2024年11月28日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! 番外編Vol.1

 2024年11月28日配信の「FT新聞No.4327」に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! 番外編1」が掲載されました。今回は、新サプリメント「ウォーハンマーRPG第4版へのコンバート案〜初版および第2版から」 の解説です。


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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! 番外編Vol.1

 岡和田晃
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 昔の仲間に再会し、酒を酌み交わし、生き延びてきた秘訣を教えてもらったときほど嬉しいことはないね。
  ――ドワーフの洞窟戦士イーリ

 本コラムは「FT新聞」で不定期連載されている『ウォーハンマーRPG』第4版を中心とするエッセイ「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」の番外編ミニコラムです。

 『ウォーハンマーRPG』第4版の新作サプリメントが10月に発表されています。公式サイトより無料ダウンロードできる「ウォーハンマーRPG第4版へのコンバート案〜初版および第2版から」がそれになります。ほぼ全体がチャートから構成されるもので、私がメイン翻訳を担当し、確認にはかなりの手間がかかったのですが、幸い、翻訳チームの阿利浜秀明さんのご協力で完成できたものです。

 きっかけは『ウォーハンマーRPG』オンリーコンが、主宰のリタさんのご尽力にて、7卓規模で開催されたこと。ホビージャパンとボードゲームプレイスペース駒の時間の協賛を得ているイベントになったのですが、私はゲストとしてお招きいただいたので、何かしらファンの方に「お土産」を持っていきたいな、と思って企画しました。

 TRPGは版上げでがらりと内容が変わり、まったくの別ゲームとなってしまうことも珍しいものではありません。『ウォーハンマーRPG』の場合、背景設定を知るための資料としては、旧版のサプリメントも大いに役立つのですが、データに互換性がありませんでした。このため、日本語版の展開が始まった当初より、本作を紹介したいと考えてきたのです。このサプリメントさえあれば、旧版のサプリメントを死蔵せずに済むというわけですからね。

 見落としを避けるため、翻訳にあたっては、いちいち各版のルールブックを引き直して参照していったのですが、このプロセスで私も、ルールへの理解を深めることができました。
 では、現行の第4版と、過去に日本語版が出た初版と第2版の大きな違いは何なのでしょう。実はこれ、サプリメント本文にしっかりまとめられているのです。

●初版から第4版へのコンバート

・第4版の能力値は通常1から100の間をとるが、それでも例外的な状況においては、これを超えることもある。
・第4版のキャラクターの【耐久値】は、初版のキャラクターの【耐久度】のおよそ2倍である。
・第4版には【攻撃回数】の能力値はなく、代わりに最新の戦闘システムに依拠している。
・初版とは異なり、第4版には【敏捷力】の「能力値」がある。
・初版における【冷静度】の能力値の役割は、【意志力】の「能力値」と〈冷静さ〉の技能に統合された。
・初版における【統率度】の役割は、【協調力】の能力値と〈指揮〉の技能に統合された。
・第4版では、初版における技能が、技能と異能に分かれている。

●第2版から第4版へのコンバート

・第4版の能力値は例外的に100を超えることもある。
・第4版には【攻撃回数】の能力値はなく、代わりに最新の戦闘システムに依拠している。
・第4版は2版とは異なり、【敏捷力】に加えて【器用度】の能力値がある。
・第4版は第2版とは異なり、【知力】に加えて【機転】がある。

 こう見るとけっこう異なりますね。GMがアドリブで直感的に変更できるようなレベルを超えています。そこで、本書を用いた数値のコンバートが役立つわけです。ただ、「運命点」と「執念点」に関する指針はないため、GM判断で決めるか、第4版P.33を参照して算出し直すのもよいでしょう。

 本サプリメントを訳して、やはり強く印象に残るのは、キャリアの変更です。第4版は初版回帰の色調が強いとはいえ、催眠術師、ドルイド、咄家、労務者、偽金造り、弓使いといったキャリアはサポートされていません。第2版なら、キスバンド戦士、キスレヴ蛮人、ノーシャ狂戦士といったキャリアも同様です。これらを近似的にコンバートするやり方が掲載されているほか、原書刊行後、第4版のサプリメントで発表されたキャリア(『武器を掲げよ!』)でサポートされた「野営追行者」等は注釈でフォローしています。

 おそらく読者の方のなかには、初版や2版はフォローしていたものの、第4版の『ウォーハンマーRPG』を追いきれていない、という方もいらっしゃると思います。そういった方は、基本ルールブックを購入し、お手持ちのキャラクターやシナリオのデータをコンバートしてみてください。そのうえで、第4版はシナリオがたくさん発売されているので、まずは単発で遊びやすいシナリオを集めた『ライクランド綺譚』に触れてみるのがオススメです。

 なお、本書と同じタイミングで、『ウォーハンマーRPG アルトドルフマップ』と、『ウォーハンマーRPG ミドンヘイムマップ』が発売されました。こちらは有料販売となっていますが、美しい高精細マップを堪能できます。エンパイアの首都と北方にある“白狼の都”が壮麗かつ細部にわたって書き込まれています。
 ここで用いられている各ロケーションの訳語は、アルトドルフが待兼音二郎さん、ミドンヘイムが私を中心に監修し、阿利浜秀明さんや見田航介さんのサポートもいただきました。第2版のシナリオ集『ミドンヘイムの灰燼』や『アルトドルフの尖塔』あわせにもしやすい作りにもなっていますし、中近世の都市の資料としても秀逸です。『ウォーハンマーRPG』第4版でのPDFサプリメントは、原書が無料のものは日本語版も無料、原書が有料のものは日本語版も有料、という形で提供されているのですが、まずは本書を通じて、『ウォーハンマーRPG』に出逢い直してみてください。

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『ウォーハンマーRPG第4版へのコンバート案〜初版および第2版から』
無料
公式サイトのダウンロードページ
https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/pdf/WHRPG_4th_Edition_Conversion.pdf

『ウォーハンマーRPG アルトドルフマップ』
『ウォーハンマーRPG ミドンヘイムマップ』
発売日:2024年19月
価格:各700円(+税)

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/

2024年10月17日

M!M!オフラインセッション・レポート


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M!M!オフラインセッション・レポート

 けいねむ
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はじめまして。モンスター!モンスター!TRPGファンのけいねむです。
先日9月21日、地元の図書館で『モンスター!モンスター!TRPG(M!M!)』のオフラインセッションを開催し、GMを行いました。
楽しいセッションをさせて頂きましたが、今回はそのセッションの反省点を共有して、私の考える改善点をご紹介し、今後モンスター!モンスター!TRPGのセッションGMを行われる方への参考となれば幸いと思い投稿致しました。内容の都合上一部ネガティブな表現もありますので、そういった表現が苦手な方はご注意頂きたく思います。

■レギュレーションとパーティ構成
今回のセッションのレギュレーションとしては
・ベースは『猫の女神の冒険』簡易ルール
・能力値係数など一部はM!M!2.7e(未訳)準拠。
・追加特殊能力、魔法などハウスルールあり。
という条件でごく短いダンジョン探索シナリオを行いました
プレイヤーキャラクターはジャングル・トロール、ズィム、ドウォン、人間の魔法使いの4名というパーティでした。
GMの私も含めて『モンスター!モンスター!TRPG』は未経験で、TRPG経験も比較的浅い方が中心の卓でした。

■何が良くなかったか。
端的に言えば、バランスが悪く、活躍機会の少ないPCを出してしまったことがGMとして良くない点でした。
『モンスター!モンスター!TRPG」は種族によってキャラクター作成時の能力値に修正が入り、また能力値によりキャラクターレベルが決定されるシステムです。
つまり、キャラクター作成時のキャラクターレベルは種族によって差があります。
今回はこの差が大きく、セッション中に活躍機会の少ないキャラクターを出してしまったことがGMとしての反省点となります。

具体的には、人間の魔法使いの方は次のような形になりました。
レベルは1、覚えている魔法は最も初級の物を3つのみ、武器は無く素手のみ。
対してズィムとジャングル・トロールの方はレベル9以上、個人修正100近く、トロール用棍棒で武装しています。ドウォンの方はレベル4、知性度と器用度と幸運度が人間の方より高く、弓矢で武装しています。
キャラクターシートの内容だけを見れば、人間の魔法使いの方は戦闘では殆ど効果的な行動が出来ず、探索でもドウォンの方に劣る、と言った状況が予想されました。
また、このゲームでは「カオスファクター」というルールがあり、魔法を使えないキャラクターは1通常ターンに一度のみ、キャラクターレベルの数字の分だけダイスロールの出目の合計を上下させることができます。汎用性が高く、かなり有用な要素ですが魔法を使えるキャラクターにはこれもありません。

あまりにも他PCに比べて行動の材料が少なく、カオスファクターによるロールの修正も出来ず、キャラクター作成時点で詰み、と言っても過言では無いほどの差がありました。戦闘や探索ではどうしても充分な活躍が出来ず、プレイヤーの方曰く「戦闘では完全に居ないも同然(なんなら倒されたら困るお荷物)」だったと自PCを評しておられました。
その一方で、単身で包囲網から脱出する(他の人は助ける側)という盛り上がるパートなどもあり、戦闘シーンだけが活躍の場ではないというTRPGの楽しみ方を感じて頂けたようです。
結果的にはプレイヤーの方の巧みなロールプレイにより、要所要所で適切な行動を行って頂き、シナリオ進行への貢献もされてパーティメンバーの役割としては充分に果たされたように思えます。

総じてGMが平等にプレイヤーに活躍機会を与えきれなかった部分をロールプレイでカバーを頂き、シナリオは成功、セッションも楽しく行えたという結果を頂けたと深く感謝していますし、同時に強く悔いも残りました。
キャラクターデータ・シナリオデータだけが活躍出来るか出来ないかの基準ではないことを改めて教えて頂けたように感じました。

■GM側の改善案&注意事項
いずれも、TRPG経験の浅い方が卓におられる場合、特に気を付けたいポイントです。

・使用ルールの吟味を行う。
今回のセッションでは簡易ルールをベースに一部、未訳のM!M!2.7eの要素を入れましたが、これは悪手でした。シナリオ的には簡易ルールのみで充分間に合い、特にカオスファクターと二者択一の魔法の要素を入れたことが結果的にプレイの幅を狭めてしまうことになりました。
特に現段階では未訳の魔法要素をハウスルールとして入れてしまうことは少なくともM!M!のプレイ経験の無いメンバーしかいない今回は不適切であったといえますし、お勧めしません。和訳ルールブックを待ちたいところです。

・カオスファクターの調整を行う。
カオスファクターは大変強力な要素で、特にセービングロールに使用した際には殆どの場合成功させることが出来ると言っても過言ではないくらい有用でした。
場合によっては1セッション辺りに使える回数を制限するなどの要素を入れても良いかもしれません。

・キャラクターレベルの差を考慮する。
キャラクターレベルの差はそのままカオスファクターで動かせる値の差ですし、戦闘では能力値の高いキャラクターの方が活躍するので、あまりにも差があり過ぎると「もう戦闘あいつだけでいいんじゃないか?」というような状態になりかねません。今回実際にそうなりました。もし3レベル以上の開きが出るようならば、低い方のキャラクターに冒険点を渡すなどし、全員が平等に活躍できるための措置はあっても良いかもしれません。

・場面の描写を詳細に行う。
『モンスター!モンスター!TRPG』の戦闘は抽象戦闘ですので、戦闘場面の描写は多少おざなりになるかもしれませんが、実際にはダイスの振りあい以外に出来る事は沢山あり、むしろ描写の重要性は高いと思っています。序盤の戦闘ではこの辺りが弱かったので、キャラクターの動かし方を掴みにくかったかもしれません。

■プレイヤーの方への提案
キャラクターを作ってセッションに参加したけれども、思ったように活躍できず手詰まりを感じた経験をされたことのある方はおられると思います。私自身今まで何度も経験しています。そういった時にプレイヤー側として、もしかしたら打開策になるかもしれない方法をひとつ、紹介したいと思います。

「ルールやキャラクターシートの内容を頭から一旦外して、場面のみを想像し、自分がキャラクターにさせたいことを見つけてGMに相談する」という方法です。
GMに「〇〇って出来ますか?」と質問する事じたいは別にルールやデータに沿っている必要はないですし、そもそもルールに沿っているかどうかのジャッジはGMの仕事です。
相談した内容が行動決定のヒントになりますから、なんでも思いついたことを口に出しておくに越したことはありませんし、多分この『モンスター!モンスター!TRPG』ではそういった思いつきが実際に通りやすいゲームだと思っています。
(とは言え、通るかどうかはあくまでGMの裁定次第。参加者全員が平等に楽しむというゲームの遊び方を逸脱しないようには心がけたいものです)

■おわりに
私個人としては今回のセッションでは不本意な結果になってしまいましたが、それならそれで何かこの経験を最大限、『モンスター!モンスター!TRPG』を遊ぶ方の役に立たせられないだろうか?と考えた結果、本記事を投稿致しました。
GMを行う際の参考として頂けたのならば、大変嬉しく思います。

(初出:「FT新聞」No.4272、2024年10月4日)
posted by AGS at 11:01| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月27日

ファンタジーRPG汎用“逆転の発想”シナリオ featuring 『モンスター!モンスター!TRPG』『新・裏伝説』



 2024年5月30日配信の「FT新聞 」No.4145に、「ファンタジーRPG汎用“逆転の発想”シナリオfeaturing 『モンスター!モンスター!TRPG』『新・裏伝説』」(作:紙谷早歩、監修:岡和田晃、水波流)が掲載されました。PDFで23ページの力作です!

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ファンタジーRPG汎用“逆転の発想”シナリオ
featuring 『モンスター!モンスター!TRPG』
『新・裏伝説』

 作:紙谷早歩
 監修:岡和田晃、水波流
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【はじめに】(岡和田晃)

 あなたは孤島で仲間たちと暮らしている鬼だ。
 そこでは穏やかな時間が流れ、あなたはいつも洞窟の秘密基地で遊んでいる。

 どこからか、声が聞こえる……。
 「生きろ」と。

 さあ、「新・裏伝説」の幕開けです!

 「FT新聞」No.4082でお届けした矢合彩樹『ソロモンの指輪』と同じく、『モンスター!モンスター!TRPG』にフィーチャーした汎用シナリオの第2弾なのですが、今回はPDFで20頁を超える力作。
 プレイに時間がかかるわけではありません。1 on 1のセッションで2時間程度で遊べます。
 読みやすさを重視し、慣れない人でもそのままプレイできるよう、「作品」として丁寧に作り込まれている、ということなのです。
 作者の紙谷早歩さんは、RPGシナリオを執筆・発表するのは今回が初めて。とてもそうは見えない美麗な扉頁のデザインに、SNSでのプレイヤー公募に便利な各種トレイラー、さらにはココフォリア用のチャットパレットまで完備されており、至れり尽くせりの1作です。
 百聞は一見に如かず。ぜひ現物をご覧になり、試してみてください!


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↓【シナリオ本編】はこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/Shin_Ura_Legend.pdf


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posted by AGS at 17:10| シナリオ・ソロアドベンチャー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月05日

ファンタジーRPG汎用“逆転の発想”シナリオfeaturing 『モンスター!モンスター!TRPG』:『ソロモンの指輪』


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ファンタジーRPG汎用“逆転の発想”シナリオ
featuring 『モンスター!モンスター!TRPG』
『ソロモンの指輪』

