2022年06月29日

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.6


 2022年6月2日配信の「FT新聞」No.3417に、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のリプレイ小説「カラメイコス放浪記」Vol.6が掲載されました。冒険者たちは、山岳に待つ女王の城塞へと進軍し、死の収穫を食い止めることができるでしょうか?

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.6

 岡和田晃

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●はじめに

 本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照しています。
 前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/488175480.html)をどうぞ。今回はキャンペーン第7話「収穫」の内容となります。冒険者たちは山岳の城塞に攻め入ります。

●登場人物紹介

タモト/詩人ドワーフ、5レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、5レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、5レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、4レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、6レベル。
ヨブ/ブラック・イーグル男爵領の避難民の戦士、5レベル。
プロスペル/ペンハリゴンに派遣中の騎士、5レベル。

アルテリス・ペンハリゴン/ペンハリゴンの女男爵。
イリアナ・ペンハリゴン/アルテリスの異母姉。ペンハリゴン家の領土と爵位を要求している。
オーガン将軍/イリアナに協力している熟練の戦士。「常勝将軍」と言われる。
モルドレイク侯/ペンハリゴンの貴族。その正体は……!?
バーグル・ジ・インファマス/ブラック・イーグル男爵の片腕たる魔術師。
ヴァーディリス/ヒュージ・グリーン・ドラゴン。

●出発準備

 レディ・アルテリス・ペンハリゴンの依頼を受け、「危険な任務なので」と、いくつかの支援アイテムを受け取った一行。
 「ヒーリングスタッフ」(治癒の杖)、「キャンセレーションロッド」(魔法を打ち消すことのできるロッド)や、「ソロモンポーション」(動物と話ができるポーション)、3本のスクロール(巻物)などを手に入れたのだ。他にも、食糧を買い込んだり、旅のためのさまざまな準備を整えたりする。
 合間をぬって、グレイはひそかに真鍮の火鉢を用意し、怪しげな儀式を始めた。新しく覚えた魔法、「ファインド・ファミリアー」を使おうというのだ。1度は失敗したものの、2回目でようやくファミリアー(使い魔)が現れた。黒猫である。初めての使い魔の登場に喜びいさんだグレイは、「ルー」という名前をつけた。
 一方で、ヨブとプロスペルは険悪な空気に包まれていた。同じ戦士といっても、性格は対極であり、気が合うはずがないのである。残りの面々は必死で彼らをとりなし、ようやっと旅路につくことができた。

●ノールの襲撃

 時はフラーモント(4月)の5日。イリアナの城砦への行軍が始まった。
 ペンハリゴン出発1日目。ウルフホルド丘陵をさまよっていた彼らは、にわか雨にさらされたため、ゆっくりと休める場所を探すことにした。
 すると、北西の方に洞窟らしきものが見えてくる。
 近づいていくにつれ、様子がはっきりとしてきた。
 洞窟の前にはノールが2体、見張りらしき様子で構えている。
 ノールとは、ハイエナの頭をもった、人間のような生き物である。一説によれば、邪悪な魔法使いの力によって、ノームとトロールが合体させられたものだと言われている。
 ノール語を解するシャーヴィリーが話しかけるが、ただちに追いたてられる羽目になってしまった。
 しかも、ノールの射手は腕前に長けていた。そのうえ、見張りのノールが仲間を呼び、洞窟の奥からさらなるハイエナ頭が駆けつけてくる始末。
 ドラフトホース(駄馬)に乗っている一行は、なんとか追手をまくことに成功したものの、気がつくとプロスペルの姿がない。
 どうやら、慣れない荒野での乗馬のため、うまく手綱をさばくことができず、振り落とされてしまったらしい。
 すかさずタモトらが手助けに入り、プロスペルを連れ戻すことに成功した。が、プロスペルはノールどもの攻撃を受けて、瀕死の状態にあった。

