2021年10月25日

児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる『もつれた国のアリス』リプレイ

 2021年10月24日配信の「FT新聞」No.3196に、齊藤(羽生)飛鳥さんによる、T&T小説リプレイvol.11『もつれた国のアリス』編が掲載されています。『怪奇の国!』とのリンクがニクい。『もつれた国のアリス』に出てくるイサルキア王国を知りたい方は、『T&Tがよくわかる本』を。

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
『トンネルズ&トロールズ』完全版・小説リプレイ
Vol.11
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いまだに、『怪奇の国!』からジークリットは出られていません。
そこで、『もつれた国のアリス』形式なら、他の冒険ができると思い、彼女にプレイしてもらいました。
ルイス・キャロルの論理学と言葉遊び、T&Tのくせの強いキャラクター達が、短いながらもきれいに凝縮されているミニソロアドベンチャーも、ジークリットでプレイすると、彼女の幸運なんだか幸薄いんだかわからない冒険になるのだとわかりました。
ダイスのせいなのか、はたまたキャラクターに引っ張られるのか。謎です。
何はともあれ、ソロアドベンチャーは奥深くて面白いです^^


※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

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『もつれた国のジークリット』
〜『もつれた国のアリス』リプレイ〜

著:齊藤飛鳥
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0:幸運なる〈怪奇の国〉

私の名前は、〈幸運の〉ジークリット。
エルフの女性。303歳。銀髪金眼褐色肌の戦士。
軽い気持ちで冒険をし始めた〈怪奇の国〉をさ迷い続けて、幾星霜。
最近では、もともとの二つ名〈幸薄き〉に戻そうか、まじめに検討中。
今日もガンマンとの決闘に勝利したところで、いつもとは違う出来事が起きた。
「ああ、忙しい忙しい! このままだと遅刻しちゃいます! 」
何と、ガンマンが消えた後を、白ウサギが走っていくではないか!
もしかしたら、あの白ウサギを追いかけていけば、この怪奇の国から出られるかも! 
全速力で私が白ウサギを追いかけていくと、魔術師たちが論争しているところへ出くわしてしまった! 
片方は、「壮麗なる」マクシミリアン(通称マックス)だ。
この〈怪奇の国〉の創設者なんだから、出口を知っていてもおかしくない! 
私は、マクシミリアンたちの会話に口をはさんだ。


1:幸運なる会話

「ごきげんよう。どうなさいまして? 」
〈怪奇の国〉から出る方法を教えてもらうため、私はお行儀よく挨拶した。
と言っても、いくらお行儀よく挨拶しても面接官が採用してくれるかどうかは全然別の話なんだよね……と、どこからともなく私の脳内へ流れこんでくる異世界の知識を押しやって、私はマクシミリアンたちの話に耳を傾けた。
「ここな魔術師ウォーケンから、厄介な相談を持ち掛けられてな。互いにそっくりな『約定の神』と『解放の神』を、できるだけ短い質問で見分けたいという話じゃ。『約定の神』は常に本当のことを言い、『解放の神』は常に嘘をつく」
うわ、本当に厄介だ!
ここは、知性度と幸運度で1レベルのSRをやってみるとしますかね。
ヘイ、ダイス!
知性度成功!
幸運度失敗! 
なんてことでしょう! 
そういうわけで、私にひらめいたのは、こんな質問だった。


2:幸運なる質問

「簡単でしてよ。あなたは嘘つきかと、訊けばいいと思いまーす。そうすれば……て、だめだ。どちらも、“いいえ”としか答えないわね」
大見栄切ったけれど、だめなものはだめだった。
マクシミリアンが、あからさまにため息をついた。
ちょっとちょっと、そこまで露骨にがっかりしないでくれる?
せめて、助けになろうとした心意気くらい評価してよね! 
あーぁ、こうもうまくいかないとは、私はやっぱり〈幸薄き〉ジークリットなのかしら……。


3:幸運なる論争

私が落ちこんでいる間、マックスと魔術師ウォーケンの論争は、だんだんエスカレートしていった。
そう表現すれば聞こえはいいけれど、実際には呪文という名の肉体言語に走り出しちゃったわよ、こいつら!
「くらえ、《炎の》……」
「遅い! くらえ、《呪い》! 」
ウォーケンの呪いをくらったマックスは、その場でぐるぐる円を描いて回り始めた!
まずい!
マックスがいかれたら、私が〈怪奇の国〉から出られる方法がわからなくなるじゃないの! 
慌てふためく私をよそに、魔術師ウォーケンは自分の世界に浸りきっていた。
「神々の話はだいたいわかった、あとは愛しいリリア姫を迎えにイサルキア王国へ赴くのみ! 」
リリア姫、誰? 
いつ、『約定の神』と『解放の神』を見分ける話から、そんなラブな話になっていたの?
そんな疑問を声に出す暇もなく、魔術師ウォーケンは、マクシミリアンの傍らにある〈怪奇の国〉へと消えていった……て、あれ?
私、〈怪奇の国〉から出られているじゃない! 
……と、喜んだそばから、マクシミリアンがぶつぶつとすっごく不吉なことをつぶやき始めた。
これは、危険な予感!
速度で1レベルのSRだけど、速度2倍にしてくれる魔法のブーツを装備しているおかげで、何とか成功!
私は全速力で駆け出した!


4:幸運なる結末

地面を抉り、蹴飛ばすように走っているうちに、急に足が空を切った。
続いて、浮遊感。
いやいや、「感」どころか浮遊しているのそのものだわ!
どうやら、私は走っているうちに、カトラス・スフィンクスに掴まれ、大空へファラウェイしてしまったようだ。
カトラス・スフィンクスは、チェシャ猫のように笑うと、何やら私へ語りかけてきた。
言葉遊びを駆使したその語り口調に、私は次第にまぶたが重くなってきて……。
……。
……。
……。
目が覚めると、そこは科学実験装置の置かれた部屋だった。
私の片手には、空のビーカーが握られている。
ビーカーからは、酒の匂いがする。
どうやら、ビーカーの中身の液体は何か確かめるために飲んで、酔いつぶれてしまったらしい。
すると、今までのことはすべて夢?
冒険点300をゲットできたのはいいとして、私はいつになったら〈怪奇の国〉から出られるのォォーッ!?

(完)


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙されたて。
2021年4月に連作短編歴史ミステリ『蝶として死す 平家物語推理抄』(東京創元社)を刊行。
平安時代末期を舞台に、平清盛の異母弟・平頼盛(よりもり)が探偵役として、犯人当てあり、トリック当てあり、被害者当てあり、動機当てあり……と、各種の謎に挑む本格ミステリでもある。
6月刊行のアンソロジー『本格王2021』(講談社)に、『蝶として死す』所収の「弔千手(とむらいせんじゅ)」が収録。
上記のような大人向け推理小説の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表している。

出典元:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
『GMウォーロック』Vol.1 収録
 ミニソロアドベンチャー『もつれた国のアリス』
 著:岡和田晃
 発行 : グループSNE/新紀元社
 2021/4/16 - 2,420円


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2021年10月19日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15

 2021年10月7日配信の「FT新聞」No.3179に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15」が掲載されています。シナリオ作成の続き、『ゲームマスター・スクリーン』の紹介とメタテーマについても掘り下げています。

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.15

 岡和田晃
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 魔狩人フレイザーはピストルを抜き放つと、いきなり相手に突きつけた。
 ネズミ捕りのラッテンファンガーは真っ青になって手を挙げ、
「まだ終焉の刻(エンドタイムズ)の訪れには早いですぜ、旦那」
 震えながら、そう吐き出している。フレイザーは楽しそうに笑いながら、
「その話は、以前ライクヴァルドでも聴いたことがある。双尾の彗星と混沌の八芒星のあざをもった子供が生まれたら終焉が訪れる、とかなんとか。どうせ、迷信にすぎんが」
「なぜわかるんです、旦那」
「そういう噂を流した張本人たち、魔女やら似非魔術師やらを火刑にかけてやったからだ。見てのとおり、"終焉"どころか、こちらはピンピンしている。偉大なるシグマーの御加護というわけだな」
 横目でわたしを見てくる。あからさまな嫌味だが、気づかないふりをしておく。

 −−魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より


●強力なエンハンスメントをご紹介!?

