2024年03月23日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.26

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.26

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

 「魔力の風」は、複数の色が乱れて混じり合い、影と心に歪みをもたらしている。
 ――幻視したこの台座には、きっと何かある。
 いや、ウルサーンのハイ・エルフにちなんだ何かが、この像には関係しているのかもしれない。
 わたしはいったん、「魔女の目」を介して“視る”のをやめた。
 霊をも恐れ、ハイ・エルフを憎悪する何か。ダーク・エルフ。その痕跡、あるいは気配を感じたからである。
 奴らにまで目をつけられてはかなわない。わたしはチーズ店をそっと離れることに決めた。霊の相手は、それこそ魔狩人に任せておこう。
 ――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●新作サプリメントが2冊同時発売!

 2024年3月下旬、いよいよ『ウォーハンマーRPG』第4版日本語版の新作サプリメントが発売になります。しかも、『武器を掲げよ!』と『帝立動物園』の二段構えです。これらは第2版の『オールド・ワールドの武器庫』と『オールド・ワールドの生物誌』に相当する作品で、本連載をお読みの方にとっては必見といってよいでしょう。
 すでにホビーショップや各種の通販サイトで予約が始まっています。玩具流通であるため書店では手に入らないことにご注意ください。
 以下、まずは裏表紙の紹介文をご紹介し、概要の解説にかえたいと思います。詳しい内容紹介については、本連載の次回以降をご期待ください。

 『武器を掲げよ!』には、『ウォーハンマーRPG』で戦士のキャリアを歩むキャラクターのための新たな選択肢と手引きが用意されている。本書では、オールド・ワールドで戦闘に関わる人々の種類と専門知識を増やすのに活用できる能力に焦点を当てている。
 この144ページの本には以下の内容が含まれている:
・ミュルミディア教団についての章。軍略の女神を崇拝する人々の信仰と実践について、これまでに出版された中で最も包括的な手引きを提供する。
・多様な兵士たち。栄光ある帝国州軍兵の一般的な経歴を詳しく説明し、さらに小銃兵、斧槍兵、大剣兵などの新しいキャリアが用意されている。
・オールド・ワールドの戦争における傭兵の役割の歴史。ティリア人のキャラクターや“戦争の犬ども”でのプレイをサポートするための背景とルールが含まれている。
・エンパイアの名高い騎士団のガイド。世俗騎士団や聖堂騎士団へ入団するか、自由騎士として単独で活動するかの選択肢が含まれる。
・武器と防具の拡張されたリスト。剣や斧などの基本的な武器から、重りつきネットやパヴィースなどの一風変わった特殊な装備まで。
・車両や建物内で遮蔽を取るためのルールと――その一方、破壊兵器で車両や建物を爆破するためのルール。
・選択ルールおよび追加ルール。新しい冒険外活動、負傷の代替ルール、騎馬戦闘、優位の使い方、追撃、異能。

 『帝立動物園 ウォーハンマーRPG生物誌』は、最果て山脈のカラク=カドリンから、南国ティリアの都市ミラグリアーノに至るまで、オールド・ワールドをはるばる巡った三度にわたる調査遠征に基づいた怪物寓話集にして旅行記。
 本書には、オールド・ワールドに生息する珍獣奇獣、怪物魔物、合わせて60種を上回るクリーチャーの細目が羅列され、さしもの凄腕冒険者パーティをも武者震いさせること請け合いである。
 さらに、かねて作成済みのキャラクター6名が、いずれも独特な技能と異能、そして秘めたる過去を抱えて、出番を待っているのだ。
 オールド・ワールドに跳梁跋扈する甚大この上ない脅威との対決に主眼を据えたキャンペーンに投入するには、まさしくうってつけの陣容である。
 この136ページの本には、以下の内容が収められている。
・知識と少しばかりの栄誉を求め、オールド・ワールド中を探検する冒険者一行の旅路を描いたスリリングな物語。
・冒険者の行手に立ちはだかる数十種ものクリーチャー。
稀少ではありながら危険至極なプレイトンから、“紅蓮の大鎌”カレダイア――暴威をふるう伝説のドラゴン――のように、個体名が広く知られているモンスターに至るまで。
・新たなクリーチャー特徴。冒険者パーティへの新たな挑戦状が、随所に立ち現れる。
・クリーチャー、とりわけ“魔力の風”に触れた存在から採取した錬金術の材料を保存し、販売するためのルール。
・作成済みのキャラクター6体。君たちがすぐに冒険に乗り出せるよう、あらゆる情報が書き込まれている。

●『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』紹介の続き

 さて、本連載の前回(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/502574244.html)では、『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』(以下『コンセプトアート』)をご紹介していきましたが、そちらの続きも忘れずに記していきたいと思います。

 『コンセプトアート』は、Creative Assemblyが開発したPC戦略ゲーム『Total War:WAHAMMER』シリーズ三部作のコンセプトアートを、それこそ開発段階のものから、テクスチャ研究、フルレンダリングされたものまで、幅広く紹介していくという内容となっています。
 ミニチュアのイメージを参考にしつつ、それをデジタルに落とし込む際に、どの部分を補っていくのか、そうした試行錯誤がはっきり伝わってくる内容です。

●グリーンスキン

 ゴブリン類のことです。悪たれ平原(バッドランド)の情景から、“皆殺しの”アズハッグ、“鉄肌の”グリムゴールといった有名なネームド・ゴブリン、さらにはトロールやオークのアート、乗機たるウルフやワイヴァーン、さらには凶暴なスクイッグ(ゴブリンが飼育する、肉食キノコ)までもがよりどりみどりです。グリーンスキンの特徴は、造形レベルでユーモアに満ちていること。それはシタデル・ミニチュアの特徴でもありました。

●ヴァンパイア・カウント

 マンフレッド・フォン・カーシュタインや、見目麗しきイザベラ・フォン・カーシュタインといった著名なキャラクターから、ストリゴイ・ヴァンパイアや、ヴァンパイアのネクロマンサーといったサブカテゴリーも解説。ヴァンパイア以外にもワイト・キングにケルン・レイス、そして特大のゾンビ・ドラゴンといったアンデッド群の造形が堪能できます。
 ヴァンパイア勢の細部をデザインするにあたって、スタッフはミニチュアゲームの設定書であるアーミーブックを読み込んだそう。ゴシック調のムードを活かしつつ、イメージをどう落とし込むんだかの試行錯誤が垣間見えます。

●ブレトニア

 騎士と淑女の国。アーサー王伝説からの強い影響を受けており、1100年代から1200年にかけてのフランスやイギリス等、西ヨーロッパ各国を思わせるスタイルです。
 グレイルナイトやパラディンといった騎士たちや、乗機のヒポグリフにペガサス、さらにはバーディング(馬用鎧)をはじめ武装のイラストが充実しています。
 威風堂々たる“獅子心王”ルーエン公に、エンパイアではまずお目にかかれない美貌のフェイ・エンチャントレスを鑑賞できるのも眼福だと言えるでしょう。

●ウォリアー・オヴ・ケイオス

 『ウォーハンマー』の特徴的なモチーフであるグリムダークな側面を体現するのが、“永遠に選ばれし者”アーケィオンをはじめとする混沌の戦士たちでしょう。
 キメラやマンティコア、ケイオス・ウォーハウンドにケイオス・チャリオットといった混沌の乗機、さらには混沌の荒れ野のねじくれた木々まで、確固たる存在感を発揮しています。グリムダークを単調さに結び付けないための工夫がよくわかります。

●ノーシャ

 混沌の戦士たちとヴァイキングをミックスしたような勢力。混沌風にアレンジされたヴァイキング・シップ、いかにも邪悪なマローダー・チャンピオン、さらにはノーシャン・ウォーマンモスのデザインを確認することができます。

●ウッド・エルフ

 自然の風景をそのまま身体に取り込んでいるのがウッド・エルフ。制作チームは、中央ヨーロッパにある古代の森をリサーチして、「長いこと手つかずとなり、地面全体が分厚い苔で覆われている森」のイメージを背景に取り入れたという。木の幹を利用した攻城塔、木の葉のような帆をした船、さらにはフォレスト・ドラゴンのユニークなイメージが想像を駆り立てます。

●ビーストマン

 エンパイアでも頻繁に遭遇する敵役、それがビーストマンですね。動物と人間、双方の身体構造を参考にしながら、筋肉質でワイルドなイメージを押し出すために、スパイクや鋲を多用したとのこと。ビーストマンのテントやゴミ溜め、トーテムや巨大な戦角笛がヴィジュアル化されています。

●リザードマン

 ここから2016年の『Toral War: WARHAMMER II』でフィーチャーされた設定群の解説となっていきます。
 まずはリザードマン。恐竜のようなイメージだけではなく、メソアメリカや南アメリカの要素を取り入れているのが特徴的。スキンク、スラン、カメレオンスキンク、ザウルス、クロキシゴールの5つの種族が設定されており、色とりどりの装飾や装備が細かなところまで表現されています。

●ハイ・エルフ

 魔術の源流たる“魔力の風”と縁深いのがハイ・エルフ。なかでも白の塔ホエスのロア・マスターであるテクリスと、彼の双子の兄弟である守護者ティリオン、暗い背景を持つ“影の王”アリス・エナールについて、それぞれ解説されています。ハイ・エルフのドラゴンプリンスやメイジの服装も、しっかりわかります。

●ダーク・エルフ

 ハイ・エルフの堕落した親戚がダーク・エルフ。紫がかった黒染めの鉄を基体とする鎧のデザインに迫力がありますが、レジェンダリーロードのモラスィ、シュープリーム・ソーサレスらの妖艶なイメージにも圧倒されます。

●スケイヴン

 ご存知、邪悪な鼠人間のことですが、着ぐるみのようなアニメーションではなく、引きつったような動きをさせるように注意したそう。下級のスケイヴンを率いるレジェンダリーロードたちも個性豊かですが、ラット・オウガやヴァーミン・ロードら亜種のヴィジュアルが提供されているのも嬉しいところ。

●トゥーム・キング

 古代エジプト風の勢力で、ファンの根強い要望によって『Toral War: WARHAMMER II』にも登場することとなったそうです。トゥーム・キングの目覚めのシーンから、セパルチュラル・ストーカーが先頭に立った侵攻の場面まで、ドラマティックなシーンの数々が印象的です。ウォースフィンクスやカタパルトのヴィジュアルも個性的ですね。

●ヴァンパイア・コースト

 『Toral War: WARHAMMER II』の拡張パック『Curse of the Vampire Coast』の設定画を紹介。完全なアーミーブックが存在しないため、海戦ミニチュアゲーム『ドレッドフリート』を参照しつつ設定が練り上げられていったというもの。海賊のイメージのみならず、アンデッドの造形とのブレンド具合がユニーク。

●ナーグル

 ここからは『Toral War: WARHAMMER III』でフィーチャーされた要素が解説されます。特に混沌の神々ですね。
 腐敗の王ナーグルについては、丸みを帯びたフォルムに緑や赤の色合いをうまくまぶすことで、グレーター・ディーモンであるグレート・アンクリーン・ワンをはじめとした、悪役における特有の感触を表現しようとしたことがわかります。

●ティーンチ

 歪みを作りし者ティーンチは、混沌の神々のなかでも魔力に長けていますが、とはいえピンク・ホラーやブルー・ホラーを射撃ユニットにするなど、システム上の役割分担が一面敵にならないようにしつつ、配色を極彩色にすることで、視覚的に埋もれないように工夫したといいます。

●スラーネッシュ

 性的な逸脱と過剰さを体現したスラーネッシュを表現するにあたっては、紫を基調にした“しなやか”なイメージが重視され、豪華でありながら卑猥にすぎると規制されないようなバランスが重視されているのがわかります。テレインである「誘惑の六円環」の断面図はインパクト大。

●コーン

 破壊と戦争を体現する血の神コーン。赤と金を中心にしたギラついたヴィジュアルに幅を持たせるため、コーンの信者である定命者のユニットが追加されました。シリーズのなかでも、ヘヴィメタル・バンドのイメージにもっとも近いのがコーンだとか。ブラッドレターやジャガーノートといった、RPGでもお馴染みの面々のヴィジュアルは必見。

●キスレヴ

 ロシアや東欧の風俗をベースにしたキスレヴは、『ウォーハンマーRPG』第2版の『Realm of the Ice Queen』(未訳)等で詳述されてきた地域です。コンピューターゲームとしては新規のコンセプト・デザインが多いため実装が大変だったようですが、エンパイアとはまた異なる家々や人々のデザイン、乗機に用いるウォーベアや、エレメンタルベア等のモチーフはとても魅力的です。

●オウガ・キングダム

 オウガは巨大なユニットで、恐ろしい突撃能力を秘めています。本書においては、オウガの集落やキャンプ、アゴ穴といったテレインのスケッチを収録することで、そのスケールの大きさを垣間見せようとしています。

●大キャセイ

 中国や東南アジアをモチーフにした地域で、RPGではほとんど舞台に選ばれることのない場所であるため、カラーのヴィジュアルでそれらが確認できるのは貴重です。RPGでキャセイの描写をしようとしたら、まず確認する資料になるのではないでしょうか。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』
好評発売中
価格:5000円(+税)
公式サイトの紹介頁
https://hj-trpg.com/news/detail.html?id=1162

『ウォーハンマーRPGサプリメント 武器を掲げよ!』
『ウォーハンマーRPG生物誌 帝立動物園』
発売日:2024年3月
価格:各5000円(+税)

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

2024年03月05日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.25


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.25

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

「それで?」
 わたしが問い詰めると、霊は「ひぇっ」と言ったきり、不意にかき消えてしまった。
 霊は定命の者を恐れない。ただ、羨望し恨みをぶつけるだけである。
 市長の像の裏には、何かが隠されているのは間違いないだろう。
 わたしは“魔力の風”の乱れをひしと感じた。いや、“視えた”。
 しかし、この像の台座そのものには、何ら邪悪な印象を受けない。おそらくはエルフ由来だろう。
 確かにエルフは鼻持ちならない連中だけど、生者へ憎悪をぶつけて恥じない、根本的な邪悪とはまた別だ。
 静寂のなか、ざわざわと見えない風が揺れる。
 ――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●お次は『Imperial Zoo』と『Up In Arms』