 作:矢合彩樹
 監修:岡和田晃、水波流
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【はじめに】

 『ソロモンの指輪』は、オリジナルの中世風ファンタジー世界を舞台にしたTRPGシナリオです。プレイヤーが演じるキャラクターはモンスターであることから、FT書房より翻訳出版が予定されている『モンスター!モンスター!』第2.7版(現在は英語版のみ刊行)や、同作と互換性のある各種システムでプレイできますが(書苑新社から刊行されている『モンスター!モンスター!』旧版の日本語版など)、モンスター・キャラクターを設定可能なシステムであれば、他のファンタジーRPGにも容易に置き換えが可能です。
 例えばMRは『モンスター!モンスター!TRPG』では「マンカインド・レート」の略称でもあり、各種の選択ルールがバリアントとして設定されていますが、従来の「モンスター・レート」に、シンプルな形でそのまま置き換えてプレイしていただいてかまいません。

※なお、『モンスター!モンスター!』のバージョン違いは、「FT新聞」No.4033の「『モンスター!モンスター!』のあゆみ」をご覧ください。
https://analoggamestudies.seesaa.net/article/502309911.html

※本作は岡和田晃が東海大学文芸創作学科で2023年度春学期に改稿したゲームデザイン論の優秀作を、水準に見合うまで改稿したものです。

 ゲームマスター(GM)はあらかじめ使用するルールを決めてください。基本的な展開はシンプルであり、敵デザインも参考までに、モンスター・レート(MR)で表記されています。SRのレベルは意図して設定していませんが、1〜2レベルが妥当でしょう。MRも調整が容易なように、可変的な設定としています。
 本シナリオの特徴として、個別ハンドアウトとして、「秘密」が用意されていることが挙げられます。その内容によって、結末は分岐をします。SR(セービング・ロール)の組み合わせや、SRの成否やロールプレイのタイミングなど、GMの裁量によっても大きく変わります。

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【背景】

 この世界は地下にある魔界と、地上にある天界の二つに分かれている。伝説によれば、はるか昔は一つの世界しかなかったと伝えられている。
 世界に人間しかいなかった昔、突如として魔物……すなわちモンスターが現れ、人間を襲い始めた。その時、暗黒神と光明神は同時に生まれた。暗黒神は数々のモンスターを率いて光明神と人間たちに戦を挑んだが一歩及ばず、暗黒神は光明神によって封印されることとなった。
 光明神は世界を魔界と天界に分け、モンスターたちを劣悪な環境である魔界へ追いやった。モンスターたちは光明神を、そして人間を憎んだ……。

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↓【シナリオ本編】はこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/Solomons_Ring.pdf


(初出:「FT新聞」No.4082、2024年3月28日)
posted by AGS at 17:17| シナリオ・ソロアドベンチャー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月23日

『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.26

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『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.26

 岡和田晃
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 「魔力の風」は、複数の色が乱れて混じり合い、影と心に歪みをもたらしている。
 ――幻視したこの台座には、きっと何かある。
 いや、ウルサーンのハイ・エルフにちなんだ何かが、この像には関係しているのかもしれない。
 わたしはいったん、「魔女の目」を介して“視る”のをやめた。
 霊をも恐れ、ハイ・エルフを憎悪する何か。ダーク・エルフ。その痕跡、あるいは気配を感じたからである。
 奴らにまで目をつけられてはかなわない。わたしはチーズ店をそっと離れることに決めた。霊の相手は、それこそ魔狩人に任せておこう。
 ――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より

●新作サプリメントが2冊同時発売!

 2024年3月下旬、いよいよ『ウォーハンマーRPG』第4版日本語版の新作サプリメントが発売になります。しかも、『武器を掲げよ!』と『帝立動物園』の二段構えです。これらは第2版の『オールド・ワールドの武器庫』と『オールド・ワールドの生物誌』に相当する作品で、本連載をお読みの方にとっては必見といってよいでしょう。
 すでにホビーショップや各種の通販サイトで予約が始まっています。玩具流通であるため書店では手に入らないことにご注意ください。
 以下、まずは裏表紙の紹介文をご紹介し、概要の解説にかえたいと思います。詳しい内容紹介については、本連載の次回以降をご期待ください。

