2022年02月01日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.19


 2022年1月27日配信の「FT新聞」No.3291に、『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.19が掲載されています。環境の変容、シナリオをどこまで深く記述すべきか、『クトゥルフの呼び声』と比較しつつ考察。複数プロットのシナリオ、オンライン・ツールまで話は進みます。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.19

 岡和田晃
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 くだんのチーズ店の主は、店じまいをしたあと、エプレヒノンプラッツ(勘定広場)からほど近くにある〈爆発する豚〉亭で一杯やるのが日課らしい。
 小売人や商店主、あるいは市が目当ての農民が集まり、社交というか格好の情報収集の場にもなっている。
 中産階級の根城と呼ぶに相応しい。
 いったん酒場に寄って探りを入れるか、それとも、閉まっているはずのチーズ店に、そのまま潜入したほうがよいのだろうか?
 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●ある「若気の至り」の告白

 RPGを遊ぶためにはシナリオが必要です。
 コンピュータに準えるのであれば、ルールブックやサプリメントはハードウェア、シナリオがソフトウェアに相当する、というのがわかりやすい話でしょう。
 かつてRPGにおいてシナリオを自作するというのは当たり前の話でした。今でも、シナリオを自作するのは最高の喜びの一つだと言えます。
 自分で読むだけであれば、また気心の知れた仲間と内輪で楽しむだけであれば、どんなシナリオであろうとも問題ないとすらいえます。
 私自身、今でこそきっちりと三幕構成を意識したシナリオを、広い層の読者が想定される商業媒体では書きますが、とりわけ十代の頃は決まったプロットに落とし込むのが苦手で、ほとんど完全アドリブに近いセッションをしていたものでした。
 何が苦手だったかというと、自分の頭のなかにある、茫漠としながらもダイナミックなイメージが、形に落とし込むと消え去ってしまいかねないと危惧したんですよね。
 私の場合、自分がGMしたセッションをプレイヤーがリプレイに起こしてくれることがままあったのですが、「あの時のセッション、完全にアドリブだったんでしょ?」と見抜かれたのは一度や二度ではありません。正確に言えば、完全アドリブではなく、キーワード・レベルではメモを作ってあったんですが……。

●下から二番目に酷いセッション

 今回はそのなかでも、私がやらかしてしまった、下から二番目に酷いセッションをご紹介しましょう。
 『クトゥルフの呼び声』(『クトゥルフ神話TRPG』、以下CoC)。ホビージャパンから出ていたブックタイプの5版が、まだギリギリ手に入った1996年のこと。北海道の片田舎の書店で、清水の舞台から飛び降りる思いで版元に注文、入手できたのはいいものの、単体ではどうやってプレイしたらよいかわからず、途方に暮れたものでした。
 CoC第5版のルールブックには4本のシナリオが収録されていました。最初のシナリオは「屋根裏部屋の怪物」。老人が若かりし頃の過ちを告白するというシチュエーションや、学生がオカルト・サークルで怪しげな儀式を行うという状況設定にピンと来ず、実際にプレイしたのはいいものの、ほとんどキーパー(GM)のひとり語りのような内容になってしまいました。プレイヤーたちが1920年代アメリカの雰囲気を知らず、どう動いてよいものか想像できなかったようなのですね。
 当時、私は中学三年生。『ラヴクラフト全集2』(「クトゥルフの呼び声」が入っていた巻)は読んでいましたが、これをどうやってシナリオ化すべきか、想像もつかなかったというのが正直なところです。むろん、プレイヤーは誰もラヴクラフトもクトゥルフ神話も知りません。ルールブックに収録されているクリーチャーは、探索者(PC)に比してあまりにも強大で、迂闊に登場させられないように思われました。
 仕方がないので、第2回目のセッションは、小説「クトゥルフの呼び声」をそのまま再現することにしました。とはいっても、シナリオノートには、「南太平洋」、「ルルイエ」としか書かれていません。あとは完全アドリブ。乗っている船が遭難して気づいたら南太平洋に漂流して、そこでクトゥルフ御大に出逢うというだけの内容。今思えば、キーパーの私が1d100のSANチェック(正式表記はSANロール)をプレイヤーに振らせたい、というのがミエミエでした。
 このセッションは(ゲーム外で)思わぬ展開を見せます。1d100のSANの喪失を振った直後、中学校で立ち上げたTRPG同好会の面々で、図書館をジャックしてプレイしていたのが運の尽き。図書館に来た別の生徒に、「岡和田君が図書館で黒魔術をやってます!」と通報されてしまったのです……。

●無料のシナリオがいくらでもある時代

 私は受け持ちの大学でゲームデザインを教えており、実際に講義内でRPGのセッションを行い、その成果をソロアドベンチャーや多人数シナリオとしてブラッシュアップしていき、期末レポートとしての完成を目指す、ということをやってもらっています。優秀作は、「FT新聞」でもしばしば掲載いただいているのでご存知の方も多いでしょう。
 昨今のCoCブームも相まって、ネットではいくらでも、無料でCoCのシナリオが転がっています。必ずしも優れた作品ばかりが揃っているわけではありませんが、CoCが採用している基本的なベーシック・ロールプレイングのルール(技能値ベースのd100下方ロール)を呑み込んでしまえば、無料で遊び続けることもできてしまうわけです。
 現役の学生と接していると、つくづく思うのですが、こうした新しい層のゲーマーは、過去に想定されてきたような層とは異なる部分が少なからずあります。
 例えば、今期のゲームデザイン論(や幻想文学論)の受講生は、8割が女性で、全員がCoCのことを知っており、キーパー歴五年という人もいました。私が学生の頃には、考えられなかった状況です。けれども、そうした新しいタイプのゲーマーが、必ずしも他のシステムや、ケイオシアム社が作ってきたオフィシャルのCoCのシナリオを知っているかといえば、そうではない、という現実があります。
 優れた小説を書くためには先達の名作に数多く触れるのが大事なのと同じで、優れたRPGシナリオを書くためにはRPGシナリオをたくさん読み、運用していくのが近道です。そこでは、手近な無料のシナリオだけでは見えてこない世界を提示することが、飽きられないためにも必要不可欠になってきます。
 出版されている公式シナリオは、単にソフトを提供するだけではなく、一定の水準を超えた品質、何よりありうべき世界観の像を提示するという意味で、重要なのです。

●CoCと『ウォーハンマーRPG』のシナリオ構造

 CoCの話を長々と続けてしまったので、『ウォーハンマーRPG』の話に軸足を移しましょう。CoCのシナリオと『ウォーハンマーRPG』のシナリオには共通点が多く、とりわけ、シティ・アドベンチャーとホラーという特徴を活かせば、そのまま『ウォーハンマーRPG』にコンバート可能なCoCのシナリオすら珍しくありません。
 ただ、CoCにおいては、SAN値が減って、やがて0にまで下がると永久的な狂気に陥ってしまうのに比べ、『ウォーハンマーRPG』においては、堕落ポイントが溜まっていくと、混沌へ徐々に変異していき、人ならざる存在へと変化していきます。
 同じd100下方ロールが軸なのに、この違いは意外と重要で、つまりCoCにおいては、人間性への期待が基本にあり、それが失われていくことへの葛藤がドラマを構成しています。
 反面、『ウォーハンマーRPG』においては、始めから人間性は期待されておらず、堕落を積み重ね狂気を上乗せしていけば、人間を超えた上位の存在(ケイオス・チャンピオンなど)になることすら不可能ではなくなっているのです。
 シティ・アドベンチャーについても、CoC(特に、基本となる舞台である1920年代アメリカ)の場合には、奇怪な事件の背後には、必ずといってよいほど人智の及ばぬ宇宙的な邪悪が関与しており、放っておくと、その邪悪な存在によって、日常の平穏は壊滅させられてしまいます。つまり、出発点が日常にあり、それを非日常の侵食から食い止めることが主眼にあるわけです。
 対して『ウォーハンマーRPG』においては、奇怪な事件が起きても、冒険者は必ずしもそれを解決せずともかまいません。極端な話、真相解明よりも、危険に満ちた世界で生き延びること、そのものの方に重きを置かれることすら珍しくないのです(もちろん、解明できれば、それは経験点という形でフィードバックされますが)。言い換えれば、出発点からしてすでに非日常となってしまっていると申しましょうか。