 本連載の前回、『ウォーハンマーRPG』日本語版公式サイトから無料ダウンロードできる『ライクランドの冒険あり!』を使ったシナリオ作成案を書きましたが、なんと仲知喜さんから、強力なエンハンスメントを寄せていただきました。以下、そちらをご紹介いたします。
「●アドベンチャー・フックからシナリオを作る」(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/483417873.html)への注釈としてお読みいただければ幸い。

 下水道に隠された抜穴を配置、『ライクランドの建築』のお好みの建物の床下(地下室)に繋げると(一本道でOK)マップを描く時間が大幅に省略できると思います。賊が抜け穴を繋げた理由と、建物内部の状態を決めて、遭遇を配置すると完成です。

 なんともエレガント。ベテランならではの、無理のない省力化の美学が冴えていますね。そのまま使えてしまうと思います。というか、私なんかの案よりもずっと上手い……。加えて、その後の展開まで考えてくださいました。

「時、すでに遅し!」 
屋敷は賊に襲撃されていた。
遭遇1:見張り役。運び出し中の盗品。住人の遺体。 
遭遇2:探索中の賊。
遭遇3:賊と内通者。(賊は何を狙っていたのか?)
演出せよ:2階の窓をぶち破ってスケイブンと共に賑わう街路に飛び降りてください。

 こんなにシンプルなのに、具体的かつ映像的に情景が見えてくるのだから、さすがというほかありません。というわけで、2本もシナリオが出来てしまいました。このように、フックからシナリオをデザインする訓練を積んでおくと、RPGの設定を読んだだけで、瞬間的かつ自動的にシナリオが作成できるようになります。その境地にまで到達できたら、しめたもの。
 最小の労力でマスタリングができるだけではなく、プレイヤーが思わぬ動き方をしても、できるだけそれに合わせてシナリオの方を可変的な形で動かしていく必要ができるからですね。RPGのシナリオデザインには、様々なやり方がありますが、こと『ウォーハンマーRPG』に関しては、基本となる設定を隅々まで読み込んでおくのが、回り道のようでいて近道なのです。何より楽しい!

●神は細部に宿る(混沌の神々も例外ではない)

 さて、『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』と、『ウォーハンマーRPG スターターセット』が相次いで発売になりました。スターターセットはボックスなのですが、無事に中国の製造工場から届いたようで、私としてもほっとしています。
 ゲームマスター・スクリーンは4面印刷のかなり豪華なもので、表面はすべてイラストになっており、描かれたヴィジュアルのきめ細やかさは一見の価値があります。
 とりわけ英語圏のRPGイラストは、「神は細部に宿る」というばかりに、できるだけきめ細やかに情景を可視化させていくことこそが、重要な評価軸になっているように思われてなりません。
 『ウォーハンマーRPG』は近世をモチーフにしたRPGですから、それこそピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボス等の16世紀のフランドル絵画が、一つの規範になっているのではないでしょうか。このあたりの細部を考えるためには、森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」 遊びの図像学』(未來社、1989年)がお勧めです。
 そこまで古典的なものに遡らずとも、同じゲームズ・ワークショップ関連のゲーム作品では、めでたく日本語版も復活を遂げた『ファイティング・ファンタジー』シリーズのイラストレーションが典型的ですね。世界を隅々まで味わってみてください。

●ゲームマスター・スクリーンの裏面のデータ

 ゲームマスター・スクリーンの裏面には、実際にゲームに役立てられるチャートが、これでもかというばかりに並べられています。
 向かって左側から1〜4面としておきますと、1面には「オールド・ワールドの一般的な名前」、「キャラクターの特徴、動機、癖の表」、「全技能一覧」が列挙されています。これでもうキャラクター作成の時に困ることはありません。GMにとっては、NPCをランダムに決めたい時にまず、役立てられますね。
 2面には、主にテストや戦闘の時に使うチャートが集められています。「難易度、対抗テスト、成功レベル、異能とテスト」、「優位」、「運命点、執念点、幸運ポイント、決意ポイント」、「射程」、「命中部位」、「支援」、「心理ルール」といったチャートが揃っています。これらは頻繁に参照すること請け合いですが、「心理ルール」は基本ルールブックとの異同があります。どうも『ウォーハンマーRPG』第4版は、頻繁にエラッタを当てるというよりも、サプリメントごとにルールをアップデートしていく方針のようですが、日本語版では『ルールブック』側の記述を訳載したうえで、訳注として『ゲームマスター・スクリーン』原著の記述を紹介しています。こうすることで、GM側がどのルールを使うのかが、自由に決められるというわけです。
 3面には、主に街中や旅路で参照するチャートが集められています。「貨幣、収入、売却、入手可能度、頻出するアイテム」、「移動」といった具合に。「経験点付与の手引、待望の達成から得られる経験点」、「キャリアの満了、各種成長にかかるコスト」と、成長に関したルールもまとめられています。下段には「各状態リスト」や「よく登場する状態」がまとめられています。これは2面下段の「心理ルール」と並べて使うと便利なものですね。
 4面には、「武器と盾」、「鎧」のチャート。日本語版ルールブックではエラッタが出てしまった箇所ですが、こちらのチャートではきちんと修正済みですからご安心ください。下段には「「サイズ」のルール」についての記載もあり、これもまた下段つながりで戦闘に使うと便利なものですね。

