2011年07月08日

SLG-CON Turn.01のお知らせ


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SLG-CON Turn.01のお知らせ

 齋藤路恵

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 未経験者や入門者を対象にしたウォーゲームのイベントが開かれることになりました。

 今回はその紹介をさせていただきます。

SLG-CON Turn.01

【日時】
 2011年7月24日(日) 11:30〜20:00

【場所】
 イエローサブマリン秋葉原RPGショップ(全10卓貸切)

【参加費】
無料

【参加特典】
 ハガキゲームをもれなくプレゼント(予定)

【協力・協賛団体】
・国際通信社(コマンドマガジン・ウォーゲーム日本史)
・サンセットゲームズ
・エテルシアワークショップ
・ちはら会

http://blog.livedoor.jp/slg_con/


 主催者の菅原さんからメッセージをいただきましたので、紹介させていただきます。


 はじめまして。

 SLG-CON実行委員会幹事の菅原と申します。

 今回、軍事史的には図上演習から発展したウォーゲーム(現在、コンシューマではシミュレーションにカテゴリされています)について、未経験者や入門者をメインに据えることをコンセプトとしたコンベンションを開催いたします。

 ウォーゲームは、歴史・戦史を再現することに主眼を置かれたジャンルであり、ゲームを通して歴史を知るツールとして非常に有効で、一時はアナログゲームの主役を担っていた時期があります。

 しかし、その歴史の再現性にこだわるあまりにルールが複雑化、煩雑化してしまったため、アナログゲームの主役は、思考型ボードゲームやTRPGに取られてしまいました。

 今でもウォーゲームのイメージは「ルールが複雑」や「時間がかかりすぎる」というものではないかと思います。


 しかし、時代は流れるとともにウォーゲームも変化しています。ゲームは、よりプレイアブルに変化し、今でも戦史をテーマにしていることは変わりませんが、より戦略性やゲーム性が増しています。

 私たちは、ウォーゲームを体験していただき、過去を原因とするイメージを払拭するとともに、アナログゲームのひとつの確立したジャンルとして皆様に認知していただきたいと思い、このコンベンションの開催に至りました。

 より初心者に楽しく遊んでいただけるコンベンションを目指しています。ゲームは持込みも可能ですが、初心者向けゲームを用意して手ぶら気軽に寄れ、初心者卓にはスタッフによるルールのインストやアドバイスなどを行い、このジャンルを気軽に楽しめる場所を提供したいと思います。

 もしも、ウォーゲームというジャンルを未体験で興味がありましたら、覗くだけでもかまいませんので是非ともお立ち寄りいただければと思います。


 この原稿を書いているわたしもウォーゲームを始めたばかりの初心者です。始めてからまだ1年も経っていません。

 始める前は、「戦車とか兵器マニアがやるゲームでしょ?」と偏見を抱いていたのですが、実際にやってみたらとてもおもしろかったです。偏見を持っていたことをこの場を借りてお詫びいたします。すみませんでした。


 わたしが感じたウォーゲームのおもしろさはジレンマ構造の見事さでした。

 ゲームをやっていると、「ここが勝敗を分けるポイントになる」とわかる状況が出てきます。しかし、そういう状況においてもどれが最適手なのかはようにわからないのです。

 迷って迷ってどっちにするか決める。

 わたしにとって、ゲームにおいて重要とわかっている決断1個するのは重要だと思えない決断を10個するより楽しかったのでした。それは勝っても負けても楽しいものでした。


 また、さいころの出目がもたらす予想外の展開も、わたしにとってはひじょうに楽しく感じられました。
「確率論上このくらい兵を残せば、このターンでこの地域の敵は排除できるだろう」と踏んで作戦をたてます。

 しかし、さいころを振った結果あっさり敵が生き残ってしまったりします。

 さいころをふったのは自分なので、誰のせいにしようもありません。

 自分の行為なのにままならない感じがとても楽しかったです。


 動かしているコマや起こっている事件も実在していたのだと思うだけで、スムーズに感情移入部分があります。

 ゲームの背景設定に非常に厚みがあります。気になったら背景を深く細かく調べていくことができるのです。

 ゲームを始めた当初は第二次世界大戦もののゲームなど「まだ存命の関係者がいるのにいいの?」と思っていました。

 しかし、ゲームを続けるうちにゲームを通して当時の関係者の考えの一端に触れることができるのではないかと思うようになりました。感情に惑わされず、当時の状況をまじめに考える上でウォーゲームは有効ではないかと思ったのです。まだ存命の方がいるからとタブー視して、まったく歴史に触れないのもそれはそれで問題ではないでしょうか。

 もちろん苦しんだ存命者がいるような事件をテーマにして、ゲームを楽しんでいることには変わりはありません。

 楽しんでいる自分を忘れず、楽しんでいる自分と問題をまじめに考えようとしている自分を併存させていけばいいのかなと今は思っています。

 ある種の楽しみを感じたのにそれをなかったことにしたら、いつかどこかで破綻が生じてしまうのではないかと個人的に思っています。

 わたしと同じ初心者の方や未経験の方も興味があれば行ってみてください。

posted by AGS at 11:31| ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月24日

伊藤計劃『ハーモニー』がフィリップ・K・ディック記念賞特別賞受賞!

