2023年2月9日配信の「FT新聞」No.3669で、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.14が掲載されました。今回のサブタイトルは「ナイトシェイド」。クラシックD&Dを黒箱までお読みの方ならばご納得いただけると思います。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.14
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに
本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照し、都度、シナリオの下敷きにしています。今回は『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』第2版から一部ルールを導入しています。
さあ、マスタールールセット(黒箱)の目玉クリーチャーを交えた大決戦です。アーティファクトの特殊効果も含め、高レベル呪文が乱れ飛びます。
前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/498095660.html)。キャンペーン第13話「大伽藍」の後半〜第14話「ナイトシェイド」の前半となります。
●登場人物紹介
タモト/『ジルチェフの欺きの斧』を持つドワーフ、7レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、8レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、7レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、7レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、8レベル。
プロスペル/ケルヴィンの貴族の息子。ファイター、8レベル。
バーグル・ジ・インファマス/魔術師で、盗賊ギルド「アイアン・リング」の首領。一応、パーティとは呉越同舟。
ヴァーディリス/グリーン・ドラゴン。留守だったはずが……。
ゴルサー/獣人族ヒュターカーンを操っている存在。正体はヴァンパイア。
ロキ/『エントロピー(死)』の領域に属する「イモータル(神)」。
プファール/ヒュターカーンが崇めるイモータル。
オーガン将軍/グレイの父。「常勝将軍」と言われるが、かつてパーティと敵対した。
ストッドス/バーグルの部下である邪悪なクレリック。
?????/遂に姿を見せたキャンペーンの最終ボス。
●トラルダーの歌
トラルダーたちは古来より伝わる詩を吟じはじめた。
それは古い伽藍にたてこもる戦士たちの孤独を詠ったものだった。
捕らえたヒュターカーンたちに聞き出したところ、一行が向かっていた伽藍は確かにトラルダーたちのものらしい。
しかも、ゴルサーは今や、プファール神を呼び出す前の第一段階として、強力なアンデッドであるところのナイトシェイドを呼び出してしまっていた。
これは予定外! 彼らは、急遽、「伝達の太矢」を使って、バーグルの力を借りることにした。
約束を違えることなく、魔術師は現れた。強力な仲間を連れて。
そう、そこに立っていたのは、「常勝将軍」ことグレイの父、オーガン将軍だったのだ……。
●突撃
ナイトシェイドを呼び出そうと怪しい儀式を執り行っているゴルサーの野望を食い止めるため、一行は神殿内に突入する。
バーグル、オーガン将軍、そして邪悪な僧侶ストッドスが加勢してくれる。
巨大な扉を開けると、巨大な魔獣が二体たたずんでいた。スフィンクスとネクロゾーンだ。その奥、神殿の中央では、巨大な漆黒の人影が実体化しようとしている。
周囲には、ゴルサーをはじめヒュターカーンの術者たち三人が、魔力を送っている。
そして、ナイトシェイドの手には、「ヒュターカーンの剣」が握られていた……。
●激戦
まっすぐナイトシェイドに向かって突撃するオーガン将軍。
タモト、ヨランダは術者に斬りかかる。
リアはエルブン・ボウで、グレイは魔法で援護射撃。
シャーヴィリーも「トリック・アニマル・パック」で大蛇を召喚し、微力ながら戦闘に貢献する。
だが、敵もさしたるもの。スフィンクスは咆吼をあげ、ジーンを恐慌状態に陥れる。
ネクロゾーンは、なんと、こともあろうにストッドスを睨み殺してしまった。
そのうえ、ナイトシェイド(ナイトクロウラー)の攻撃力は圧倒的で、瞬時にオーガン将軍を半殺しの目に遭わせてしまった。
術者のコントロールを逃れて暴走を始めたナイトシェイドは、「武器」を持つ、タモトとジーンに狙いを定める。
他方、当事者のバーグルは保身に走り、自分に「アンチマジック・シェル」、「ミラー・イメージ」、「プロテクション・フロム・ノーマルミサイルズ」をかけ、一行に協力しようとするそぶりすら見せない。
そのうえ、ナイトシェイドが暴れ始めると、たちまち<ディメンジョンドア>の呪文をかけ、その場から消えてしまった。
●ギアス
怪物が暴走を始めたのを目にし、ゴルサーは直ちにその場を離れた。そして、「プリズマティック・ウォール」のスクロールを用い、自らの周りに七色の壁を作って、緑竜ヴァーディリスに思念を送り始めた。
ドラゴンを帰還させ、侵入者どもを打ち倒させようというのである。
ナイトシェイドの猛攻はますます激しさを増してくる。
だが、瀕死の状態にもかかわらず、オーガン将軍は攻撃をやめようとしない。
グレイは父親の目に狂気めいた魔法の光を見た。
そう、彼はバーグルによって、「ギアス」の呪文をかけられていたのである。たとえ死すとも、退くことを許されてはいないのだ。
だが、憐憫に耽っている暇はなかった。
ナイトシェイドが呼び出した、ホーントという上位アンデッドに「マジックジャー」の呪文をかけられ、肉体を乗っ取られそうになったのだ。
しかし、彼の意志は強かった。魔法に抵抗したうえで、ナイトシェイドに新たな攻撃目標を提示すべく、「ファンタズマルフォース」の呪文で、モンスターの姿を作り出したのだ。
●ヴァーディリス襲来
一方、タモトとジーンは闇の巨人の攻撃をかいくぐりながら、ヨランダと協力し、魔獣と術者たちをあらかた倒すことができた。
シャーヴィリーは単身攻め入り、なんとか「プリズマティック・ウォール」を破ろうとするが、こちらはなかなかうまくいかない。
そのとき、背後に轟音が鳴り響いた。
――そう、ヴァーディリスが戻ってきたのである。だが、緑竜はその巨体ゆえに、狭い入り口からは首だけしか中に入ることができない。
一瞬の隙をついて、グレイは「ウォール・オブ・アイス」を打ち出し、その侵入を阻んだのだった。
ほっとしたのも束の間、なんとヨランダが、ナイトシェイドの痛烈な一撃を受けて倒れてしまった。
●破砕
それを見て、これまで回復役に回っていたジーンも、『ペトラの嘆きのメイス』を持って戦いに加わることにした。
――けれども、遅かった。巨人の一撃を受けて、タモトまでが倒れてしまったのである。
持ち主の危機を感じて、『ジルチェフの欺きの斧』から「フォースフィールド」が発せられてドワーフを包んだが、ナイトシェイドの手にした「剣」は、その力場をすら破ってしまった。
タモトは力尽きて倒れ、「斧」は折れてはじけ飛んだ。まさしく絶望的状況である。
そのうえ、生き残っていた敵の術者が、「メルフズ・アシッド・アロー」などの呪文で、パーティの後方メンバーをちまちまと傷つけ始めた。
●漁夫からの漁夫の利
しかし、いくらナイトシェイドといえども、その体力は無限ではない。
ジーンの「メイス」と、リアの実直な射撃によって、巨人はその体を地面に横たえることとなった。
当然ジーンにも危機は訪れたのだが、なんとか「メイス」の効果である「タイムストップ」(9レベル呪文相当!)を駆使して難を逃れたのだった。
そして、巨人の手にしていた「剣」は、その傍らに投げ出された。
――次の瞬間、バーグルがその前に現れ、「武器」を奪おうとした。
だが、ゴルサーも黙ってはいない。「プリズマティック・ウォール」を解除し、「テレキネシス」で「剣」を取り寄せようとする。
二人の魔術師は睨み合い、ここぞとばかりに互いを罵り合う。
だが、運命のいたずらか、最も早く「剣」を手にしたのは、こともあろうに、かけつけてきたリアだった。
そして、仲間に合図をすると、自らは「シャドウ・ケープ」の魔力を使ってゴルサーの元へジャンプし、魔術師の背後から襲撃を仕掛けた。「バックスタッブ」である。
こうして、邪悪なヴァンパイアは塵と化した。
もう一人の魔術師、バーグル・ザ・インファマスも危機的状況にあった。
というのも、ジーンの手当を受けて回復したタモトやヨランダ、グレイ、シャーヴィリーらに「ミラー・イメージ」を消され、身を守るものがなくなってしまったからである。
この「アイアン・リング」の首領は舌打ちし、間一髪で「テレポート」した。
●ヴォイドから現れたもの
ナイトシェイドの死体が消えていくと同時に、そこからは暗黒の空間が広がってきた。『ヴォイド』(虚無)が、解き放たれてしまったのである。
「武器」の力を濫用しすぎたせいだろうか。詳しい原因はわからないが、とにかく最悪の事態になってしまった。
辺りには、ロキの笑い声がこだましていた。
そして、「ヴォイド」の中から、巨大なドラゴンが姿を現した。
赤銅色の筋骨隆々とした身体に、赤・青・緑・白・黒といった5本の頭が生えている。邪悪のなかの邪悪、クロマティックドラゴンの王ティアマットが姿を現したのだった。
今の状態ではとても勝てない。
観念したパーティは、「アイス・ウォール」を解除し、「ドラゴン・コントロール・ポーション」の魔力でヴァーディリスに迎え撃つよう命じ、「テレポート」のスクロールでその場を離れたのだった。