2022年09月29日

SISD(スペース・インベストメント・ソリティア・ダイス)

 2022年9月22日の「FT新聞」No.3529に、「SISD(スペース・インベストメント・ソリティア・ダイス)」が掲載されています。小池鷹生さんデザイン、単体プレイ可能な宇宙版「ソリティア・ダイス」! ぜひ遊んでみてください。

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SISD(スペース・インベストメント・ソリティア・ダイス)

作:小池鷹生
監修:岡和田晃
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◯はじめに(岡和田晃)
 本稿は「FT新聞」No.3515にて配信された「シド・サクソン「ソリティア・ダイス」の構造分析」(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/491671714.html)に記した発展案をもとに、小池鷹生氏が完成させたオリジナル・バリアントゲームで、単体でのプレイが可能です。
発送元となった「ソリティア・ダイス」を収めた『シド・サクソンのゲーム大全』(1969年、竹田原裕介訳、ニューゲームズオーダー、邦訳2017年)の版元の許諾をいただき、「FT新聞」にて公開します。同書の編集を手掛けられた沢田大樹氏に記して謝意を捧げます。
「ソリティア・ダイス」をプレイしたことのある方は、ぜひ試してみてください。未プレイの方は、本家の方も遊んでいただければ幸いです。

◯ルール(小池鷹生)
 本ゲームのゲームメカニクスは『シド・サクソンのゲーム大全』に収録されている「ソリティア・ダイス」(シド・サクソン作)を強く参考にしています。

 21XX年、人類は宇宙への進出を果たしつつある。しかし資源は足りていない。

 あなたは成長しつつある惑星間事業へと投資を行っていく宇宙資源マネージャーだ。採掘船はまだ少なく、得られる資源はばらつきが多い。あなたの持っている資源コンテナはたった1つ。そして投資対象を適切に見極めなければ、不採算部門となってしまったり供給過多による値崩れが発生したりする。20年であなたの宇宙開発はどこまで成長することができるだろうか?

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↓続きはこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/SISD.pdf
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2022年09月21日

シド・サクソン「ソリティア・ダイス」の構造分析


 2022年9月8日配信の「FT新聞」No.3515にて、「シド・サクソン「ソリティア・ダイス」の構造分析」」(小池鷹生作、岡和田晃監修)が掲載されています。『シド・サクソンのゲーム大全』収録作を論じたもの。東海大学のゲームデザイン論、学生レポートの優秀作です。

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シド・サクソン「ソリティア・ダイス」の構造分析

作:小池鷹生
監修:岡和田晃
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◯はじめに(岡和田晃)

・この記事は何か?
 本記事は岡和田晃が東海大学文芸創作学科で2022年度春学期に開講したゲームデザイン論における中間レポートの優秀作です。
 通常、この講義ではRPGを中心としたストーリーゲームの視点から文学(史)を見直すというアプローチを採ることが多いのですが、今期は『シド・サクソンのゲーム大全』(1969年、竹田原裕介訳、ニューゲームズオーダー、邦訳2017年)や、ウォーシミュレーションゲーム「ドイッチュラント・ウンターゲルト」(高梨俊一デザイン、「タクテクス」7号、1983年)を実際にプレイしてゲームの構造や歴史的背景を分析するという課題に取り組むことで、デザインの幅を広げることを目指しました。
 そして本稿は、『シド・サクソンのゲーム大全』所収の「ソリティア・ダイス」を分析するものです。サクソンは『アクワイア』のデザイナーとして著名ですが、同時にゲーム研究者やコレクターとしても知られています。彼はダイス・ゲームの歴史を概観した後、「その歴史の長さにもかかわらず、ダイスを使用するゲームの開発がここまで少ないことは驚きである。しかもそのほとんどは技術や決断を行使する機会がほとんどない、純粋なギャンブル・ゲームなのだ」と嘆き、そのギャップを埋めるために「ソリティア・ダイス」をデザインしたといいます。
 実際、私が知るなかでも商業的に成功したダイス・ゲームはさほど多くなく、代表的なものとしては(シド・サクソン自身の『キャント・ストップ』やアレックス・ランドルフの『ウミガメの島』を除けば)、ダイスポーカーというべき『ヤッツィー』や、複雑なコンボを発生させていく『王への請願』(トム・レーマン)等が挙げられるでしょうが、私見では「ソリティア・ダイス」のプレイ感覚は、ちょうど両者の間くらいです。