 不定期連載に移行してから、およそ1年2ヶ月ぶりの「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」となります。
これまでの内容については、Analog Game Studiesに再録されておりますので、必要あればご確認いただければと存じます。

https://analoggamestudies.seesaa.net/category/27608570-1.html

 幸い、現状の日本語版では、既成のシナリオだけでも、遊び続けられるくらいの分量のシナリオは提供されており(シナリオ集が、『ユーベルスライク冒険集』、『眠れぬ夜と息つけぬ昼』、『ライクランド綺譚』の3冊が出ています)、ぜひトライをいただきたいのですが、今後のラインナップとしては、『Imperial Zoo(帝立動物園・仮題)』と、武器や装備に関するサプリメント『Up In Arms』があがっています。
 このうち前者は、待兼音二郎さん・見田航介さん・阿利浜秀明さん・田井陽平さん、そして私のチームが翻訳を担当しておりまして、待兼さん曰く、「こちら、2版の『オールド・ワールドの生物誌』の4版版かと思いきや、エンパイア領内に加えてブレトニアへティリアも含めた調査旅行の記録でもあり、リプレイの一種として読むこともできます。調査旅行の参加メンバーの人間関係にもじつに奥深い設定があり、冒険の終章に至って判明する、ほろ苦い、届かぬ思いのごときもの、これがじつに唸らせられるものとなっておりますので、ぜひ期待してお待ちください」ということで、今しばしお待ちいただければと存じます。

●最近の関連ニュースを!

 「FT新聞」ではすでに、これくら!さんがNo.3971と3978で、ユーザーの立場から「ウォーハンマーRPGビギナーズハンドブック」を書かれており、第1回(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/501889942.html)では世界における冒険者としての立ち位置、第2回(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/501889954.html)では『ウォーハンマーRPG』のクラスやキャリアの詳細が記されており、よくまとまっているため、セッションにおけるサマリーとしても活用できそうです。
 『ウォーハンマーRPG』はFoundry VTTをはじめ、オンラインセッションツールを駆使すれば、かなりリッチな環境でオンラインセッシ曰くョンを楽しむことができ、SNSでは、そうしたセッションの光景をしばしば目にすることができます。
 しかし、オフラインもいいもの。公的な関連ニュースで外せないのは、2023年11月より、アシェットコレクション・ジャパンにて、週刊ウォーハンマーこと『ウォーハンマー40,000:IMPERIUM』の刊行が始まっていることでしょう。これは週刊分冊百科形式で、毎週、アーミーやペイントキット、解説記事をコレクションしていくというもの。『ウォーハンマー40,000』を比較的安価で始められるスグレモノで、私も定期購読していました。ファンタジーではなくSFがテーマの作品ではありますが、グリムダークな世界の色調は共通しています。
 なお、グリムダークとは、「残酷で暗い」SFやファンタジーを解説するための用語として英語圏では定着した感がありますが、もとは『ウォーハンマー40,000』発祥の言葉です。

●『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』が出たぞ!

 『ウォーハンマーRPG』ファンにとり外せないのは、『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』(ポール・デイヴィス著、傭兵ペンギン訳、ホビージャパン、以下『コンセプトアート』)が発売になったことでしょう。
 A4変形ハードカバー192頁フルカラーの豪華版ですが、コノスとDLsiteにて、PDF版の発売も開始されています。ヴィジュアル面については、公式サイトから試し読みをすることが可能です(https://hj-trpg.com/news/detail.html?id=1162
 すでに「Role&Roll」Vol.227の「Brand New Games」でも取り上げられているとおり、同作はCreative Assemblyが開発したPC戦略ゲーム『Total War:WAHAMMER』シリーズ三部作のコンセプトアートをまとめたものです。
 開発裏話やコンセプトの紹介、さらにはフルレンダリングされたアートは美麗で、『Toral War』のユーザーに向けたものですが、実質的には『ウォーハンマーRPG』のサプリメントと呼んでしかるべきものでしょう。
 なぜか? それは、オールド・ワールドで暮らす各種族やクリーチャーの実態が事細かに紹介されている以上に、有名NPCたちが見事にヴィジュアル化されているからですね。『ウォーハンマーRPG』に親しんだことのある方であれば、版を問わずに愉しめること、請け会いです。
 『ウォーハンマーRPG』は歴史のあるゲームですが、一方で、随時、関連作が展開され、変化というよりも細部の具体化が進められていく、そのようなタイトルにもなっています。
 この連載でも書いたことのある話ではありますが、展開が盛んなRPGでは、しばしば「More Rules, More Powers!」というスタンスが取られます。より強力なデータの提供をもって、サプリメントの購買動機とするものですね。
 私はそうしたスタイルを必ずしも否定するものではないのですが、パワーのインフレにはいつか限界が来て、抜本的なリセットがなされてしまい、その際のガッカリ感が半端ないものであることも知っています(笑)。
 加えてRPGに限らず『ウォーハンマー』は、ワールドワイドに展開されている作品であり、かつて揶揄されていたような「イギリス人のゲームだから、エルフがイギリスに準えて贔屓されている」なんていうイメージは、もはや程遠いものになっています。
 こうしたなか、今回の『コンセプトアート』は、これまで緻密な文章で表現されていた世界を、アートの角度から捉えるとこうなっていたんだ、と再発見できる喜びがあります。
 この際に痛感されるのが、ミニチュアとの連動の強みです。『ウォーハンマーRPG』は作品世界をとても大事にする作品で、フランチャイズ展開の際、イメージの統一性は慎重に保たれています。これは私自身が、2版の公式リプレイを「GAME JAPAN」誌で連載した際、強く実感したことでもあります。

●エンパイア

 それでは具体的に内容を見ていきましょう。序文に続くのは「エンパイア」、『ウォーハンマーRPG』の主たる部隊についてですね。
 ここでは皇帝カール・フランツ、金属の魔法体系を担う最高主席魔導師バルタザール・ゲルト、さらにはエンパイアのウィザード、トループ、ノーブル等のアートが掲載されています。
 カール・フランツはまさにスーパーヒーロー、バルタザール・ゲルトはなかに人がいることさえ定かではないようなミステリアスな雰囲気が出され、トループは“傾奇者”と形容すべきランツクネヒト(ドイツ傭兵)風か。
 グッと引き込まれますが、解説コメントも面白く、テクニカル・アート・ディレクターのクリス・ヴォラーによれば、都会の大きな建物と田舎の要素が対照的なエンパイアの背景をデザインするにあたり、「慎重に誇張するのが鍵となった」と述べているのが興味深いところ。人物を描くにあたっても、同様の配慮がなされていると語られています。
 建物のディティールについても、実際のスケッチを添えたうえで、鳩罠・物干し紐・屋根窓・煙突等まで作り込まれた複雑さを擁していることがわかるようになっています。
 また、『ウォーハンマーRPG』はスチームパンクの要素が盛り込まれており、上記で動く戦車スチームタンクのヴィジュアルも、ばっちり紹介されています。

●ドワーフ

 続いてドワーフです。中近世ヨーロッパ風のファンタジーでもっとも大事なものの一つが、「ドワーフがちゃんと書かれていること」でしょう。これはイメージの素となる神話や伝承に、直結する要素だからです。
 クリス・ヴォラーはミニチュアゲームのアーミーブック(背景資料)を読み込むとともに、それをビデオゲームに落とし込むうえで、ヴァイキングや中世初期のヴィジュアルを参照し、その要素を盛り込んでいます。
 やはり、ルーンはヴァイキング由来のようですね。スレイヤー(トロール殺し等)はケルトの戦士たちのファッションをもとにしているとのことです。
 ドワーフの髭の編み込みが幾パターンも示されるのは、ドワーフ・ファンにとってはたまらないものがありましょうが(笑)、ドワーフの基地や醸造所のデザインは、それこそトールキン『ホビットの冒険』や『指輪物語』の映像版からの影響も感じさせます。
 スチームパンク要素もばっちりで、ドワーフのジャイロコプター(蒸気ヘリ)や各種大砲のカラーコンセプトも示されていますよ。

 それでは次回はクリーチャー。グリーンスキン(ゴブリン類)やヴァンパイア・カウント等の設定も見ていくといたしましょう。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート
 著者:ポール・デイヴィス
 翻訳:傭兵ペンギン
 定価:本体5,000円(税別)
 A4変形ハードカバー192頁フルカラー
 公式サイト
 https://hj-trpg.com/news/detail.html?id=1162

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

初出:「FT新聞」No.3991(2023年12月28日配信)

2022年10月19日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.24

 2022年10月6日配信の「FT新聞」No.3543に、「『ウォーハンマー RPG』を愉しもう!」Vol.24が掲載されました。今回は英語版の新作『ザルツェンムント』や、待望の日本語版新作サプリメント『ライクランドの記念碑』について紹介しています!

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.24

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

 苦悶の表情を浮かべた霊は、問わず語りに、故郷グリュンブルク南部にいた頃、ホルガー・ラウク市長の立像に悪戯した経験を話し出す。
「石を投げつけ、ゴミを投げつけ、時にはもっと“ステキな”ものまでをもぶつけてきた。
 ケバケバしく飾られていた像は見る影もない。
 悪臭紛々とし、金目のものは引き剥がされている。よほど腹に据えかねていたのだろう。
 ただ、やりすぎると市長の霊が戻ってくると及び腰な連中がいたのも確かで、実際のところ像の影はおかしくないのを見て、それで……」
 わたしは困惑した。幽霊が幽霊怪談を語り始めたのか? それとも、市長の幽霊との対決、ということなのか?
 ――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●お待たせしました

 少し間が空いてしまいました。当初から本連載は隔週ペースというハイペースで書きたいことをあれこれ綴って参りましたが、文字数からすると“異常”な頻度を少しセーヴしつつ……他の連載や企画と並行する形で、『ウォーハンマーRPG』についてもじっくり語っていければと考えますので、どうぞ長い目で見てやってください(『ユーベルスライク冒険集』についても語り足りないですし)。

●新作サプリメント、これが面白い

 英語版の新しめのサプリメントで岡和田のお気に入りは、『ザルツェンムント:塩と河の都(Salzenmund: City of Salt and River)』です。
 ザルツェンムントとは、エンパイア北部の両方ノードランドの首都で、名目上の君主はテオドリック・ガウサー選帝侯ですが、勅許自由都市として、アルトドルフのように権謀術数が蠢くというよりは、「半分ノース人」と揶揄されるような、のびのびして大らかな気風で知られています。そのぶん好戦的な面もあるようです。
 私は都市設定サプリメントが好きで、第2版のときはミドンランドの首都ミドンヘイムの都市サプリメントも兼ねた『ミドンヘイムの灰燼』の企画を持ち込んで自分で訳したほどなのですけど、まさかミドンヘイムよりもさらに北にあるザルツェンムントが単独のサプリメントになるとは、夢にも思いませんでした。まさしく情熱が奇跡を呼んだ1冊です。

●日本語版の新作『ライクランドの記念碑』

 で、日本語版はどうなのか、という話しですが、これまためでたく、『ウォーハンマーRPG』第4版の日本語版公式サイトでアナウンスされていた新作サプリメント『ライクランドの記念碑』が出版されました!
 PDFオンリーで700円、15頁構成と、取り回しのいい小著ですが、中身はぎっしり詰まって濃厚です。何より、「このサプリメントは『ウォーハンマーRPG』じゃないと出せない」感が素晴らしい!
 こちらは編集の伏見義行さんが翻訳を手掛け、私と待兼音二郎さんが監修に入っています。
 しかしいったい、なぜ「記念碑」? 原著のタイトルは「Monuments of the Reikland」ですから、忠実な訳になっています。それでは商品紹介を見てみましょう。

 『ウォーハンマーRPG ライクランドの記念碑』には、五つの注目すべき記念碑、彫像、塔が記されており、プレイ中のキャンペーンに登場させたり、新たな物語を始めるきっかけづくりとしたりするのに最適だ。
 各記念碑の外観の詳細な描写だけではなく、その記念碑に秘められた危険な秘密や陰謀などが、新たな冒険の幕開けとなるだろう。

 ――うーん、わかったような、わからないような? 「五つの注目すべき記念碑、彫像、塔」って何なのでしょう? 『ウォーハンマーRPG』ファンの「鋼の旅団」さんは、これは「シグマー像とホエスの白い塔とストーンヘンジ」とおっしゃっています。
 『ウォーハンマーRPG』をご存知ない方には馴染みが薄そうな言葉を解説すると、シグマー像とは、エンパイア建国の英雄にして今は神となった者の像ということ。ホエスの白い塔とは、ウルサーン諸島にあるハイ・エルフの塔のことで、あらゆる知識が集積され、至高魔術(ハイ・マジック)の研究がなされている場所。「ホエス」とは、『ウォーハンマーRPG』第4版のルールブックでは、エルフの神々に分類されています。
 どれもオールド・ワールドでは有名な固有名を冠するもので、そう思いたくなります。

●5つの記念碑とはどんなもの?

 ただ、『ウォーハンマーRPG』は、私たちの予想の遥か先を行ってくれておりました。『ライクランドの記念碑』で解説されるのは、次の5つ。

・ホルガー・ラウク市長の立像
 凶作なのに小麦粉の供給を操作して私服を肥やした市長が、自画自賛のために造った彫像。市民から嫌われているので、頭部は取れて代わりに腐ったカブが置かれている。

・アウエルスヴァルトの戦いの戦没者追悼碑
 ゴブリンやオークの軍勢から人々を護るため、決死隊を組んでドワーフが大砲(キャノン)の弾込めをする時間を稼いだマルタ・フォン・ヴァレンシュタイン女男爵らの108名に及ぶ戦没者の追悼碑。

・フォン・プロツカナルの時計塔
 分や秒まで刻まれるばかりか、メリーゴーランドまで付いている精巧な機械仕掛けの時計塔で、製作者の技師ゲルト・フォン・プロツカナルはこれがため狂気に陥った。

・マッケンシュタインの鷹の像
 オーベルヴァルト群とマッケン男爵領との境界を示す鷹の像で、幸運の印とみなされており、旅人は嘴部分に触れると前途を見通すことが可能となる。

・パラノスの柱
 翡翠の学府の主席魔道士(パトリアーク)であるガーヴァン・パラノスにちなんだ脊柱で、高さは67フィート(約20メートル)を越え、隅々までが植物で覆われている。

 興趣を損ねない程度に記念碑群の概要を伝えると、こんな具合になります。実に細かいものながら、固有名を入れ替えれば他の地方――さらには他のファンタジーRPGでも――使えそうな、そんな設定ばかりなのです。
 こうした普遍性があるにもかかわらず、こんなサプリメントが発売されるのは『ウォーハンマーRPG』くらいだろうと思わずにはいられないところが、実によく“わかっている”のです。
 各々の記念碑には、あっと驚く秘密や仕掛けが隠されており、これが謎と危険に満ちた世界オールド・ワールドの深奥に、それぞれの切り口から踏み込んでいるのが読ませます。もちろん、NPC等の関連する追加データも収められており、初心者GMでもこの記念碑を扱うシナリオをデザインしたくなるのは請け合いですし、手慣れたGMならば個々の設定だけで、そのままセッションが出来てしまうことでしょう。
 加えて、個々の記念碑にまつわる設定の拡張案も、アドベンチャー・フックとして記されているといった具合で、ぬかりがありません。

●『ライクランドの記念碑』を活用しよう

 もともと、『ウォーハンマーRPG』第4版「古代の遺跡と恐るべき廃墟」の節があり、太古のちからが眠る闇石の輪、〈大魔法使い〉コンスタント・ドラッケンフェルズの塔、危険な山頂に現れるヘルスパイア、息を飲むような絶景ロウレィ群礁、歌う太古の支石墓(ドルメン)、といった曰くありげな場所が紹介されており、読者はそれらを参考にシナリオを作成することができました。
 ただ、『ライクランドの記念碑』は、公式サイトから無料ダウンロードできる『ライクランドに冒険あり!』とはまたテイストが異なります。思うに、記念碑というブツにこだわったところがオールド・ワールドらしさなのではないかと。
 つまり、今回の冒頭で紹介した『ザルツェンムント』のように街まるごとをデザインするのではなく、だからといってあまり抽象的にもなりすぎず、どの都市にでも応用できて具体的にイメージしやすいのが記念碑本、ということなのでしょう。
 「この記念碑の秘密はこういうのかな?」と予想したくなるユーザー心理を、絶妙なバランスで突いているのです。
 「ホルガー・ラウク市長の銅像」について言えば、汚職の疑いが濃厚な政治家が自身の銅像の建立を企てる……これは現代日本においても、ついこの間ニュースになったばかりの話でして、同種の事例は日本のみならず世界各地で起こっていることなのですね。
 そういう意味では、本書はいつの時代にどこの場所で起きてもおかしくない事件を題材にしているわけですが――世界観的には矛盾がないものの――あっと驚くどんでん返しを仕掛けることで、既視感を満足度に変えるための工夫がなされているのです。
 是非『ライクランドの記念碑』をはじめ、『ウォーハンマーRPG』第4版の各種サプリメントを入手し、フル活用なさってみてください。
 翻訳・紹介している側も、皆さんの応援こそが力の源であるのです。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ウォーハンマーRPG ライクランドの記念碑』
 オールド・ワールドの五つの注目すべきモニュメント
 発売日:2022年10月
 価格:700円(+税) *PDF版ダウンロード販売のみ
 https://conos.jp/product/whrpg-5elements/

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
 https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

2022年06月29日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.23

 2022年6月16日配信の「FT新聞」No.3431に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」Vol.23が掲載されています。複数プロットの話題の続き。ケイパー・コメディとゲームブック、シナリオ「オペラ座の夜」にも触れております。バロック悲哀劇に関してはベンヤミンがソース。

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.23

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

 ぐるぐると渦を巻いてきた死者たちの感情は、懸命に何かを訴えかけている。
 無実の罪で焼き殺された人々の霊だ……。
 いや、こちらはチーズを食べただけで身体が爆発してしまった人も……。
 やり場のない感情に共鳴し、胃の調子がおかしくなってきた。
 呪いは、なぜ呪われるのかを問わない者にはほとんど効かない。そのように教えられたことを、思い出した。
 霊の感情を解きほぐすことはできない。ただ、チーズと爆発に因果関係があると思えなかった不条理さについては、感情ではなく論理で受け止めるべきものだ。
 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●RPGにおける二重の視点

 「複数プロット」をテーマに据えた本連載の前回は、思いのほか広い層の方々から反響を頂戴しました。
 普通に楽しく遊ぶうえではあまり意識されることはありませんが、RPGは明らかに、既存の物語構造を解体し、再構築するという側面があるからでしょう。
 だからこそ私も、文芸評論の仕事をしながら、不惑に至るまでRPGを続けてこられたのですが、RPGにおいては、ゲームへ「没入」し体験するという視点と、物語構造を超越的かつ俯瞰的に捉えるという視点が、自然に同居します。
 こうした経験を解きほぐして説明するのは意外に難しく、かつゲーム中はフォーマルな書き言葉ではなく話し言葉で進行するので(あるいは、書き言葉で記されたシナリオを話し言葉に「翻訳」しつつ進めるため)、既存の理論にまるごとすっぽり収めるような形での論述は難しいわけですが……。にもかかわらず実際にプレイすると、このことは身体レベルですんなりと飲み込めてくるはずです。
 ごく単純な、ダンジョンへ潜ってオークを退治するだけの仕事でも、いかなるプレイヤーが参加し、どのようなキャラクターがどう行動するかで、展開は千変万化します。とすると、「複数プロット」のシナリオについては、まさしく天文学的な進行パターンが予測されうるわけです。しかも、たいていのセッションは1 on 1形式ではなく、4〜6人のプレイヤー・キャラクターが参加するもの。
 となれば、余計に起こりうるセッションはカオスに近づいてきます−−「混沌」はレルム・オヴ・ケイオスから訪れるだけではなく、すぐそこに潜んでいるということなのかもしれません(笑)。

●ケイパー・コメディ

 『眠れぬ夜と息つけぬ昼』は、1960〜70年代のケイパー・コメディを一つのモデルと意識して組み立てられているのだと断られています。ケイパー・コメディとは、犯罪者視点で事件を描いたコメディで、名作とされる映画が多数あります。
 私が一点オススメするとしたら、サム・ペキンパー監督の『ゲッタウェイ』(1972年)でしょうか。ジム・トンプソンのノワールを原作とする、銀行強盗夫婦の逃避行を描いた作品で、アクションが見事なのはむろんのこと、一癖も二癖もある奴らしか出てこない残酷な世界の描き方が、実にオールド・ワールド的です。
 ちなみに1960〜70年代縛りを外せば、コーエン兄弟の映画なんかもケイパー・コメディに入れてかまわないと思うのですけど、これについてはナラティヴ・RPGの代表作の一つといってよいだろう『フィアスコ』(ハロウ・ヒル、2018年)が、そのドタバタぶりを遺憾なく表現しておりますね。

●例としての『ルパン三世』

 が、おそらく日本人ゲーマーにとって、いちばんわかりやすいケイパー・コメディの例は『ルパン三世』なのではないかと思われます。
 飄々としてすばしっこいルパン、ガンマニアのええかっこしいである次元、義理堅い斬鉄剣使いの五右衛門、憎めないファム・ファタルの峰不二子、そして、どこまでもルパンを追いかけてくる銭形警部。
 個性の塊のような悪人たちが織りなす珍道中の数々は、『ルパン三世』ゲームブックの第一巻『さらば愛しきハリウッド』(吉岡平著、塩田信之編、双葉社、2021年)が復刻されて話題を呼びました。この作品など、ルパンと次元が砂漠を放浪するところから始まり、途中で合流する五右衛門や不二子らにも独自の目的があります。
 ゲームブックなので当然、展開は分岐していきますが、同書の巻末で塩田さんが解説しているように、分岐先は無限に枝分かれして細分化されていくのではなく、合流パラグラフというものが設定されています。
 要するに、この合流パラグラフが、「複数プロット」のシナリオにおけるタイムラインに相当するものなのでしょう。

●『さらば愛しきハリウッド』と「バディもの」

 『さらば愛しきハリウッド』では、砂漠を超えると映画撮影の場面、それが終わるとさらに別の場所へと、展開は目まぐるしく変わっていきます。数値は最小限のものしか使わないため、読者が注意を集中するのは、やはり展開の分岐でしょう。
 ところがゲームブックにおいては、基本は『ファイティング・ファンタジー』のように、「君」の二人称をベースに進んでいくため、視点人物を多極化させることはかなり難しい。
 私の場合は、T&Tソロアドベンチャーとして、無敵の万太郎と岩悪魔シックス・パックの凸凹コンビが織りなすソロアドベンチャーを8作書いているのですが、基本は万太郎視点を取りながらも、冒頭はまるまる岩悪魔視点による「別の物語」を提示し、ある場面ではツッコミ役、別の場面はでボケ役、別のところでは解説役など、シックス・パックの視点を自然に書き込むことで、複数的な視座が生まれるように気を配っています。
 最近では「バディもの」とも言われる、ホームズ役とワトスン役のコンビで進める物語形式は、ゲームブックにはよく見合っており、まだそこまで多くの作例がない鉱脈だと思います。
 『さらば愛しきハリウッド』では、ルパンと次元の「バディもの」として進んでいく部分があり、シリーズ第1作とは思えないほど、うまく処理されています。ただ、合流パラグラフを頻繁に設けるなどして、うまく手綱を締めてやらないと、ゲームブックで複数プロットはやりづらい部分がないでもありません。

●「大人の事情」も意識せよ

 「ホワイト・ドワーフ」誌でサポートされていたRPGのうち、『ウォーハンマーRPG』は−−管見の限り−−まるでゲームブック形式の公式ソロアドベンチャーが書かれていないRPGなのです。
 英語版の発売元であるゲームズ・ワークショップ社としては、ゲームブックのラインは『ファイティング・ファンタジー』、ミニチュアゲームのラインは『ウォーハンマー』という「棲み分け」を意識していたのかもしれません。
 あるいは、特に日本においては、1980年代のゲームブック・ブームが一段落してから、"次の弾"として『ウォーハンマーRPG』の展開が始まった部分があります。
 「ウォーロック」の最終63号(1992年)の編集後記には、最近の号では紙幅のほとんどを費して『ウォーハンマーRPG』にサポートを集中させた旨が書かれていました。
 つまり、ブームの対象が変遷をしているのにすぎない、とも言えると思います。そうした視点を保持しておきながら、なおかつ「複数プロットのゲームブックは可能か?」「可能だとしたら、どのような形に新規性があるか?」ということを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

●ゲームブックから考える

 推理ゲームブック『シャーロック・ホームズ10の怪事件』(二見書房、1985年)は、いま「GMウォーロック」誌等でフィーチャーされているボードの謎解きゲームの先駆とみなすことができます。このゲームブックは複数でプレイしたほうがずっと面白いのですが、『眠れぬ夜と息つけぬ昼』のように、各シナリオで7本ものプロットが同時進行ということはありません。
 模範プレイヤーとして提示されるホームズは数手で敵の真相を暴くという、ほとんどチート級の頭脳を誇りますが、多くのプレイヤーは真相について、「ああでもない、こうでもない」と起こっている状況を合理的に説明する(ものと思われる)プロットを複数パターン考えるものです。
 仮説はすべて当たっているとは限らず、あるいは全部が間違いなのかもしれません。ただ、事件の真相がマーダーミステリーのタイムラインに当たるものだとたら、謎解きを介してあれこれ真相とは別の物語を想定する行為は、本筋としての真相以外の複数プロットを生み出すことに近いのかもしれません。
 RPGのシナリオ・デザイン作法の記事や本は多々ありますが、複数プロットのシナリオに絞った指南書は−−当のシナリオ内での解説を除けば−−ありません。
 逆に言うと、このスタイルには可能性があります。『ウォーハンマーRPG』を介して、複数プロットの面白さを体感してみてください。

●「オペラ座の夜」

 前回予告した『眠れぬ夜と息つけぬ昼』の第3話「オペラ座の夜」についても、簡単に紹介しましょう。ネタバレはしませんが、何一つ予備知識を入れたくないという方はご注意いただければと存じます。
 本作はまず、オペラの概観のヴィジュアルと、舞台の具体的な地図が壮観で、そこにナルンの女侯エマニュエル・フォン・リーベヴィッツや、ウォーハンマー小説でお馴染み天才劇作家のデトレフ・ジールックまで出てくる豪華な作りの作品です。
 批評家のフランセス・イエイツはシェイクスピアのグローブ座を「世界劇場」と呼びましたが、以降の時代にオペラが上演されてきた劇場もまた、さながら自律した別世界そのものでした。
 あるいは、ガストン・ルルーの怪奇小説『オペラ座の怪人』は、ジャック・ヨーヴィルのウォーハンマー小説にも取り入れられています。華やかな舞台とみすぼらしい怪人という「陽」と「陰」の対比が印象的だからでしょう。
 いずれにせよ、自然とドラマティックな展開やメタ構造への仕込みが行いやすいため、オペラや劇場は、しばしばシナリオの舞台とされてきました。
 実際、私自身、ガンアクションRPG『ガンドッグゼロ』のリプレイ『アゲインスト・ジェノサイド』(新紀元社、2009年)を書いたときには、プーシキン原作・チャイコフスキー作曲のオペラ『エフゲニー・オネーギン』を取り入れています。
 わかりやすさを重視し、幕ごとの切れ目を実際のオペラとは変えているのですが、とはいえシナリオ執筆にあたっては、2008年の二期会公演、コンヴィチュニー演出の『エフゲニー・オネーギン』を鑑賞し、その雰囲気を取り入れられるように工夫しました。
 ちなみに、私が編集長をしている「ナイトランド・クォータリー」Vol.29(6月29日頃発売予定、アトリエサード)では、二期会会員のバス・バリトン歌手、畠山茂さんによるコンヴィチュニー演出『サロメ』に出演した経験についてエッセイを書いていただきました。こちらも参考になると思います。

●「オペラ座の夜」をより愉しむために

 「オペラ座の夜」で上演されるのは、あくまでもオールド・ワールドでの劇であり、我々の世界のオペラ、それそのものではありません。オールド・ワールドは主に、三十年戦争期の神聖ローマ帝国(ドイツ)をモチーフとしていますが、文化芸術の一部は、ヴィクトリア朝イングランドあたりを模倣しているところがあります。
 ただ、近代文学の特徴たる単線的で明確な時間軸・筋の通った物語・内面を有した登場人物をしっかり揃えた作品は、17世紀フランスの古典劇ですでにありました。
 他方、17世紀のドイツ・バロック悲哀劇は、現代から見るとしばしば支離滅裂で残虐。それをそのまま提示すると、リアルなはずなのにかえってリアルでなくなってしまう、ということに繋がりかねません。
 逆に言うと、シナリオのタイムラインをしっかり押さえつつ、理解の枠組みを超えない範囲で支離滅裂で残虐にすれば、自然とそれらしくなるわけです。そのためには、回り道のようで、しっかり資料を読んでいただくのがよいでしょう。
 本シナリオをプレイするにあたっては、GMはぜひ、ウォーハンマー小説『ドラッケンフェルズ』(ジャック・ヨーヴィル、待兼音二郎他訳、ホビージャパンHJ文庫G、2007年)は読んでいただきたい(あるいは、再読いただきたい)。欲を言えば、プレイヤーの方にも、読んでいただきたいと思います。盛り上がり方が段違いだからです。
 『クトゥルフの呼び声』(『クトゥルフ神話TRPG』)の名作キャンペーン『黄昏の天使』(1988年)には、プレイにあたって事前に『遠野物語』を読むのが推奨されるシナリオが含まれますが、それと同じこと。いきなり言われると面食らうかもしれませんが、これが、プレイしてみると自明なのです。
 マストではありませんが、ぜひ『ドラッケンフェルズ』にチャレンジいただきたい。そうすれば、「オペラ座の夜」は何倍も面白くなるでしょう。そうそう、「オペラ座の夜」というタイトルは、著名な「ボヘミアン・ラプソディ」を収めたクイーンのアルバム『オペラ座の夜』(1975年)を意識していますね……。

2022年05月19日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.22

 2022年5月19日配信の「FT新聞」No.3403に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」Vol.22が掲載されました。今回はマーダーミステリーとの比較から、複数プロットのシナリオとタイムラインのあり方を考察しています。好評の新作『眠れぬ夜と息つけぬ昼』についても言及。


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.22

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

 チーズ店は不自然なほど奇妙に静まり返っている。
 そして、"風"が乱れている。
 −−あれは、黒のダハール。
 第二の目がはっきりと捉えた。霊魂が集まり、何かを訴えている。
 悔しさ、悲しさ、形にならない無名の感情……。
 それらが入り混じり、わたしたちに何かを伝えようとしているのだ。
 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●タイムラインの重要性

 複数プロットのシナリオの話の続きとなります。
 『眠れぬ夜と息つけぬ昼』に収められたシナリオ群は、すべてが複数プロットの形式をとっています。冒険の舞台となる街や建物に、それぞれ異なる事情や思惑を抱えた人たちが居心地悪く同居しているわけで、そうした関係性を軸に起きる事件を1つのプロットだと考えれば、7つほどのプロットが用意されているということになります。
 もちろん、実際にプレイするにあたって、すべてのプロットがどのようなものかをプレイヤーの立場から完璧に解き明かすのは困難……ほとんど不可能でありましょう。
 −−とはいえ、登場する連中がどのような思惑で動いているのかをある程度は推測できなければ、怒涛のごとく巻き起こる事件の数々に翻弄されるだけに終わってしまいます(それもまた一興ですが)。
 本連載の前回の反響として、「鋼の旅団」さんからは、「複数プロットのシナリオを回すには、GMの事前準備が不可欠」というご意見をいただきました。
 まったくもってその通りです。具体的な準備としましては、「建築関係の人が使うような工程表めいた表をエクセルで自作しています」ということですが、このやり方は、シナリオを一読してもなかなか頭に入らないという方にはうってつけでしょう。
 手を動かすことで、シナリオの構造が自然に把握できるとともに、「このNPC、いまどこにいたっけ」という事態に陥らずに済むというわけですから。
 加えてこのご意見は、複数プロットのシナリオにおけるタイムラインの重要性ということを、さりげなく指摘してくださっている点が重要です。

●複数プロットとマーダーミステリー

 タイムラインという言葉は、最近はアナログゲームにおいては、マーダーミステリーがらみでよく聞くようになりました。
 マーダーミステリーとは、いわば「参加する推理小説」。複数のプレイヤーが正体や真の目的を秘匿しつつ、実際に推理することで他人の行動の動機を当てることが目されるタイプのデザインになっています。
 が、すべての行動が単一のプロットに還元されることは稀であり、多くの場合は、ある大目的(殺人事件)に関連して様々な思惑が複合的に交錯していく形を取ります。
 こうしたデザイン形式により、推理小説がまま陥りがちな、「探偵役と犯人についての記述は厚いものの、それ以外の描写は薄っぺらい」という状態を回避することができます。
 それゆえ、どこかで聞いたような大枠であっても、驚くほど多角的な物語を生むことが可能になりうるのでしょう。

●マーダーミステリーの不得手とするもの

 ただ余談ですが、マーダーミステリーは推理小説の古典がしばしば微に入り細を穿つように描写してきた、物理トリックの扱いが弱いように思われます。
 最近、ある優れたマーダーミステリーをプレイする機会がありました。綾辻行人〈館シリーズ〉ばりの館の地図が提供され、期待は高まったのですが、重要キャラクターにまつわる設定の作り込みは充実していたものの、館そのもののトリックは小さくまとまってしまっており、そこが難点といえば難点でした。
 それこそ島田荘司の小説のような大掛かりなトリックに限らず、ミステリの王道である複雑な密室トリックも(ゲームとしての再現が難しいため)どちらかといえばマーダーミステリーは不得手のように思われます。
 これはマーダーミステリーと推理小説のどちらが優れている、という話ではなく、それぞれの表現形式の特性を把握したうえで、なおかつ、そちらを乗り越えるようなデザインを模索すべきということなのだろうと思います。