●2日目

 翌日。荒野での劣悪な寝処のためか、何人かが風邪をひいてしまった。それでも先を目指さねばならない。
 厄介なことに、イリアナの城砦の詳しい場所は知られていない。あるのは、ペンハリゴンの遥か北にあるという噂のみだ。
 正確な場所を知ろうと、グレイは「ソロモンポーション」を飲んで渡り鳥に話しかけたが、失敗に終わってしまった。
 夕方頃、丘陵の一番高い地点にたどり着いた。辺りを見回してみる。
 北には山々が、はるか東には奇妙な塔のような建物が、そしてそのそばには、人方の生き物の集団が、それぞれ窺える。
 一方、南東の方角には、うっそうとした森が茂っている。パーティはリアを偵察に出した。どうやらオークどもらしい。その数、およそ30体ほど。
 危険を察知したパーティは、夜中にもかかわらずキャンプの場所を変え、北の山のふもとにある、手ごろな茂みを寝処にすることとした。
 ノールが何体か追跡してきたようだが、一行が隠れている場所には気づかなかった。

●3日目

 3日目。昨日見えた塔のようなものの方角に進んでみた。
 丘陵だと時間を食うので、なるべく道の良いところを選ぶことにする。
 途中、昨日のオークどもの野営地を通った。が、彼らはすでに、いずこかへ姿を消してしまっていた。
 塔が近づいてきた。どうやら、イリアナの要塞とは様子が異なるようだ。グレイが言うには、魔法使いはよくあのような感じの塔に住んでいるという。
 塔に出向いて要塞の位置を聞き出そうとするパーティ。しかし、長い河が横切っており、近づくのは困難である。
 その時だった。一行は、何者かに見られていることに気がついた。
 振り返った時には、もう遅い。巨大な目玉が薄れていく。魔術師が使った「ウィザード・アイ」の呪文のようである。
 危険な空気を感じ取ったパーティは、可能な限りの速度で、その場を後にした。

●4日目

 4日目。オークの野営地へ戻ってきた一行は、先日の塔とオークたち、それにイリアナとは何らかの関係がありそうだ、と推測して、オークたちの目指した方向へ行ってみることにした。
 幸い、彼らは足跡を多く残していたので、後をつけるのは実に簡単だった。
 山に分け入り、道はだんだんと険しくなってくる。
 休息のために足を止めた瞬間、物陰から、一頭のヒポグリフ(グリフォンと雌馬のあいの子)が飛び出してきた。傷を負っており、ずいぶんと気が立っているようだ。
 不意を突かれたグレイが瀕死の重傷を負ったものの、タモトのバトルアックスの一閃で、敵は昇天してしまう。
 聞いた話では、グリフォンは光り物を集める習性があるという。ヒポグリフはどうだろう。好奇心にかられたパーティは、彼女が現れた洞窟を調べてみることにした。
 無駄な時間だ、とタモトやヨブは苛立ちを隠さないが、いったん火がついたリアやグレイの好奇心は止められない。
 そこは、ヒポグリフの巣穴だった。そしてその中では、まだ生後1〜2週間ほどの、ヒポグリフの子供が眠っていた。
 リアやタモトは、ペットとしてヒポグリフの子どもを連れていくことにする。

●城塞潜入

 山頂付近に到達した。怪しげな城塞が建っている。まさに天然の要蓋だ。
 接近しつつ、一行は中にはいるための策を練った。
 協議した結果、リアが単身、「エルブン・ブーツ」(足音を消す靴)と「インビジビリティ・ポーション」(透明化のポーション)を用いて、内部に潜入することになった。
 目的は、イリアナがモルドレイクらと繋がっている証拠を突き止めることである。
 「クライムウォール」や「ムーブサイレントリー」のシーフ能力を駆使し、素早く内部に忍び込む。
 なかには、数人の衛兵がうろついている。
 ほとんどはオークで、一部にホブゴブリンが混じっているだけだ。
 砦自体は、外囲いと内囲いの二重構造になっている。
 見張り塔の一つに司令官がいることを察したリアは、騒動を起こした隙に、イリアナが悪の手先であるという証拠を奪取しようと企む。
 砦の内部にある厩やオークの寝床が密集している場所に火を放つことに決めたのだ。