・ルール
 具体的なルールについては『シド・サクソンのゲーム大全』を確認いただきたいのですが、かいつまんで説明しますと、6面体サイコロを5つ振り、その結果をダイス2個ずつによる「コンビネーション」2組と、「リジェクト」1つに振り分けることを繰り返していくというものです。ただし、「リジェクト」の数字は3種類までしか選択できません(なお、「リジェクト」が固定化された後でも、それら3つの数字を含まない出目を振ってしまった場合、「フリー・ライド」が発生します)。
ゲームはリジェクト数字3つのうち1つを8回出すまで続けられ、発生したコンビネーションの種類と回数によって、得点が決まります。得点は表によって決まり、そちらは『シド・サクソンのゲーム大全』をご参照ください。


◯本論(小池鷹生)

 前提として、分析対象には選択ルールの競争プレイを含まないものとする。また、ダイス 5 個を振り、2 つのコンビネーションを作る (さらにフリー・ライドでなければリジェクトを 1 つ決める) 一連の工程を「ラウンド」と呼ぶことにする。

 『ゲーム探検隊』(草場純・南雲夏彦・赤桐裕二・本間晴樹、ニューゲームズオーダー、新版2021年)を参考に区分するとしたら、「ソリティア・ダイス」は 1 人非有限非確定完全情報ゲームに分類され、どのようなダイスの出目であっても勝利条件 (500 点の獲得) を満たせるような戦略、すなわち必勝法はおそらく存在しない。ダイスを 5 個振った際に出る可能性がある組み合わせは重複を考えると 252 通りと有限であるが、3 つ以上チェックがついている場合にはフリー・ライドが 1/32 の確率で、それ以下のチェック数であればより高い確率で発生するために無限にラウンドが続く可能性があり、本ゲームは非有限ゲームに分類される。

 具体的な数字を用いて考察を行おう。このゲームはフリー・ライドが発生するラウンドを除けば最大で 23 回までダイスを振ることができる。フリー・ライドの発生確率とリジェクトするダイスの選択が限られる場合の事を考えると、概ね 20 回程度のラウンドで一つのゲームが構成されると言えるだろう。ここで例えば和が 2 となるようなコンビネーションを作るとする。これには出目 1 が 2 以上必要であり、5d6 でこのような組み合わせの出る確率は 19.6%、概ね 5 回に 1 回となることを考えればコンビネーション 2 を得点源として狙うのはリスキーな戦略であることがわかる。

 より大きい和の場合はどうだろうか?コンビネーション 3 を作ることができる確率は32.8%、コンビネーション 4 の場合は 49.1% となる。ただ、注意しなくてはならないのはこの計算ではリジェクトを考慮していないことである。例えば 2 がリジェクトされている場合、コンビネーション 3 を作るためには出目 1 に加えて 2 つ以上の出目 2 を出さねばならず、確率は 9.1% にまで低下する。ここで考えられる戦略の一つはリジェクトする数字を偏らせる、例えば 4、5、6 を選ぶことで特定のコンビネーションを作りやすくすることである。ただ、この戦略では想定外のコンビネーションを作らざるをえないリスクが高くなる。

 これと対立する戦略として、出やすい組み合わせを狙う事も考えられる。和が 6、7、8となるようなコンビネーションは様々な組み合わせで作ることができる一方で、得られる得点は少なく、かつ 11 個目以降のチェックが得点にならないという弱点がある。