 『武器を掲げよ!』には、『ウォーハンマーRPG』で戦士のキャリアを歩むキャラクターのための新たな選択肢と手引きが用意されている。本書では、オールド・ワールドで戦闘に関わる人々の種類と専門知識を増やすのに活用できる能力に焦点を当てている。
 この144ページの本には以下の内容が含まれている:
・ミュルミディア教団についての章。軍略の女神を崇拝する人々の信仰と実践について、これまでに出版された中で最も包括的な手引きを提供する。
・多様な兵士たち。栄光ある帝国州軍兵の一般的な経歴を詳しく説明し、さらに小銃兵、斧槍兵、大剣兵などの新しいキャリアが用意されている。
・オールド・ワールドの戦争における傭兵の役割の歴史。ティリア人のキャラクターや“戦争の犬ども”でのプレイをサポートするための背景とルールが含まれている。
・エンパイアの名高い騎士団のガイド。世俗騎士団や聖堂騎士団へ入団するか、自由騎士として単独で活動するかの選択肢が含まれる。
・武器と防具の拡張されたリスト。剣や斧などの基本的な武器から、重りつきネットやパヴィースなどの一風変わった特殊な装備まで。
・車両や建物内で遮蔽を取るためのルールと――その一方、破壊兵器で車両や建物を爆破するためのルール。
・選択ルールおよび追加ルール。新しい冒険外活動、負傷の代替ルール、騎馬戦闘、優位の使い方、追撃、異能。

 『帝立動物園 ウォーハンマーRPG生物誌』は、最果て山脈のカラク=カドリンから、南国ティリアの都市ミラグリアーノに至るまで、オールド・ワールドをはるばる巡った三度にわたる調査遠征に基づいた怪物寓話集にして旅行記。
 本書には、オールド・ワールドに生息する珍獣奇獣、怪物魔物、合わせて60種を上回るクリーチャーの細目が羅列され、さしもの凄腕冒険者パーティをも武者震いさせること請け合いである。
 さらに、かねて作成済みのキャラクター6名が、いずれも独特な技能と異能、そして秘めたる過去を抱えて、出番を待っているのだ。
 オールド・ワールドに跳梁跋扈する甚大この上ない脅威との対決に主眼を据えたキャンペーンに投入するには、まさしくうってつけの陣容である。
 この136ページの本には、以下の内容が収められている。
・知識と少しばかりの栄誉を求め、オールド・ワールド中を探検する冒険者一行の旅路を描いたスリリングな物語。
・冒険者の行手に立ちはだかる数十種ものクリーチャー。
稀少ではありながら危険至極なプレイトンから、“紅蓮の大鎌”カレダイア――暴威をふるう伝説のドラゴン――のように、個体名が広く知られているモンスターに至るまで。
・新たなクリーチャー特徴。冒険者パーティへの新たな挑戦状が、随所に立ち現れる。
・クリーチャー、とりわけ“魔力の風”に触れた存在から採取した錬金術の材料を保存し、販売するためのルール。
・作成済みのキャラクター6体。君たちがすぐに冒険に乗り出せるよう、あらゆる情報が書き込まれている。

●『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』紹介の続き

 さて、本連載の前回(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/502574244.html)では、『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』(以下『コンセプトアート』)をご紹介していきましたが、そちらの続きも忘れずに記していきたいと思います。

 『コンセプトアート』は、Creative Assemblyが開発したPC戦略ゲーム『Total War:WAHAMMER』シリーズ三部作のコンセプトアートを、それこそ開発段階のものから、テクスチャ研究、フルレンダリングされたものまで、幅広く紹介していくという内容となっています。
 ミニチュアのイメージを参考にしつつ、それをデジタルに落とし込む際に、どの部分を補っていくのか、そうした試行錯誤がはっきり伝わってくる内容です。

●グリーンスキン

 ゴブリン類のことです。悪たれ平原(バッドランド)の情景から、“皆殺しの”アズハッグ、“鉄肌の”グリムゴールといった有名なネームド・ゴブリン、さらにはトロールやオークのアート、乗機たるウルフやワイヴァーン、さらには凶暴なスクイッグ(ゴブリンが飼育する、肉食キノコ)までもがよりどりみどりです。グリーンスキンの特徴は、造形レベルでユーモアに満ちていること。それはシタデル・ミニチュアの特徴でもありました。

●ヴァンパイア・カウント

 マンフレッド・フォン・カーシュタインや、見目麗しきイザベラ・フォン・カーシュタインといった著名なキャラクターから、ストリゴイ・ヴァンパイアや、ヴァンパイアのネクロマンサーといったサブカテゴリーも解説。ヴァンパイア以外にもワイト・キングにケルン・レイス、そして特大のゾンビ・ドラゴンといったアンデッド群の造形が堪能できます。
 ヴァンパイア勢の細部をデザインするにあたって、スタッフはミニチュアゲームの設定書であるアーミーブックを読み込んだそう。ゴシック調のムードを活かしつつ、イメージをどう落とし込むんだかの試行錯誤が垣間見えます。

●ブレトニア

 騎士と淑女の国。アーサー王伝説からの強い影響を受けており、1100年代から1200年にかけてのフランスやイギリス等、西ヨーロッパ各国を思わせるスタイルです。
 グレイルナイトやパラディンといった騎士たちや、乗機のヒポグリフにペガサス、さらにはバーディング(馬用鎧)をはじめ武装のイラストが充実しています。
 威風堂々たる“獅子心王”ルーエン公に、エンパイアではまずお目にかかれない美貌のフェイ・エンチャントレスを鑑賞できるのも眼福だと言えるでしょう。

●ウォリアー・オヴ・ケイオス

 『ウォーハンマー』の特徴的なモチーフであるグリムダークな側面を体現するのが、“永遠に選ばれし者”アーケィオンをはじめとする混沌の戦士たちでしょう。
 キメラやマンティコア、ケイオス・ウォーハウンドにケイオス・チャリオットといった混沌の乗機、さらには混沌の荒れ野のねじくれた木々まで、確固たる存在感を発揮しています。グリムダークを単調さに結び付けないための工夫がよくわかります。

●ノーシャ

 混沌の戦士たちとヴァイキングをミックスしたような勢力。混沌風にアレンジされたヴァイキング・シップ、いかにも邪悪なマローダー・チャンピオン、さらにはノーシャン・ウォーマンモスのデザインを確認することができます。

●ウッド・エルフ

 自然の風景をそのまま身体に取り込んでいるのがウッド・エルフ。制作チームは、中央ヨーロッパにある古代の森をリサーチして、「長いこと手つかずとなり、地面全体が分厚い苔で覆われている森」のイメージを背景に取り入れたという。木の幹を利用した攻城塔、木の葉のような帆をした船、さらにはフォレスト・ドラゴンのユニークなイメージが想像を駆り立てます。

●ビーストマン

 エンパイアでも頻繁に遭遇する敵役、それがビーストマンですね。動物と人間、双方の身体構造を参考にしながら、筋肉質でワイルドなイメージを押し出すために、スパイクや鋲を多用したとのこと。ビーストマンのテントやゴミ溜め、トーテムや巨大な戦角笛がヴィジュアル化されています。

●リザードマン

 ここから2016年の『Toral War: WARHAMMER II』でフィーチャーされた設定群の解説となっていきます。
 まずはリザードマン。恐竜のようなイメージだけではなく、メソアメリカや南アメリカの要素を取り入れているのが特徴的。スキンク、スラン、カメレオンスキンク、ザウルス、クロキシゴールの5つの種族が設定されており、色とりどりの装飾や装備が細かなところまで表現されています。

●ハイ・エルフ

 魔術の源流たる“魔力の風”と縁深いのがハイ・エルフ。なかでも白の塔ホエスのロア・マスターであるテクリスと、彼の双子の兄弟である守護者ティリオン、暗い背景を持つ“影の王”アリス・エナールについて、それぞれ解説されています。ハイ・エルフのドラゴンプリンスやメイジの服装も、しっかりわかります。

●ダーク・エルフ

 ハイ・エルフの堕落した親戚がダーク・エルフ。紫がかった黒染めの鉄を基体とする鎧のデザインに迫力がありますが、レジェンダリーロードのモラスィ、シュープリーム・ソーサレスらの妖艶なイメージにも圧倒されます。

●スケイヴン

 ご存知、邪悪な鼠人間のことですが、着ぐるみのようなアニメーションではなく、引きつったような動きをさせるように注意したそう。下級のスケイヴンを率いるレジェンダリーロードたちも個性豊かですが、ラット・オウガやヴァーミン・ロードら亜種のヴィジュアルが提供されているのも嬉しいところ。

●トゥーム・キング

 古代エジプト風の勢力で、ファンの根強い要望によって『Toral War: WARHAMMER II』にも登場することとなったそうです。トゥーム・キングの目覚めのシーンから、セパルチュラル・ストーカーが先頭に立った侵攻の場面まで、ドラマティックなシーンの数々が印象的です。ウォースフィンクスやカタパルトのヴィジュアルも個性的ですね。

●ヴァンパイア・コースト

 『Toral War: WARHAMMER II』の拡張パック『Curse of the Vampire Coast』の設定画を紹介。完全なアーミーブックが存在しないため、海戦ミニチュアゲーム『ドレッドフリート』を参照しつつ設定が練り上げられていったというもの。海賊のイメージのみならず、アンデッドの造形とのブレンド具合がユニーク。

●ナーグル

 ここからは『Toral War: WARHAMMER III』でフィーチャーされた要素が解説されます。特に混沌の神々ですね。
 腐敗の王ナーグルについては、丸みを帯びたフォルムに緑や赤の色合いをうまくまぶすことで、グレーター・ディーモンであるグレート・アンクリーン・ワンをはじめとした、悪役における特有の感触を表現しようとしたことがわかります。

●ティーンチ

 歪みを作りし者ティーンチは、混沌の神々のなかでも魔力に長けていますが、とはいえピンク・ホラーやブルー・ホラーを射撃ユニットにするなど、システム上の役割分担が一面敵にならないようにしつつ、配色を極彩色にすることで、視覚的に埋もれないように工夫したといいます。

●スラーネッシュ

 性的な逸脱と過剰さを体現したスラーネッシュを表現するにあたっては、紫を基調にした“しなやか”なイメージが重視され、豪華でありながら卑猥にすぎると規制されないようなバランスが重視されているのがわかります。テレインである「誘惑の六円環」の断面図はインパクト大。

●コーン

 破壊と戦争を体現する血の神コーン。赤と金を中心にしたギラついたヴィジュアルに幅を持たせるため、コーンの信者である定命者のユニットが追加されました。シリーズのなかでも、ヘヴィメタル・バンドのイメージにもっとも近いのがコーンだとか。ブラッドレターやジャガーノートといった、RPGでもお馴染みの面々のヴィジュアルは必見。

●キスレヴ

 ロシアや東欧の風俗をベースにしたキスレヴは、『ウォーハンマーRPG』第2版の『Realm of the Ice Queen』(未訳)等で詳述されてきた地域です。コンピューターゲームとしては新規のコンセプト・デザインが多いため実装が大変だったようですが、エンパイアとはまた異なる家々や人々のデザイン、乗機に用いるウォーベアや、エレメンタルベア等のモチーフはとても魅力的です。

●オウガ・キングダム

 オウガは巨大なユニットで、恐ろしい突撃能力を秘めています。本書においては、オウガの集落やキャンプ、アゴ穴といったテレインのスケッチを収録することで、そのスケールの大きさを垣間見せようとしています。

●大キャセイ

 中国や東南アジアをモチーフにした地域で、RPGではほとんど舞台に選ばれることのない場所であるため、カラーのヴィジュアルでそれらが確認できるのは貴重です。RPGでキャセイの描写をしようとしたら、まず確認する資料になるのではないでしょうか。

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『ウォーハンマー オールド・ワールド コンセプトアート』
好評発売中
価格:5000円(+税)
公式サイトの紹介頁
https://hj-trpg.com/news/detail.html?id=1162

『ウォーハンマーRPGサプリメント 武器を掲げよ!』
『ウォーハンマーRPG生物誌 帝立動物園』
発売日:2024年3月
価格:各5000円(+税)

『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/


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