●RPGとマーダーミステリー

 タイムラインについての話に戻りましょう。『眠れぬ夜と息つけぬ昼』でも、起こる出来事にはきちんとタイムラインが明示されています。
 構造だけを取れば、複雑プロットのシナリオは『ウォーハンマーRPG』に限らず、それこそ『T&T』や『混沌の渦』など、他のシステムでも充分に再現可能で、『クトゥルフの呼び声』(クトゥルフ神話TRPG)でも、それに近い内容のものも見たことがあります。
 こうしたRPGにおけるタイムラインのあり方は、マーダーミステリーにおけるタイムラインと重なる部分もありますが、異なる要素も散見されます。
 マーダーミステリーのタイムラインは、物語の基盤となる事件(殺人事件など)が「すでに起こったもの」として示されていることが多く、そのタイムラインの隙間を−−調査と推理によって−−埋めていく作業がメインとなります。
 PCが関わるタイムラインも、与えられたキャラクターの設定書に書き込まれているのが基本です(設定が進行とともに開示されてゆくケースもありますが)。
 対してRPGの場合、設定は所与のものだけではなく、キャンペーンのなかで自ら獲得し、作り上げていくものの比重の方が大きいように設計されています。
 各々のキャラクターがてんでバラバラに別々のプロットに絡むよりは、相談をしながら、ある程度の方向性をもってプロットに関与していくことの方が多くなります。
 それはRPGにおいては協力型のシステム・デザインが大半だからでしょう。
 近年は正体隠匿型のデザインも目立つようになってきており、マーダーミステリーとの差異は少しずつ解消されていく部分もあろうかと思います。
 ただ、正体を隠匿しているPCが多いなかでキャンペーンを持続させるのは、GMにとってかなりの熟練を要することは疑いありません。

●オールド・ワールドが舞台ということ

 さて、『ウォーハンマーRPG』で複数プロットの冒険を行う場合、まずもって、オールド・ワールドでの冒険だということが重要になってきます。
 嶮難なるオールド・ワールドは、中世後期から近世ヨーロッパがモデルになっているため、現実っぽく、泥臭くてパンクな価値観が共有されています。
 闇雲に裏切ることが推奨されているという意味ではありません。
 RPGのシナリオにまま見受けられる、シナリオの最後にはボスとの戦いを設定して半ば強制的にドラマを演出する……といった構造を、必ずしもそのまま踏襲する必要はないというわけですね。
 キャラクターにとり納得がいくのであれば、別にボスを放置して逃げ帰り、それで物語を閉じてしまってもよいわけです。
 取ってつけたような「イイ話」へ無理やり落とし込むよりは、キャラクターの生き様そのものを、ルールが強制するのではなく後押しするような設計、『ウォーハンマーRPG』は、それがやりやすい設計になっているというわけなのです。

●タイムラインを整理する

 そこでタイムラインの問題です。
 GMはこれをある程度、しっかり把握していくことが重要です。
 「鋼の旅団」さんのように工程表を自作するのもよいでしょうし、そこまで手間をかけられないという場合は、マーカーペンを使って、どれがどのプロットに関係しているのかを、視覚的に見分けられるようにしておくのもよいかもしれません。
 複数プロットのなかには、本筋に近い重要なものもあれば、PCたちが絡むべくもないような間柄のNPCたちが織りなすプロットも散見されます。
 それを逆手に取り、プロット間の重要度にランク付けをしておくのも有用でしょう。要するに、把握しやすいのが一番だということですね。

●巻き戻しはNG

 また、実際のセッションにおいては、PCたちはとかく好き勝手に動きたがります。
 PCたちの行動に合わせてGMがシナリオを柔軟に変化させていた結果、場合によっては辻褄が合わなくなってしまったり、あるいは間違った運用をしていたことに後から気づいたりする……というケースもあるでしょう。
 ただ、その場合、よほど致命的なものではない限り、GMは闇雲にタイムラインを巻き戻して提示するべきではありません。
 どうにも収拾が付かなかったプロットは、そのまま放置するというのも一つの手です。
 というのも、PCはあくまでもPCたちの視点でしか状況を把握しておりません。
 そのようなPC側から見えている景色に一貫性を与えることはGMのつとめであります。GMしか知らない部分の処理に汲々するよりは、PCたちが主体となって行動することに、意味を与えることが大事なのです。
 複数プロットというオールド・ワールドと相性がよい方式を選んでいる時点で、セッションにおいてプレイヤーが感じる「その世界で生きている」という想いは充分に充たされます。
 そのうえで、PCたちを自由に泳がせながら、各プロットの枠から逸脱しすぎないよう、自然にコントロールすることが大事になってくるわけです。
 プレイヤーからするとそれは、自分たちのコミットメントに意味を与えてほしい、ということになるでしょう。
 −−もう一度言います。
 プレイヤーの行動に意味を与えよ。
 裏設定がこんがらがったら捨て置き、その労力で表面化した矛盾を削り取れ。
 そうすれば、自然とオールド・ワールドらしさは出てくる。
 −−以上を念頭に起きつつ、的確に「プレイヤーを楽しませること」を目指してください。

●決闘裁判

 それでは本連載の前回で予告した、『眠れぬ夜と息つけぬ昼』の解説をやっていきましょう。ここに書いたことくらいで崩壊するようなものでこそありませんが、気になる方はご注意ください。
 第2話は、「裁判の長い一日」。これはロープと滑車を駆使したユニークな移動方法で入ることになる街、ケンペルバートが舞台となっており、裁判所の詳細な地図も添えられています。
 『ウォーハンマーRPG』は、2版の『ウォーハンマー・コンパニオン』の頃から裁判のルールが追加されており、4版でも法廷闘争や冤罪に題材をとったシナリオも存在します。
 ただし、「裁判の長い一日」は、裁判は裁判でも、なんと決闘裁判を扱う内容になっています。原告や被告のやとった代理戦士に決闘をしてもらい、その勝敗にすべてを委ねるといったタイプの裁判です。
 ゆえに裁判所だけではなく、このシナリオ集には闘技場のマップも添えられているというわけです。
 初版の頃からPCが就けるキャリアに代理戦士が用意されていたことに鑑みると、いわば当然でありましょう。そこに、「"三枚羽根"亭での眠れない夜」から継続したプロットや、まるで新規のプロットが入り乱れるというわけです。
 決闘裁判についてより詳しく知りたい方は、「Role&Roll」で連載中の「戦鎚傭兵団の中世"非"幻想事典」もご覧ください。連載第35回(「Role&Roll」Vol.145所収)、第66回(「Role&Roll」Vol.207所収)で、この制度を多角的に捉えようとしています。
 次回は第3話「オペラ座の夜」や、それ以降のさらなるシナリオについて紹介していきます。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ウォーハンマーRPG 眠れぬ夜と息つけぬ昼』
 発売日:2022年3月
 価格:4,800円(+税) 書籍発売中/PDFデータ版発売予定

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
 https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●