2022年10月22日

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.10


 2022年10月20日配信の「FT新聞」No.3557に、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説「カラメイコス放浪記」Vol.10が掲載されています。今回はいよいよ、GAZ2『イラルアム首長国連邦』の設定が入り、凶悪無比な「あの」D&Dオリジナルモンスターと対峙します!

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.10

 岡和田晃

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●はじめに

 本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照し、都度、シナリオの下敷きにしています。今回はGAZ2『イラルアム首長国連邦』の設定も導入しています。
 前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/491279639.html)をどうぞ。今回はキャンペーン第10話「ビホルダー」)の内容となります。

●登場人物紹介

タモト/『ジルチェフの欺きの斧』を持つドワーフ、6レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、7レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、6レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、6レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、7レベル。
プロスペル/ケルヴィンの貴族の息子。ファイター、7レベル。

インジフ/リアの祖父。元「盗賊の王国」スレッショールド支部のギルドマスター。
マレク/リアの兄。故人。
「ルルンの」ヨランダ/対ブラック・イーグル男爵のレジスタンス。
ルートヴィヒ・フォン・ヘンドリックス男爵/邪悪きわまりない貴族。通称「ブラック・イーグル」。
占い師アルヤ/謎めいた美貌の占い師。正体は「盗賊王」フレームフリッカー。
「盗賊王」フレームフリッカー/ギルド「盗賊の王国」のギルドマスター。
アリーナ・ハララン/グリフォン騎士団員。スレッショールドの街を治めるシャーレーン大司教の姪。
シャーレーン大司教/スレッショールドの街の統治者。
ゴルサー/謎の魔法使い。
「砂漠のウズラ」アラディン・アル・スレイマン/イラルアム首長国連邦のデルヴィーシュ。

●殺人事件

 スレッショールドで起こった殺人事件に戸惑うパーティ。
 しかも被害者はリアの兄、マレクである。
 慌てて現場に駆けつけた一行が目撃したものは、見るも無惨に引き裂かれた肉片の山だった。
 それを見たインジフは、好々爺の仮面を脱ぎ捨てた。
 かつてスレッショールドの裏社会を取り仕切っていた頃に戻ったかのような猛々しい様子で、真相の徹底的な究明にかかることを宣言したのだ。
 あまりの剣幕に、取りつくしまもない。

●アラディンとの出会い

 一方、「鉤と十字亭」に残っていたメンバーは、奇妙な人物との出会いを果たした。
 ターバンを巻き、ぼろぼろになったローブを着込んだ初老の男が話しかけてきたのだ。
 彼は、自分が「砂漠のウズラ」、アラディン・アル・スレイマンと名乗った。
 砂漠の国イラルアム首長国連邦から、占い師アルヤを尋ねるためはるばる旅してきたらしい。

●イラルアム首長国連邦とは

 イラルアムでは、アル・カリムという伝説的英雄が興した一神教、「エターナル・トゥルース」が奉じられている。
 信者は「ナーメー」という教典に記された厳格な教えに従って生きる。
 彼らは、イラルアムの地を再び牧草が生い茂り、水が空気のように豊かに湧き出る地とするために、まさしく全力を傾注しているのだ。
 そしてアラディンは、「ナーメー」の生き方のみを自らの範とし、砂漠で孤独な修行の日々を送ることを旨とする「デルヴィーシュ」と呼ばれる特別な職についているのである。
 だが、自ら「砂漠のウズラ」(ウズラは歌が上手な人の意)と称するだけあって、アラディンはなかなかに弁舌巧みである。
 詩人ドワーフであるタモトも負けていられない。
 二人は「歌合わせ」で詩人としての力を競うことにする。
 結果は……。見事、タモトが勝利した。
 朗詠があまりにも見事だったので、立ち聞きしていたスペキュラルムの文学サークルの面々からお誘いがかかるほどだった。
 その後、彼らはアラディンをアルヤ(フレームフリッカー)に引き合わせようとしたけれども、彼女の姿はいずこかへ消えてしまっていた。
 そこで、イラルアム人はこの宿で一夜を明かすこととなった。

●次の日

 晩になっても、インジフは「鉤と十字」亭に戻ってこなかった。
 代わりに現れたのは、スペキュラルムで密偵をやっているはずの、リアの長兄ダニエルだった。
 本人は語らないが、どうやら祖父の呼び出しを受けたらしい。
 不穏な雰囲気が立ちこめる。
 翌日。起きて食事に向かった一行を待ち受けていたのは、楽しげに話を交わしているアラディンとフレームフリッカーだった。
 いつの間に戻ってきたのか。
 彼女は、自分たちのテーブルに一行を招いた。
 話の内容が、パーティが関わってきた冒険に関係あるらしい。

●アラディンの来訪目的

 アラディンは静かに語り始めた。
 それによると、彼が国を離れ、フレームフリッカーを尋ねた理由は2つあるという。
 1つは、彼の氏族が守護していた「生命の樹」が原因のわからないまま枯れ始めるという事件の、打開策を探さねばならなくなったため。
 もう1つは、「フォート・ドゥーム」のブラック・イーグル男爵と名乗る男が、ひそかにイラルアムの首長連に、カラメイコス大公国に攻め込むための手引きを行っていることを、報告するためである。
 彼の口から発せられた「生命の樹」という言葉に、パーティは動揺を隠せない。
 そこで、パーティはこれまでの冒険を包み隠さず話したうえで、ロスト・ドリームの森に住むカラーリー・エルフを訪れるべきだとアラディンに勧めることにした。
 イラルアム人は頷き、「ナーメー」を引用して礼を言った。
 「自分はこれからそのエルフに会いにいかねばならない」、と。
 「君たちの行く手は死のごとき暗闇に包まれている」と付け加え、多少の手助けにでもなればと、首から下げていた「プロテクションスカラベ」(一定回数の呪いや「フィンガーオブデス」を吸収するアイテム。ただし、「デススペル」には効果がない)を手渡した。

●シャーレーン大司教との会合

 宿を後にするアラディンの後ろ姿を眺めつつ、一行はどう行動すべきかを相談し合った。
 決定事項はこうである。
 ヨランダの提案を受け入れ、まずはシャーレーン大司教と面会して、ステファン・カラメイコス公から預かった書面を渡し、スレッショールドへの難民受け入れを要請しなければならない。
 それが終われば、ブラック・ピーク山脈に眠っているという伝説の武器を魔術師ゴルサーが入手してしまう事態を阻止することが急務となっている。
 パーティはシャーレーン・ハララン大司教の住む、ターンズ砦へと向かった。
 今日はターンズ砦の警備を任されていたアーソル軍曹に挨拶し、大司教に取り次いでもらう。
 パーティは、シャーレーン大司教の厳格そうな様子にたじろぎながら難民受け入れの話を持ち出したのだが、相手は拍子抜けするくらいあっさりと了解してくれた。
 娘であるアリーナ・ハラランから一行の活躍を聴いていたからだろう。
 が、大司教は駆け引きというものを心得てもいる。
 交換条件として、パーティブラック・ピーク山脈にあるフォームファイア峡谷に救うノールどもを掃討するという使命を負わされることとなってしまった。
 ただ、彼らはもともとブラック・ピーク山脈へと向かう途中だったから、このクエストは渡りに船だった。

●フォームファイア峡谷へ

 砦を離れ、「鉤と十字」亭に向かったパーティ。
 その途中、なぜか町中で暴れている熊に出くわしたり、スリに間違えられたりとひと騒動あったのだが、無事、一行は再会を果たした。
 その足で、フォームファイア峡谷へと通じる道を歩いていく。
 殺人事件も心配だが、そちらの方は、海千山千のインジフとフレームフリッカーに任せることにしておいた。
 峡谷はなかなか険しく、旅慣れた彼らにとっても決して楽な道程ではなかった。
 ノールに襲撃された冒険者の遺骸を片づけ、先へ先へと進んでいくと、急に辺りが濃い霧に包まれてきた。
 ほとんど前が見渡せない。
 そのうえ、怪しげな旋律が響き渡ってきた。ノールどもが現れたのだ。
 だが、経験を積んだ彼らにはノールごときは敵ではない。
 順調に掃討していく。
 しかし、その背後には、もっと恐ろしいものが控えていた。

●目玉の暴君

 空中に浮遊する巨大な球状のモンスター。
 頂部には先端に目の付いた10本の突起が映えており、体の正面には大きな主眼がある。
 開かれた口は、体全体のおよそ半分を占めており、鋭い牙が間断なく生えている。
 「多眼の球魔」と畏れられる伝説のモンスター、「ビホルダー」が、その姿を現したのだ!!
 ビホルダーは非常に高い知性を有している。
 魔力によるゆっくりとした飛行で移動するうえ、正面の主眼は常に「アンチマジック・レイ」を放っており、敵の魔力を無効化する。
 さらに、眼突起はそれぞれ、「チャーム・パーソン」、「チャーム・モンスター」、「スリープ」、「テレキネシス」(念動力)、「フレッシュ・トゥ・ストーン」(石化)、「コーズ・フィアー」(恐怖付与)、「スロー」(減速)、「キュア・シリアス・ウーンズ」(重症治癒)、「デススペル」(死の呪文)の呪文を同時に放つことができる。
 まさしく悪夢の到来だ。
 あまりの事態に愕然とする一行。
 必死で応戦するも、「テレキネシス」の呪文で、頼りにしていたグレイの「スタッフ・オブ・パワー」は奪われてしまうし、リアやヨランダは「チャーム」されてしまう。
 それでも必死でエフリーテを呼び出して援軍とし、眼突起のほとんどを切り取ることに成功した。
 しかし、ビホルダーも負けてはいない。
 眼突起から放たれた「フレッシュ・トゥ・ストーン」の光線が、ドワーフの鋼の抵抗力を貫き、タモトを石に変えてしまったのだ!

posted by AGS at 11:45| 【連載】カラメイコス放浪記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月19日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.24

 2022年10月6日配信の「FT新聞」No.3543に、「『ウォーハンマー RPG』を愉しもう!」Vol.24が掲載されました。今回は英語版の新作『ザルツェンムント』や、待望の日本語版新作サプリメント『ライクランドの記念碑』について紹介しています!

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.24

 岡和田晃
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 苦悶の表情を浮かべた霊は、問わず語りに、故郷グリュンブルク南部にいた頃、ホルガー・ラウク市長の立像に悪戯した経験を話し出す。
「石を投げつけ、ゴミを投げつけ、時にはもっと“ステキな”ものまでをもぶつけてきた。
 ケバケバしく飾られていた像は見る影もない。
 悪臭紛々とし、金目のものは引き剥がされている。よほど腹に据えかねていたのだろう。
 ただ、やりすぎると市長の霊が戻ってくると及び腰な連中がいたのも確かで、実際のところ像の影はおかしくないのを見て、それで……」
 わたしは困惑した。幽霊が幽霊怪談を語り始めたのか? それとも、市長の幽霊との対決、ということなのか?
 ――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●お待たせしました

 少し間が空いてしまいました。当初から本連載は隔週ペースというハイペースで書きたいことをあれこれ綴って参りましたが、文字数からすると“異常”な頻度を少しセーヴしつつ……他の連載や企画と並行する形で、『ウォーハンマーRPG』についてもじっくり語っていければと考えますので、どうぞ長い目で見てやってください(『ユーベルスライク冒険集』についても語り足りないですし)。

●新作サプリメント、これが面白い

 英語版の新しめのサプリメントで岡和田のお気に入りは、『ザルツェンムント:塩と河の都(Salzenmund: City of Salt and River)』です。
 ザルツェンムントとは、エンパイア北部の両方ノードランドの首都で、名目上の君主はテオドリック・ガウサー選帝侯ですが、勅許自由都市として、アルトドルフのように権謀術数が蠢くというよりは、「半分ノース人」と揶揄されるような、のびのびして大らかな気風で知られています。そのぶん好戦的な面もあるようです。
 私は都市設定サプリメントが好きで、第2版のときはミドンランドの首都ミドンヘイムの都市サプリメントも兼ねた『ミドンヘイムの灰燼』の企画を持ち込んで自分で訳したほどなのですけど、まさかミドンヘイムよりもさらに北にあるザルツェンムントが単独のサプリメントになるとは、夢にも思いませんでした。まさしく情熱が奇跡を呼んだ1冊です。

●日本語版の新作『ライクランドの記念碑』

 で、日本語版はどうなのか、という話しですが、これまためでたく、『ウォーハンマーRPG』第4版の日本語版公式サイトでアナウンスされていた新作サプリメント『ライクランドの記念碑』が出版されました!
 PDFオンリーで700円、15頁構成と、取り回しのいい小著ですが、中身はぎっしり詰まって濃厚です。何より、「このサプリメントは『ウォーハンマーRPG』じゃないと出せない」感が素晴らしい!
 こちらは編集の伏見義行さんが翻訳を手掛け、私と待兼音二郎さんが監修に入っています。
 しかしいったい、なぜ「記念碑」? 原著のタイトルは「Monuments of the Reikland」ですから、忠実な訳になっています。それでは商品紹介を見てみましょう。

 『ウォーハンマーRPG ライクランドの記念碑』には、五つの注目すべき記念碑、彫像、塔が記されており、プレイ中のキャンペーンに登場させたり、新たな物語を始めるきっかけづくりとしたりするのに最適だ。
 各記念碑の外観の詳細な描写だけではなく、その記念碑に秘められた危険な秘密や陰謀などが、新たな冒険の幕開けとなるだろう。

 ――うーん、わかったような、わからないような? 「五つの注目すべき記念碑、彫像、塔」って何なのでしょう? 『ウォーハンマーRPG』ファンの「鋼の旅団」さんは、これは「シグマー像とホエスの白い塔とストーンヘンジ」とおっしゃっています。
 『ウォーハンマーRPG』をご存知ない方には馴染みが薄そうな言葉を解説すると、シグマー像とは、エンパイア建国の英雄にして今は神となった者の像ということ。ホエスの白い塔とは、ウルサーン諸島にあるハイ・エルフの塔のことで、あらゆる知識が集積され、至高魔術(ハイ・マジック)の研究がなされている場所。「ホエス」とは、『ウォーハンマーRPG』第4版のルールブックでは、エルフの神々に分類されています。
 どれもオールド・ワールドでは有名な固有名を冠するもので、そう思いたくなります。

●5つの記念碑とはどんなもの?

 ただ、『ウォーハンマーRPG』は、私たちの予想の遥か先を行ってくれておりました。『ライクランドの記念碑』で解説されるのは、次の5つ。

・ホルガー・ラウク市長の立像
 凶作なのに小麦粉の供給を操作して私服を肥やした市長が、自画自賛のために造った彫像。市民から嫌われているので、頭部は取れて代わりに腐ったカブが置かれている。

・アウエルスヴァルトの戦いの戦没者追悼碑
 ゴブリンやオークの軍勢から人々を護るため、決死隊を組んでドワーフが大砲(キャノン)の弾込めをする時間を稼いだマルタ・フォン・ヴァレンシュタイン女男爵らの108名に及ぶ戦没者の追悼碑。

・フォン・プロツカナルの時計塔
 分や秒まで刻まれるばかりか、メリーゴーランドまで付いている精巧な機械仕掛けの時計塔で、製作者の技師ゲルト・フォン・プロツカナルはこれがため狂気に陥った。

・マッケンシュタインの鷹の像
 オーベルヴァルト群とマッケン男爵領との境界を示す鷹の像で、幸運の印とみなされており、旅人は嘴部分に触れると前途を見通すことが可能となる。

・パラノスの柱
 翡翠の学府の主席魔道士(パトリアーク)であるガーヴァン・パラノスにちなんだ脊柱で、高さは67フィート(約20メートル)を越え、隅々までが植物で覆われている。

 興趣を損ねない程度に記念碑群の概要を伝えると、こんな具合になります。実に細かいものながら、固有名を入れ替えれば他の地方――さらには他のファンタジーRPGでも――使えそうな、そんな設定ばかりなのです。
 こうした普遍性があるにもかかわらず、こんなサプリメントが発売されるのは『ウォーハンマーRPG』くらいだろうと思わずにはいられないところが、実によく“わかっている”のです。
 各々の記念碑には、あっと驚く秘密や仕掛けが隠されており、これが謎と危険に満ちた世界オールド・ワールドの深奥に、それぞれの切り口から踏み込んでいるのが読ませます。もちろん、NPC等の関連する追加データも収められており、初心者GMでもこの記念碑を扱うシナリオをデザインしたくなるのは請け合いですし、手慣れたGMならば個々の設定だけで、そのままセッションが出来てしまうことでしょう。
 加えて、個々の記念碑にまつわる設定の拡張案も、アドベンチャー・フックとして記されているといった具合で、ぬかりがありません。

●『ライクランドの記念碑』を活用しよう

 もともと、『ウォーハンマーRPG』第4版「古代の遺跡と恐るべき廃墟」の節があり、太古のちからが眠る闇石の輪、〈大魔法使い〉コンスタント・ドラッケンフェルズの塔、危険な山頂に現れるヘルスパイア、息を飲むような絶景ロウレィ群礁、歌う太古の支石墓(ドルメン)、といった曰くありげな場所が紹介されており、読者はそれらを参考にシナリオを作成することができました。
 ただ、『ライクランドの記念碑』は、公式サイトから無料ダウンロードできる『ライクランドに冒険あり!』とはまたテイストが異なります。思うに、記念碑というブツにこだわったところがオールド・ワールドらしさなのではないかと。
 つまり、今回の冒頭で紹介した『ザルツェンムント』のように街まるごとをデザインするのではなく、だからといってあまり抽象的にもなりすぎず、どの都市にでも応用できて具体的にイメージしやすいのが記念碑本、ということなのでしょう。
 「この記念碑の秘密はこういうのかな?」と予想したくなるユーザー心理を、絶妙なバランスで突いているのです。
 「ホルガー・ラウク市長の銅像」について言えば、汚職の疑いが濃厚な政治家が自身の銅像の建立を企てる……これは現代日本においても、ついこの間ニュースになったばかりの話でして、同種の事例は日本のみならず世界各地で起こっていることなのですね。
 そういう意味では、本書はいつの時代にどこの場所で起きてもおかしくない事件を題材にしているわけですが――世界観的には矛盾がないものの――あっと驚くどんでん返しを仕掛けることで、既視感を満足度に変えるための工夫がなされているのです。
 是非『ライクランドの記念碑』をはじめ、『ウォーハンマーRPG』第4版の各種サプリメントを入手し、フル活用なさってみてください。
 翻訳・紹介している側も、皆さんの応援こそが力の源であるのです。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ウォーハンマーRPG ライクランドの記念碑』
 オールド・ワールドの五つの注目すべきモニュメント
 発売日:2022年10月
 価格:700円(+税) *PDF版ダウンロード販売のみ
 https://conos.jp/product/whrpg-5elements/

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
 https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/


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