2011年05月26日

ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』発売記念「都甲幸治×岸本佐知子」ミニトークライブ

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【レポート】ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』発売記念「都甲幸治×岸本佐知子」ミニトークライブ

 岡和田晃

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 去る2011年5月8日(日)、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』発売を記念して、「都甲幸治さん×岸本佐知子さんミニトークライブ」(http://www.kinokuniya.co.jp/store/Shinjuku-South-Store/20110427095500.html)が東京都・紀伊國屋書店新宿南店で開催されました。

 『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』については、Analog Game Studiesで発売直後に取り上げましたので、以下の記事をご参照ください。

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/187896045.html


 今回のトークライブの主役は、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の翻訳者の都甲幸治氏に、アンソロジー『変愛小説集』の翻訳等で知られる翻訳家の岸本佐知子氏でした。

 20年来の付き合いだという二人は、これまで何度か現代アメリカ文学をテーマにトークショーを重ねてきました。たとえば、フリーペーパー「WB」Vol.22に掲載された「無意識過剰な観察日記――リディア・デイヴィス『話の終わり』」をウェブ上で読むことが可能となっています(http://www.bungaku.net/wasebun/freepaper/vol022.html)。

偽アメリカ文学の誕生 [単行本] / 都甲 幸治 (著); 水声社 (刊)話の終わり [単行本] / リディア・デイヴィス (著); 岸本 佐知子 (翻訳); 作品社 (刊)

 東日本大震災によって二ヶ月あまり延期を余儀なくされたにもかかわらず、新宿高島屋内に設けられた特設会場では、40名あまりの聴衆が訪れ、盛況でした。Twitterでも多くの感想が投稿されました。

 それでは以下、トークショーの内容を簡単にレポートいたします。
 いずれ活字にまとめられる機会があるのではないかと思いますので、より詳しくはそちらをご覧ください。

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス) [単行本] / ジュノ ディアス (著); Junot Diaz (原著); 都甲 幸治, 久保 尚美 (翻訳); 新潮社 (刊)ハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックス [単行本] / ジュノ ディアズ (著); Junot D´iaz (原著); 江口 研一 (翻訳); 新潮社 (刊)

 トークショーは終始なごやかな雰囲気で、文芸誌「新潮」に連載されている都甲幸治氏のエッセイ「生き延びるためのアメリカ文学」の裏話、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の翻訳をどうして手がけるようになったかという経緯、もと「GAP」の店員だというバスク人のスペイン語教師との逸話、岸本佐知子氏が『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の第2章「原始林」で語られる(オスカーの姉)ロラの語り口に感銘を受けた話、ディアスの前作『ハイウェイとゴミ溜め』で選ばれた言葉の性質等が話題に出ました。


 また、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』は、『アフターマス!』や『スカイレルムス・オブ・ジョルーン』など、会話型RPGが重要な要素となっているRPG作品ですが、トークショーでは、翻訳にあたって都甲幸治氏が『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を遊んだ体験等も話題にのぼりました(*1)。

 なお、岡和田晃は『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の監修と割注作成を担当したのですが、そのご縁もあって、トークショー内で時間をいただき、主人公オスカーがプレイした可能性の高い版と同じボックスアートの『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 スターター・セット』、ならびに会話型RPGのプレイする際に使用するマスター・スクリーンやメタル・フィギュア等を紹介し、RPGの要素を知っておくことが、いかにこの小説の享受を豊かなものにするのかをお話いたしました。

 『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』に登場するおびただしい固有名詞は、単にポストモダン小説的な意匠に終わるものではなく、それぞれ独自の文脈と読者をもった小宇宙となっています。そして、ジュノ・ディアスはそのことをよく心得ていました。反応を見るに、読解にあたって重要となるこの2点を、来場した多くの方にご理解いただけたようで幸いでした。ポップカルチャーは、往々にして人間の偏見や欲望を煽り立てるように機能しますが、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』というテクストは、勃興期のポップカルチャーの位相でトルヒーヨ神話を塗り替えることが、逆にトルヒーヨ神話を強化してしまうことにつながるような事態を、ぎりぎりで回避しようとしているのではないでしょうか。

 質疑応答時には、翻訳の苦労話、参考資料をひとつ挙げるのであれば『指輪物語』を読んでほしいということ。また、アメリカの学生サブカルチャーにおけるスクールカースト(ジョック‐ナード)が話題にのぼりました。

 最後に、会場にいらしていた翻訳家の柳下毅一郎氏(アンドリュー・グリーンバーグほか『ノドの書』の解説などで知られる)から、ラストに登場する(書き込みのある)グラフィック・ノベル『ウォッチメン』(アラン・ムーア)についての興味深い逸話が語られるなど嬉しい展開があったことも書き添えておきます。語り手がくるくると変わる、斬新な形式のトークショーでした。

ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版スターター・セット [大型本] / ジェームズ ワイアット, ジュレミイ クロフォード, マイク ミアルス, ビル スラヴィクシェク, ロドニー トンプソン (著); 桂 令夫, 岡田 伸, 北島 靖巳, 楯野 恒雪, 塚田 与志也, 柳田 真坂樹 (翻訳); ホビージャパン (刊)ノド書  ブック・オブ・ノド [単行本] / サム・チャップ, アンドリュー・グリーンバーグ (著); 福嶋 美絵子, 小川 涼 (翻訳); アトリエサード (刊)

 出版不況のさなか、特に翻訳書にとって厳しい時代だと言われて久しくなります。
 しかし『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』は、「朝日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「北海道新聞」など各紙、「文學界」「新潮」「ミステリマガジン」「本の雑誌」といった各種文芸誌、さらには「テレビ・ブロス」や「エル・ジャポン」といった文芸がメインではない雑誌、「週刊ブックレビュー」といったテレビ番組等々において、数多くの書評や批評が掲載されています。ウェブ上でもウェブログ、Twitter、読書メーター等に多数の感想が寄せられています。文学の無力が叫ばれるなか、近年稀に見る幸運な作品なのは間違いないでしょう(*2)。増刷も決定したということで、この優れた作品がさらに多くの読者へ届くことを願ってやみません。



 さて、イベントから三週間近くが経過し、改めて感じることは、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』で語られる「フク」とはまさに、現在、日本が直面している苦境そのものではないかということです。そして、アナログゲームをやSFを介した想像力によって歴史的な現実を認識でき、現状を適切に語ることができるというのは、私たちにひとつの勇気を与えてくれるように思います。

 レビューを掲載した後、Analog Game Studiesの岡和田晃と高橋志行氏は、都甲幸治氏へのインタビューを敢行いたしました。しかしインタビューの真っ最中、東日本大震災に遭遇してしまったのです。使用していた喫茶店が危険な状態となり、残念ながらインタビューは中断されてしまいました(*3)。けれども、私たちは身をもって小説で語られる「フク」を体感し、日常を侵食し、想像力を断層させる現実、そして表象不可能な現実を、再認識させられた次第です。

 未曾有の災害を経た現在、フィクションに自らの実存を重ね合わせ、投企の機会とすることが困難になっているように思えます。私たちが築き上げた文化も、そこで表象される内面も、ほんのちっぽけなものにすぎなかった。しかしそれでも、失語を強いる状況において、少しでも希望を見出すことは可能ではないか。畢竟、文学の価値はそこにこそあり、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』は「一つの指輪」の誘惑に耐えつつも、サウロンやモルゴスに蹂躙される世界を生き延びるための支えを――いわば「RPGリプレイ」という文学的形式をもって――私たちに提示してくれているのではないでしょうか。

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(*1)ちなみに、アナログゲームの総合情報誌「Role&Roll Vol.62」に掲載された、「WORLDWIDE DUNGEONS & DRAGONS GAME DAY 2009 プレイヤーズハンドブック2」のレポート記事には、都甲幸治氏のコメントが掲載されています)。
(*2)数多くの書評から特に優れた一点を挙げるとしたら、「新潮」2011年5月号に掲載された円城塔氏の書評をお薦めいたします。
(*3)近いうちに再開を予定したいと考えております。
posted by AGS at 20:03| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月24日

ボードゲーム・サークルご紹介:West Tokyo Wargamers

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ボードゲーム・サークルご紹介:West Tokyo Wargamers

 髭熊五郎 (校正:仲知喜、Giovanni Allari)

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 先日AGSメンバーの蔵原氏の紹介で、とあるゲームサークルの例会に参加してきました。会の雰囲気もとてもよく、参加者は垣根にとらわれることなくさまざまなジャンルのゲームを楽しんでいたため、ここで紹介させていただこうと思いました。


 West Tokyo Wargamersというゲームサークルがあります( http://westtokyowargamers.blogspot.com/ )。

 聖蹟桜ヶ丘駅近くの多摩市関戸公民館で毎月一回(開催日は不定)活動していて、ヒストリカル・ミニチュア・ウォーゲーム(近頃は、ナポレオニックやWWUがメイン)を中心に、ウォーゲームやボードゲー ムや会話型RPG(TRPG)など幅広く遊ばれています。

 West Tokyo Wargamersの大きな特徴は「参加者のほとんどが日本語を母語としていない」ということ。

 なので、会の基本言語は英語となっています。

West Tokyo WargamersWest Tokyo Wargamers

 ルールの説明など英語で行われますが、日本人相手には ゆっくり話し てくれますし、どうしてもわからなければ日本語で質問しても構いませんし、主催者でイタリア出身のジョバンニ・アラーリさん(Mr.Giovanni Allari)をはじめ、多くの参加者の方々は日本語が堪能なので心配いりません。(中学で英語を諦めた僕でさえ半分くらいはなんとなく理解できま した。お互いに伝えよう・理解しようという気持ちがあれば、何とかなるものですね。(笑))

 みなさん良い人でとても和やかな雰囲気の会なので、初めての方でも安心して参加できると思います。

West Tokyo Wargamers 参加者の方は様々なゲームを持参しているので、最初は見学として手ぶらで参加しても大丈夫。ただし、ミニチュアを使ったウォーゲームは、参加者が自前のミニチュアを持ち寄って対戦するがマナーです。ミニチュアゲームに興味のある方は、ミニチュアを借りた入門ゲームを数回楽しんだ後は、ぜひ自前のアーミーを揃えてゲームに参加するようにしてください(ミニチュアの入手のしかたや塗装法は会員の方がレクチャーしてくれます。ミニチュアを塗ったりコレクションしたりするのも楽しい経験です!)。



 また、お子さんを連れてきている方もいらっしゃるので、家族での参加も可能です。でも、お父さんお母さんはお子さんの行動にはくれぐれもお気をつけください


 繊細なナポレオン騎兵を小さい怪獣が掴みあげてバキッ!なんてことにはなりませんように!!

West Tokyo WargamersWest Tokyo Wargamers


 最強のナポレオン騎兵隊も小さい怪獣さんに乱入されてはひとたまりもありませんからね!!


 様々なタイプのゲームを楽しめる、とても素敵なゲーム会です、


 次回は6月18日(土)、次々回は7月31日(日)、参加費500円。
 詳しくは、West Tokyo Wargamersのウェブログをご覧ください。(ミニチュアの画像などとても素敵です。)
 http://westtokyowargamers.blogspot.com/


 なお、このゲーム会ではどんなゲームをするのか事前に皆さんで打ち合わせをしているので、初めて参加される方は先方にご連絡されるとよろしいかと思います。

 参加希望等お問い合わせは、
 westokyowargamers★hotmail.co.jp(★→@)へどうぞ。

 ブログは英語で書かれていますが、メールは日本語でもOKです。

 ヒストリカル・ミニチュア・ウォーゲームに関しましては、AGS記事「DBA(De Bellis Antiquitatis): 上古の戦場にようこそ!(蔵原大)」を参考までに。
 http://analoggamestudies.seesaa.net/article/177260283.html

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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posted by AGS at 05:57| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月02日

『冒険王道(アドベンチャーロード)』初級が公開!

『冒険王道(アドベンチャーロード)』初級が公開!
 齋藤路恵

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 小学生向け会話型RPG(TRPG)のPDFが公開されたことを御存知でしょうか?

 『冒険王道』は小学校のクラブ活動向けに開発された会話型RPGです。

 小学生のGM(ゲームマスター、司会進行役)が小学生のプレイヤー相手に50分程度で遊ぶことを目標に作られています。


 実際のプレイングの様子はこちらでリポートされています。


・こどもたちにダイスを!(子どもたちにダイスを。)
http://dice4kids.blog57.fc2.com/


 ルールブックはこちら。


・『冒険王道(アドベンチャーロード)』
http://kataruni.com/member/masafumi/ad_road/m_1.html


 PDFを開くとまず、ページ構成の美しさに感心しました。

 本当に小学生向けの教科書みたいです。


 中味を読むと、会話型RPGにおける基本的な語句がわかりやすく説明されています。

 語句の定義は、システムの構造をどうとらえるのか、という問題と関係してきます。

 そのため慣れたプレイヤーでもおもしろく読めるのではないかと思います。

 むしろ、このような観点は経験を重ねたプレイヤーの方がおもしろいのかもしれません。


 私が感心した説明はこれです。

 次は<能力値>。そのキャラクターが得意なことや苦手なことを数字で書いたものだよ。
(本文5ページ、PDF7枚目)


 「得意なことや苦手なことをあらわしたもの」とせずに「数字で書いたもの」とする表現するところに世界をデータ化、構造化するという会話型RPGの本質が良く表れています。

 解説もていねいです。

 運営上の注意からコミュニケーションのマナーまで書いてあります。

 わなが発動したら、とっさによけられたか、判定をします。難易度は「その罠を見つける難易度+2」ぐらいがいいでしょう。

(本文27ページ、PDF30枚目)


 「自分で決められる」といっても、好きなことをしていいいわけではありません。あなたの行動が、仲間である他のプレイヤーに迷惑をかけることもあります。

 あなたが何かをしたいと思ったとき、まず他のプレイヤーと相談しましょう。プレイヤーがばらばらに行動していては、危険なダンジョンをクリアすることはできません。

(本文21ページ、PDF24枚目)


 依頼された内容をクリアしたら、ダンジョンは終了。依頼人に報告します。依頼人から「ありがとう」と伝えましょう。

(本文27ページ、PDF30枚目)




☆実際に遊んでみよう!


 『冒険王道』の大きな特徴は、プレイヤーとGM(ゲームマスター、司会進行役)の両方がこどもであること=ルールがかんたんであること、プレイ時間が50分程度であることです。

 これは会話型RPGの新規ユーザー開拓には有効ではないでしょうか。

 加藤ヒロノリさんは以下のように述べています。

 皆さん、若い子を捕まえましょう! 若い血潮をアナログゲーム界に注ぎ込まなければ未来は暗いです。

(『Role&Roll』vol.76 17ページ 2011年1月発行)


 新規ユーザーの少なさは会話型RPGを長いこと遊んでいる人の多くが実感していることでもあると思います。


 鈴木銀一郎さんも「私見である」「業界を代表していっているのではない」と断って以下のように述べています。

 TRPG業界というものは、ボランティアであるゲームマスター(GM)に依存している。それなのに、コアとなるGMに対する配慮がまったくといっていいほどない。

中略

 今こそ業界全体で若いユーザーの開拓に努めるべきではないのだろうか。

 わたしが唱えている「1時間RPG」もそれを意識したものであった。長時間かけてゆっくり楽しむセッションはTRPGの醍醐味であろう。しかし、初めてのプレイヤー(PL)をユーザーに引き込むためには短時間で終了するゲームが必要ではないだろうか。

 是空とおるさんは1時間で終了するシステムをつくり、声優さをPLにしてCDをつくった。伏見健二さんも2人プレイ(GM対PL)で1時間RPGをつくっておられるという。

 わたしは、1時間RPGをカードゲームにしてしまおうと考えているところである。

(『Role&Roll』vol.76 116ページ 2011年1月発行)



 伏見健二さんは以下のように述べています。


 現在、かなりの勢いでユーザー数を増やしているボードゲームは1プレイで1時間、ないし、2時間ほどで終了するものが好まれます。30分かけてゲームを教えて準備を済ませ、1時間かけてプレイをし、さらにもう1時間かけてしっかり習熟したところで再プレイをする。これが楽しいプレイパターンとなります。

 これをそのままTRPGにあてはめてみると、30分かけて説明をしてキャラクターを説明し、1時間かけてプレイをし、その結果で報酬を獲得してレベルアップを行い、さらに1時間かけて成長したキャラクターでプレイを行う。このパターンが短く満足のゆくものとなるでしょう。

中略

 ためしにプレイヤー1名で、自分がGMしたことのあるシナリオを遊んでみると良いでしょう。もちろん敵の強さなどは調整しますが、結果として、ほとんどのTRPGシナリオが、ほんの1時間でフルストーリーを終了させてしまうほどに時間短縮できる、ということが確認できると思います。

 結論として言えることは、TRPGの時間を圧迫し、プレイシーンを限定させてきたのは、戦闘中心のプレイスタイルと、数の多いプレイヤー数だったと言えそうです。

中略

「本気の戦闘は1回だけ。プレイヤーは1人か2人!」

 これが新たな合言葉です。

(伏見健二 『ブルーフォレスト通信』1号20頁 2010年9月発行)



 私個人は、これに加えて、初心者同士で遊ぶ機会を増やす事が重要ではないかと考えています。


 上手い人のプレイグループにまぜてもらうと、初心者は何となく様子見をしてしまい、積極的に動かない/動けないということがまま起こります。

 私は、「自分の決定・行動に対して結果・反応が得られる」というのがゲームの基本的な楽しみではないかと思っています。

 そうするとこれはもったいないことです。

 初心者同士で遊んだからと言って必ず積極的に動けるわけではありませんが、心理的負担が減るならやってみる価値はあるのではないでしょうか。


 学生のころ、クラスの友達を誘って、全員初めてで、みようみまねで遊んだ楽しい思い出……そうしたものを持っている人も多いと思います。

 家庭を持っている人が、「こどもと遊びたい」「会話型RPGがどんな遊びか家族にわかってもらいたい」という需要もあります。

 家庭との両立が難しく、会話型RPGをやめてしまった人は私の周りにもいました。
こどもといっしょに会話型RPGを楽しめれば、こどもが将来の顧客になるかもしれず、家族の理解も得やすくなり、一挙両得です。


 D&Dではこども向けのシナリオをPDFで無料配布しています。


・『モンスター・スレイヤー / ヘシオドスの英雄たち』
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/support/files/the_heroes_of_hesiod_jp.pdf


 このシナリオはD&Dを知らないこどもたちが、D&Dの雰囲気や基本的な動きを理解できるように作られています。いわばこども向けの導入編です。

 シナリオ中の敵は全員で協力しなければ倒せないようになっています。シナリオをクリアしたこどもたちには盾形のバッチをあげるよう指示がなされています。

 私はドワーフバーバリアンの女の子のイラストがとりわけかわいいと思っています。

 このシナリオも所要時間30分程度で作られています。


 ……そうしたことを踏まえて、家で実際に2人プレイをしてみました。

 2人とも会話型RPG歴は数年以上あります。


 準備にかかった時間は20-30分くらい。


 昼食を買いに行った帰り道、「迷子のペット(リス)を探しに行ったら巨大化していると言う話にしよう」と思いつきました。

 その後、ダンジョンシートを印刷。

 ダンジョンシートにシナリオの背景や登場人物についての情報、ダンジョン周辺の様子、間取りなどを書き込みました。あっというまに完了しました。

 お昼休みにやったことはここまで。15-20分くらいでしょうか。


 夕方、家人と顔を合わせてプレイヤーキャラクターとノンプレイヤーキャラクターの作成をします。

 キャラクター作成は、そのキャラクターの得意なジャンルを選んで、おまけポイント1点を割り振るだけです。

 家人とやったことはこれだけ。5分くらいでしょうか。各種シートの印刷まで入れて10分くらいでしょうか。


 これで準備完了、シナリオスタート!


 主人公は、グスタフ、ピョートル、オットーの3人組。
(家人は5分で3人もキャラクターを作っていました!)


 グスタフはファイター(戦士)。戦いの腕をみがきたいと思っています。

 ピョートルはシーフ(盗賊)。面白そうな事件に出会いたくてうずうずしています。

 オットーはウィザード(魔法使い)。珍しいアイテムを集めたいと思っています。


 17歳の3人はそれぞれの目的を持った駆け出しの冒険者です。

 ……もっとも村人たちは「ボンクラ3人組が何でも屋を始めた」くらいにしか思っていないようですが。


 3人組が「冒険者らしく」村の雑貨屋兼宿屋でたむろしていると、村娘のシェンナとその弟バートがやってきました。

 2人のペットのリス「リッキー」がいなくなったので、何でも屋の3人に探すのを手伝ってほしいというのです。

 これといった支払いもできませんがお礼ならシェンナは祭りのときにパイを作ってくれること、バートは木工細工でイスを作ってくれることを約束してくれます。(甘いものは高級なので、祭りのときくらいしか食べられません!)

 「ボンクラ3人組」は姉弟の頼みを快く引き受けました。


 ……ダンジョンシートにメモしておいた導入はここまで。ここからはアドリブです。


 宿屋の食堂なのに水ばかり飲んでいた3人は店長に温かく送り出されます。


 シェンナとバートと5人で森に入っていくと、3人はほどなくして一軒家を見つけます。

 一軒家は最近建てられたもののようです。こんなところに誰か引っ越してきたのでしょうか?

 3人はそっと家の窓に近寄ります。「依頼人」には安全のため少し離れたところで待っていてもらいます。
家の窓に近寄ると、窓のほとんどをモサモサした茶色い毛の塊が覆っています。

 毛の塊はこきざみに揺れているようです。……あやしい。


 家の中はどうなってる? あの茶色のモサモサは?

 煙突、戸の隙間とさまざまなところから覗きましたが、モサモサは巨大すぎてどうもその全貌が見えません。


 こうなったら、正面突破かと、3人は思い切って家のドアを叩いてみました。

「すみませーん!」

 グスタフが叫びますが、返事はありません。

「すみませーん!」

 もう一度呼びかけると、今度は3人の背後から声がしました。

「……早く帰った方がいいよ。帰りなさい」

 女性の声でしたが、振り返っても3人の後ろには誰もいません。

 どういうこと?魔法?!


 駆け出し3人組は本格的な魔法?を見るのは初めて。

 シェンナとバートも初めてです。

 5人は驚いて素直に村に逃げ帰ります。


 宿屋に戻って水を頼み、店長に話を聞くと、数か月前から新しくおばあさんが雑貨を買いに来るようになったそうです。森の家に住んでいるのはおばあさん?


 少し落ち着いた5人は気を取り直して、再びおばあさん?に会いに出かけます。

 3人組がドアの向こうから何度か話しかけると、ドアの外で待っているよう女性の声がしました。しばらく
するとドアの外に出てきたのはやっぱりおばあさんでした。


 来てもらったのはいいものの、何から、どうやって聞けばいいのでしょう?

 ちょっと迷った3人組でしたが、ピョートルが好奇心をこらえきれなくなって、ストレートに聞いてしまいました。おもしろそうな事件ですから!

「あのモサモサしたものはなに?」

「おばあさんって魔法使い?」

「リスについて何か知らない?」

 直球勝負に出たプレイヤー。GMはルールにはありませんが、ここで対抗判定を行いました。

「ピョートルの〈感覚〉+サイコロ2個の出目」と「おばあさんの〈感覚〉+サイコロ2個の出目」を比較して、大きい方が有利になるように話を進めることにします。……おばあさんの勝ちです。


 おばあさんはにっこり笑って言いました。

「何のこと?知らないよ」

「世の中には知らなくていいこともあるよ」

「2-3日すれば帰ってくるんじゃない?きっと大丈夫よ」


 その後、おばあさんは隠居して都会からここに移り住んだこと、静かで落ち着くけどやっぱり少しさみしいことを話してくれます。

 そして5人に言います。突然、仕事もできない婆が村に移り住んでもお互いに気苦労しそうだからここでひっそり暮らしている。でもたまには遊びに来てほしい、と。

 そう言ってからおばあさんは5人に村に帰るよううながし、5人の姿が見えなくなるまで見送ってくれます。


 しかし、どう考えてもおばあさんがあやしいという結論に至った5人は、すぐに引き返して再びおばあさんの家に向かいます。

 3人組がそっと家に近づくと、今度は中からおばあさんの声が聞こえました。

「リッキーはかわいいね」

「リッキー悪戯しちゃだめよ」


 やはりあの巨大なモサモサがリッキーだったようです。

 3人組は、今度は、思い切ってドアをこちらから開けてみることにしました。

 ファイターのグスタフがドアを開けることになりました。ピョートルとオットーはグスタフのすぐ後ろにいます。

「こんにちは!おばあさん!」

 ……と言うか言わないかのうちに、巨大化したリッキーが突進してきます。リスのするどい嗅覚で少し離れたところにいる飼い主たちのにおいをかぎつけ、喜んでいるのかもしれません。

 先頭にいたグスタフはリッキーにじゃれつかれてモサモサもみくちゃ。グスタフのHPが削られます。

 グスタフは、リッキーを傷つけまいと、ハンドアックス(手斧)の柄で反撃。

「よーし よしよし!」

 しかし、よろこび勇んだリッキーはその程度では収まらない様子。

 このままではグスタフのHPはどんどん減っていきます。
 
 あやうし!グスタフ!


 そこで、ピョートルが、とっさに持っていたたいまつに火をつけ、炎をリッキーに近づけます。

 リッキーが驚いて後ずさった瞬間に、オットーがドアを閉めました。


 GMはたいまつのアイディアが優れていると思ったため、無判定でこの行為を認めました。
 からくも逃げ出したものの途方に暮れる3人組を見て、シェンナが意見を出します。


「おばあさんは悪い人じゃなさそうだし、2−3日で帰ってくるって言ってるんだから様子を見てみない?」

 バートをはじめ、全員がこの意見に同意しました。


 2日後に様子を見に行くと、リッキーは2日前の半分くらいにまで縮んでいました。

 3日後、様子を見に行こうとする宿の3人のところに、先におばあさんがやってきました。

「迷惑かけたね。シェンナとバートの家はどこだい?」

 おばあさんは腕にすっかり小さくなったリッキーを乗せ、布のかかったかごを持っています。

 シェンナとバートの家につくと、おばあさんがかごの布をとりました。

「秘密にしてくれてありがとうね」

 かごのなかはくるみのケーキでした!


 シェンナとバートは両親も呼んできて、みんなで美味しくケーキをいただきました。

 リッキーもくるみのおすそわけをいただきましたよ!


 これにてシナリオ終了!

 実プレイ時間は1時間くらいでした。


 2人でやると行動と結果の回転が早く、すごく遊んだ感があります。

 15分で作ったシナリオで間が持つのかと思いましたが、十分でした。


 キャラクターの職業が少ないのも、パーティが組みやすく、少人数で遊ぶのに向いているのではないかと思います。

 初級の職業はファイター(戦士)、シーフ(盗賊)、ウィザード(魔法使い)の3つです。


 戦闘ルールは今回使いませんでした。なので、初級ルールブックの内容すべてを吟味できたわけではありません。

 また、初めてやる人はどこまでアドリブで対応できるかもよくわかりません。

 しかし、やはり「これは初めて会話型RPGをやる人や時間がないけど遊びたい人に向いている」と、思いました。


 会話型RPGをやったことのない人に説明すると「難しそう」と言われることがあります。

 ルールブックを見せると「そんなに厚いの読まないといけないの?」と言われることがあります。

「丸暗記しなくてもいいよ」と伝えてもやっぱり「大変そう」のイメージはすぐに消えないようです。


 会話型RPGに慣れた人にとっては複雑なルールを理解したうえでキャラクターを作り込んだり、詳細な世界設定を読みこんだりするのも楽しみのうち であることがあります。


 しかし、遊んだことのない人にとっては「なにから手をつけていいのかさっぱり」と戸惑うことがあるようなのです。

 普段から会話型RPGを遊んでいる人でも、「準備がめんどうだなぁ」と感じることは度々あります。


 『冒険王道』では世界設定の説明は最小限で、読みこみの必要はありません。

 「ファンタジー」「昔のヨーロッパ風」であることがわかれば十分です。

 プレイヤーキャラクターのデータも少なくて、魔法使いの魔法呪文は2種類(攻撃魔法と「見えない力」)だけです。

 また、武器のデータがカードにまとめられていているのも親切です。


 一般的なルールブックに書いてある事柄を大胆に省くことで、「初めて遊ぶ人でもすぐに読みこめる」、「ルールがかんたんに説明できる」、「思い 立ったらすぐ遊べる」といったことができるようになっています。


 少人数で濃密な会話を楽しむにはこれくらい軽いシステムが良いのではないかと思いました。


 プレイヤーの段階別学習を積極的に取り入れているところも『冒険王道』の特徴です。

 『冒険王道』のルールブックは初級・中級・上級にわかれています。

 初級のプレイヤーは、『冒険王道』を5回以上遊び、かつ、GMをやると中級になることができます。


 先ほど、「自分の決定・行動に対して結果・反応が得られる」というのがゲームの基本的な楽しみではないかと書きましたが、これをキャラクターだけ でなくプレイヤーのレベルでも行えるシステムになっています。

 つまり、遊ぶという行動の積み重ねの結果が、「プレイヤーの昇級」として評価されるのです。


 昇級の条件を満たした初級プレイヤーは、中級の段階へ進むことが出来ます。

 中級のルールブックでは、職業(神官、格闘家、狩人など)の追加、新しい武器、買い物ルール、キャラクターのレベルアップなど、新しいルールが導入されます。旅に関するルールも使えるようになります。

 キャラクターが新しいルールブックで新たな選択肢と冒険の機会を与えられるのと同時に、中級になったプレイヤーはさらなる学習と成長の機会を得ます。


 賞状はただの紙なのにもらうとうれしいです。それは賞状が上達の象徴だからです。

 中級のルールブックもやっぱりもらったらうれしいのではないでしょうか。


 会話型RPGは勝敗の基準が曖昧なため、上達という言葉を客観的に定義しにくいゲームです。

 何が会話型RPGにおける上達か?という話をしたら、100人100通りの答えが返ってくるでしょう。


 そこで、上達が何をさすかは置いておいて、単純にキャラクターのレベルアップに応じた段階別学習という視点がいくつかのゲームで行われてきました。中級レベル〜上級レベル向けのルールを別冊で販売するゲームもあります。


 『冒険王道』の特徴は、プレイヤーの初級から中級への昇級の条件を明確化したことです。「だいたいこれくらいになったら次に進んでもいいよ」あるいは「飽きてきたらお次へどうぞ〜」ではなく、「これをやったら次の段階に進めます!」とはっきりしているのです。

 これによりプレイヤーは昇級を明確な目標として定めやすくなります。


 私は、今度は、プレイヤーになって遊んだり、会話型RPGをまったく知らない友達と遊んでみたりしたいと思います。


「もし良かったら『冒険王道』ってゲームで遊ばない?」


謝辞 本稿の作成にあたり、高橋志行さんと仲知喜さんから多くのご教示をいただきました。末尾になりましたが御礼申し上げます。ありがとうございます。
posted by AGS at 03:26| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月24日

ゲームブックとの邂逅

 アナログゲーム、特にアナログゲームと(広義の)物語を語るうえで、ゲームブックについて外すことはできません。
 ゲームブックとは一見小説(等)のような体裁を取りながら、ゲームのようにストーリーが分岐し、提示されるパラグラフを選択していくことで展開が変わるという独特の形式を有した物語ジャンルのことを指します。戦闘やより精密な物語を再現するためのルール・システムが搭載されたり、あるいは「本」という体裁ならではの楽しい仕掛けが施されている作品も多く、世界観に合わせてバラエティ豊かなラインナップが存在しています。
 日本においては、1984年のスティーブ・ジャクソン&イアン・リビングストン『火吹山の魔法使い』(浅羽莢子訳、社会思想社現代教養文庫)が火付け役(同作品のシリーズだけで200万部を超えるベストセラー)となり、大ブームが巻き起こりました。
 近年、ゲームブックの復権が着々と進行しているようですが、そんな折、ゲームブックを愛する小珠泰之介さまが、「ゲームブックとの邂逅」という題で優れたレポートを寄稿して下さいました。
 ゲームブックをご存知の方もそうでない方も、お読みになっていただけましたら幸いです。(岡和田晃)


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ゲームブックとの邂逅
 小珠泰之介

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 その晩、私は帰宅の途中で書店に寄り、とある一冊の本を買い求めました。それから、百円ショップにも行ってトランプを一つ購入しました。

 家に着いて、さっそく娘に「はい、おみやげ」と本とトランプを手渡します。私は平静を装いつつ、次の瞬間に起こるであろう歓喜の声を待ち受けていました。
それがこの本です。


『バニラのお菓子配達便!〜スイーツデリバリー〜』
藤浪智之 著 佐々木亮 イラスト
バニラのお菓子配達便! ‾スイーツデリバリー‾ (角川つばさ文庫) [新書] / 藤浪 智之 (著); 佐々木 亮 (イラスト); 富士見書房 (刊)

 実はこれ、ただの物語ではありません。この記事をお読みになる方はきっとご存知でしょうが、これはゲームブックなのです。

 “つばさゲームブック”と銘打たれたこの本は、子ども達を対象にした「角川つばさ文庫」の一冊として、この冬に発売されました。

 この本のことを知った私は、発売日を心待ちにしていたのでした。

 私には小学二年生の娘がいます。この子が最近、読書に興味を持ちはじめてきたので、何か夢中になれるような本が無いだろうかと考えていました。そこに、この本が出るタイミングがぴったりだったのです。

 他にも、この本への個人的なある想いを抱いているのですが…それは後述しましょう。

「わあ、なにこれ!」

 娘は予想どおり、カラフルで可愛らしい表紙に、いっぺんで釘付けになりました。それから、ぱらぱらめくって「ええ!?どうなってるのこれ?」と言ってきたので、私はゲームブックの遊び方を話すことにしました。

「1から順番に番号が書いてあるでしょ、それから何番に進むか、自分で次の行動を決められるんだよ…」

 とはいえ、私の話はそっちのけで、自分で勝手に本を読み始めてさくさく設定を理解し、夢中になっていく娘なのでした。

 ケーキ屋さん、妖精、フォーチュンカード、運命判定、謎解き…すべての要素が小学生の子どもをとりこにするだろう事は予想していました。なぜなら、私自身がそうだったからです。


 私が子どもの頃はゲームブック全盛期でした。社会思想社の『火吹山の魔法使い』『バルサスの要塞』を始めとした「ファイティング・ファンタジー」シリーズや、東京創元社の「ソーサリー」シリーズはその代名詞的存在です。

 他にも、ごく平凡な読者だった私が思いつくだけでも、本格的にギリシア神話の世界を彷徨する『アルテウスの復讐』を始めとする『ギリシア神話ゲームブック』三部作、ユーモラスな語り口のJ・H・ブレナンの「ドラゴン・ファンタジー」シリーズ(現・「グレイルクエスト」)、ゲームブックは一人で黙々とやるものだという既成概念を破った二人対戦用『王子の対決』、現代日本を舞台にした名作『送り雛は瑠璃色の』、まさかの怪物が主人公の『モンスター誕生』、アメコミ的ヒーローが主人公のパルプSF風『サイボーグを倒せ』、TRPG『ローズ・トゥ・ロード』の門倉直人氏の『失われた体』など「魔法使いディノン」・シリーズ等々…。まだまだ書き足りないくらいですが、いずれ劣らぬ傑作群です。それから、小説(『グイン・サーガ』『デュマレスト・サーガ』)、映画(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、TVゲーム(『ゼビウス』『ドルアーガの塔』『ザナドゥ』)、アニメ(『ルパン三世』『天空の城ラピュタ』)、変わり種としては音楽(『展覧会の絵』)をゲームブック化したものまで多種多様にありました。

 これらが文庫本や新書版(ここ重要)で、しかも小学生でも手が出る値段(たしか400円〜千円未満、消費税は導入前)で買えたのでした。

 私的な思い出話をお許し下さい。私が初めて買ったゲームブックは、忘れもしない、赤い背表紙に白抜き文字が印象的な東京創元社の『吸血鬼の洞窟』(デイヴ・モーリス著)でした。薄い本でしたが、吸血鬼退治というシンプルな物語に、様々な罠や敵、謎解きが詰め込まれており、文字どおり本がぼろぼろになるまで読み倒したものです。しかし何より魅力的だったのは、冒頭で描かれていた夕闇が迫った深い森の中、冒険者(=あなた)が恐るべき吸血鬼の館の入口に佇み、いざ死闘へと向かわんとする美しくも緊張感に満ち満ちた情景なのでした。

 私は、このゲームブックという手のひらサイズの異世界にたちまち没入しました。選択肢といってもわずか2つか3つしかないのですが、それでもあたかも本の世界で自分が動き回っている気にさせてくれる媒体はゲームブックしかありませんでした。当時はファミコンが発売されたばかりの頃でしたが、自分の家ではなかなか買ってもらえず、もっぱら友人の家で遊ばせてもらうしかなかったものです。ドラクエ?まだ世の中にはありませんでしたよ。


 私がそうだったように、娘は放っておくと、日がな一日本に没頭していました。

「ねえ、これ、すっごくおもしろいよ!」

「お父さんもやってみなよ。この問題わかると思う?」

「もう二回目、読んでいるよ」

 うんうん頷きながら、私は心の中で叫んでいました。

 ――わかる、わかる、そのワクワクしている感じ。そうだった、そういう面白さ、興奮がゲームブックにはあるんだ――


 そう、いまだに不思議なのです。どうして、本の頁をめくって、行きつ戻りつ、サイコロをころころ転がし、一喜一憂し、アドベンチャーシートにヒントを書き込み、消し、一人でうんうん唸って謎解きを考えるのが、あんなに面白く、飽きずに延々と出来たのか。

 今でこそ、コンピュータゲームでRPGやノベルゲームがあって、遥かにプレイヤーの自由度があって、設定も凝っている完成された世界での冒険が約束されたものなど山ほどあるにも関わらず――私にとってあの頃のゲームブックほどの衝撃と快楽を貪れるものが無いような気がしているのは――何故なのでしょうか。単なるノスタルジーなのでしょうか。

 いたって感傷的に書いてしまえば、それはハイパーリンクでテキスト同士を直結したり、コンピュータが面倒な処理を即座にこなしたり、一分の隙もなく破綻の無い世界を構築することで、逆説的に削ぎ落としてしまった不自由さこそがゲームブックの魅力なのではないか、ということです。

 物語の奇想天外さ、ルールやシステムの独創性はもとより、ゲームブックにおいては、まず頁をめくる行為、少ない選択肢から行動を選びとり、次のパラグラフを探す行為、サイコロを転がす行為、これらがその快楽の大部分を担っているのではないでしょうか。変な話ですが、その過程でちらりと覗かれる他のパラグラフや挿絵にもそれなりの役割が感じられるように思うのです。

 ノベルゲームはゲームブックが洗練されて進化したものじゃないのかって?そうかもしれません。しかし、単純にゲームブックをノベルゲームに移植したとしても、これらの魅力も再現されるかというと疑問があります。

 ちなみに私はゲームブックを遊ぶことは、直感的にはむしろアクションゲームを遊ぶ感じに近いのではないかと感じています。極論だとは思いますが、例えば、戦闘の時や運だめしの時に、念じながら力んでサイコロを振るでしょう?これ、TVゲームでコントローラーボタンを強打したり十六連射に挑戦したりする熱っぽさに近いと思いませんか。プレイヤーの振る舞いとしては意外と似ている気がします。

 とはいえ、ゲームブック最大の特徴が分岐点での選択にあるので、それが全部では当然ない訳ですが、上記の分岐点での選択・ページをめくる・次パラグラフを見つける・結果を読む、という一連のサイクル(すなわち他の媒体にはない行為)の間にえもいわれぬ期待感と興奮が繰り返されます。この焦らされる時間に快楽が潜んでいるという事は明記しておこうと思います。


 もう一つ、遊んだ事がある人ならば分かるでしょうが、ゲームブック読者というのはあらゆる選択肢の結果を知りたいと思うものです。何度も冒険を繰り返して、行った事の無い選択を確認することがあるでしょう。たとえそれがバッドエンドだとしても。悪手を選んだ時に訪れる酷い結末――これをどうしても読まずにはいられなくなるのです。他のゲームでそういう欲求をかき立てるものがあるでしょうか。私にはちょっと思いつきません。

 例えば、英国のスティーブ・ジャクソンの名作『地獄の館』で、私は自分がどれほど非業の死を遂げるのか、恐怖を感じながらも、それらを確かめずにはいられませんでした。それが悪夢にうなされるほどの拷問だったとしても、無類に面白かったのです。(ときにはランダムにページをめくって、そういう場面をピックアップして読んだりもしました。悪趣味と言われればそれまでですね。)


 横道に逸れすぎました。話を戻しましょう。


 この『バニラのお菓子配達便!』は主人公の少女「ばにら」が小学五年生です。小学二年生の娘がちゃんと読めるのか、一抹の不安もありました。難しければ読み聞かせをしながら遊ぼうかとも考えていましたが、それは杞憂に過ぎませんでした。こちらが、運命判定の意味が分かるのかとか、物語の意味が分かるのかとか、いらぬ心配をしていても、子どもは自分なりの遊びを組み立てていくものです。

「わからない事があったら教えてあげるよ」

「だーいじょーぶ!」

「難しい?」

「むずかしくないよ、だって、ここにね、ヒントが書いてあるから、これを読めば分かるよ。お父さん、これ見てよ。このなぞ、わかるかな〜?」

 ネタが割れない程度に触れると、第二話の鏡の場所です。この謎解きが一番のお気に入りだったようです。家の中のある場所まで連れて行って、謎を明かしてくれました。それはそれは嬉しそうに。

 そう、このゲームブックは作者の藤浪智之先生が仰っていたように、ゲームブックの面白さの要素がたくさん盛り込まれているのです。


 娘がひととおり遊び終えた様子なので、私もこの本を借りて遊び始めました。子ども向け?…いえいえどうして大人も十分楽しめました。三話構成のオムニバスで、それぞれ違った種類のゲーム性を軸に物語が展開されます。

 第一話は、初心者にもゲームの肝を逃さないようなガイダンスがあって、とても丁寧に作られています。脇役キャラクターの紹介もさりげなくされています。帆振朴斗さんが私は好きですね。

 第二話は、娘も一番好きなエピソードと言っていましたが、冒険と謎解きとが絶妙なバランスの臨場感あふれた怪奇ミステリーです。館とゲームブックというのは相性が良いのでしょう。あっと驚く秘密が明らかになります。

 第三話は、個人的にツボにはまる大好きな作りでして、同じマップでも条件が変わると人々の対応が違ってくるという、一種の隠しパラグラフのシステムになっています。中でも美容院での少しビターな場面が、凄く印象に残りました。

 どのお話にも共通していたのが、人との出会いと、その出会いを通じて解決策がおのずと見いだされていく、という点でした。決して押し付けがましくない手がかりによって、最終的には自分の決断で選択する、という王道の物語。

 個性のはっきりした姉妹と多彩な脇役キャラクター達、そして彼らを取り巻く商店街や公園といった生活感あふれる背景。最後の最後で、この背景がぐっと前面ににじみ出てきたときには、私もほろりとしてしまいました。


 この感触を、私はよく覚えています。甘すぎず、辛すぎず、ほんわかと包み込んでくれる、このあたたかい優しさを。


 実は、私が藤浪先生のゲームブックで遊ぶのは初めてではありません。初めて遊んだのは、もう二十年も前の事でしょうか。

(あと少しだけ思い出話にお付き合い下さい。ちなみに、私の辿った経歴はただの一ファンとしてはごく普通のものだと思います。さらなるマニアはたくさんいました。あくまで地方の片隅にこういう平凡な読者がいたという参考にして頂ければ幸いです。)

 その昔、今はなき社会思想社から「ウォーロック」というゲームブック専門の月刊誌が出ていました。元々は英国の雑誌の日本版という位置付けで、ゲームブックの翻訳記事と日本独自記事が同居している雑誌でした。創刊が1986年12月。私がリアルタイムで購入し始めたのは第七号からです。初期は毎月17日発売(されないことが多かった)で、値段は480円。もちろん小学生でも買えました。

 とにかく、雑誌棚でのインパクトが物凄かったのです。英国版の表紙をそのまま持ってきてるものですから、日本には無いセンスの異様なモンスターや魔法使いがビビッドな色彩でA4版の大きさでどーんと置かれてあるわけです。小学生の私には、それがえらくカッコイイものに思えたんですね。購入するのに躊躇はありませんでした。大体、「ファイティング・ファンタジー」や「ソーサリー」シリーズの表紙や挿絵で慣れていたし、ああいうのが本物だと刷り込まれた部分もあります。(その後、表紙画は米田仁士さんに変わりましたが、こちらも色んな意味で凄かった。)

 私が初めて定期購読した雑誌がこれでした。新潟県の一地方都市に住む子どもにとっては、「ウォーロック」が遠くの世界に繋がる魔法の扉に他なりませんでした。

 ゲームブックの情報は載っているし、高水準のオリジナル・ゲームブックも遊べるし、全国のファン達の投稿も読めるしで、とにかく熱中しました。

 さらにこの雑誌では、『T&T』(『トンネルズ&トロールズ』)というTRPG(会話型RPG)をサポートしていたので、私は友人たちと休日のたびに集まってはセッションを繰り返すようになりました。友人同士でゲームブックを貸し借りしたり、自作のゲームブックを作って途中挫折したり(なぜか400項目にこだわるせい)、友人宅でライブRPGもどきのイベント(ま、肝試しに毛が生えたものですが)を企画したり、セッションをテープ録音してリプレイをワープロ打ちで作成したり、ひと通りの事(?)は「ウォーロック」誌を経由して、この頃にやっていました。

 ちなみに、これは私がイラストを投稿して掲載された最初で最後の雑誌でもありました。良い思い出です。


 そして、この雑誌に大きく関わっていた人々の中に、藤浪先生がいらっしゃったのです。先生は「わきあかつぐみ」という名前で活躍されていました。ライターとして、また、オリジナル・ゲームブック「スプリンターを守れ」「ブラスターケリー」「銀河宅急便」の作者(あの魅力的なイラストも描いていた)として、あるいは、誌上ロールプレイメール「二つの川の物語」のマスターとして。

 余談ですが、今回この文章を書くにあたって、自宅の「ウォーロック」誌を読み返していたら、「スプリンターを守れ」のページに、なんと自分でメモしていた手書きのフローチャートが挟まれていてびっくり。すっかり忘れていました。

 そういう訳で、私は藤浪智之先生のゲームブックが大好きで、ときおり掲載されると大喜びで遊んでいたのでした。どの作品もほのぼのしたユーモアがあり、ほのかに醸し出される郷愁と、読者に変におもねらない凛とした気品が感じられました。


 さて、その後ゲームブックを取り巻く状況は色々あって、残念ながらかつての盛り上がりは無くなりました。私も次第に疎遠になって、はや十数年経ってしまいました。

 21世紀に入って幾つか復刊もしていますし、新刊も発売されています。今でも大きな書店や専門店にはコーナーがあるのでしょうが、知らない人が偶然に出会えるほどの状況ではないと思います。


 そして「ウォーロック」誌も1992年3月に63号をもって休刊となっています。

 ゲームブックが廃れた背景として、TRPGやTVゲームの隆盛に伴って売れなくなったのではないかという人をたまに見かけます。私はこれは違うのではないか、と思っています。そもそもがTRPGのソロ・アドベンチャーとして発明されたとされるゲームブックですから、TRPGが広まったからその役割を終えた、というのは少し変な話です。

 またTVゲームとゲームブックは対立するものではないとも考えます。現に、私の娘もDSで遊ぶかたわら、漫画も読むし、アニメも見るし、読書もするし、同じようにゲームブックも楽しんでいました。どれが一番という話ではないと感じています。


 こんな風に、ゲームブックに対する一口では言えない気持ちが、いまだに私の心のどこかで燻ぶっているのは確かです。おそらくは、あの頃にゲームブックに夢中になった多くの人達も同じ気持ちを抱いているのではないでしょうか。探せば、あちこちで懐古している方々を見かけるからです。

 だから、この『バニラのお菓子配達便!』は、私にとって藤浪先生との再会でもあったのです。と同時に、ゲームブックとの再会でもあったのです。冒頭に述べた、個人的なある想いというのはこういう訳です。


 あの藤浪先生が新作ゲームブックを、それも児童向けの文庫で出版される!というのは、Twitter上のご本人のツイートで知りました。これまでゲームブックというものを全く知らなかった子供たちが、初めて出会う可能性がかなりあると思いました。

 そこで私も『バニラのお菓子配達便!』を娘が喜んで遊んでいた事を何気なくツイートしました。微力ながらも色々な人に知ってもらいたかったのです。すると、なんと!藤浪先生から直々にお返事を頂いたのです。

 私はすぐに、自分がかつてウォーロック誌上で先生のゲームブックを遊んでいた事をつぶやきました。長い時間を超えて、自分と自分の娘が、同じ作者の作品を楽しんだ事、この不思議な気持ちをお伝えしました。

 嬉しいことに先生も喜んで下さいました。そして娘にもこう伝えて欲しい、と仰って下さいました。

「いっしょにページをめくってぼうけんしてくれたこと、ありがとう、です」

 これを早速、娘に伝えました。「お父さんがね、子どもの頃にね…」という思い出話は上の空で聞いていた娘でしたが、メッセージを直接見せると、不思議そうに、でも嬉しそうに読んでいました。

 この時、なにか一本の線が、過去から未来へようやく繋がって伸びていくような、そんな気がしました。無限の選択肢が、とは言いません。わずかな――それこそ2つか3つくらいの選択肢を進んでいった結果、私は今この場所に辿りついているのだと思います。
 あんなに大好きだったゲームブックからしばらく遠く離れてしまい、ぼやぼやしていた時間を、私は果たして取り戻せるでしょうか?

 今からでも?


 遅くはない、鉛筆とサイコロ、それから少しばかりの勇気と運があれば。

 ……さて、これから君はどうする?


・この場を借りて、藤浪先生に「ぜひ続編をお願いします!」とお願いするなら(へ)、


・他のゲームブックにも手を出して、冒険を楽しみたいなら(へ)、


・いっそのこと、傑作ゲームブックを作ってしまうか!(400へ)


・別に何もせずに日々の生活に戻るなら(14へ)、


それぞれ進みたまえ。

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小珠泰之介(こだま・やすのすけ)
 1975年新潟県生まれ。小学生の頃にゲームブックに出会い、熱中する。「ウォーロック」誌を購読し、イラスト投稿が二回掲載されたことがある(ネコ山ヒゲ夫名義で44号と48号)。中学時代の休日はもっぱら友人と『T&T』をして遊んでいた(時々ゲームマスター)。その後、ゲーム関係から遠ざかり漫画家を志した。10年以上前に、今はなき「コミックFantasy」誌(偕成社)にてファンタジーコミック大賞佳作入選。現在は会社員。
 黒糖そば名義のブログ「芝フ調」で、岡和田晃氏の『ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド』の感想を書いた事から、氏と交流が始まり、ゲームブックやTRPGの熱を再燃しつつある。

ブログ「芝フ調」http://cocteausoba.blog.so-net.ne.jp/
Twitter 黒糖そばhttp://www.twitter.com/cocteausoba

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
ゲームブックとの邂逅 by 小珠泰之介(Yasunosuke Kodama) is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本 License.

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 本文で名前が挙げられたゲームブックのうち、多くは装いを新たにしつつも、現在でも入手が可能となっています。煩雑になるのでリンクは張りませんが、簡単にご紹介させていただきます。
 「ソーサリー」シリーズ4部作、「ドラゴン・ファンタジー」シリーズ(『暗黒城の魔術師』、『ドラゴンの洞窟』、『魔界の地下迷宮』まで刊行済み)、『送り雛は瑠璃色の』、『展覧会の絵』、「ドルアーガの塔」シリーズ(『悪魔に魅せられし者』、『魔宮の勇者たち』まで刊行済み)は創土社からそれぞれ新訳と再編集等を加えた形で出版されています。
 『火吹山の魔法使い』と『バルサスの要塞』は扶桑社文庫から新装版が刊行されています(後述の「ゲームブック・ラボR」でも訳は異なりますがアクセス可能)。
 また『吸血鬼の洞窟』は入手しづらくなっていますが、共通した世界観を用いた会話型RPG『Dragon Warriors』が英語圏では復活を遂げています(Magnum Opus Press、Mangoose Publishing)。
 『地獄の館』はホビージャパンHJ文庫Gより翻案を加えた『ハウス・オブ・ヘル』として発売されています(後述の「ゲームブック・ラボR」でも翻案のない版がアクセス可能)。
 会話型RPG『トンネルズ&トロールズ』は第7版が新紀元社から翻訳・出版され、ソロ・アドベンチャー『傭兵剣士』がリプレイとセットで復活しています。
 また、「ソーサリー」シリーズの『魔法使いの丘』、『魔の罠の都』(『城塞都市カーレ』)、『七匹の大蛇』は、「d20ファイティング・ファンタジー」として、D&D第3版/第3.5版等で遊ぶことが可能なアドベンチャー・シナリオにもなっています。
 なお「ファイティング・ファンタジー」シリーズは携帯電話でのアプリケーション等、デジタル・メディア化も進められてきました。日本でもデジタル・メディアラボが展開を行ない、その試みはサイバーフロントの「ゲームブック・ラボR」というプロジェクトに引き継がれているようです(『モンスター誕生』は『滅びを呼ぶ者、汝は怪物』と邦訳タイトルが変わり、本国の新版を底本としつつ、こちらでアクセスすることが可能です)。


 続いて本文で紹介された『バニラのお菓子配達便!〜スイーツデリバリー〜』のほか――ゲームブックの「いま」を知りたい方のために――2010年に発売されたゲームブックを5作紹介させていただきます。


ハービー・ブレナン著、高橋聡/フーゴ・ハル翻訳『ドラキュラ城の血闘』(創土社)
 アーサー王伝説を下敷きにしたドラゴン・ファンタジー(現グレイル・クエスト)シリーズで知られるハービー・ブレナンによる伝説のゴシック・ホラー・ゲームブックが装いも新たに復活。
 ドラキュラ俳優ベラ・ルゴシ風の表紙が素敵ですが、俗に「ブレナン節」と呼ばれるユーモアたっぷりの(どことなくモンティ・パイソンにも通じる)ブラックユーモアと、「吸血鬼もの」への愛が存分に堪能できる贅沢な作品です。
 面白いのは、何度か吸血鬼に咬まれると……。
ドラキュラ城の血闘 (ADVENTURE GAME NOVEL) [単行本] / ハービー・ブレナン (著); 高橋 聡, フーゴ・ハル (翻訳); 創土社 (刊)


フーゴ・ハル著、河嶋陶一朗/冒険企画局監修『迷宮キングダム ブックゲーム モービィ・リップからの脱出』(新紀元社)
 ゲームブックの限界に挑戦した傑作『魔城の迷宮』の作者であり、推理ゲームの最高峰『シャーロック・ホームズ10の怪事件』にも関わった、ゲーム職人フーゴ・ハル氏の書き下ろし新作。
 会話型RPG『迷宮キングダム』の世界観に基づいたゲームブックならぬ「ブックゲーム」。フーゴ・ハル氏のこだわりが随所に見られる、ゲームブックを知らない人たち、あるいはすれっからしの方にこそ触れてほしい快作です。表紙を見たとき、すでに冒険は始まっているのだ!
迷宮キングダム ブックゲーム モービィ・リップからの脱出 (Role&Roll Books) [新書] / フーゴ・ハル (著); 河嶋陶一朗, 冒険企画局 (監修); 新紀元社 (刊)


オフィス・イディオム編『豊臣秀吉 名将の決断』(学習研究社)
 「高松城を攻めているとき、「本能寺の変」が起こった。さあ、どうする?」
 豊臣秀吉の生涯をシミュレートするという画期的なコンセプトのゲームブック。選択によってはあっと驚く結末が待ち受けています。
 「秀吉を知る」と題されたコラムも充実しており、日本史学習や戦国時代の武将について知るための入門書としても楽しめます。同じシリーズとして、『織田信長 名将の決断』も発売されています。
豊臣秀吉 (名将の決断) [単行本(ソフトカバー)] / オフィス・イディオム (編集); 学習研究社 (刊)


清水龍之介著/杉本=ヨハネ監修『魔の王の少年』(FT書房)
 アナログゲーム情報誌「Role&Roll」でも何度か紹介された、創作ゲームサークル「FT書房」が発刊した大作ゲームブック。文庫本を模した製本、600を超えるパラグラフ、別冊として(「ソーサリー」へのオマージュともとれる)悪魔召喚の書の活用など、凝ったギミックが見所の作品です。
 「FT書房」はゴシック・ファンタジーRPG(ゲームブック)の名作群への敬意を忘れない創作集団ですが、『トンネルズ&トロールズ』のイギリス版ソロ・アドベンチャーを翻訳権を取得して独自に翻訳・出版するなど、従来のインディーズ・ゲーム出版の枠に留まらない活躍を見せています。

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・FT書房/『魔の王の少年』販売ページ
http://tandt.market.cx/shopping/cart/item_241.html


ジェームズ・ワイアット/ジュレミイ・クロフォード/マイク・ミアルス/ビル・スラヴィクシェク/ロドニ−・トンプソン著、桂令夫/岡田伸/北島靖巳/楯野恒雪/塚田与志也/柳田真坂樹訳、『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 スターター・セット』(ホビージャパン)
 世界最初のRPGにして、世界最大のRPGでもある『D&D』。その最新版入門セット。通称「(新)赤箱」。
 小説『ドラゴンランス』等のアートワークでも有名なラリー・エルモアの懐かしい表紙が採用されていますが、中身は最新版。
 この「赤箱」内に入っている「プレイヤーの書」はゲームブック仕立てのソロ・アドベンチャーであり、プレイしながら自然にD&Dの遊び方を学ぶことができます。「プレイヤーの書」に接続して遊ぶことのできるソロ・アドベンチャー「幽霊塔の冒険」もD&D日本語版公式サイトで無料公開されており、新時代における会話型RPGとゲームブックの架け橋ともなりうる作品だと言えるでしょう。(岡和田晃)

ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版スターター・セット [大型本] / ジェームズ ワイアット, ジュレミイ クロフォード, マイク ミアルス, ビル スラヴィクシェク, ロドニー トンプソン (著); 桂 令夫, 岡田 伸, 北島 靖巳, 楯野 恒雪, 塚田 与志也, 柳田 真坂樹 (翻訳); ホビージャパン (刊)


・『D&D第4版 スターター・セット』プレビュー(「プレイヤーの書」の前半が無料公開されています)
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/4th_starter/index.html

・ソロ・アドベンチャー「幽霊塔の冒険」(PDFファイル)
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/support/files/4e_ghost_tower_of_the_witchlight_fens_jp.pdf


・たっぷり冒険を楽しんだら、へ戻って別の選択肢をあたってみてもいいし、さらなる冒険の旅に乗り出すことにしてもいい。進むべき方向を決めるのは君だ!
posted by AGS at 09:07| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月29日

DBA(De Bellis Antiquitatis):上古の戦場にようこそ!

【レポート】DBA(De Bellis Antiquitatis):上古の戦場にようこそ!
 蔵原大
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戦争論〈上〉 (中公文庫)
 平時の演習をして十分にその効果あらしめるためには、演習中諸障害の一部でも現出させ、指揮官をしてその判断、その用意の周到さ、あるいはその決断力をすら訓練させるようにすべきである。このような演習ならば、その価値たるや、実戦の経験のない者が信ずる以上に莫大なものがあるであろう。初めて経験した場合は、周章狼狽するにちがいない戦争の諸現象を、戦争前に経験しておくことは、その地位階級にかかわりなく軍人にとって測り知れないほど重要なことである。

  ―クラウゼヴィッツ著、清水多吉訳『戦争論(上)』(2001), pp.140-1―



 今回ご報告するのは、DBAという紛争シミュレーション(ウォーゲーム)のプレイ経過です。このゲームのプレイヤーは古代世界の国王/将軍となり、各文明(シュメールやローマ、アジアの諸王国など)の軍隊を率いて奮戦します。DBAにおけるプレイ手順は、基本的には先攻プレイヤーが「移動→戦闘」を行い、それから後攻プレイヤーが同様の行動をするという、将棋に近いオーソドックスなシステムです。

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 以前に多摩のゲーム団体「GGG」(Good Gamers' Group)でプレイした際、このゲームの体験レポートを書きました(2007年9月定例会レポート. http://homepage2.nifty.com/ggg2/50_houkoku/houkoku-2007/2007-09-09-report.htm

 今回はその続編に当たります。

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【会戦(○エジプト vs ●ヌビア)】

 今回の戦いでは、報告者(Dai Kurahara)がエジプト(Eygpt)軍を、イタリア人のジョバンニ・アラーリ氏(Mr.Giovanni Allari: http://westtokyowargamers.blogspot.com/ )がヌビア(Nubia)軍を担当します(2007年にゲーム団体「GGG」( http://homepage2.nifty.com/ggg2/ )でプレイしました)。

 古代エジプトの王朝は、アフリカ大陸を流れるナイル河流域を拠点とし、数千年に渡って古代世界の覇者として君臨していました。そしてエジプトはその力が強大になると、現在のスーダンに相当するヌビアを影響下に置き、その産品である金や木材で豊かになりました。しかし逆にエジプトの力が衰えると、ヌビアの勢力が北上してエジプトを支配する時もありました。

2007_1.jpg

 画像の、右下の方がエジプト軍、左上に整列するユニットの列がヌビア軍です。

 盤の右端にある青い帯は、ナイル河…ではなくて、戦場の境界線です。DBAでは戦場の大きさは明確に定められており(最大で90cm四方)、プレイヤーはそのなかで策略を駆使して部隊を操ります。

 今回対決する各軍(DBAにおける一つの軍隊は12ユニット構成)の編成は、非常に対照的です。エジプト軍は歩兵(8ユニット)+戦車兵(4ユニット)の混成部隊であるのに対して、ヌビア軍は(12ユニット全て)歩兵のみで編成されています。今回のように丘陵が多い地形では、小回りのきく歩兵の方が、騎兵や戦車よりも早く動くことができます。DBAにおける(そしてもちろん実際の)騎兵や戦車は「悪路」(off-road)すなわち丘陵や沼地などの地形では移動速度や戦闘力が低下するのです。「歩兵は陸戦の女王」と言われるのは、その辺の事情と関係しています。

 両軍がユニットの配置を終えたら、いよいよ戦闘開始です。この紛争シミュレーションにおけるユニットの配置の方法は、相争う陣営がお互いに6面体ダイス1個を振り、低い目を出した陣営(防御側)が先に配置し、高い目を出した陣営(攻撃側)は敵の配置を見ながら自軍を並べる、というものです。

 今回はヌビア軍が振った目が低かったので、ヌビア軍が先に配置し、エジプト軍はその配置を見て作戦を立てます。

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 一般的にはエジプト軍のような諸兵連合部隊は足の速い部隊を側面に置き、歩兵を中央に置いて、敵の側面を狙いながら前進する、という作戦をとりがちのようです。ところが今回は丘や沼などの地形があちこちに在るため、機動戦法は適切ではないかもしれません。そこでエジプト軍は主力を丘と森の間に並べ、さらに一部の戦車を派遣して敵の左翼を突く作戦を考えました。『孫子』「虚実篇第六」に曰く「それ兵の形は水に象る。水の形は高きを避けて低きに趨(おもむ)く。兵の形は実を避けて虚を撃つ」という訳です。

 対してヌビア軍はすべて歩兵なので、エジプト軍のように馬を使った部隊の機動を考慮する必要はありません。横一列陣形のまま敵に向かって前進します。

 両軍とも前進して敵を叩く意図があったので、戦いは戦場の中央で行われます。

 すでに説明したとおり、エジプト軍の作戦は中央で敵を拘束すると同時に、自軍の右翼の戦車で敵の側面を突く、というものでした。そしてエジプト軍の作戦はたしかにうまくいきました…途中までは。

 さてエジプト軍の戦車隊は、一隊は丘の上から、もう一隊は側面から、ヌビア軍の左翼を襲います。しかし攻撃はまったく功を奏しません。戦車はヌビア軍の歩兵の壁に阻まれて前進できなくなります。

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 じつはエジプト軍の戦車は「軽戦車」(Light Chariot)つまり強力な武装を備えていない戦車でした。しかも先ほど説明したように、戦車や騎兵は丘などの複雑な地形で戦闘する場合、戦闘力が減少してしまいます。エジプト軍右翼の戦車隊は、突撃して敵を捕捉するはずが、かえって自分にとって不利な地形で敵に戦闘を強いられてしまったのです。
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 さらに、ヌビア軍はエジプトの戦車が動けないのを見て取ると、自軍の予備兵力を左翼に動かし、戦車を逆包囲するように機動してきました。このままではエジプト軍の戦列は右翼から崩壊してしまいます。エジプト軍の勝ち目は中央で敵を突破できるかどうかにかかってきました。

 しかし両軍の中央における戦いはエジプト軍有利に展開しました。少なからぬ損害を出しながら、エジプト軍は敵の戦列を押していきます。ヌビア軍は左翼に兵力を回したせいで、中央を支えることができません。勝敗は明らかとなりました(DBAにおける勝利条件は、敵の4ユニットを撃破する/敵の将軍ユニットを破壊すること。ゲーム終了時点でエジプト軍は4個、ヌビア軍は2個のユニットを撃破した)。

 すでにヌビア軍の戦列は総崩れになっていますが、その真ん中にいたヌビアの将軍は最後まで後退せずに戦い続けます。しかしこの将軍もまた、ついにエジプト軍の戦車に蹂躙されるのでした。

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 DBAの戦車ユニットの大きさは横60mm、縦80mmです。一番小さい歩兵ユニットでさえ縦60mm、縦20mmですから、従来の紛争シミュレーションで使われた紙製ユニットよりもはるかに大きいことになります。画像は古代世界で使われた、馬で牽引された戦車をかたどったユニットを写したものです

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 DBAは古代世界のさまざまな軍隊、例えば今回のエジプト軍やヌビア軍だけでなくローマ軍団やギリシャ軍、さらに中世日本のサムライ軍なども扱っています。また派生版としてヨーロッパの近世やナポレオン戦争を扱ったミニチュアゲームもあり、そちらも海外では人気があるそうです。

 そうしたゲームは、日本では次のお店で取り扱われています。
○ サンセットゲームズ: http://www.sunsetgames.co.jp/ 
○ コマンドマガジンWEBサイト: http://commandmagazine.jp/

 ところで紛争シミュレーションって、世の中にとっては一体何の役に立つんでしょうか?

ウォーゲームを製作する歴史学の講義:フィリップ・セイビンの革新的試み
秦郁彦編『太平洋戦争のif[イフ]』(2010):歴史学者の秦郁彦と戸高一成、ウォーゲームにて激突す!

戦争と映画―知覚の兵站術
 大規模な戦闘の客観的真実性を把握するためには、眼=カメラ(ナポレオン、グリフィス)が将軍や監督などの個人的なものであってはならず、人間の眼と頭脳が、特定の時と場所において知覚するものよりも遥かに多くの事実と効果を記録分析し、ふたたび舞台装置の中に置き直すモニターのそれでなければならない。戦場の地政学的規模が新たに広がり、現代では予想行動が必要となり、真の意味での戦争の予想が要求されるようになった。要するに、動力革命(軍備、大量輸送)の結果として極端に肥大化した行動範囲は、軍事的な覗き見のまなざしによっては短時間のうちに視野に収めることなどできないとするヴィデオ型発想がすでに誕生しているのだ。またしても科学技術のベクトルのみが新たな合成物を用いながら、みずからが産み落とすこの傾向と戦う力を持つ。加速度的な移動(速度の活動とナポレオンは呼んだ)という補完代用物において臨場性の効果は失われ、全面的にシミュレートされたみせかけの像を作りだす必要が生じる。つまりはメッセージ全体の三次元的再構成のことだ。

  ―ポール・ヴィリリオ著、石井直志・千葉文夫訳『戦争と映画T―知覚の兵站術』(1988), p.124―


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【補足説明】

■ 紛争シミュレーション(Conflict Simulation)

 日本では「兵棋演習」とも「ウォーゲーム」ともいわれる紛争シミュレーションは、古くから「将棋」や「チェス」として親しまれ、今では各国の大学で歴史教育、社会研究の材料として使われています。今回のようなミニチュアゲームを体験された方々の中にはヘルムート・フォン・モルトケ、ハーバート・G・ウェルズ、アイザック・アシモフといった人々もいるのだそうです。

 細かいことは以下をご参照のほど。

○ "平成18 年度特色GP 採択プログラム ゲーミング・シミュレーション型授業の構築." 秋田大学. ( http://bonden.is.akita-u.ac.jp/ )

○ Conflict Simulation :War Studies :King's College London: ( http://www.kcl.ac.uk/schools/sspp/ws/consim.html )

○ 「20世紀のウォーゲーミング(図上演習の方法論)に関する歴史」戦略研究学会編『戦略研究』(第6号、2009)芙蓉書房 ( http://www.fuyoshobo.co.jp )

○ 「歴史上の紛争を表現するシミュレーション手法」戦略研究学会編『戦略研究』(第8号、2010)芙蓉書房 ( http://www.fuyoshobo.co.jp )

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■ DBA (De Bellis Antiquitatis)

 プラスティック製のフィギュアを使って古代〜中世の陸戦を再現するミニチュアゲームです。このゲームではプレイヤーは最大12個のユニットを駆使して戦います。ゲームの流れは原則として一方のプレイヤーがまず先に「移動−戦闘」を行い、もう一方が同じことをするという簡単なもので、1回のプレイ時間は通常1〜2時間です。

 DBAの紹介は以下のウェブページをご参照のほど。

○ "DBA Tips and Guides." ( http://www.fanaticus.org/DBA/guides/index.html )

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■ ジョバンニ・アラーリ氏(Mr.Giovanni Allari)

 ジョバンニ・アラーリ氏はDBAのベテランで、ご自分が製作した沢山のユニットを所有しています。今回のプレイに登場したものを含め、所有しているユニットの画像は「DBA Armies of the Allari Brothers」で公開されています。氏は「West Tokyo Wargamers」で新人ゲーマーを募集していますよ(多摩で活動中です)。

○ West Tokyo Wargamers. ( http://westtokyowargamers.blogspot.com/

○ "DBA Armies of the Allari Brothers." ( http://www.fanaticus.org/DBA/armiesofthefanatici/AllariBrothers/index.html )

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■ エジプト文明 (Egyptian Civilization)

 アフリカ大陸を流れるナイル河(River Nile)の下流域にあたるエジプトでは、すでに紀元前3000年頃(日本の縄文時代に相当)には農耕文化を基盤とする王国が形成されていました。

 今回使用した「エジプト軍」は、紀元前16世紀〜紀元前11世紀にかけてエジプトを統治した「新王国」(New Kingdom)の軍隊を模擬しています。エジプト新王国はヌビアやパレスチナなどエジプトの周辺に遠征を繰り返しましたが、やがて神官と軍人の台頭による内部抗争によって衰えます。新王国期は「ツタンカーメン」(Tutankhamen、BC.14世紀の人物)や「ラムセス2世」(Ramses II、BC.13世紀の人物)などの太陽王こと「ファラオ」(Pharaoh)が登場した時代でした。

 エジプト文明については、下記サイトで解説されています。

○ "Ancient Egypt." The British Museum. ( http://www.ancientegypt.co.uk/menu.html )

○ "Culture & History." EMBASSY AVENUE(在日大使館) 在日大使館オフィシャルサイト. ( http://www.embassy-avenue.jp/egypt/history-j.htm#1 )

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■ ヌビア (Nubia)

 ヌビアは、現在のスーダン(その一角がダルフール地方)に相当するナイル河中流域の古名です。エジプトの南に位置するため、エジプトの支配者とヌビアの勢力との間には古来いくども戦いが行われてきました。古代のヌビアは金・黒檀・象牙を産出したばかりか、ヌビア出身の傭兵たちの働きぶりによっても有名でした。

 古代ヌビアとその現状については、下記サイトで解説されています。

○ "スーダンの国情報." スーダン共和国大使館OFFICIAL PAGE. ( http://www.sudanembassy.jp/sudan_info.htm )

○ "終焉にはほど遠いダルフールの危機." 国境なき医師団日本. ( http://www.msf.or.jp/files/Image/sudan_darfur1/index.html?id=0 )

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 最後に多摩の"Good Gamers’Group"もよろしく!:http://homepage2.nifty.com/ggg2/
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