●『ゲームマスター・ガイド』の第1章

  『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』には、32ページのサプリメント『ゲームマスター・ガイド』が付いています。こちらを「本命」として購入する人も少なくないのではないでしょうか。その期待に応えて恥じない、充実の一冊となっています。
 第1章は「ウォーハンマーたらしめるもの」。GM目標および私信が細かに綴られています。意外と気づかないかもしれませんが、ここにはゲームの思想がよく反映されていて、つまりは「オールド・ワールドらしさを出すためには」というのが主眼にあるのですよね。
 私自身も書いたことがありますが、ゲームマスターの技巧というのは一般化できる部分が少なからずありまして、その意味ではよく言えば総花的な、悪く言えば八方美人なガイドが好まれやすい面があります。
 それはそれで大事なのですが、このゲームマスター・ガイドでは、あえて最初に「オールド・ワールドに命を吹き込む」、「オールド・ワールドをさらけ出す」ことが第一に置かれているのですね。
 つまり、オールド・ワールドらしさをどうやったら演出できるか、そこに特化した記述になっているのですね。
 初心者GMを相手にしていないというわけではありません。
 ただ、『ウォーハンマーRPG』でGMをするということは、必ずしも勧善懲悪なストーリー展開が是とされるわけでもありませんし、ラスボスとの戦闘を回避して生き延びることが最良の選択となるケースも珍しくありません。
 そのぶん、GMとしての基準がゆらぎやすく、円熟の技量が求められてしまうわけですが、そこをサポートするために書かれている、というわけだと思います。GMが「オールド・ワールドらしさ」をきちんと掴んでいれば、それは自ずからGMのスタンスにも反映してくるわけで、公正な裁定のためには、まず世界の理解が必要だという前提であるわけです。日本という環境でRPGをしていると、意外と忘れがちなポイントではないかと思います。

●メタテーマと「終わり」の問題

 次いで、「ウォーハンマーRPGのテーマ」が語られます。これはいわゆる、メタテーマと言われるもの。私が編集した『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード)もたまたま同時期に出たのですけど、そちらでも書いたのですが、RPGには個別のシナリオにおけるテーマのほか、世界観やシステム全体の方向性としてのテーマというものが存在し、それを私は「メタテーマ」と呼んでいるわけですね。
 『ウォーハンマーRPG』の場合は、「階級闘争(富民 対 富民)」、「信条(秩序 対 混沌)」、「近代化(都市 対 農民)」、「派閥抗争 (我ら 対 彼ら)」、「宗教(教団 対 教団)」の5つのメタテーマが明確に設定されています。言い換えれば、大半のシナリオは、これらのメタテーマのどれかの枠を意識すると、オールド・ワールドらしさが出る、というわけです。
 これは他のテーマを否定しているわけではありません。「愛と友情」や「夢と希望」のようなテーマがあってもよいのですが、それを表現する過程で「派閥抗争」のメタテーマにはまるようにすると、シナリオとして美しくなるという話なのですね。このあたりは豊富な具体例が示されているので、ぜひ現物をご参照ください。
 さて、「メタテーマ」が行き着くと、オールド・ワールドは最終的にどうなるのか? そうした問題へと行き着きます。地を這い泥水を啜る貧民だった冒険者たちが、いつしか栄誉ある英雄にまで成長し、世界の命運を握ることになるのだとして、そうして命運を握られた側の世界は、いったいどうあるのが正しいのでしょうか。
 『ウォーハンマーRPG』は初版の頃から、混沌の勝利と世界の滅亡は避けられず、必然であると言われてきました。それはある面では正しく、別の面ではまったくの嘘なのです。すべてが決定された世界で待ち受けているのは、何をやっても無駄という諦念、ニヒリズムにすぎません。しかし、もしそうだとしたら、RPGでプレイする意味なんてないでしょう。
 ではどうすべきか。答えは決まっていますよね。オールド・ワールドではそれは「終焉の刻(エンドタイムズ)」として表現されています。
 これも『ウォーハンマーRPG』だけではなく、例えばモダン・ホラーを扱う『ワールド・オブ・ダークネス』シリーズでも「タイム・オブ・ジャッジメント」(http://www.a-third.com/trpg/products/wod/toj.html)という設定がありました。世界を無限に拡張していくのではなく、どこかで「終わり」を設定することで、各々の物語にメリハリをつけるという技法のことです。『ワールド・オブ・ダークネス』の場合は、いったんシリーズの展開にも決着をつける形になりました。『ウォーハンマーRPG』の場合、シリーズ展開と「終焉の刻(エンドタイムズ)」がどこまで連動していくかは、まだはっきりと私には見えない部分がありますが、どんなに長いキャンペーンもいつかは終わるもの。
 そういった意味では、公式展開とは別に、各々が自分たちの物語の「終焉の刻(エンドタイムズ)」を考えないわけにはいかない。これは西洋世界では馴染みの深い考え方で、そもそも暦法という概念自体、最後の審判までの時間を計算するために発達したという面があるのですね。
 それを思いきって世界観にまで落とし込んでしまったのがオールド・ワールド。さすがこのRPGの主役だけあります。

●特殊な商品!?

 一般に、ゲームマスター・スクリーンというのは特殊な商品と言われがちです。そもそも、ゲーマーではない人にとっては何に使うものかわからない。書籍流通・玩具流通いずれの形を取るにしても、それ単体ではゲームができない、単なる厚紙のようにも見える。メイン・ターゲットはゲームマスターですから、どうしても流通量が限られる、などなど。
 『トンネルズ&トロールズ完全版』(グループSNE、邦訳2016年)、『ゴブリンスレイヤーTRPG限定版』(ソフトバンククリエイティブ、2019年)等、ボックス・タイプのRPGに同梱されたり、サプリメントや雑誌の付録としてスクリーンが付いてきたりするのも珍しいことではありません。
 ではどうして、かくもスクリーンは根強い人気があるのでしょうか? そもそもコロナ・ウイルス禍において、対面でのセッションが困難になっているにもかかわらず、オンラインでは(ほぼ)使えないスクリーンが出るのでしょうか? 前回募集した「あなたのお気に入りのマスター・スクリーンと、その理由は何ですか?」には、ありがたいことに熱い回答をたくさんの方からいただきましたので、次回はそちらを紹介しつつ、ゲームマスター・スクリーンについて考えていきたいと思います。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
■好評発売中
ウォーハンマーRPG スターターセット ¥3,300
https://www.amazon.co.jp/dp/B09B231VR1/

ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン ¥3,850
https://www.amazon.co.jp/dp/B09F6CMBF3/

出版社:ホビージャパン(HobbyJAPAN)
発売日:2021年10月1日

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2021年10月09日

Peaks of Phantasyシナリオ『英雄の祭典』


 2021年10月3日配信の「FT新聞」No.3175の日曜ゲームブックに、作:倉野一、監修:岡和田晃/水波流「『Peaks of Phantasy』シナリオ 英雄の祭典」が全文掲載されました。

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Peaks of Phantasyシナリオ 『英雄の祭典』

作:倉野 一
監修:岡和田晃/水波流
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【本シナリオは岡和田晃が東海大学文芸創作学科で2021年度春学期に開講したゲームデザイン講義で提出された課題レポート(創作)の優秀作を、ほぼそのままの形で「FT新聞」で配信するものです。講義内でプレイした『Peaks of Phantasy(ピークス・オブ・ファンタジー)』のシステムを使用しています。

○はじめに(岡和田晃)

 本作は2021年5月21日配信の「FT新聞」No.3035に掲載された「Peaks of Phantasy(ピークス・オブ・ファンタジー)のシナリオ「人形たちの意思」(作:角霧きのこ、監修:岡和田晃/水波流)のオマージュとなります。オマージュ元シナリオの都合上(とネタバレ防止のため)、「人形たちの意思」を先にプレイしておくことを推奨します。

・「人形たちの意思」(再録)
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/TheWillofTheDolls.pdf

 本作は1人用のゲームブック形式のソロアドベンチャーとしてプレイが可能ですが、その後はぜひ、1 on 1 形式のRPGとしてプレイしてみてください。
 『ピークス・オブ・ファンタジー』とは伏見健二氏がFuyuki名義でデザインしたRPGで、グランペールから2003年に発売されました。ルールをお持ちの方は、そちらを使用してプレイが可能ですが、お持ちでない方も、以下に公開されているオープンソースRPG『2DR』を使って遊ぶことが可能です。

 http://gg99.web.fc2.com/2drbasic001.txt
 https://w.atwiki.jp/etersia/pages/24.html

プレイの際は、プレイヤーがロールした6の出目をEP(エフェクトポイント)として記録するほか、敵の攻撃のダイス目で6を振った数をDP(デスシャドウポイント)として記録しておいてください。『ピークス・オブ・ファンタジー』のルールに従い、それぞれ適宜使用することもできます(DPのルールは、『2DR』にはありませんので、そちらでプレイされている方は、シナリオの指示にしたがってください。
余談ですが、伏見健二氏の最新の仕事として、岡和田晃編『再着装の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード、2021年)に収められた小説「プロティノス=ラヴ」があり、ご興味のある方はぜひ触れてみてください。


◯オープニング
人形師ジルベールの目論見が破れる、数か月前――。
1人のワンダラー(放浪者に身をやつした英雄、あるいは、はした金【ワン・ダラー】のために殺しに手を染める者とも呼ばれる)の来訪とともに、英雄の街・プロムセイオスに危機が訪れようとしていた。
所持金と武具以外のキャラクター作成が終わり次第、1へすすめ。

↓続きはこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/Festival_of_Hero.pdf


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2021年10月08日

児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる『ヴァンパイア・ロードと対峙せよ!』リプレイ


 T&T小説リプレイvol.10『ヴァンパイア・ロードと対峙せよ!』が、2021年9月26日配信の「FT新聞 」No.3168に掲載。お楽しみください。

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
『トンネルズ&トロールズ』完全版・小説リプレイ
Vol.10
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コッロールの冒険は、いつも過酷です。
コッロールを舞台にした『ヴァンパイアの地下道』をプレイした時に見送ったキャラクターの数が、いまだに最多です。
でも、ミニソロアドベンチャーだから、大丈夫☆
……と、ハッピーエンドを目指し、『ヴァンパイアの地下道』で唯一生還したキャラクターのディーバでプレイしたら、コッロールはコッロールだと思い知らされたのでした。
恐るべし、廃都コッロール!!


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『怜悧なるディーバの冒険』
〜『ヴァンパイア・ロードと対峙せよ!』リプレイ〜

著:齊藤飛鳥
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0:怜悧なる依頼

ボクの名前は、〈怜悧なる〉ディーバ。
職業は、魔術師。
『ボク』と言っているけど、18歳の金髪碧眼の乙女だよ。
さて、ボクは今、友人である癒し手ブリッタニーの依頼を受けているところだ。
「廃都コッロールへ冒険しに行ったきり帰って来ない、夫のスヴェンを探してほしいの。こんなことを頼めるのは、あなたしかいないわ」
かつてボクが、カザンの魔術師組合に所属していた時に引き受けたコッロールへの冒険は、それなりに人口に膾炙していたらしい。
まっ、コッロールへ冒険しに行って、帰ってきた者なんてほとんどいないから、それも当然か。
噂によると、ボク以外にコッロールから生きて帰ってきた者と言えば、人間の女戦士と男の岩悪魔の二人組くらいしか、いないらしいしね。
「わかった。引き受けよう。それで、君の夫は、具体的にはコッロールのどこへ冒険しに行くと、言っていたのかな?」
「コッロール南部にある廃城へ行くと言い残していったわ」
「なるほどね。わかった。では、今すぐ行ってくるよ」
ボクがドアを開けて外へ出ようとすると、ブリッタニーがひどく驚く。
「こんな夜中にコッロールへ行くなんて危険じゃない、ディーバ?」
「何を言っているのさ。大事な友達の夫を助けに行くんだ。一秒でも早く行動しなきゃね」
ボクは、心配そうなブリッタニーをなだめ、一路コッロールへと向かった。


1:怜悧なる廃城

廃都コッロール南部にある廃城。
そこに到着した時には、夜もすっかり更けていた。
でも、それがどうした? 
ボクは、廃城の中へ突入した。
城壁の中へ入ると、薄暗い。仕方なく《猫目》の呪文を使う。
すると、人影が見えた。
「スヴェン? ボクだよ。君の妻のブリッタニーの友人で、魔術師の〈怜悧なる〉ディーバだよ」
ところが、呼びかけた人影は、暗灰色の肌と長く突き出した耳、赤い瞳、長い白髪をした、身長3mはある長身痩躯の美丈夫だった。
筋骨隆々な小男で、ブリッタニーにとってだけは美男子に見えているスヴェンとは、似ても似つかない別人だ!
むしろ、どうやって人間違えできたんだ、さっきのボク!  
「余に声をかけるは、誰ぞ? 余が宇宙より飛来せしヴァンパイア・ロードのグローギス・カーン・マキシムスと知ってのことか」
……宇宙にも、ヴァンパイア・ロードっていたんだ? 
いやいや、そんなことにびっくりしている暇があるなら、確実にこいつを仕留めよう! 
「! エラクモデレコ」
ボクは、4レベルの《これでもくらえ!》をかけた。


2:怜悧なる決着

ボクがかけた《これでもくらえ!》は、まっすぐにマキシムスへと襲いかかる。
「ふん、児戯に等しいわ」
マキシムスが言うなり、彼の持っている杖が輝き出す。
「[異星のカンフー]第一の奥義、暗夜彷徨脚! 」
マキシムスは、杖を軸にして、体を宙に浮かせると、そのまま勢いよく回転し、両足でボクの呪文を蹴り飛ばしてしまった! 
「呪文を蹴り飛ばすなんて、そんなのあり!? 」
生まれて初めて見る反撃方法に、ボクは愕然とするしかなかった。
「辺境の星の民草よ。余に歯向かった勇気に敬意を表し、褒美をくれてやろう」
勝ち誇ったマキシムスは、そう言って、まだ愕然として棒立ちになっているボクへ近づくと、首筋に牙を立てた……。
「うぇえ、まずい! 何だ、貴様。とうにヴァンパイアではないか! 」
マキシムスは、思い切り顔をしかめる。
「名乗り遅れたね。ボクは、偉大なるソーサラー・ヴァンパイア・キングのヴァクシュミ様の下僕の一人、《怜悧なる》ディーバ。わけあって、友人の夫を探しに来たんだ」
マキシムスは、不機嫌そうにマントの裾で口元を拭く。
「その方の友人の夫? それと思しき輩なら、つい先日献上品として異次元へ転送したぞ。二度とこの星へ帰ることは叶わぬであろうよ」
「えぇっ!? まいったな。ブリッタニーへ、どう伝えればいいか……」
怜悧なるボクだけど、友人へつらい報告をするのはさすがに悩む。
「民草も、このコッロールの地に斃れたことにして、伝えねばよいのではないか? 人の一生は短い。数十年ほど棺で休めば、目覚めた時にはその友人はとうに息絶えているから、民草が気まずい思いはすまい」
ボクがヴァンパイアだとわかると、マキシムスは意外にも親身なアドバイスをくれた。
「いいね! そうするよ!」
そういうわけで、ボクはヴァクシュミ様から与えられた石室へと戻り、石棺の中でひと眠りすることにした。
夢の中で、ブリッタニーが夫も友人も喪ってしまったと嘆いていて、ちょっぴり胸が痛んだけど、目が覚めたらスッキリしていた。
つくづく、ボクもヴァンパイアらしくなったものだ。
さーて、太陽に注意しつつ、数十年ぶりの地上を楽しむとしよう!

(完)


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齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙されたて。
2021年4月に連作短編歴史ミステリ『蝶として死す 平家物語推理抄』(東京創元社)を刊行。
平安時代末期を舞台に、平清盛の異母弟・平頼盛(よりもり)が探偵役として、犯人当てあり、トリック当てあり、被害者当てあり、動機当てあり……と、各種の謎に挑む本格ミステリでもある。
6月刊行のアンソロジー『本格王2021』(講談社)に、『蝶として死す』所収の「弔千手(とむらいせんじゅ)」が収録。
上記のような大人向け推理小説の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表している。

出典元:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
『GMウォーロック』Vol.1 収録
 ミニソロアドベンチャー『ヴァンパイア・ロードと対峙せよ!』
 著:岡和田晃
 発行 : グループSNE/新紀元社
 2021/4/16 - 2,420円

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