●司令官登場

 火は瞬く間に燃え広がり、辺りは大騒ぎになった。
 ホブゴブリンたちはあわてふためき、ボスのもとへと走っていく。
 すぐさま現れたのが、全身をプレートメイルで包み、青白く輝くメイスを持った黒髪の女と、鋭い刀傷をいくつも顔にこしらえた男だった。
 どちらも、熟練の戦士のみがもつ威厳を全身にみなぎらせている。
「これはどういうことだ」と、女が冷たい口調で問いただした。
「バーグルのやつの仕業ではなかろうか。これだから、魔法使いは信用ならぬ」
 男が口を挟む。
「めったなことを口にされぬよう、オーガン将軍。バーグルは色々と私によくしてくれた。そんな彼が裏切るとは信じがたい。何者か外部の者のしわざやもしれぬ。おそらく、アルテリスめの……。ヴァーディ、いやモルドレイクの奴は、つつがなく仕事をしているというのに」
 オーガン将軍と呼ばれた男の胸にはブラック・イーグル男爵領の紋章が刻まれていた。
 会話の内容から察するに、彼らは明らかに悪しきものどもと繋がってもいるようだ。
 証拠をつかんだリアは、とりあえずパーティのもとへと戻ろうと走り出した。
 その瞬間、彼女の透明化が破れてしまった。
 二人の傍らにたたずんでいたローブの男が放った呪文のためらしい。
 絶体絶命の危機である。命からがら、全速力で逃げに逃げた。
 装備が軽いのと、足が速かったのが幸いして、どうにか追手を引き離すことができた。
 しかし、眼前には、オークが5体ほど立ちふさがっていた。彼女は絶望に包まれた。

●「反逆者」

 リアの帰りを待ちながら砦の様子を窺っていたパーティの残りの面々は、すぐさま騒ぎに気づいた。勢いよく燃え上がる炎が見えたのだ。
 城門の方へ駆けつけると、悲鳴が聞こえてきた。これはまずい。
 一行は武器をとって城門を破ると、中に突入し、気絶しかけていた仲間を拾い上げて馬に乗せ、一路逃亡を図った。
 馬に乗ってしまえばこっちのものである。
 ――と思ったのも束の間、一瞬周囲の空気がざわついたかと思うと、彼らの前に、先ほどの女、「反逆者」イリアナ・ペンハリゴンが立ちはだかった。
「よくも、『死の収穫』の邪魔をしおって、虫けらどもめが! 目にものみせてくれるわ!」
 そう叫ぶと、イリアナは手にしていた巨大なメイスで馬上のヨブを殴りつけた。
 ヨブは吹き飛ばされながらも、必死で気力を振り絞り、悪態をつき、体勢を立て直して斬りかかる。
 ジーンにタモトも加勢する。
 その間、グレイ、リア、シャーヴィリー、プロスペルらは先を急いだ。

●「強力な魔法使い」

 城門からも1ダースほどのオークが現れ、こちらに向かってきた。中心にいるのは、オーガン将軍で、巨大な馬に乗って疾駆してくる。
 ヨブやタモト、それにジーンは、イリアナの放つメイスによって、相当の痛手を被っている。
 再度、イリアナがメイスでタモトに殴りかかった。
 とっさにドワーフは斧で攻撃を受け流そうと試みる。
 二つの武器が打ち合わされた瞬間、火花が迸ったかと思うと、巨大なエネルギーの奔流が溢れ、立っていられないほど巨大な地響きが発生した。
 オークどもは総毛立ち、「敵の中には強力な魔法使いがいるらしい」と騒いでいる。

●「常勝将軍」

 グレイは一瞬の隙をついて、イリアナに「チャーム・パーソン」(魅了)の呪文を唱えた。
 イリアナは抵抗できず、放心状態になってしまった。
 うつろな目をした彼女を、ヨブは拾い上げて馬に乗せ、人質として連行する。
 なお、彼女が取り落としたメイスは、抜け目ないジーンがちゃんと回収していた。
 しかし、その隙を逃さず、黒馬を駆って近づいてきたのはオーガン将軍。
 ヨブと目が合うと、にやりと笑った。
 そう、ヨブはブラック・イーグル男爵領出身。しかも、オーガン将軍とはただならぬ因縁があったのである。
 オーガン将軍は楽しげに笑う。
「よもや、お前がこやつらに加勢していたとはな。驚いたぞ。ここでお前を殺すのは惜しい。イリアナをこちらに渡せ。そうすれば今日のところは見逃しておいてやる」
 ヨブは頷き、イリアナを馬から下ろす。そうして、グレイの方を見て、顎をしゃくる。
 グレイはことを理解した。
 魂の抜けた顔をしているイリアナを指して、帰るように命令する。
 その様子を見て、オーガンは瞠目した。大きな笑い声を上げる。
「まさか、偶然は続くものだな。こんなところで放蕩息子と出会うことになろうとは。まさしく、青天の霹靂だ」
 オーガンは笑い続ける。
「よかろう、今回はお前らの勝ちだ。アルテリスにはそのように報告しておくんだな。だが、次に相まみえたときには容赦はせぬ。たとえ、我が息子が相手だろうともだ。それから、こいつの持っていたメイスも返してくれ。『ペトラの嘆きのメイス』を持つ者と、『ジルチェフの欺きの斧』を持つ者とが一緒にいては危険だからな」
 ジーンがうやうやしく差し出したメイスを受け取ってイルミナを後ろに乗せると、オーガンはきびすを返して馬に乗り、たちまち姿を消した。

●ペンハリゴンの惨劇

 かくして事態は素直に収拾したかのように思えた。
 彼らは無事に使命を果たし、砦を後にし山を越えて、無事、ペンハリゴンの街に舞い戻った。
 しかし、どうも街の様子がおかしい。ひどく荒廃しているのだ。
 行きつけの店の店主に様子を聞いた一行は、そこで衝撃の事実を知った。
 パーティが街を出てしばらく立ったあたりで、突然ノールやオークどもの群れが、街に攻撃をしかけてきたというのだ。
 ペンハリゴンの騎士団や、アリーナ率いるグリフォン聖騎士団の活躍もあって、勝利は目前に思えた。
 何よりも、思ったほど敵の数が多くないのが救いだった。
 その時である。
 騎士の一隊を任されていたモルドレイク公が変身し、巨大な緑竜となったのだ。
 緑竜は空を飛んで騎士たちに酸のブレスを吐きかけた。
 それに呼応するかのように、押され気味だったオークやノールも、体勢を立て直した。
 けれども、騎士たちの奮闘が功を奏したのと、オークどもが頼りにしていた補給部隊がなかなか到着しなかったためもあって、間一髪で竜やモンスターどもを追い払うことができたのだという。
 事の次第に驚いた冒険者たちは「三つの太陽」城に出向き、アルテリスに面会を申し入れた。

●名誉回復

 女領主は幾分やつれた顔つきで一行を出迎えた。
 そして、街に流れている噂は真実であると請け合った。
 そのうえで敵の援護部隊が到着しなかったのは、パーティのおかげだったということを知って、アルテリスは深く感謝した。
 彼女は冒険者たちにねぎらいの言葉をかけると、いくばくかの報酬と、「コート・ロード(名誉貴族)」の称号を与えた。
 そして、プロスペルの手をとり、犯罪者の濡れ衣が晴らされ、無事に名誉が回復されたことを告げたのだった。

posted by AGS at 05:00| 【連載】カラメイコス放浪記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする