2022年09月06日

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.9


 2022年8月25日の「FT新聞」No.3501に、『ダンジョンズ& ドラゴンズ 』リプレイ小説「カラメイコス放浪記」Vol.9が掲載されました。ファイナルストライクのぶつけ合い、ブラック・ドラゴンやナグパとの死闘から始まります!

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.9

 岡和田晃

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●はじめに

 本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照し、都度、シナリオの下敷きにしています。例えばテレリィ・フィンゴルフィンとは『シルマリルの物語』より。
 前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/490980912.html)をどうぞ。今回はキャンペーン第9話「薄明」(後編)の内容となります。

●登場人物紹介

タモト/『ジルチェフの欺きの斧』を持つドワーフ、6レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、6レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、6レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、5レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、7レベル。
ヨブ/ブラック・イーグル男爵領の避難民の戦士、6レベル。
プロスペル/ケルヴィンの貴族の息子。戦士、6レベル。

ゴリーデル/カラーリー・エルフの長。
テレリィ・フィンゴルフィン/ロスト・ドリームの島のエルフ。
ハービンガー/ロスト・ドリームの島のエルフ。
シャドウ・エルフたち/エルフの国アルフハイムの地下「星の都(シティ・オブ・スターズ)」に住まう存在。
「ルルンの」ヨランダ/対ブラック・イーグル男爵のレジスタンス。ヨブとは古い仲。
ルートヴィヒ・フォン・ヘンドリックス男爵/邪悪きわまりない貴族。通称「ブラック・イーグル」。
カルディア/リフリアンに住むエルフ。魔法の絨毯を使って人を運搬してくれる。
アンデラ/リアの姉。
占い師アルヤ/謎めいた美貌の占い師。正体は……。
インジフ/リアの祖父。元「盗賊の王国」スレッショールド支部のギルドマスター。
マレク/リアの兄。
ステファン・カラメイコス3世/カラメイコス大公国の統治者。
「盗賊王」フレームフリッカー/ギルド「盗賊の王国」のギルドマスター。
アントン・ラデュ/ギルド「ヴェールド・ソサイエティー」のギルドマスター。
シャーレーン大司教/スレッショールドの街の統治者。
ゴルサー/謎の魔法使い。
ミコラス/リアの父。

●決戦

 シャドウ・エルフたちの言うことがどうしても信用しきれなかったパーティは、結局、その申し出を断ることにした。
 怒り狂ったシャドウ・エルフたちは、手にしていた「ウィザードリィワンド」を二つに折った。
 ワンドに込められていた信じられないほど強大な力がほとばしり、閃光とともに辺りを包み込む。
 恐るべき、「ファイナルストライク」(最後の一撃)の魔力である!
 ――間一髪、テレリィがパーティの間に割り込む。
 テレリィもまた、手に持っていたワンドの封印を解いた。
 二つの強大な「ファイナルストライク」はぶつかり合い、辺りにはすさまじい振動が響き渡った。
 気がつくと、テレリィとハービンガーの姿はかき消え、疲弊した二人のシャドウ・エルフだけが残っていた。
 彼らは捨て台詞とともに、「ディメンジョン・ドアー」(次元の扉)を通って去っていった。
 だが、入れ替わりに、巨大な、腐敗したブラック・ドラゴンと、魔術師風のローブを着たハゲタカ頭の老人めいた邪悪なクリーチャー「ナグパ」が現れたのだ。

●絶望

 すぐさま激戦が始まった。
 しかし、ここでパーティはシャドウ・エルフに気を取られていたためか、重大な過ちを犯してしまった。
 ドラゴンの体力を削ることを怠ったのである。
 そのため、最前線のヨブは、ドラゴンの酸のブレスをまともに受け、一瞬のうちに溶け去り、奈落(アビス)への帰らぬ旅路に就くことになってしまった。
 絶望が一行を包み込む。
 さらには、タモトまでがドラゴンのブレスを受け、倒れてしまう。
 おまけに、ナグパはグレイに狙いを定め、「コラプション」の魔法で、彼の持っているポーションや呪文書のほぼ全てを腐らせてしまった。
 これは全滅か!?
 死の淵を彷徨いながらも、必死の連係で、辛うじてドラゴンを葬ったはいいものの、ナグパにとどめを刺そうとした瞬間、そいつは死に際に呪文を放ち、もう一体、巨大なブラック・ドラゴンを呼びだしたのだ!

●顛末

 第二のドラゴンは、ナグパが「ファンタズマル・フォース」の呪文によって作った幻覚であった。
 パーティはただちに見破って、幻覚をかき消してゆく。
 そして、崩れゆく神殿から、指輪の「ワード・オブ・リコール」の魔力を使って逃げ出したのだった。
 ジーンの懸命な看護の甲斐あってか、タモトは戦闘後に無事息を吹き返したものの、ヨブを運ぶのはもはや不可能だった。
 一行は悲嘆に暮れながら彼の遺品を集め、帰路についた。
 エルフの村に戻ったパーティは、顛末を報告した。
 ゴリーデルは食い入るように聞き入り、話が終わると心からパーティを歓待した。
 しかし、ヨブは戻ってこない……。
 あれだけ死体の損傷がひどければ、「生命の樹」の力も及ばないだろう。
 そもそも、「生命の樹」の力を使えば、またもやバリムーアのような存在を呼び出してしまうことにも繋がりかねない。
 そのような危険は冒せない。

●「ルルンの」ヨランダからの知らせ
 一行がこれからの行く先についてあれこれ考えていると、近くの樹の幹に一本の太矢が刺さった。
 伝達の太矢(クォーレル)である。
 伝言は、「ルルンの」ヨランダからのものであった。
 大事が起こったので、すぐにスレッショールドまで来てほしい、というのだ。
 スレッショールドには、リアの故郷がある。
 ちょうど、リアも一度実家に戻ろうかと考えていた矢先だったということもあり、行くあてのなかったパーティは、とりあえずスレッショールドへと向かうことにした。
 そうして湿原(ムーア)を越え、河を渡って、エルフの街リフリアンにたどり着いた。
 ここを越えれば、スレッショールドはもう目と鼻の先だ。

●リフリアンでの噂

 だが、彼らはここで、とんでもない噂を耳にした。
 そう、ブラック・イーグル男爵がカラメイコス大公国の首都スペキュラルムに攻め込んだというのである。
 スペキュラルムの防衛軍や、グリフォン聖騎士団の活躍もあって、何とか持ちこたえているらしいが、王都陥落も時間の問題だろう。
 また、スペキュラルムやその近くの街からは多数の難民が発生して、ケルヴィン周辺の街や村々になだれこんでいるということである。
 驚いた一行は、すぐさま、リフリアンに住むエルフ、カルディアに法外な金を払って魔法の空飛ぶ絨毯をチャーターし、スレッショールドへと急行した。

●スレッショールド

 スレッショールドはブラック・ピーク山脈のふもとにある街だ。
 山の向こうには、遠くダロキン共和国やイラルアム首長国連邦が見える。
 見下ろすと、一列に連なった難民たちの姿がうかがえた。
 ヨランダとの待ち合わせ場所は、リアの家族が経営している宿屋ということになっていた。
 スリの猛攻や窓からぶちまけられる尿瓶の中身をなんとかかわしつつ、ようやく目的の場所、すなわち「鉤と十字亭」に到着した。
 迎えに現れたのは、リアの姉、アンデラだった。
 彼女が宿に戻って呼びに行くと、しばらく経って、ヨランダが現れた。
 続いて精悍な老人、そしてローブ姿の小柄な女性が降りてきた。
 二人はリアの祖父インジフと、「占い師」アルヤだと自己紹介した。
 一行とインジフとは初対面だが、アルヤの方はそうではなかった。
 というのも、彼らは以前王都にて、アルヤに将来を予言されたことがあったからである。
 とりあえず、三人にことの経過を報告する。
 彼らはうなずき、パーティの労をねぎらうと、ふたたび何ごとかを相談するため、宿の2階へと引き上げていった。
 ヨブの形見として、一行からトゥルース・リングとノーマルソード+2を受け取ったヨランダの瞳は、心なしか涙でうるんでいたが……。

●宿の騒動

 その晩、パーティが宿の1階にある酒場で久々に羽を伸ばしていると、青白く太った男が因縁をつけてきた。
 男はリアの兄、マレクだった。
 彼らはなんとか面倒を避けようとしたがうまくいかない。
 結局、プロスペルとマレクがレスリング勝負を行い、勝った方に事の理があるということにされてしまった。
 結果、なんとかプロスペルが勝利した。
 騒いでいると、宿の二階からインジフが降りてきた。パーティを呼びに来たのである。
 マレクは泣きじゃくりながら、インジフに告げ口をしたが、女々しいことを抜かすなと一喝されるに終わった。
 マレクは、紋切り型の捨てぜりふを残し、その場を去っていった。

●占い師アルヤの正体

 インジフに連れられて宿の奥の相談室に入った一行は、そこで驚くべき事実を知った。
 待っていたのは、二人の美女だった。
 片方はヨランダだが、もう片方は?
 背格好から見るに、先ほどの占い師アルヤらしいが。
 彼女は微笑み、自分はフレームフリッカーだと名乗った。
 ――「盗賊王」フレームフリッカー!
 十代半ばで盗賊稼業を始め、十年足らずで瞬く間に、ギルドの「盗賊の王国」をまとめあげた伝説の人物である。
 それが、どうしてまたここに?

●巡らされた糸

 ヨランダが代わって説明する。
 スペキュラルムにいたころ、彼女は突然、ステファン・カラメイコス公爵の招聘を受けた。
 王都内で、対「ブラック・イーグル」男爵領のレジスタンスを組織していたおかげで、白羽の矢が立ったのだ。
 そこで公とともに姿を見せたのが、「盗賊の王国」のギルドマスターである「盗賊王」フレームフリッカーだった。
 背後には、「盗賊の王国」とは反目し合っている盗賊ギルド「ヴェールド・ソサイエティー」のギルドマスター、アントン・ラデュがいた。
 ステファン公は話し始めた。
 スペキュラルムの街は危機に瀕している。
 ブラック・イーグルこと、ルートヴィヒ・フォン・ヘンドリクス男爵が反乱を起こそうとしているのだ。
 まさしく緊急事態である。
 そのため、彼らは日頃の利害関係は当分棚上げして一致団結し、ブラック・イーグルに立ち向かう体勢を取ったのだった。
 公爵によれば、ブラック・イーグルがクーデターを起こそうとしたきっかけの一つに、手下であるゴルサーという魔法使いがブラック・ピーク山脈にて発見した禁断の武器があるとのことだ。
 そこでステファン公は、自分とアントン・ラデュが首都を守っている間に、フレームフリッカーとヨランダをスレッショールドへ向かわせることにしたのだった。
 シャーレーン公爵と話して難民の受け入れ許可を得なければならず、一方でゴルサーの陰謀を打ち砕くための協力が必要になってきたからだ。
 そのようなわけで、スレッショールドに到着したヨランダとフレームフリッカーは、かつて「盗賊の王国」スレッショールド支部のギルドマスターだったインジフに会い、協力を要請していたというわけだ。
 そのとき、突然扉が勢い良く開き、リアの父、ミコラスが駆け込んできた。
 会議中だ、とインジフが一喝する。
 が、ミコラスは耳を貸さずに、絶叫した。
「大変だ! マレクが殺された!!」

posted by AGS at 09:43| 【連載】カラメイコス放浪記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする