論文で国内外の様々な話が分析されています。

 ある種のゲームはこんな風に実践的価値を見出されているわけです。「ゲーム」=「遊び」という固定観念に囚われる時代はもう終わりですよ、皆さん。

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クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
【レビュー】ウォーゲーム授業のテキスト:奥出阜義『ハンニバルに学ぶ戦略思考』(2011) by 蔵原大(Dai Kurahara) is licensed under a Creative Commons 表示 - 改変禁止 3.0 Unported License.
    
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