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【ニュース】伊藤計劃『ハーモニー』がフィリップ・K・ディック記念賞特別賞受賞!

 岡和田晃

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 日本時間で昨日4月23日、惜しくも2009年に夭折した伊藤計劃氏の長編SF小説『ハーモニー』の英訳版(アリグザンダー・O・スミス訳、Harmony by Project Itoh、HAIKASORU)が、アメリカの著名なSF賞であるフィリップ・K・ディック記念賞のSpecial Citation Award(次点、審査委員特別賞)を受賞しました。

 同賞は前年にアメリカ国内にてペーパーバックで発売されたSF小説を対象とした賞で、これまで、サイバーパンク運動の代表的作家のひとりであるルーディ・ラッカーの『ソフトウェア』、スチームパンクというジャンルの重要な立役者であるJ・P・ブレイロックの『ホムンクルス』等がリストに名を連ねています。また、Special Citaition Awardは、かつて氏も愛読したというR・A・マカヴォイ『黒龍とお茶を』が受賞しました。

 これまで、日本のSF小説が海外、とりわけ英語圏の著名な賞を受賞したケースはありませんでした。それゆえ『ハーモニー』の受賞は、ギブスンやスターリングから始まるアメリカのサイバーパンク運動の極東における正統の「返歌」として、また、表層としての「クール・ジャパン」に留まらず、日本発のフィクションがその内実において広く価値を認められたという意味において、注目に値する事件でしょう。

 Analog Game Studiesは、アナログゲームとそれ以外の社会的領域をつなぐことを大きな目標として掲げていますが、戦略論的なシミュレーションと哲学的なシミュレーションを綜合させた稀有な実例として(*1)、伊藤計劃氏の『虐殺器官』をひとつの達成だと認識しています。そして『ハーモニー』は、「生府」が支配する徹底した管理社会/監視社会の実態が描かれますが、ここでのポストヒューマニズム的なユートピア/ディストピアのヴィジョンは、Analog Game Studiesが強力プッシュしているポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』の世界観にも相通じる部分があるでしょう(*2)。何よりも伊藤計劃氏は、そして『ハーモニー』は、21世紀型の「実存」のあり方について思考を重ねた作家/作品であり、それゆえ、機械化された私たちがいかなる「生」を余儀なくされているかをこのうえなく鮮烈に描いているため、ジャンルの内部から出発しつつ、ジャンルのくびきを破砕する優れた文学=スペキュレイティヴ・フィクションたりえていると言うことができます(*3)。

 そして伊藤計劃氏自身、『D&Dがよくわかる本』あるいは『クロちゃんのRPG千夜一夜』(黒田幸弘)を最初の創作の指南の書とし(*4)、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ギア・アンティーク』などの会話型RPG、『バルバロッサ』などのボードゲームにも深く親しんだ人でした。その作品にも、ゲーム的な方法論が大きな影響を及ぼしており、ゲームとそれ以外の社会的要素のあり方を問い直すためには、必読です(*5)。

 伊藤計劃氏の作品が今後も読み継がれ、国境を越え、ジャンルを越えた氏の作品により、一人でも多くの方の文化的環境が、さらに豊かなものになることを祈念いたします。(岡和田晃)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 伊藤 計劃 (著); 早川書房 (刊)伊藤計劃記録:第弐位相 [単行本] / 伊藤 計劃 (著); 早川書房編集部 (編集); 早川書房 (刊)Harmony [ペーパーバック] / Project Itoh (著); VIZ Media LLC (刊)

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【脚注】

(*1)この点の考察は「「世界内戦」とわずかな希望――伊藤計劃『虐殺器官』へ向き合うために」(「SFマガジン」2010年5月号、早川書房)を参照。
(*2)管理社会とポストヒューマニズム、そして『エクリプス・フェイズ』については、近日Analog Game Studies上で新規エントリとして考察される予定です。
(*3)「二一世紀の実存」(「小松左京マガジン」37号、イオ、2010)
(*4)『伊藤計劃記録 第弐位相』(早川書房、2011)を参照。
(*5)この点の考察は「ミステリとSF あるいはリセットの利かないゲーム」(「ジャーロ」38号、光文社)を参照。
posted by AGS at 00:24| ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする