2023年07月08日

『ブルーフォレスト物語』の背景世界


 2023年6月1日の「FT新聞」No.3781に、「『ブルーフォレスト物語』の背景世界」が掲載されています。これで世界観の概要を理解・復習し、来るべき作品に備えましょう。

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ブルーフォレスト物語』の背景世界

 岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

 「FT新聞」No.3739の「『ブルーフォレスト物語』小特集の開始にあたって」に関しては、Twitterを中心に予想以上の大きな反響をいただきました。実際に遊んでいた方にはもちろん歓迎いただきましたが、他方で、一世を風靡した作品としてリスペクトは抱いているものの、自分では実際にプレイしたことがない、という意見も目につきました。
 そこで、まずは世界観をイメージしていただけるような情報共有が必要と考えました。
 本文のイラストレーションを担当している佐々野悟氏曰く、「ブルーフォレスト物語が出た頃は、インドの武具や鎧の資料が少なくて、東南アジア系のものと西洋、日本がごっちゃになってます。服装は遊牧民とかモンゴル系のデザインかな」との由。逆を言えば、これらのイメージを折衷させていけば、『ブルーフォレスト物語』らしさから、そう離れることはないようです。
 『ブルーフォレスト物語』は第2版にあたるデザイナーズ・エディションが「ゲーマーズ・フィールド」誌で長くサポートされました。かなり踏み込んだ設定も解説されていたのですが、まずは、基本的な世界観を理解しなければどうにもなりません。
 そこで今回は、『ブルーフォレスト物語』の背景世界につき、リバイバル・エディションのルールブックを参考に、世界観の要点をお伝えしたいと思います。

●シュリーウェバと降魔
 『ブルーフォレスト物語』の舞台シュリーウェバは、「エルスフィア」と呼ばれる世界の一地方です。伏見健二さんのもう一つの代表作であるスチームパンクRPG『ギア・アンティーク』(ツクダホビー、1991年)や、南米風の世界観を軸に空戦が楽しめる『ドラゴンシェルRPG』(グランペール、2006年)もまた、「エルスフィア」の別の地方を扱うもので、世界観は共通しているのです。システム毎に、ある世界の別の地方を扱うというのは面白い発想ですね。
 エルスフィアには2つの月があります。「神の月」と「悪魔の月」です。「悪魔の月」は「降魔(こうま)」の顕現だと言われており、この「降魔」はあらゆる破壊的なものの母体にほかなりません。『ギア・アンティーク』でも「降魔」は世界観のキーワードになっています。

●時間
 この世界は1日が180日で、6ヶ月で1年が終わります。1日の長さは我々の知る時間と同じ長さなのですが、およそ2倍の速度で時間が流れるというイメージでしょう。シュリーウェバ地方は熱帯に属し、1年を通じて暖かな気候ですが、地域によって微妙な落差はありますし、4月には激しい嵐がよく起きます。
 主な冒険の舞台となる半島部は森林が多く、稲作の技術も進んでいます。
 平均寿命は男性50歳ほど、女性60歳ほどとなります。ちなみに岡和田は41歳なので、シュリーウェバの冒険者ならば大ベテランで、かつ孫がいてもおかしくないということになります。

●文明レベル
 エンジンのような内燃機関はありません。エネルギーについての知識も無きに等しいですが、テコや歯車、バネ、基礎的な冶金の技術は備わっています。医療はいわゆる漢方医学に近い発想のものであるようです。
 しかし、亜神(後述)がもたらした失われた技術も随所に残っています。

●亜神
 シュリーウェバを統治する亜神は森王ナウマニカ。植物や農業を庇護する母性的な女神です。つまり「王」とありますが、厳密には女王です。ナウマニカのほかにも亜神の王はいて、「12神王」と呼ばれます。亜神といってもピンキリですし、プレイヤー・キャラクターでも成長を経れば、亜神となるのも夢ではありません。
 亜神は、八百万の神というよりは指導者に近く、民間信仰の対象となる存在はより曖昧でアニミズム的な神性。このあたり、神仏習合めいたイメージでもそう遠くはないでしょう。

●種族
 シュリーウェバには人間族のほか、ゴブリン族や龍族もよく住んでいます。比較的珍しい存在としては妖精族もいますし、輪をかけて稀少な存在に魔族や神族も設定されています。
 ゴブリン族は犬ゴブリン、ゴブリン、角ゴブリンの3つの階級に分かれます。粗野な種族とみなされることも多いのですが、どこか憎めないところもあります。
 龍族は哲学的なナーガ族と、戦闘民族のトカゲ族に分かれます。
 妖精族は180年ほどの寿命がある長命で知性的な種族。小妖精、翼人族、楽人といった種族の総称です。
 魔族は妖精族でありながら、体内に降魔を宿した存在のことです。
 神族は亜神と人間との間に生まれた子どものことを主に指します。
 ちなみにサプリメント『ブルーフォレスト戦乱』ではさらなる種族が追加されます。降魔の影響を受けていない女性のみよりなるゴブリン種の亜種ゴブリナも、『ブルーフォレスト戦乱』で追加された種族です。原文でのフラットな記述に対し、なぜかロリコン的な受容をされることがありますが、性的指向とジェンダー・アイデンティティを混同する言説が横行する2023年現在の状況に鑑み、そのような演出を強調する際には、不快に覚える人がないよう卓の合意を取るようにすることを私は推奨します。


●歴史
 かつて「降魔戦争」と呼ばれる大規模な戦争が起きました。これによって12神王は深刻な分裂を余儀なくされます。このとき、かつての秩序を取り戻そうと尽力したのが森王ナウマニカなのです。
 しかし、人間たちに期待をかけたナウマニカも、彼らが「継承戦争」と呼ばれる戦乱を起こしたことで人間に絶望して支配を放棄してしまい、その隙をついて、魔族が押し寄せてきました。「百年戦争」の始まりです。どうにか魔族を退けても、亜神が戻ることはなく、それゆえ人間たちの私利私欲は止むことがありませんでした。
 かような混乱に秩序をもたらしたのが、ラグ神帝国。帝国は他の国々へ侵攻を行い、「十王戦争」と呼ばれる大規模な戦争を起こしてしまいます。これが10万人以上の兵士たちがぶつかりあったという「十王戦争」。その傷痕はいまだに癒えず、ラグ神帝国も野望を捨てたわけではないようです。

●伏見健二さんの現在は?
 以上の設定を押さえつつ、各シナリオで解説される、個別の小設定あるいはマップに即した地方ごとの情報を呑み込んでおけば、プレイ自体はそう難しくはないでしょう。
 ところで、伏見健二さんの近況が気になる方もいらっしゃるようです。現在、伏見さんは福祉関係の仕事をされていますが、これはゲームデザイナーや小説家と同じく、伏見さんがもともと抱いていたお仕事でもあったとか。そちらはコロナ禍で大変だったようですが、新年度に入ってミニチュアゲームを楽しめるほどには落ち着かれた様子。
 ゲームや文学関係の最近のお仕事では、ポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』のシェアード・ワールド小説「プロティノス=ラヴ」が『再着装(リスリーヴ)の記憶』(アトリエサード、2021年)に収録。「図書新聞」2021年4月17日号(コンビニで有償ダウンロードできます)に、T&Tアドベンチャー・シリーズ9『怪奇の国のアリス+怪奇の国!』の書評が掲載。また「ナイトランド・クォータリー」Vol.28にコラム「『ストームブリンガー』が斬り拓いたもの」を寄稿(2022年)。
 エテルシアワークショップでは新感覚の剣戟RPG『N-Injury』を開発中。こちらは「ファスト・トライアル」版がイベントで配布されたばかりです。エテルシアワークショップの新作「三枚のお札RPG」(あわじひめじ)について、4Gamer.netに書いた拙稿の一番下で、ちらりと言及しております(https:/
posted by AGS at 21:29| ブルーフォレスト物語小特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。