●複数プロットのアドベンチャー

 このような特徴があるゆえに、『ウォーハンマーRPG』においては、他のRPGでは危険すぎて、なかなか試みられてこなかった、ある特殊なスタイルのシナリオが商業出版されています。
 それは、複数プロットのシナリオです。小説や演劇、あるいは映画においては、視点人物を複数置いてそれらの思惑が複雑に絡み合う、そんなタイプの作品がしばしば発表されてきました。
 章ごとに語り手が変わり、個別の事件がそれぞれに扱われるが、物語が進むうちに、パズルのピースが嵌まるがごとく、それらがより大きな構造のなかに収斂されていく……そんな小説を、読んだことのある方も少なくないでしょう。
 最近ではRPGにおいても、それこそ『汝は人狼なりや?』のような正体隠匿型ゲームの要素を盛り込んだ作品が少なからず出ていますし(『パラノイア』シリーズ等)、マーダーミステリーでは、こうした発想が当たり前になってきています。
 ただ、『ウォーハンマーRPG』においては、プレイヤーたちには個別の動機や目的、あるいは秘密があっても、パーティを組んで協力して冒険をこなしていくのが基本のスタイルになっています。そうした基本から逸脱せず、複数プロットをシナリオへ落とし込むことはできるのでしょうか?
 −−できます。『ウォーハンマーRPG』のベテラン・ライター、グレアム・デイビス(デイヴィス)が、初版から存在する、ある有名シナリオ(アドベンチャー)において、複数プロットに挑戦しています。なんと、一つのシナリオにおいて七本のプロットが同時進行する、とんでもない話なのです。それらのプロットが、限られた時間軸のなか、ほぼ同一の舞台に詰め込まれるので、引き起こされる事件はドタバタの極み、プレイヤーの介入の仕方も実に様々、展開はさらに千変万化していきます。
 ネタバレを防ぐためにタイトルは伏せますが、このシナリオは初版の時点から存在し、二冊のシナリオ集に収められ、改訂のうえ第二版のシナリオ集にも収められました。第三版においても、一部設定を踏襲した別のシナリオが書かれるほどの人気で、第四版においても、ブラッシュアップのうえでシナリオ集に収録。個別の単発シナリオとしても、キャンペーン・シナリオとしてもプレイできるように工夫されています。
 あまりにもユニークなので、私自身、『混沌の渦』(佐脇洋平・清松みゆき訳、現代教養文庫、邦訳一九八八年)にコンバートして、このシナリオをGMしたこともあるくらいです。
 さらに、グレアム・デイビスは、複数プロットのシナリオについて世界最大規模のRPGコンベンションGENCONで講演を行い、聴衆の反応をもとに『ウォーハンマーRPG』第4版用の単発のシナリオに仕上げています。
 こちらもまた、七本のプロットが同時進行する作品です。初版からの有名シナリオが一晩の事件を扱うのに比べ、新しく書かれたこちらは、昼から夕方にかけての事件を扱っています。

●A4用紙1枚でシナリオはOK!?

 もっとも、隅々まで作り込んだシナリオの方がいつも優れているわけではなく、往々にしてプレイヤーの自由度を束縛し、アドリブのきかない小さくまとまったセッションをもたらしてしまうこともままあります。
 原作:山本弘・作画:こいでたく『RPGなんてこわくない!』(ホビージャパン、1992年)では、大艦巨砲主義の「究極のRPG」に比べ、A4用紙1枚程度のメモでGMをするやり方が紹介されていました。ただ、事前に準備するシナリオ記述を軽くするということは、それだけGMの側が、世界観を読み込んでおく必要を意味します。単に読み込むのではなく、実際の運用経験が、2桁回数から3桁回数はほしいところです。
 私の場合も、自分が仕事で関わってきたタイトル−−T&T、『エクリプス・フェイズ』、『ウォーハンマーRPG』等は、それなりに世界観に通暁しているため、A4用紙1枚程度のメモでも、ほとんど問題なくGMすることが可能ですが、そうなるまでには、少なからず試行錯誤が必要でした。

●オンライン・セッション支援ツール

 オンライン・セッションでは画像素材を用意するのがオフよりも大事な場合が少なくありません。その反面、システム特有のダイスロールの仕方などは、ダイスボットに落とし込まれ、オフラインよりも素早く処理ができる場合もあるので、オンライン・オフライン、それぞれの特性に見合う形で省力化のコツを把握するのが大事になってきています。
 オンライン・セッションのツールは、ユドナリウムやココフォリアといったものが有名で、ユドナリウムは立体でのグリッド戦闘が行いやすいのが売りですが、ココフォリアには『ウォーハンマーRPG』第4版用のダイスボットが搭載されています。
 それらを覚えるのが面倒ならば、Zoomを使って、ダイスも手振り、画像素材もほとんど使わない形でセッションを進めてもかまわないでしょう。掲示板スタイルのテキスト・セッションも面白いです。プレイ期間が長期に及びがちな反面、プレイヤーは1日数分から参加できるという意味でハードルは低いです。
 新しいオンライン・セッション・ツールとしては、買い切りで高機能なFoundry VTTが注目されており、こちらは有志が「オンセ工房」として日本語化しています(https://foundryvtt.wiki/ja/home)。関連するMODを追加していくことで、機能を拡張していくのがウリということで、CoCはむろんのこと、英語では『ウォーハンマーRPG』第4版の公式MODが販売されています。

2021年12月17日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.18

 
 2021年12月16日配信の「FT新聞」No.3249で、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」Vol.18が配信されました。前回の記した『ウォーハンマー』シリーズの歴史の補遺と、1983年に出た最初のルールブックをRPGクリエイター目線で紹介していきます。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.18

 岡和田晃
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 だんだん日が落ちてくる。
 昼に市場を席捲していたあぶれ者たちと、少しずつ夜に活躍するごろつきたちが入れ替わっていくのがわかる。
 ユーベルスライクの街は、ひとつの生き物のようだ。
 人混みに紛れて、どこかに見てはならない存在が紛れ込んでいるのではないか。
 そうした懸念をいだきながらも、いや、この手の嗅覚は魔狩人の方が優れているのだからと、なんとか自分に言い聞かせる。
−−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●あなたはミニチュア派? RPG派?

 本連載の前回でまとめた『ウォーハンマー』シリーズの歴史は、おかげさまでかなりの好評をいただきました。しかし、あくまでも英語資料を下敷きにした粗雑なスケッチにすぎず、語り落としてしまった事柄が少なからずあったのも事実です。
 例えばゲームズワークショップ・ジャパンの前にシタデル・ミニチュアを輸入販売していたベンダーには新和やORG、FM企画等があり、配信時にはそこまでのサポートができていませんでしたが、「DFCニュース」に同梱されていたというORGのフライヤーや「ウォーロック」誌のバックナンバーを繰れば、確かにそのことが確認できます。
 また『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』と『ウォーハンマーRPG』の分化も、いささか図式的だったかもしれません。私は2007年、『ウォーハンマーRPG』第2版の公式GMとして、ゲームズワークショップ・ジャパンとコラボし、ミニチュアゲーマーに向けてRPGをレクチャーするというイベントを行いましたが、その時はミニチュアとRPGの両刀遣いのユーザーが、そこまで多い印象はなかったものの、それから15年近くが経過してみれば……ミニチュアやRPGの両方をプレイするユーザーは、もはや珍しくなくなったように思います。

●『ウォーハンマー入門/趣味人への道』の衝撃

 シタデル・ミニチュアを輸入するのみならず、『ウォーハンマー・ファンタジー・バトルが本格的に日本語展開されるようになった1997年頃は、ちょうど「RPG冬の時代」に差し掛かった頃、あるいは真っ只中でした。
 衝撃的だったのは、ゲームズワークショップ・ジャパンの創業者・籾山庸爾氏の『ウォーハンマー入門/趣味人への道』でした。今でいう"萌え"への追随が浸透しつつあった世相とは正反対の、いわばメタル魂という反骨精神がみなぎっていたからです。
 ケレン味たっぷりの翻訳、京極夏彦風の指抜き手袋の決めポーズなど、これでもかと楽しさを見せつける写真。そもそも自分たちのことを「趣味人」だとうそぶくネーミングがダサかっこいい。自分は人から違うという選民思想を、それは「趣味」にすぎない、だからこそ本気でやるんだというメッセージによって中和しているという言説戦略が採られています。
 それはちょうど、TCGブームやコンピュータゲームの次世代機の攻勢について行けなくなりつつあった人たちを、いわばオールドスクールという別方向へステップアップさせる(決して後退ではないものとして)いざないであるかのように見えました。
 クラシックD&Dの展開がふたたびストップし、翻訳RPGの完全新作は『アースドーン』(柘植めぐみ/グループSNE)ほか、ごく少数に留まり、時代の流れが"なんか違う"ものを感じていた層に、『ウォーハンマー入門/趣味人への道』は届いたのではないかと思われます。めっきり出なくなったボックス・タイプの海外RPGやメタルフィギュアこそが、RPGの王道だと思っていた層です。

●『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』初版を読んでみた

 前項については、さまざまな資料から傍証できたり、逆に「いや、それは違う」という反証としての証言を持ち出すこともできたりするでしょう。ただ、今回は形を変えて、ミニチュアとRPGのよりよい関係について考えてみたいと思います。
 前回記事の資料として、『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』の貴重な初版(1983年)ルールブックを入手しました。これが実に興味深い内容だったのです。オールドワールドの生活感を演出のキモとする後の『ウォーハンマーRPG』を連想させる内容は意外と少なく、それでいて『ウォーハンマー 大規模戦闘(マスコンバット)ファンタジーRPG』と書かれているのです。装画はジョン・ブランシュ。
 ゲームブックの名作〈ソーサリー〉シリーズのイラストレーターだけあって、さながら"早すぎた『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』ともいうべき雰囲気の作品になっているからです。ちなみにブランシュは、ミニチュアの原型となるイメージ・イラストも多数描いており、FFシリーズのゲームブックで『地獄の館』や『恐怖の幻影』の装画を描いたイアン・ミラーとの共著での画集『Ratspike』(1989年)を出しています。ミラーはマーヴィン・ピークの『ゴーメンガースト』のイラストや、M・ジョン・ハリスンの『ヴィリコニウム』シリーズのグラフィック・ノベル化も手掛けていることでも知られます。
 当時のクリエイターにとって、立体感のある造形ができることが重要です。日本においては、『ネクロスの要塞』や『メタモスの魔城』に関わられたあだちひろしさんが、ブランシュのような仕事を受け持っていたと言えるのかもしれません。余談ですが、あだちひろしさんの一つの出発点に、アバロンヒル社の『魔法の島の闘い』があると教えていただき、感動したものです。
 このあたりは、出たばかりの「ナイトランド・クォータリー」Vol.27に掲載されている、10頁ぶち抜きのあだちひろしストーリーインタビューを参照してください。
 ルールはCD&Dの影響を強く感じさせるものですが、あくまでも独立したエキスパンションとしての大規模戦闘、すなわち小規模のスカーミッシュやダンジョン探検を表現するものとなっています。
 現在の視点では『ウォーハンマーRPG』初版に通じるルールも散見。あるいは『混沌の渦』に『ドラゴン・ウォーリアーズ』といった同時期に親しい版元から出たルール群との照応を感じさせるものも。
 ただ、ジッグラトでの戦闘やダンジョン内での戦闘のモデルケースが提示されています。そういう意味ではウォーゲームの伝統に則る作りとなっており、さらに言えば、それこそH・G・ウェルズが名著『リトル・ウォーズ』で描いたようなシミュレーション・ゲームに近いのかもしれません。あるいはもっと言うと、ヨーロッパに根付いている、玩具の兵隊ゲームのノリでしょうか。
 全体のルール構成はタイプライターで打ったものをそのまま使っており、当時のゲーム出版が、しばしば記録的大ヒットを出しながらも、一方でアマチュア精神の延長線上で作品が生まれてきたという構造的矛盾に取り巻かれていたことがわかります。