 この 2 つの戦略のどちらが高い点数を得やすいかは簡単には判別できない。それぞれの戦略がルールによって適度に制限され、プレイを重ねなければどのレベルでリスクを許容すべきかを掴むことはできないからである。それに加え、ダイスの乱数性がプレイヤーがどのような選択をするかを複雑にさせる。

 本ゲームの面白い点として、どのコンビネーションに「投資」を行うのかの判断に伴う戦略性が挙げられる。あるコンビネーションはチェックが 5 つ溜まるまでは負債であり、それ以上のチェックをしなければ得点にすることができない。ここで作りやすいコンビネーションは得点が低く、逆に作りにくいコンビネーションは得点が高いことが単純な戦略を立てることを難しくしており、プレイヤーごとに戦略を考える楽しさを作り出している。先に説明したリジェクトやコンビネーションの選択以外にも、例えば序盤のどのタイミングで 3 つのリジェクトを決定するか、終盤で望まないコンビネーションの形成とゲームの終了のどちらを取るかなどといった判断が必要となり、それぞれにプレイヤーごとのやり方が構成されるだろう。

 さらに踏み込んで考えよう。このゲームを発展させることはできるだろうか? 例えばゲームの外観を変え、ストーリーを作ることが可能である。サイコロで出た目を資源、コンビネーションを事業、リジェクトを独占禁止法や税金と置けばソリティア・ダイスは投資ボードゲームになる。事業が成長しなければ初期投資を回収できず、赤字が生まれる。一定以上安定した事業では、さらなる投資を行っても利益は得られない。このようにルールにストーリーを適切に持たせれば、一つの世界観を作ることができる。

 ルール自体を変えることもできるが、これは決して易しい作業ではないと考えられる。このゲームには変更可能なパラメータ (各コンビネーションごとの得点、得点となるチェック数の上限と下限、リジェクトの制限、ゲーム終了の条件、勝利となる得点) が存在するが、今の状態で比較的よくまとまっているように見られ、変更を加えた際のゲームバランスへの影響はテストプレイを繰り返すかある程度複雑な数学的計算を行わなければ把握することは難しい。

 ソリティア・ダイスはサイコロと紙があればプレイでき、様々な戦略が考えられ、一回のプレイ時間はそこまで長くなく、適度にダイスの女神に翻弄されうるゲームである。二、三回遊べば把握できるシンプルなルールであることを考えると、非常によく練られているゲームであると言えるだろう。

◯補足(岡和田晃)

 ここで記した発展案を、小池氏は期末レポートとして取り組み、実際に完成させました。そちらについては機会がありましたらぜひご紹介したいと思います。また、それとは別に、講義内でプレイしたRPG『聖珠伝説パールシード』のハウスルール(オリジナルの追加データ)もデザインしました。こちらはオニオンワークスが2022年9月に刊行する30周年記念本『魔の謔れ』(http://tamasuna.jp/pearl/kinen2022.html)に掲載される予定です。
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2022年09月06日

児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる『名もなき村を越えて』リプレイ

 2022年8月29日の「FT新聞」に、齊藤(羽生)飛鳥さんによる、「無敵の万太郎とシックス・パックの珍道中〜名もなき村を越えて〜」のリプレイが掲載されました。

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
『トンネルズ&トロールズ』完全版・小説リプレイ
Vol.14
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このたび、九月中旬にPHP研究所から羽生飛鳥名義で『『吾妻鏡』に見るここがヘンだよ!鎌倉武士(仮)』を刊行することとなりました。
小説ではなく、著者初の歴史うんちく本です。タイトルでおわかりのとおり、鎌倉武士達を中心に、『吾妻鏡』に登場する面白人間達総勢50人を紹介した本です。
T&Tの世界に転生してきても、たくましく生き延びられるような愉快な人々が満載です!
……と、わたくしごとはここまでにして、今回も翠蓮とシックス・パックの冒険です。
前回の冒険をすんでのところでしくじった二人組ですが、今回の冒険はどうなることやら……。
ちなみに、今回のキャラクターで気に入ったのは、タクシー運転手のウカです。
眼帯タクシー運転手、そしてボスキャラの犬とは、一人でいくつ属性を背負っているんでしょうか。とても想像がはかどって、勝手に個性を膨らませてしまいました^^
ちょっと登場するだけのキャラクター達にも味があるのが、T&Tソロアドベンチャーの魅力の一つですね♪


※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

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『名もなき村を越えて』リプレイ
 『〈屈強なる〉翠蓮とシックス・パックの名もなき村を越えて』

著:齊藤飛鳥
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0.屈強なる開幕

あたしの名前は〈屈強なる〉翠蓮。
前回の冒険で金髪に染めた髪が元に戻って来たせいでプリンみたいな頭になっている、ロリ体形がチャーミングな18歳の人間の戦士ヨ。
旅の相棒は、アルコール漬け岩悪魔のシックス・パック。
いずれ〈トロールワールド〉の恋愛要素皆無の美女と野獣コンビとして知られる予定の冒険者ネ。
前回の冒険で盛大にしくじったあたしらは、イーグル大陸のゾルに漂着したけれど、そこから酒と涙と汗と涎なくして語れない冒険をして、しくじった冒険のリベンジとばかりに、目的地だったダークスモーク島にやって来たところヨ。
「おい、翠蓮。おめえ、時々あらぬ方向に向かって自己紹介してねえか?」
「気にするな、シックス・パック。単なるお約束ってやつネ」
あたしは、屋台の黒ビールを大ジョッキであおっているシックス・パックに返事をしてやった。
「しかし、前の冒険のリベンジだと勢いこんでダークスモーク島に来たものの、冷静に考えてみりゃ、今さら果たせなかった依頼をできるわけもねえ。新しい冒険を探さなくちゃな」
「今さら気がついたのカ、おまえは」
ここ最近、買い物できる場所に着くまでは、ランプのアルコールすら飲ませる節約冒険ライフだったから、シックス・パックの知性度があたしよりも怪しくなっていたようだ。
この飲んだくれ岩悪魔は、酒さえたっぷり飲ませていればそこそこ頭も切れるし腕も立つ奴なのだが、酒が切れるとたちまち役立たずを通り越して襲いかかってくる、厄介者でもあるネ。
でも、あたしらはお互いに利用し合う麗しい関係ってことで納得づくだから別にいいサ。
「何だ、翠蓮。その使い古した便所スリッパを見るような目は? 俺様より知性度が低いくせに、俺様の知性を疑っているのか?」
そう言ってから、シックス・パックは、ダークスモーク島をおおっていた青みがかった霧について、うんちくを語り出したネ。
「それはさておき、シックス・パック。今度の冒険はどうするヨ」
「せっかく俺様がそらで語ったコフラディウムの講義をさておくなよ! とは言え、早く冒険して一稼ぎしてたっぷり酒を飲みてえのは事実……」
「悩んでいる時間がもったいないから、波止場で情報収集するネ」
「賛成。何で早くそのことに気づかなかったんだろう?」
「おまえが今の今まで、波止場の屋台で黒ビールをあおっていたからヨ」
こうしてあたしらは、屋台の親父に別れを告げて情報収集を開始したネ。


