【外部活動紹介】「忘れたという、その空白の隙間で−−門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』試論」
岡和田晃
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Analog Game Studiesにおける活動ではありませんが、Analog Game Studiesメンバー(今回は岡和田)の活動のうち、Analog Game Studiesの読者の方々へ、特にご紹介したい活動がひとつございます。
日本SF評論賞チームの公式ウェブログ「21世紀、SF評論」に、Analog Game Studiesでもレポート記事が掲載された会話型RPG『ローズ・トゥ・ロード』について、物語論の知見から分析した長篇評論「忘れたという、その空白の隙間で−−門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』試論」を掲載いただいております。主にトールキンの凖創造論を軸として、「門倉直人」という固有名を物語論(ナラトロジー)の地平に思いきり引き寄せる作業を行ってみました。
「忘れたという、その空白の隙間で−−門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』試論」(「21世紀、SF評論」)
http://sfhyoron.seesaa.net/article/173296285.html
昨年私がSF乱学講座という市民講座で公開講義を行なった際、聴講されていた翻訳家の増田まもるさま(J・G・バラード『千年紀の民』の翻訳が近刊予定)から、アナログゲームの有する可能性の一つに、いわゆる(フィクションにおける)オールドウェーヴの「読み直し」があるのではないかというコメントをいただきました。
ここから翻って考えるに、アナログゲームが既存のフィクションの「読み直し」として機能するとすれば、フィクション内部での革新運動、例えばSFのニューウェーヴ運動については、ゲームという文脈でいかなる「読み直し」を与えられるのでしょうか?
かつて「オフィシャルD&Dマガジン」誌ではライターの藤川俊一氏と滝祐一氏との対談において、J・G・バラードの「時の声」と『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が同一の地平で語られましたが、そこで示唆された「読み直し」の位相の重要性は、増田まもるさまのご指摘と相俟って、今後ますます高まりを見せるのではないかと思われます。
例えばニューウェーヴ運動は、ラングドン・ジョーンズの編纂したアンソロジー『新しいSF』に象徴されるように、時代が要請した最も先鋭的な表現でもありました(ジョーンズとともにニューウェーヴ運動を牽引したマイクル・ムアコックは『新しいSF』の序文において、『新しいSF』収録作を「読者志向」であり、「大衆との関わりを念頭に置いている」と告げています!)。
そして今回の論考では、あくまで試論レベルではありますものの、そうした地点を瞥見することができたと自負しております。どうぞ、ご笑覧いただけましたら幸いです。
また今後は、【外部活動紹介】というカテゴリーのもと、Analog Game Studies外で(主にメンバーや協力者の手で)発表された論考や作品、講演活動などをもご紹介していく予定でございます。ご期待下さい。
なお、増田まもるさまが管理人をつとめられるニューウェーヴ/スペキュレイティヴ・フィクションのサイト、「Speculative Japan」(http://speculativejapan.net/)は、Analog Game Studiesをブログロールに登録して下さっています。「ゲームについての思弁が人間理解に欠かせないことは、いうまでもありません」とのお言葉を下さった増田まもるさまに感謝いたしますとともに、今後ともいっそうの友誼をお願い申し上げる次第です。(岡和田晃)
新しいSF (1979年) (サンリオSF文庫) [文庫] / 野口 幸夫 (翻訳); サンリ...