●『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』初版のRPG

 そして、全体の3分の1が、RPGとしてプレイするためのルールになっています。能力値に相当するステータスは個人についてのものと戦闘に関するものと技能に大別され、技能はたくさん選んで取得していくというものよりは、出自に付随するかのように、ランダムに決まる職業技能のような雰囲気があり、このあたりはAD&Dみたいな印象を与えます。
 キャラクターは人間、エルフ、ドワーフの三タイプに分かれ、人間の場合は1d100をロールして50以下であれば自由人。逆に90以上であれば騎士や貴族になれてしまいます。このあたりは、『ウォーハンマーRPG』らしいままならなさがありますね。
 属性(アラインメント)もしっかり設定されており、D&Dを輸入販売していた版元が、オリジナルなD&Dを作ってみた、とでも言いたげな内容です。
 にもかかわらず、中近世ドイツをモチーフにしたオールド・ワールドのような背景設定は、まだ十分に詰められてはいなかったようで、付属シナリオ「赤覚川峡谷(The Redwake River Valley)」はタイトルにあるようなロケーションの一帯が地図化されており、さながらD&D第4版のネンティア谷です。読みながら、出てくる「赤覚川峡谷」をオールド・ワールドのどこかに設定して、『ウォーハンマーRPG』第4版のプレイをしてみたくなりました。
 オールド・ワールドではない(と思われる)、トロール丘(Troll Hills)を目の前にしたロケーション。冒険の中核となる魔術師の塔は、その外観がイラスト化、各階の詳細なフロアプランが綴られ、『ウォーハンマーRPG』4版や他のファンタジーRPGシステムに、十分応用可能であるように思われます。実際、サードパーティから出たAD&Dのシナリオに、似たシチュエーションのものがあったことを思い出しました。

●オールド・ワールドはどこから?

 階を上がって進んでいく魔術師の塔だけではなく、地下を掘り下げていく別タイプの迷宮の地図も用意されており、実際にプレイしたユーザーも少なくなかったであろうと思われます。ミニチュアをアーミーのように多数コレクションせずともプレイできるので、こちらの方が需要は大きかったのではないかとすら思わせられます。
 いや、逆に、せっかくミニチュアを集めたのに、ルール的なサポートが十分ではないと満足できなかったプレイヤー向けに、しっかりミニチュアを使うシステムとしてデザインされたのかもしれません。
 『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』の第2版(1984年)のルールブックには、数体のキャラクターやモンスターを活躍させるのではなく、数十体から百体ほどのミニチュアたちを扱うためにデザインされた、とはっきり明記がなされていました。
 また、モデルにしているファンタジー文学の文脈も、J・R・R・トールキン(『指輪物語』)、マイクル・ムアコック(『エルリック・サーガ』)、ロバート・E・ハワード(『コナン』シリーズ)だとはっきり示していました。
 『コナン』のハイボリアは広大であり、大規模戦闘にはうってつけ。実際『指輪物語』には大規模戦闘の場面が具体的に描かれ、情景を想像しやすくなっています。そして、いわばこれらのファンタジーに、「ノン」を突きつけてきたアンチ・ヒロイック・ファンタジーが『エルリック・サーガ』だとすると、白面のエルリックの抱えた反骨精神こそが、『ウォーハンマー』のパンク精神の原型には根ざしていたのかもしれません。
 そこから、どこかで見たようなファンタジー世界ではない、歴史性に裏付けられた−−ファンタジーでありながら−−願望充足に流れるものとは真逆なタイプのオールド・ワールドが少しずつ生起してきたのかもしれません。

2021年11月20日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.17

 2021年11月18日配信の「FT新聞」No.3221に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.17」が掲載されています。今回は、英語の資料を使い、〈ウォーハンマー〉シリーズのあゆみを確認しています。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.17

 岡和田晃
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 やはり怪しいのは、ヘルベルト・ハルツァートの"ひと味違う"チーズの店。
 けれども、あれだけ魔狩人が詰問したのに、しらを切り続けられているとは思えない。
 普通に考えればシロなんだけれども。
 ラッテンファンガーに正面からその疑問をぶつけてみた。
「そりゃあそうです。大きいネズ公ったって、好き好んで人目につきたくはないでしょう。昼日向から出歩いているわけはありゃしません」
 とすると、時間をずらしたほうがよさそうだ。
 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●ここで歴史を振り返ろう

 『比類なく有益なスラサーラの呪文集』はもう入手されましたでしょうか。
 魔術師の専用サプリメントとしては、第2版の『魔術の書:レルム・オヴ・ソーサリー』(ホビージャパン、2007年)が邦訳されていますが、実は初版の頃から魔術師専用のサプリメントは存在しています。
 ちょうど、電子版登場で『ウォーハンマーRPG』第4版がいっそう活気づいてきたタイミングに合わせ、第4版登場までの歴史を振り返ってみたいと思います(これまでの連載で言及してきた情報と一部重複する部分もあることをお断りします)。
 本稿は完璧な通史ではなく、あくまでも各種資料を参考に、重要事項をまとめ直した叩き台にすぎません。メインの資料としては『Designers & Dragons: The '70s』(by Shannon Appelcline , Evil Hat Productions, 2014)を参照いたしました。
 他に岡和田晃がまとめたRPG史の「T&Tのあゆみ」(『トンネルズ&トロールズでTRPGをあそんでみる本』所収、冒険支援株式会社、2016年)、「〈ゴーストハンター〉シリーズのあゆみ」(「ナイトランド・クォータリー」Vol.10、アトリエサード、2017年)があり、それらと比べたらまだ粗いものではありますが、参考になる部分はあるかと思い、共有するものです。

●〈ウォーハンマー〉シリーズのあゆみ

■〈ウォーハンマー〉以前(1975〜83年)

 〈ファイティング・ファンタジー〉シリーズで知られるスティーヴ・ジャクソン&イアン・リビングストンらが1975年に立ち上げた会社がゲームズ・ワークショップで、こちらから〈ウォーハンマー〉は出ている。創立時、すでにジャクソンは「ゲーム&パズル(Games and Puzzles)」誌のライターとして活躍中だったが、アメリカへ出かけた時にD&Dを知り、熱狂する。ゲームズ・ワークショップはイギリスにおけるTSR社の輸入代理店となってD&D製品を売り、それだけではなく『トラベラー』(GDW)や『ルーンクエスト』(ケイオシアム)等の他社製品も輸入していた。
 顧客向けペーパー「フクロウとイタチ(Owl and Weasel)」の後継誌「ホワイト・ドワーフ」誌を出すに至り(1977年創刊、リビングストンが編集長)、D&Dをはじめとした取り扱い作品のサポート記事を載せていた。ゲームズ・ワークショップと「ホワイト・ドワーフ」は、イギリスのRPGシーンの中心地となり、AD&Dのサプリメント『フィーンド・フォリオ』(1979年)にモンスターを提供するなど、イギリスにおけるRPGの一潮流を築く(後のTSR UKの流れ)。この頃から、『ウォーハンマーRPG』のメイン・ライターの一人、グレアム・デイヴィスが参加している。最近でもイギリスBBC(日本で言うNHK)や大手リベラル紙「ガーディアン」(日本で言う朝日新聞あたりに相当)でも、この頃のことが紹介されていた。
 1982年にパフィン・ブックス(日本で言う岩波少年文庫)から出した『火吹山の魔法使い』が大ブームとなり、ラジオ番組やテレフォン・アドベンチャー等でメディア・ミックスされる。もとはD&DをはじめとしたRPGの解説書の予定が、ジャクソン&リビングストンの意向から単体で遊べるゲームブックとなり、しかもパラグラフを選ぶだけではなく、簡単ながら練り込まれたルールシステムが付随していたのがヒットの理由だった。
 ただ、これでゲームズ・ワークショップが販路を拡大したわけではなく、1978年にファンタジー・ミニチュアを扱うラル・パーサ社(アメリカ)と契約し、ミニチュアについても力を入れていた。20世紀初頭のH・G・ウェルズの『リトル・ウォーズ』の時代から、ミニチュアはイギリスで人気だった。「ホワイト・ドワーフ」でラル・パーサのミニチュアをサポートすると同時に、自社ブランドとして子会社のシタデル社を設立し、オリジナルのミニチュアを製造・販売し始めた。
 ゲームズ・ワークショップはボードゲームやRPGにも力を入れており、『火吹山の魔法使い』のボードゲームはもとより、『ドクター・フー』(SFドラマ)や『ジャッジ・ドレッド』(SFコミック)をボードゲームやRPG化している。
 また、ゲームズ・ワークショップが直接・間接的に関わったRPGやゲームブック作品に『ドラゴン・ウォーリアーズ』(1984年〜)、『タイガー暗殺拳』(1985年)、『ローン・ウルフ』(1985年〜)等があり、いずれも日本でも訳されている。〈ファイティング・ファンタジー〉のサポート雑誌「ウォーロック」が創刊されたのも1983年(〜86年、ちなみに日本版「ウォーロック」は84年創刊)だ。
 
■ミニチュアとRPGが並走していた頃(1983〜88年)

 ただ、1980年代半ばからRPGブームが落ち着き始める。1983年に『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』初版が発売される。1984年に2版、87年に3版が出ている。ただ、初版から2版の間は、あくまでも中心はRPGで、「ホワイト・ドワーフ」誌でもサポートはされていたものの、『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』はメインの商品とは言い難かった。D&D用の『ダンジョン・フロア・プラン』や、ボードゲーム『タリスマン』(1983年)等と同じ扱い。ただ、1985年に、TSRとの契約が切れてしまうので、以降、TSR関連製品を展開する代わりに『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』がプッシュされるようになってくる。
 1986年に出た『ウォーハンマーRPG』は、ゲームズ・ワークショップでは3番目のオリジナルRPG。『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』との差別化として、当初からアーミーを組まず、個別のキャラクターを演じるのがポイント。
 システムのベースはD&Dに大きな影響を受けていたが、キャラクター・ステータスに1〜10の数値幅を用いる『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』に比べて、『ウォーハンマーRPG』は1〜100の能力値幅を有し、かつ、膨大なキャリアの転職を繰り返すユニークなシステムを採用していた。それでありながら、戦闘ルールは『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』とコンバート可能になっていた(『ファンタジー・バトル』も初版にはRPGとして遊ぶルールが付属していた)。
 魔法の拡張ルール集『レルム・オヴ・ソーサリー』が出す出すと言って果たせなかったものの(出たのは後述するホグズヘッド・パブリッシング時代の2001年)、『ウォーハンマーRPG』時代は評判上々で、リアル志向のキャンペーン・シナリオ〈内なる敵〉シリーズ(1986〜89年)が、AD&D小説『ドラゴンランス』(1984年)等大人っぽい冒険物語を好む層にヒットした。
 『ウォーハンマーRPG』の初版は社会思想社から1991年〜93年に出た。文庫3分冊のルールブックのほか、『さまよえる魂』、〈内なる敵〉二冊、友野詳のリプレイ2冊が出て、「ウォーロック」誌で92年までサポートされた。小説は角川文庫で『ドラッケンフェルズ』が出た。

■ミニチュアとRPGが分化していた頃(89年〜2002年)

 ゲームズ・ワークショップはその後、大手おもちゃ会社ミルトン・ブラドリーと組んでシタデル・ミニチュアを使った『ヒーロークエスト』(1989年、日本版はタカラから出た)から出すなどしていたが、徐々にミニチュアの方に比重を置き始める。
 『ウォーハンマー・アーミーズ』(1988年)、『レルム・オブ・ケイオス』シリーズ(1988年〜等)。そしていよいよ、1987年に『ウォーハンマー40000:ローグ・トレイダー』の初版が発売される。RPG、ミニチュア、SF、ファンタジー、コミックの要素すべてが入っているという点で大ヒットした。結果として、『ウォーハンマー40000』と『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』がゲームズ・ワークショップの製品の核となり、1988年の「ホワイト・ドワーフ」100号では、ほとんど全ページがミニチュアゲーム関連の記事で占められるようになった。結果として、第1号では4000部だった「ホワイト・ドワーフ」の部数は、この頃は50000部にまで伸びていた。
 とうとう1989年にゲーム・ワークショップはRPGラインを切ってしまい、サポートは子会社のフレイム・パブリケーション(Flame Publication)で行うようになり、『ウォーハンマーRPG』関係のクリエイターはそちらへ移籍して、〈ドゥームストーン(Doomstone)〉キャンペーンを製作した。これは『ウォーハンマーRPG』でもAD&Dのルールでも遊べるようになっているというキャンペーン・シナリオ。ただ、フレイム・パブリケーションも1992年には解散してしまい、1995年に『ウォーハンマーRPG』の権利はホグズヘッド・パブリッシング(Hogshead Publishing)へ移籍した。ホグズヘッド・パブリッシングでは『ウォーハンマーRPG』サポート誌「ワープストーン(Warpstone)」を創刊し、これは2版の時代も断続的ではあるが版元を変えて刊行されている。ホグズヘッド・パブリッシングが2002年に倒産すると、『ウォーハンマーRPG』の権利はゲームズ・ワークショップへ戻った。
 1990年代半ばからゲームズ・ワークショップ社は世界的な成長を遂げていくようになる。『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』は第4版(1992年)から第6版(2000年)、『ウォーハンマー40000』が第2版(1993年)から3版(1998年)、そして『ロード・オブ・ザ・リング』のミニチュア・ゲーム(2001年)が製品の核となっていた。
 日本でもシタデル・ミニチュアの輸入は新和・ORG等、複数のベンダーが出掛けていたが、『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』が1997年頃からゲームズ・ワークショップ・ジャパンによって紹介されるようになる。

■〈ウォーハンマー〉のコンピュータ・ゲーム化

 〈ウォーハンマー〉のデジタルゲームは意外と少なく、よく知られているのはマインドスケープ(Mindscape)社の『シャドーズ・オブ・ザ・ホーンド・ラット(Shadows of the Horned Rat)』(1995年)、『ダーク・オーメン(Dark Omen)』(1998年)、ブラックホール社の『マーク・オブ・ケイオス(Mark of Chaos)』(2006年)くらいだったが、実はブリザード社の『ウォークラフト:オーク&ヒューマン』(1994年)は『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』の影響を強く受けており、同様に『スタークラフト』(1998年)も『ウォーハンマー40000』にインスパイアされたものだった。
 ただ、ゲーム・ワークショップ謹製の製品ではなかったことから、〈ウォーハンマー〉展開にあたっては機会損失でもあった。そして、オンラインゲームについても版権交渉がこじれて、なかなか進展しなかった。
 ようやく、『ダーク・エイジ・オブ・キャメロット』で知られるミスティック・エンターテインメントが『ウォーハンマー・オンライン』を2008年からスタートさせた。ただ、ブリザード社の『ワールド・オブ・ウォークラフト』(2004年)は1000万人以上のプレイヤーを擁したのに比べ、『ウォーハンマー・オンライン』は成功したとは言い難く、後期には10万人程度のプレイヤーしか獲得できなかった。
 
■〈ウォーハンマー〉の小説化

 『ウォーハンマーRPG』は初版の時から、イギリスのSF誌「インターゾーン」の編集者デヴィッド・プリングルと組んで、「インターゾーン」の作家陣にノベライズを書かせていた。ジャック・ヨーヴィル〈ドラッケンフェルズ〉シリーズ、ブライアン・クレイグ〈吟遊詩人オルフィーオの物語〉シリーズなど。前者は『ドラキュラ紀元』シリーズが人気のキム・ニューマン、後者はベテランSF作家・評論家のブライアン・ステーブルフォードの筆名。
 小説は質が高かったため、アメリカにおける〈ドラゴンランス〉シリーズのように一大ブランドとなり、『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』が中心になった時代にもそれは続いた。アメリカのメタル・バンド「ボトルスロウアー」やパンク・バンド「スケイヴン」のように、音楽と連動する例もあった。
 1997年には〈ファイティング・ファンタジー〉シリーズにも参加していたライター・編集者のマーク・ガスコインが、ブラック・ライブラリー社を設立する。ブライアン・クレイグの〈トロールスレイヤー〉シリーズや、ダン・アブネット(『ウォーハンマーRPG』2版の巻頭小説)の〈ファースト&オンリー〉シリーズなどが高く評価されている。並行してコミック化も進められ、〈ウォーハンマー・マンスリー〉(1998〜2004年)のような連載もあった。

■『ウォーハンマーRPG』2版(2005年〜2008年)

 2003年から『ウォーハンマーRPG』第2版の開発が始まり、2005年には、D&D3版系のサード・パーティであったグリーン・ローニン社から『ウォーハンマーRPG』第2版の展開が始まる。2008年には『ダーク・ヒアレシー』をはじめとした『ウォーハンマー40000』版のRPGが展開される。
 前者は日本語版も2006年から発売、『オールドワールドの武器庫』、『オールドワールドの生物誌』、『魔術の書:レルム・オヴ・ソーサリー』、『堕落の書:トゥーム:オヴ・コラプション』、『救済の書:トゥーム・オヴ・サルヴェイション』、『ウォーハンマー・コンパニオン』、『スケイブンの書:角ありし鼠の子ら』、キャンペーン〈呪われた道〉三部作、ショートシナリオ『略奪品の貯蔵庫』といった展開がなされ、2015年には『ウォーハンマーRPG』第2版の基本ルールブックは根強いファン活動によって増刷版が刊行になった。
 リプレイは「GAME JAPAN」誌掲載。ダウンロードシナリオは公式サイトで出た。小説は〈ドラッケンフェルズ〉シリーズが4冊と、『渾沌のエンパイア』が出た。また「ウォーハンマー・オンライン」が2009年から日本語版が展開、小説翻訳もウェブに載った。

■『ウォーハンマーRPG』3版以降(2009年〜)

 『ディセント』等のRPG風ボードゲームで知られるファンタジー・フライト・ゲームズ社が2009年に『ウォーハンマーRPG』の第3版を出し、豪華コンポーネントで話題を集めた。しかし、それまでのユーザー層は少なからず困惑した。システムは、より洗練させたうえで『スターウォーズ』のボードゲームに転用されたものの、『ウォーハンマーRPG』2版を支持する声は根強く、『ツヴァイヘンダー(Zweihander ※aはウムラウト)』(2017年〜)というクローンシステムも出ている。そんな折、D&D5版の『ロード・オブ・ザ・リング』サプリメントを出しているキュービクル7社から、2018年に『ウォーハンマーRPG』第4版が出た。『ツヴァイヘンダー』との差別化のためか、初版への回帰色が強く(メイン・デザイナーの一人アンディ・ローは初版のデザイナーでもある)、実際〈内なる敵〉シリーズが4版対応で復刻されている。

 −−and more…。

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『ウォーハンマーRPG』
・ルールブック ¥7,480(印刷版/電子書籍版共通)
・スターターセット ¥3,300(印刷版)/¥2,750(電子書籍版)
・ゲームマスター・スクリーン ¥3,850(印刷版)/¥3,300(電子書籍版)
・ライクランドの建築 ¥770(電子書籍のみ)
・比類なく有益なスラサーラの呪文集 ¥550(電子書籍のみ)

全て、通販サイト『コノス』にて発売中
https://conos.jp/products-tag/warhammer_rpg/

出版社:ホビージャパン(HobbyJAPAN)

2021年11月13日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.16


 2021年11月4日の「FT新聞」No.3207に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」のVol.16が配信されています。『比類なく有益なスラサーラの呪文集』の発売、ゲームマスター・スクリーンの起源、読者からお気に入りのスクリーンとその理由の紹介など。大ボリュームです。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.16

 岡和田晃
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「まあいい、こんな奴を撃つのも弾の無駄遣いだ。ビーストマンを倒すのにとっておかないとな」
 嘆息し、魔狩人フレイザーは銃を仕舞った。
「そうです、旦那、そうこなくっちゃあ。物分りのいいお方には、ラッテンファンガーはいくらでもご協力いたしますよ」
 早口でまくし立てる。
「人間みたいに大きいネズ公ですよ! 本当にそういう奴がいるんです。しかも、あの店に出入りしてるんでさあ」
 堅砦のごときアルトドルフならともかく、ここユーベルスライクには、そういう連中がいくらでも徘徊してそうだ。
 そう思ってしまうのは、わたしが「魔女」だからかもしれない。
 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より


●『比類なく有益なスラサーラの呪文集』が出たぞ〜!

 『ウォーハンマーRPG』の新作サプリメント『比類なく有益なスラサーラの呪文集』が発売となりました。これは魔術師向けの追加データで、八色の魔法の各呪文が追加され、またハイエルフのスラサーラによるコメントが随所に挟まれています。追加された呪文はカードになっており、厚紙に印刷するか、印刷して厚紙に貼れば、呪文カードが完成します。翻訳は伏見義行さんで、私は待兼音二郎さんと、翻訳監修という形で参加しています。
 電子版(PDFファイル形式)限定サプリメントで、オンライン/ショップのコノスのサイトから、なんとワンコイン、500円で買えます。こうした廉価なサプリメントを電子限定で提供するのは、まだまだ実験的なところがあり、ご支援いただければと思います。

●『スターターセット』と『ゲームマスター・スクリーン』も電子版が提供!

 『スラサーラの呪文集』にあわせ、先に発売された『ウォーハンマーRPG スターターセット』および『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』も電子版が提供されています。
 これらは当然、印刷物は付属していないのですが、できるだけ忠実に『スターターセット』と『ゲームマスター・スクリーン』のコンポーネントを再現しようとする形になっています。
 ありがたいことに、『ウォーハンマーRPG』第4版関連製品はAmazon.co.jpのTRPGカテゴリーでランキング1位をいただくことが多く、『ゲームマスター・スクリーン』も例外ではありませんでした。
 前回、一般にゲームマスター・スクリーンとはGMしか買わないアイテムだとみなされがちな弱さがあると書きましたが、それを良い意味で裏切る結果となっており、ただ感謝しかありません。10月21〜27日のコノスにおけるランキングでは、なんと1位〜5位を『ウォーハンマーRPG』関連製品が独占。この結果には、私も驚かされました。
 スクリーンを電子版で買うというのは、とりわけオンライン・セッションにおけるチャート集としての利便性、あるいは付録の『ゲームマスター・ガイド』目当てだと言えるように思います。スクリーンは代表的なプレイエイドであるため、付録も実践的な内容のガイドやシナリオなど、具体的にゲームへ“使える”ものが多く、提供されるような印象があります。
 これは『ウォーハンマーRPG』に限った話ではありません。そもそも、スクリーンは分厚いルールブックとは違って「積ん読」状態になりづらく、これを使うと、いかにも「オフィシャル環境下でその作品をプレイしている」という雰囲気が出るため、とても見栄えがするのですね。コレクションしたくなる魅力があります。「ご趣味は?」と聞かれたら、「マスタースクリーンのコレクションです」と答えても、そう違和感を持たれない時代が近づいているのかもしれません(笑い)

●スクリーンはいつからあるの?

 意外と知られていませんが、ローレンス・シックの研究書『ヒロイック・ワールズ(Heroic Worlds)』(Prometheus Books、1991年)によれば、マスタースクリーンの起源は1977年にジャッジズ・ギルドが出したD&D用の『ジャッジズ・シールド(Judge’s Shield)』とのことです。
 ジャッジズ・ギルドというのは、複数の会社のRPG製品のプレイエイドを手掛けた、サードパーティのはしりともいうべき会社で、私もT&Tの歴史とどう関わってくるかを、「トンネル・ザ・トロール・マガジン」Vol.3およびVol.4(書苑新社、2017年)の「T&Tによる遊戯史学のススメ」に書きましたので、そちらもお読みいただければと思うのですが、スクリーンというアイテムの発想が、サードパーティから生まれたというのは、なかなか興味深いところがありますね。
 同年、ジャッジズ・ギルドはデイヴ・アーネスンによるD&Dのワールド『世界初のファンタジー・キャンペーン(The First Fantasy Campaign)』(1977)を出版しているところでもあり、マスター目線に立った発想があったのかもしれません。
 『ジャッジズ・シールド』は変わったつくりで、三面開きなのですがマスターが顔を出しやすいように、真ん中の面は横、それ以外の面は縦になっています。イラストなどはなく、チャートで構成されています。
 これが1年も経たないうちに評判を呼び、1979年には『トラベラー』版、80年には『ルーンクエスト』版が発売されました。雑誌にも、シリアスなダンジョンマスターは必携との好評が出ています。
 『ジャッジズ・シールド』は初版が黄色、2版は紫だったようで、サイズも変わっているようです。ようです、と書くのはいかに好セールスを叩き出したといっても、さすがに45年近くも前のものをきちんと保管している人はそういないようで、今ではレア・アイテムとなり、海外のRPG系フォーラムにおいても、「知ってるか?」「持ってないよ」という議論が起きてもいるくらいだからです。
 私が現物を確認したことのある、日本で最も古いスクリーンは1983年の『スタークェスト』(ツクダホビー)のボックスに入っていた「マスター用ブラインド」です。こちらは打って変わって、チャートの記載はなく、黒一色のシンプルな作りながら頑丈です。『スタークェスト』に関しては、「ウォーロック・マガジン」Vol.5(書苑新社、2019年)の「FFによる遊戯史学のススメ」でも、日本ではあまり知られていない情報を紹介しています。
 ちなみに、デザイナーのエドワード・リプセットさんは、私が編集長をしている「ナイトランド・クォータリー」で選書協力をしてくださっているんですよ。

●極私的スクリーン史

 岡和田個人が最初に買ったスクリーンは、社会思想社から出ていたT&Tのスクリーン(社会思想社、1991年)でした。スクリーンはシュリンクされていて、中に何が入っているのか「立ち読み」することができないのに、価格は2000円近くしたので、文庫版RPGしか触れてこなかった身としては、購入までに一大決心が要りました。特に『ハイパーT&T』からT&Tへ、先祖返りしてプレイを深めていた時期だったから余計に、そうだったのです。
 ただ、スクリーンの武器チャートや呪文チャートが思いのほか使い勝手がよく、付録のキャラクターシートやシナリオ「ジャイアント・クエスト」も遊び倒しました。こいでたくさんの漫画『RPGなんてこわくない!』(ホビージャパン、1992年)で、防具としても使われているのも納得の頑丈さ、だったのです。
 買いたくて買えず、借りて感動したのが『クリスタニアRPG』のスクリーン(主婦の友社、1994年)。これを真似て、T&Tのスクリーンにクリップをつけ、書類を挟めるように改造したこともあります。『モンスター・ホラーショウ』(本田成二訳、社会思想社現代教養文庫、邦訳1991年)では、ウェアウィザード(ゲームマスター)は、「プレイヤーを楽しませてやること」とよく見える場所に貼っておけとあったので、実際にT&Tのスクリーンに貼ったりもしました。ジョシュ・キルビィ(カービィ)のアートがA4サイズにフィーチャーされたパッケージも捨てることなく、自作の下敷き加工にして学校でもアートが見られるようにしました(笑)。
 その後、AD&D第2版(新和、1991年?)や『ギア・アンティーク』のスクリーン(『アート・アルケミー』所収、1992年)も転居する知人から譲り受けたのですが、自前で購入した製品でとりわけ印象深かったのは、大学に入って買った『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』の美麗なスクリーン。これは『ヴァンパイア・ストーリーテラー・コンパニオン』(アトリエサード、2002年)に同梱されていたものです。非常にゴシックパンクでハイセンスなデザイン。
 プロになってからは、イベント仕事でマスターをする機会がたくさんあったため、視覚的アピールの意味も込めて、公式ダンジョンマスター用のD&D3.5版スクリーン、『ウォーハンマーRPG』2版の『ゲームマスターズ・パック(Gamemaster”s Pack)』(Black Industries、2版2007年)、『エクリプス・フェイズ』のスクリーン(Posthuman Studions、2010年)はよく使っておりました。これらは英語版ですが、できるだけ日本語化されたスクリーンは入手するようにしております。

●あなたのお気に入りのスクリーンは?

 それでは、本連載のVol.14で問いかけた「あなたのお気に入りのマスタースクリーンと、その理由は何ですか?」について、読者の方からいただいた回答を紹介しておきましょう。

(たまねぎ須永さん)
【マスタースクリーンの思い出】
 まず一番に思い出すのが、「ウォーロック」誌の特集で掲載されていたマスタースクリーン(の素になるチャート群)をコピーして、GMスクリーンに見立てやすい形の冊子小包に貼り付けたものです。
 これらと社会思想社さんから出ていたGMスクリーンはPL側にまでしっかりチャートが載っていて、TRPGの可能性を感じさせてくれてお気に入りでした。
 製品として思い出すのは、社会思想社版の『ウォーハンマー ファンタジーRPG ゲームマスター・スクリーン』、Fローズ(『ファー・ローズ・トゥ・ロード』のスクリーンです。
 ウォーハンマーのは、ランダム名前表、キャラクターの特徴表などが充実していて、ほかのファンタジーTRPGでも重用しました。Fローズのは、PL側には様々な生き物の大きさ相関が分かるシルエットがついているのが印象深いです。この世界にはあんなでっかい生き物がいるのか……とわかりやすいのです。
ゴブスレRPG(『ゴブリンスレイヤーTRPG』)の限定版のスクリーンや今回のウォーハンマーのスクリーンの4面なのは、最初見てびっくりでした。これならPLからチタンダイスが飛んできても安心そうです。
 そういえば、最近のスクリーンはPL側が美麗な絵になってることが多く、チャートはGM側だけという感じなのが個人的にはさみしいです。
番外編としては、『鋼鉄の虹』のミニ・スクリーン、夏のTRPG祭りの支給スクリーン、コミケで得た黒地にワイヤーフレーム調のスクリーンです。
 『鋼鉄の虹』のは小さい! 夏のTRPG祭りのは参加GMリストが載っていて、触れるたびにGM参加した思い出と自信が蘇ってきます。最後のは、『ウィザードリィ』の白黒画面調でダンジョン潜ってる気分に浸ってもらえます(笑)

(岡和田からの回答)
 スクリーンの自作からT&Tスクリーンとの出逢い、というのは一定の流れではあるのだなあ、と再確認できるコメントです。『ゴブリンスレイヤーTRPG』限定版(ソフトバンククリエイティブ、2019年)のスクリーンは、T&T完全版もそうでしたが、ボックス・タイプのRPGにスクリーンが入っていたワクワク感の再現を狙っていますよね。
 小さいスクリーンといえば、『ブルーフォレスト戦乱 リバイバル・エディション』(グランペール、2009年)に入っていたスクリーンも2面立ての小さいものでした。もっとも、こちらは小柄な女性でも顔が隠れないように、という配慮があったようでしたが。イベント限定のスクリーンも、確かにけっこうありますね。
 ちなみにFローズのスクリーンのクリーチャー比較図は、『クトゥルフの呼び声』のオマージュですが、それは次のおたよりにもつながります。

(ピピンさん)
 クトゥルフ・キーパースクリーン(HJ『クトゥルフ・コンパニオン』ボックス付属)が思い入れ深いです……マスタースクリーンには「ビジュアルによる雰囲気づくり」「手堅くまとまったサマリーの集合」の用途のほかに「手元を隠しつつマスターのコミュニケーションを阻害しない」という衝立本来の役目がありますが、とくに学生の頃は狭い下宿のちゃぶ台で胡座かいてRPGを遊ぶことが多く、スクリーンがA4タテだと座高的に高すぎることもあり、あれを横倒しにした高さがなんともいえずフィットして凄い重宝しました。

(岡和田からの回答)
 スクリーンは「高さ」が意外と重要な要素なんですよね。私は『クトゥルフ・コンパニオン』を入手したのがけっこう後で、先に『RPGスーパースクリーン』版のキーパースクリーンを入手していました。『RPGスーパースクリーン』とは、中身のチャートを取り替え可能にすることで複数のシステムに対応可能にしたスクリーン・シリーズのことですね。ただ、私が知った時は『スーパースクリーン』本体は入手困難な時期で、『クトゥルフ』や『ストームブリンガー』のチャートのみが手元にある状態でした(泣)。

(吉里川べおさん)
 私はあまりスクリーンを使わないスタイルなのですが、T&Tではシンタックス・エラー版にお世話になりました。あとは思い入れがあるといえば、新和の『D&DマスタースクリーンII』でしょうか。プレイヤーでクラシックD&Dのキャンペーンをやってたとき、DMがずっと使ってたもので、黒箱(『マスタールールセット』)の表紙の絵がでかでかと描かれてるんですね。当時既にマスターレベルまで行くのは無理やな、と、どこかで達観はしてたんですが、夢はありました。

(岡和田からの回答)
 シンタックス・エラー版は社会思想社版のプロトタイプですが、色が違いますし、付属シナリオ「巨人の剣」は先述した「ジャイアント・クエスト」の前日譚ですね。こちら、なかなか本格的な作りだったので、2021年度春学期に私が受け持っていた東海大学のゲームデザイン論でプレイしてみました。
 黒箱のラリー・エルモアのカバーアートは比類なくクールなデザインですよね。「FT新聞」No.3044でも、マスターレベルの冒険を紹介したことがあります(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/481698487.html)。
 クラシックD&Dのスクリーンだと、メディアワークス版のスクリーン(1996年)についていたキャラクターシートとシナリオがよく練られていました。1レベルセッションを「不条理な死」で終わらせないための工夫があります。あのシナリオ、シート&データの取り回しの良さは、もっと評価されていいと思います。

(水波流さん)
 マスタースクリーンに関して、オールドゲーマーとして所持しているものから、便利なところと不便なところをあげてみたい。
 というのは、思い出深いマスタースクリーンはいくつもあるのですが、実は私はこれがナンバーワン!というものに巡り会えていないのです。

・T&T5版(2種類あるうち、社会思想社の緑版)
・ソードワールド(旧版・青)
便利な点:内面はGMがよく使うチャート類、外面にはプレイヤーがよく使うチャート類が書かれており、プレイヤーの利便性も高い。付録で魔法がA4サイズ1枚にまとめられており、GMもプレイヤーも便利。
不便な点:A4サイズ3面ものですが、背が高く横幅が狭いので、シナリオなどが手元からはみ出してしまう。あと両面が全てチャートなので、ビジュアル的に期待すると地味。

・『ジークジオン』(『ガンダムマスタースクリーン』/ツクダホビー)
便利な点:外面にプレイヤーがよく使う、射界図や損害決定表、歩行移動力表などが書かれており、プレイヤーの利便性が高い。
不便な点:ほぼ戦術級シミュレーションゲームなTRPGなので、GMも外面の表を多用するため、結局、GMもプレイヤー側に回って同じ表を眺めるという、奇妙な光景になることが多い。

・『クリスタニアRPG』(完全版用)
便利な点:内側上部にクリップが付いており、GMのメモを挟むことができる。リングファイルでルールサマリーがあり、このシステムのウリでもある膨大な部族ごとのタレント(特殊技能)がすぐに調べられる。
不便な点:サマリーがあるせいか、外内どちらにもチャート類は未掲載で、結局よく使うチャート類はコピーして手元に置く必要あり

・T&T完全版(BOXセット同梱)
便利な点:内面にランダム宝石表やワンダリングモンスター表など、プレイ中にGMがほしそうな表がいくつも記載されている。
不便な点:外面がビジュアルなので、プレイヤーの利便性向上にはならない。A4サイズ3面ものかつやや薄く不安定なため、結構倒れがち。

・D&D5e(ダンジョンマスターズスクリーン)
便利な点:4面ものでハードカバー材質なので、手元が広く取れて、倒れない。背も低めなのでお互いの顔が見えてコミュニケーションも阻害しない。
不便な点:内面に肝心のチャート類が少ない。外面がビジュアルなので、プレイヤーの利便性向上にはならない。

 T&T5版や『ソードワールド』のを買った頃は、文庫ルールブックを買うにも悩むような小中学生だったため、文庫本の2倍以上の金額がするマスタースクリーンを買うのはまさに清水の舞台から飛び降りるほどの決心が必要でした。
 T&Tにはシンタックスエラー製の青版というのがあり、なんとそれと緑版は同梱のシナリオが違うというのを後になって知りました。(しかも関連性のあるシナリオ!)でも当時知っても買えなかったろうなぁ。
 いまやD&D5eではキャンペーンシナリオ毎に専用マスタースクリーンが出るような状況ですが、キャンペーンを遊ぶ回数で考えると、1回あたり数百円ならプレイアビリティ向上には買って損はないか……と考えれるくらいは大人になってしまいました(笑)
 それとグループSNEさんでは雑誌の付録に自社製品のマスタースクリーンを付けてくれる太っ腹対応で、そちらもかなり便利に使わせてもらっています。(『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』第2版、『ロードス島戦記RPG』、『ソード・ワールド2.5』、『トレイル・オブ・クトゥルー』などなど)

最後に「ぼくのかんがえたさいきょうのマスタースクリーン」の要素を書いてみます。
・4面ものでGMの手元を広く取れる。
・分厚めで、倒れない。背は低いほうが良い。
・外面にもプレイヤー用チャート類が掲載。
・クリップが付いている(いやこれは、自分でつけても良いのですが……笑)。
・配布用チャート類がA4サイズでついてくる。

いかがでしょうか。

(岡和田からの回答)
 おみそれしました。まさしくスクリーン・ソムリエともいうべきこだわりです。D&D5版がキャンペーン、というかセッティングごとにスクリーンを出しているのは実用性とともにコレクター・アイテムとしての性格もあるのではないかと思います。日本語版が出なかった『ウォーハンマーRPG』第2版のスクリーンは英語版で二種類あって、私は片方しか持っていないんです。初期の版はプレミア価格になってしまっています。
 私は究極のスクリーンよりも、その日のコーディネートを決めるように、スクリーンをチョイスしていきたいタイプです。同じスクリーンを使い倒していた子ども時代に比べると、なんだか邪道な気がしてしまいますが。
 アートワークとしては、『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』第2版のカバーアートが好きなので、あれがスクリーンになったときは嬉しかったなあ。『ウォーハンマーRPG』の場合、第4版のプレイヤー側はアートでしたが、日本オリジナルの初版はチャート。第2版はエンパイアの地図+アートといった構成でしたね。

(これくら!さん)
 はじめまして、「鋼の旅団」というウォーハンマーRPGファンサイトを運営しております"これくら!"と申します。
 私「これくら!」のお気に入りマスタースクリーンは、自作のオリジナルマスタースクリーンです。
 レストラン等のメニューブックに使われているA4サイズ3つ折りの淵ありクリアケースに、エクセルで作った表やデータ集などを挟み込んで使用しています。
 お気に入りの理由は、
・表面の絵柄を好みによって変えられる…光沢紙にカラー印刷して出力すると本格的に。
・水に強い…オフセ中のドリンクがこぼれても心配いりません(他の紙類は被害を受けますが)。
・内側のデータを自由にカスタマイズできる…その反面、手間はかかりますが。
 しかしながら、今回発売される『ウォーハンマーRPGゲームマスター・スクリーン』は、表面にはすばらしいアートワークが施され、裏面には、一番『ウォーハンマーRPG』を熟知するゲームデザイナーが、必要だと思うデータなどを選りすぐって掲載しているわけですから、セッションを行う際の基本的なデータについては心配する必要がなくなるわけです。
 それが数千円で手に入るというのは、オリジナルのマスタースクリーンをカスタマイズする労力と比べると破格です。
 当然、予約済みです。
 もう一点、私が中学生の頃(30年以上昔)、T&TのGMをしていましたが、マスタースクリーンは『ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード』のあの美しい女性の描かれているバインダーでした。
 理由は完全にあの美しいアートワークに惚れ込んだというものです。
 内側にルーズリーフを挟んで、そのルーズリーフにコピーしたルルブのデータを糊で貼り付けて使っていました。
 これは、高校生になって初代ウォーハンマーのGMでもこのスタイルでした。
 肝心の『ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード』は、残念ながら一度もプレイする機会はありませんでしたが(笑)。
 以上、私の昔話になりましたが、他の方々のマスタースクリーン話も楽しみです。
 次回の『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!の配信を楽しみにまっています。

(岡和田からの回答)
 早くからおたよりをいただいていたのですが、紹介が遅くなって申し訳ありません。これらくら!さんは、このおたよりの後、実際に『ゲームマスター・スクリーン』を購入してくださった模様ですが、水波さんとはまた違ったマイスターですね。
 マスタースクリーンは自作ができるので、最初は買えないから自作。後に究極のスクリーンを求めて自作、となるパターンが多いような気がします(笑)。私的利用の範疇であれば、飾るアートもさほど気にせずに済むというのも大きいかもしれません。
 『ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード』(遊演体、1989年)も、初版のバインダー方式のスクリーンは立派ですが収録されたルールが破れやすいので、複数のバージョンが出ましたね。Bローズの加藤直之さんのジャケット・アートは、フェルメールやレンブラントを彷彿させますが、『ローズ・トゥ・ロード』が復刻した時のスクリーン『忘却の呪縛、近づく頃』(アークライト、2004年)はまた別格のイメージになっており、こうしたアートを比較していくのも楽しいですね。

 最後に、読者の皆さんへ。Twitterで好評だった(?)金言を贈って、この項を締めましょう。
「マスタースクリーンって、何を隠すためのついたてなの?」
「にじみ出てしまうゲームマスターのロマンを、だよ」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ウォーハンマーRPG』
・ルールブック ¥7,480(印刷版/電子書籍版共通)
・スターターセット ¥3,300(印刷版)/¥2,750(電子書籍版)
・ゲームマスター・スクリーン ¥3,850(印刷版)/¥3,300(電子書籍版)
・ライクランドの建築 ¥770(電子書籍のみ)
・比類なく有益なスラサーラの呪文集 ¥550(電子書籍のみ)

全て、通販サイト『コノス』にて発売中
https://conos.jp/products-tag/warhammer_rpg/

出版社:ホビージャパン(HobbyJAPAN)

2021年10月19日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15

 2021年10月7日配信の「FT新聞」No.3179に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15」が掲載されています。シナリオ作成の続き、『ゲームマスター・スクリーン』の紹介とメタテーマについても掘り下げています。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15

 岡和田晃
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 魔狩人フレイザーはピストルを抜き放つと、いきなり相手に突きつけた。
 ネズミ捕りのラッテンファンガーは真っ青になって手を挙げ、
「まだ終焉の刻(エンドタイムズ)の訪れには早いですぜ、旦那」
 震えながら、そう吐き出している。フレイザーは楽しそうに笑いながら、
「その話は、以前ライクヴァルドでも聴いたことがある。双尾の彗星と混沌の八芒星のあざをもった子供が生まれたら終焉が訪れる、とかなんとか。どうせ、迷信にすぎんが」
「なぜわかるんです、旦那」
「そういう噂を流した張本人たち、魔女やら似非魔術師やらを火刑にかけてやったからだ。見てのとおり、"終焉"どころか、こちらはピンピンしている。偉大なるシグマーの御加護というわけだな」
 横目でわたしを見てくる。あからさまな嫌味だが、気づかないふりをしておく。

 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より


●強力なエンハンスメントをご紹介!?

 本連載の前回、『ウォーハンマーRPG』日本語版公式サイトから無料ダウンロードできる『ライクランドの冒険あり!』を使ったシナリオ作成案を書きましたが、なんと仲知喜さんから、強力なエンハンスメントを寄せていただきました。以下、そちらをご紹介いたします。
「●アドベンチャー・フックからシナリオを作る」(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/483417873.html)への注釈としてお読みいただければ幸い。

 下水道に隠された抜穴を配置、『ライクランドの建築』のお好みの建物の床下(地下室)に繋げると(一本道でOK)マップを描く時間が大幅に省略できると思います。賊が抜け穴を繋げた理由と、建物内部の状態を決めて、遭遇を配置すると完成です。

 なんともエレガント。ベテランならではの、無理のない省力化の美学が冴えていますね。そのまま使えてしまうと思います。というか、私なんかの案よりもずっと上手い……。加えて、その後の展開まで考えてくださいました。

「時、すでに遅し!」 
屋敷は賊に襲撃されていた。
遭遇1:見張り役。運び出し中の盗品。住人の遺体。 
遭遇2:探索中の賊。
遭遇3:賊と内通者。(賊は何を狙っていたのか?)
演出せよ:2階の窓をぶち破ってスケイブンと共に賑わう街路に飛び降りてください。

 こんなにシンプルなのに、具体的かつ映像的に情景が見えてくるのだから、さすがというほかありません。というわけで、2本もシナリオが出来てしまいました。このように、フックからシナリオをデザインする訓練を積んでおくと、RPGの設定を読んだだけで、瞬間的かつ自動的にシナリオが作成できるようになります。その境地にまで到達できたら、しめたもの。
 最小の労力でマスタリングができるだけではなく、プレイヤーが思わぬ動き方をしても、できるだけそれに合わせてシナリオの方を可変的な形で動かしていく必要ができるからですね。RPGのシナリオデザインには、様々なやり方がありますが、こと『ウォーハンマーRPG』に関しては、基本となる設定を隅々まで読み込んでおくのが、回り道のようでいて近道なのです。何より楽しい!

●神は細部に宿る(混沌の神々も例外ではない)

 さて、『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』と、『ウォーハンマーRPG スターターセット』が相次いで発売になりました。スターターセットはボックスなのですが、無事に中国の製造工場から届いたようで、私としてもほっとしています。
 ゲームマスター・スクリーンは4面印刷のかなり豪華なもので、表面はすべてイラストになっており、描かれたヴィジュアルのきめ細やかさは一見の価値があります。
 とりわけ英語圏のRPGイラストは、「神は細部に宿る」というばかりに、できるだけきめ細やかに情景を可視化させていくことこそが、重要な評価軸になっているように思われてなりません。
 『ウォーハンマーRPG』は近世をモチーフにしたRPGですから、それこそピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボス等の16世紀のフランドル絵画が、一つの規範になっているのではないでしょうか。このあたりの細部を考えるためには、森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」 遊びの図像学』(未來社、1989年)がお勧めです。
 そこまで古典的なものに遡らずとも、同じゲームズ・ワークショップ関連のゲーム作品では、めでたく日本語版も復活を遂げた『ファイティング・ファンタジー』シリーズのイラストレーションが典型的ですね。世界を隅々まで味わってみてください。

●ゲームマスター・スクリーンの裏面のデータ

 ゲームマスター・スクリーンの裏面には、実際にゲームに役立てられるチャートが、これでもかというばかりに並べられています。
 向かって左側から1〜4面としておきますと、1面には「オールド・ワールドの一般的な名前」、「キャラクターの特徴、動機、癖の表」、「全技能一覧」が列挙されています。これでもうキャラクター作成の時に困ることはありません。GMにとっては、NPCをランダムに決めたい時にまず、役立てられますね。
 2面には、主にテストや戦闘の時に使うチャートが集められています。「難易度、対抗テスト、成功レベル、異能とテスト」、「優位」、「運命点、執念点、幸運ポイント、決意ポイント」、「射程」、「命中部位」、「支援」、「心理ルール」といったチャートが揃っています。これらは頻繁に参照すること請け合いですが、「心理ルール」は基本ルールブックとの異同があります。どうも『ウォーハンマーRPG』第4版は、頻繁にエラッタを当てるというよりも、サプリメントごとにルールをアップデートしていく方針のようですが、日本語版では『ルールブック』側の記述を訳載したうえで、訳注として『ゲームマスター・スクリーン』原著の記述を紹介しています。こうすることで、GM側がどのルールを使うのかが、自由に決められるというわけです。
 3面には、主に街中や旅路で参照するチャートが集められています。「貨幣、収入、売却、入手可能度、頻出するアイテム」、「移動」といった具合に。「経験点付与の手引、待望の達成から得られる経験点」、「キャリアの満了、各種成長にかかるコスト」と、成長に関したルールもまとめられています。下段には「各状態リスト」や「よく登場する状態」がまとめられています。これは2面下段の「心理ルール」と並べて使うと便利なものですね。
 4面には、「武器と盾」、「鎧」のチャート。日本語版ルールブックではエラッタが出てしまった箇所ですが、こちらのチャートではきちんと修正済みですからご安心ください。下段には「「サイズ」のルール」についての記載もあり、これもまた下段つながりで戦闘に使うと便利なものですね。

●『ゲームマスター・ガイド』の第1章

  『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』には、32ページのサプリメント『ゲームマスター・ガイド』が付いています。こちらを「本命」として購入する人も少なくないのではないでしょうか。その期待に応えて恥じない、充実の一冊となっています。
 第1章は「ウォーハンマーたらしめるもの」。GM目標および私信が細かに綴られています。意外と気づかないかもしれませんが、ここにはゲームの思想がよく反映されていて、つまりは「オールド・ワールドらしさを出すためには」というのが主眼にあるのですよね。
 私自身も書いたことがありますが、ゲームマスターの技巧というのは一般化できる部分が少なからずありまして、その意味ではよく言えば総花的な、悪く言えば八方美人なガイドが好まれやすい面があります。
 それはそれで大事なのですが、このゲームマスター・ガイドでは、あえて最初に「オールド・ワールドに命を吹き込む」、「オールド・ワールドをさらけ出す」ことが第一に置かれているのですね。
 つまり、オールド・ワールドらしさをどうやったら演出できるか、そこに特化した記述になっているのですね。
 初心者GMを相手にしていないというわけではありません。
 ただ、『ウォーハンマーRPG』でGMをするということは、必ずしも勧善懲悪なストーリー展開が是とされるわけでもありませんし、ラスボスとの戦闘を回避して生き延びることが最良の選択となるケースも珍しくありません。
 そのぶん、GMとしての基準がゆらぎやすく、円熟の技量が求められてしまうわけですが、そこをサポートするために書かれている、というわけだと思います。GMが「オールド・ワールドらしさ」をきちんと掴んでいれば、それは自ずからGMのスタンスにも反映してくるわけで、公正な裁定のためには、まず世界の理解が必要だという前提であるわけです。日本という環境でRPGをしていると、意外と忘れがちなポイントではないかと思います。

●メタテーマと「終わり」の問題

 次いで、「ウォーハンマーRPGのテーマ」が語られます。これはいわゆる、メタテーマと言われるもの。私が編集した『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード)もたまたま同時期に出たのですけど、そちらでも書いたのですが、RPGには個別のシナリオにおけるテーマのほか、世界観やシステム全体の方向性としてのテーマというものが存在し、それを私は「メタテーマ」と呼んでいるわけですね。
 『ウォーハンマーRPG』の場合は、「階級闘争(富民 対 富民)」、「信条(秩序 対 混沌)」、「近代化(都市 対 農民)」、「派閥抗争 (我ら 対 彼ら)」、「宗教(教団 対 教団)」の5つのメタテーマが明確に設定されています。言い換えれば、大半のシナリオは、これらのメタテーマのどれかの枠を意識すると、オールド・ワールドらしさが出る、というわけです。
 これは他のテーマを否定しているわけではありません。「愛と友情」や「夢と希望」のようなテーマがあってもよいのですが、それを表現する過程で「派閥抗争」のメタテーマにはまるようにすると、シナリオとして美しくなるという話なのですね。このあたりは豊富な具体例が示されているので、ぜひ現物をご参照ください。
 さて、「メタテーマ」が行き着くと、オールド・ワールドは最終的にどうなるのか? そうした問題へと行き着きます。地を這い泥水を啜る貧民だった冒険者たちが、いつしか栄誉ある英雄にまで成長し、世界の命運を握ることになるのだとして、そうして命運を握られた側の世界は、いったいどうあるのが正しいのでしょうか。
 『ウォーハンマーRPG』は初版の頃から、混沌の勝利と世界の滅亡は避けられず、必然であると言われてきました。それはある面では正しく、別の面ではまったくの嘘なのです。すべてが決定された世界で待ち受けているのは、何をやっても無駄という諦念、ニヒリズムにすぎません。しかし、もしそうだとしたら、RPGでプレイする意味なんてないでしょう。
 ではどうすべきか。答えは決まっていますよね。オールド・ワールドではそれは「終焉の刻(エンドタイムズ)」として表現されています。
 これも『ウォーハンマーRPG』だけではなく、例えばモダン・ホラーを扱う『ワールド・オブ・ダークネス』シリーズでも「タイム・オブ・ジャッジメント」(http://www.a-third.com/trpg/products/wod/toj.html)という設定がありました。世界を無限に拡張していくのではなく、どこかで「終わり」を設定することで、各々の物語にメリハリをつけるという技法のことです。『ワールド・オブ・ダークネス』の場合は、いったんシリーズの展開にも決着をつける形になりました。『ウォーハンマーRPG』の場合、シリーズ展開と「終焉の刻(エンドタイムズ)」がどこまで連動していくかは、まだはっきりと私には見えない部分がありますが、どんなに長いキャンペーンもいつかは終わるもの。
 そういった意味では、公式展開とは別に、各々が自分たちの物語の「終焉の刻(エンドタイムズ)」を考えないわけにはいかない。これは西洋世界では馴染みの深い考え方で、そもそも暦法という概念自体、最後の審判までの時間を計算するために発達したという面があるのですね。
 それを思いきって世界観にまで落とし込んでしまったのがオールド・ワールド。さすがこのRPGの主役だけあります。

●特殊な商品!?

 一般に、ゲームマスター・スクリーンというのは特殊な商品と言われがちです。そもそも、ゲーマーではない人にとっては何に使うものかわからない。書籍流通・玩具流通いずれの形を取るにしても、それ単体ではゲームができない、単なる厚紙のようにも見える。メイン・ターゲットはゲームマスターですから、どうしても流通量が限られる、などなど。
 『トンネルズ&トロールズ完全版』(グループSNE、邦訳2016年)、『ゴブリンスレイヤーTRPG限定版』(ソフトバンククリエイティブ、2019年)等、ボックス・タイプのRPGに同梱されたり、サプリメントや雑誌の付録としてスクリーンが付いてきたりするのも珍しいことではありません。
 ではどうして、かくもスクリーンは根強い人気があるのでしょうか? そもそもコロナ・ウイルス禍において、対面でのセッションが困難になっているにもかかわらず、オンラインでは(ほぼ)使えないスクリーンが出るのでしょうか? 前回募集した「あなたのお気に入りのマスター・スクリーンと、その理由は何ですか?」には、ありがたいことに熱い回答をたくさんの方からいただきましたので、次回はそちらを紹介しつつ、ゲームマスター・スクリーンについて考えていきたいと思います。

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■好評発売中
ウォーハンマーRPG スターターセット ¥3,300
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ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン ¥3,850
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出版社:ホビージャパン(HobbyJAPAN)
発売日:2021年10月1日