蔵原大
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今回は、首都大学で行われているウォーゲーム講義のテキストを紹介します。
首都大学オープンカレッジでは、元自衛官の奥出阜義講師による「MM講義」が連年行われています。MM=Map Maneuver(図上演習)ですが、簡単に言えばウォーゲーム(戦争を模擬した競技)のことです。評者も2009年に参加したこの講義、毎年20名ほどの受講生を集めてきました。2011年始めに出された上記の『ハンニバルに学ぶ戦略思考』はその講義内容をまとめたものです。
○ 「戦略の父ハンニバルに学ぶ戦略決断力 ビジネスを勝利に導く体験型MMゲーム」
しかしなぜ「ハンニバル」なのかって? それについては本をお読みになればお分かりになるかと思いますが、少し種明かしをしますと、講義では古代地中海世界の将軍「ハンニバル・バルカ」の「ロールプレイング」をしていることに関係しています(むろん遊びではなく経営戦略等に類する話です)。
ちなみにウォーゲームを活用した大学講義については以前にも「ウォーゲームを製作する歴史学の講義:フィリップ・セイビンの革新的試み」で取り上げましたが、日本ではまだまだ珍しい。まして一般参加可能となると中々ないですね。皆さんもこの機に聴講をお考えになられてはいかがでしょう。
ところでこうした教育の事例については、学術雑誌『戦略研究9』に掲載された「戦略学「教育」の新潮流――「紛争シミュレーション教育」の理論・実践・政治的利用に関する考察――」という論文で国内外の様々な話が分析されています。
ある種のゲームはこんな風に実践的価値を見出されているわけです。「ゲーム」=「遊び」という固定観念に囚われる時代はもう終わりですよ、皆さん。
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【レビュー】ウォーゲーム授業のテキスト:奥出阜義『ハンニバルに学ぶ戦略思考』(2011) by 蔵原大(Dai Kurahara) is licensed under a Creative Commons 表示 - 改変禁止 3.0 Unported License.
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