2021年8月21日配信の「FT新聞」No.3123に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.13」が掲載されました。『ウォーハンマーRPG スターターセット』を紹介しつつ、無料ダウンロード・マテリアル「ライクランドに冒険あり!」にも触れています。
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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.13
岡和田晃
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チーズ店に限らず、ユーベルスライクの街では、噂に事欠くことがない。
積極的にゴシップの種を探し回っているつもりがなくとも、自然と、「魔力の風」ならぬ風の噂で、耳に入ってきてしまうのだ。
ユングフロイト家、エンパイア皇帝、そしてオストランド選帝侯の噂も……。
いや、首都のアルトドルフや、血に塗れたべーゲンハーフェンの街についてまで。
……それでいて、肝心の真相はつかめない、もどかしさがあるのだけど。
ベーゲンハーフェン家を牛耳っているトイゲン家と、ここユーベルスライクのユングフロイト家はどういう関係にあるのか、知りたいのはそこなのに。
しょうがない、マルクトプラッツ(市場広場)へと向かおう。わたしはそう決めた。
−−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より
●『スターターセット』がやってくる、ヤア、ヤア、ヤア!
待ちに待った『ウォーハンマーRPG スターターセット』が9月30日頃、ホビージャパンから発売となります。玩具流通なので、全国のゲームショップで手に入れることができるのですけど、Amazon.co.jpのようなオンライン書店でも入手ができるようになっています(8月31日頃でアナウンスが出ていましたが、1ヶ月伸びてしまったようです、申し訳ありません)。
すでに、この連載でも何度か触れてきたのですが、改めて説明すると……。
『ウォーハンマーRPG スターターセット』にはウォーハンマー世界に生命を吹き込むために必要なすべてが収められている。
初めて遊ぶ場合でも、次なる叙事詩的キャンペーンを準備中という場合でも、
このボックス・セットは『ウォーハンマーRPG』に心惹かれるすべての人にとって最高の出発点となる。
内容物:
「これを最初に読むこと」導入シート
作成済みの、すぐに使えるキャラクター6人
アドベンチャー・ブック
ユーベルスライク・ガイドブック
ルールサマリー・シート3枚
ハンドアウト・シート3枚
優位トークン49個
詳細極まる地図4枚
Qワークショップ社(ポーランドの著名ブランド)による特製ダイス2個
簡易ゲームマスター・スクリーン1枚(ボックス裏面)
……上記のような内容となります。
一般的にボックスタイプのゲームの生産は難しいことから、いま英語版の実物を取り寄せると、びっくりするような値段がかかってしまいかねないのですが、日本語版は入門セットということから、コストは3000円+税と、可能な限り抑えめに設定されています。
オリジナルを忠実に翻訳し、しかし、必要な訳注や解説は添える形で、プレイアブルになっています。
ちなみに、『ウォーハンマーRPG』日本語版公式サイトでは、ゲームマスター・スクリーンの発売予告も出ています(http://hobbyjapan.co.jp/whrpg/)。こちらは私が翻訳に直接噛んでいるわけではなく別チームの仕事ですが、どうぞ愉しみにお待ちください。
『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』は、内側にウォーハンマーRPGの重要なルールの要約や予期せぬ出来事に対応するための諸表が、外側にはオールド・ワールドの荒れ狂う都市の息を呑むようなアートワークが記されたゲームマスター向けのスクリーンである。
スクリーンを用いることで、プレイヤーの詮索好きな目から彼らの前に待つ厄介な冒険の筋道を隠しておくことができるだろう。
『スターターセット』に出てくるサンプル・キャラクターについては、本連載のVol.3(「FT新聞」No.2946)で解説しましたので、そちらをご覧いただければと存じます(https://analoggamestudies.seesaa.net/category/27608570-3.html)。
今回は、それ以外のパートも紹介していきましょう。
●『スターターセット』のメインとなる2冊
『スターターセット』の「これを最初に読むこと」導入シートでは、『ウォーハンマーRPG』の世界観が小説のように綴られ、観音開きのシートを開けると、セット内の解説が記されています。
なんといっても柱となるのは、2冊の本。旧版やミニチュアゲームをやり込んでいる人にとっても、必ずや有用なガイドとなるに違いないものです。
もちろん、基本ルールブックから広がる「次の一作」としても最適です。ルールブックにはシナリオが付属していないのは――公式サイトからダウンロードできる「流血の夜」でもカバーできますが――それとは別に「巡回奇譚」をプレイするのでも面白いでしょう。
「アドベンチャー・ブック」は、初心者から熟練者までのあらゆるプレイヤーを、ユーベルスライクというロールプレイの豊穣の舞台に招き入れる。初心者は入門用アドベンチャーを体験することで、ゲームのルールを楽しみながら習得できる。また、熟練者向けに10本のシナリオが別途収められてもいて、初めての場所や新顔のキャラクター、そして未知なる恐怖によって君の「ウォーハンマーRPG」のゲーム世界を広げることができる。
さらに「ユーベルスライク・ガイドブック」では、ユーベルスライクの血塗られた歴史と近年の紛争が彩り豊かに描き出される。渦中の町中の70箇所を上回る地所や、周辺諸領について詳述するだけでなく、地域一帯で跳梁跋扈する暗黒教団の数々をも紹介するものとなっている。
「アドベンチャー・ブック」のメインは、「巡回奇譚」と題された5幕構成のシナリオです。3〜5回にほどに分けてゆっくりプレイするのもよし、細部をアレンジしつつ1回で完走を狙うのもよし。
『ウォーハンマーRPG』ならではの冒険ですが、シティ・アドベンチャーに必要なもろもろの要素が贅沢に盛り込まれていて、飽きの来ない作りになっています。
●ルールサマリー・シートには何が書かれている?
ルールサマリー・シートは、能力値と技能の解説、テストの解説、戦闘の解説、状態の解説、負傷の解説、エンパイアとユーベルスライクの解説がまとめられた簡易シートで、プレイヤー側に置いておくと、使いやすいでしょう。ゲームマスターは「アドベンチャー・ブック」を読んだあとで、このルールサマリー・シートを読むと、理解が進むと思います。
基本ルールブックを持っている場合、あらかじめ簡略化されたルールサマリーをベースにするか、基本ルールの方を使うか、プレイグループの習熟度に応じて方針を統一しておくと、アプローチがしやすいことと愚考します。
●ハンドアウト・シートはユニーク
ハンドアウト・シートはユニークな内容です。『クトゥルフ神話TRPG』(『クトゥルフの呼び声』)でのハンドアウトとは、シナリオに登場する日記や手紙などを、探索者(プレイヤー・キャラクター)にわかりやすいよう手渡すためのものでした。
マテリアルとしての雰囲気(筆跡、血痕や破れ目の演出、etc……)が出せるばかりではなく、シナリオの謎を推理していくための手がかりにもなるのです。
また、昨今はハンドアウトというと−−国産RPGに限らず、海外RPGにも出てくるのですが−−シナリオに応じてGMから与えられた裏設定、ということを意味します。
今回のハンドアウトは、どちらかといえば後者に近いのですが、精確にはどちらにも分類しきれない部分があります。
というのも、パーティが合流する前に把握していた噂が、複数書かれている、という類のもので、シナリオ・ヒントとロールプレイの題材の中間なのです。
そのなかには、シナリオのヒントとなるものもあれば、そうではないものもあります。いずれにせよ、ユーベルスライクの街やエンパイアを理解にするための助けになるものではありますが。
画期的なのは、形骸化しがちな出会いのシーンが、このハンドアウトというギミックによって新鮮なものとなることですね。何より世界とキャラクターを序盤から自然に一体化させることができる、優れたギミックだと思います。
●優位トークンとダイス、地図
これは『ウォーハンマーRPG』第4版独自のルールである、「優位」をカウントするためのトークンで、キャラクターごとに6個、GM用に13個が用意されています。第4版では、とにかく優位を積み重ねていくのが戦略として大事なので、トークンはあればあるだけ便利です。ぜひ、活用してください。
それと10面体ダイス。10面体ダイスが同梱されたボックス・ゲームというと、ツクダホビーのボックスタイプRPGをつい連想してしまいますが、ダイスはポーランド製の高級品。いわゆるツクダ・ダイス(カットの仕方が異なる10面体ダイス)とは違います(笑)。
余談ですが、私が最初にGMをしたRPGは小学校高学年でプレイした『ロードス島戦記コンパニオン』なのですが−−これも10面体ダイスを使って%を出すゲームという意味では『ウォーハンマーRPG』に通じるところがありますが−−当初はダイスの確保に悩み、「さんすうセット」のなかに入っていた10面体ダイスを使っていましたが、これがツクダ・ダイスだった、ということを思い出しました(笑)。
地図は「詳細極まる」という形容が伊達ではないほどの内容。見事です。
期待していてください。
●『ライクランドに冒険あり!』も出たぞ!
『スターターセット』に先んじて、またPDFサプリメント『ライクランドの建築』へ向こうを張るかのように、『ライクランドに冒険あり!』が日本語版公式サイトで、無料ダウンロード可能になっています(http://hobbyjapan.co.jp/whrpg/pdf/WHRPG_AAR_JP0531.pdf)。
これは、英語版が無料でPDFファイルがダウンロード可能になっていたものの全訳です。内容としては、ルールブックの世界設定パートを補完するシナリオソース集となります。
このPDFファイルで提示されるアドベンチャー・フックはGMが『ウォーハンマーRPG ルールブック』の「第10章:壮厳なるライクランド」に記載された場所を用いてオリジナルのアドベンチャーを自作するためのアイデアと、全体を通じてライクランドに関するいっそう詳しい情報を与えてくれる。
アドベンチャー・フックごとに使いやすそうな場所が太字で記載されているが、必要に応じて気楽に場所を変えたり中身を変えたりしてもかまわない。
……という内容なんです。全10ページで、それぞれルールブックの各項目に対応するようになっています。
いずれのアドベンチャー・フックも奇想天外、自力で思いつかないようなぶっ飛んだギミックばかりです。
しかしエンパイアならば「ありそう」と思える内容、絶妙なバランス。
ゲームマスターは必読ですし、あくまでもフック集ですから、世界観を深く知るための参考としても活用することができるでしょう。
読者の「鋼の旅団」さんは、とりわけ「イカれたレース」「ワインと幽霊」「ワイン祭り」「大空の目」「サウンド オブ ミュージック」に刺激を受けたと教えてくださいました。
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