1.屈強なる波止場

波止場には、ゾラグ男爵のガレー船が停泊し、転移門経由でジンド大陸と〈トロールワールド〉を行き来している命知らずの船員達がうろついていたヨ。
「ダークスモークに気に入られて煩わされたら厄介だが、この辺りで手に入る麻薬“ダークスモークの喜び”の価値は、危険を補って余りあるよな」
「だよな。“漆黒の鷲”子爵は、どうやってか大量に手に入れて売りさばいているから、笑いが止まらないってよ。羨ましい話だぜ」
波止場を行き交う通行人達の会話を耳にして情報収集していると、シックス・パックが鷹と百合の紋章が掲げられたガレー船に中指を立てていたネ。
こいつの反社会的奇行は、日常茶飯事。鼻くそを船体になすりつけていないだけマシだから、ここはスルーしてやるヨ。
波止場にはえらく似つかわしくない、ダルセン公爵の旗が上がっている要塞めいた建物を見つけたネ。
「こうして見ると、冒険のネタを持っていそうな連中がそろいまくった波止場サ」
「そうだな。で、どこへ行ってみる? 言っとくがまた“ダークスモークの喜び”に関わるのはごめんだぜ。あれに関わったおかげで、俺様達がえらい目にあったんだからよ」
「だったら、さっきおまえが中指立てていたガレー船に行ってみるカ?」
「ああいうお上品ぶった連中とは関わるのは、虫唾が走る!」
「そんなこと言って、本当は怖いだけカ?」
「違う! よし、いっちょ行ってやろうじゃねえか!」
こうして話がまとまったところで、あたしらはゾラグ男爵のガレー船へ向かったヨ。


2.屈強なる依頼人

ゾラグ男爵はモーベロス家のカイシールに仕えているお貴族様で、傍らにはカイシールの姪にあたるダイアラがいたネ。
深窓の令嬢な見た目に反して、強情っぱりで凄腕の剣士って評判らしいヨ。
だけど、ダークスモークのダンジョンに挑戦したら、魔術の罠にかかって囚われの身になってしまったとか。
「ダロウズ・エンドの魔女のアシュヴィラに助けてもらわなければ、今頃どうなっていたか……」
「嬢ちゃんもアシュヴィラに助けてもらったネ。あたしらもヨ」
思いがけず共通の知人の名前が出てきたので、一気に話が弾んだ。
「アシュヴィラにせっかくダンジョンから助けてもらったのに、佩いていた野太刀を失くすは、名もなき村の〈七つの呪い〉亭で祝杯を上げたら、ダンジョンの出入り口の記憶を失くすは、自分が情けない……」
「気にしないネ。酒を飲めば誰だってそうなるものヨ」
あたしはさっきから会話に参加せず、虫唾が走った顔のままゾラグ男爵を見ている飲んだくれ岩悪魔をちらりと見た。
「あの野太刀は、モーベロスの家紋、すなわち鷲と百合の紋章があしらわれている貴重なものです。あれを持ち帰らないと、ご先祖さまに申し訳が立たない……」
「わかった。あたしらが嬢ちゃんの野太刀を探しに行ってくるネ。シックス・パックもそれでいいナ?」
「おうともよ、相棒。で、男爵さんよ。あんた、いくら報酬をはずめるんだ?」
ここから、交渉開始。
男爵とダイアラは二週間、波止場で待ってくれているから、その間に野太刀を持ち帰れば、お礼に3000gpの報酬をくれると決まったヨ。
話がまとまると、あたしらは波止場に戻ってさっそく“タクシー”の運転手に交渉し始めた。
“タクシー”は牛車で、この島唯一の集落である名もなき村と波止場をつないでくれている。
運転手は、ウカと呼ばれる隻眼のいぶし銀で、やたらと存在感のあるナイスミドルだったヨ。
「タクシーに乗りたい? 嬢ちゃん達、料金は一人50gpだが払えるのか?」
「払えるネ。ここへ来るまでに散っていった仲間達の血と涙が染みついた財布に入った金貨を今こそ使う時が来たナ、シックス・パック」
「おう、そうだな。あいつらもこんなイケている“タクシー”に乗るために生涯かけて貯めた金を使われて幸せだろうよ」
「……一人20gpにまけてやるから、とっとと乗りやがれ、てめえら」
目頭を押さえて天を仰ぐウカに促され、あたしらはアドリブにしてはうまく値切ることができたことに満足しながら、座席でこっそりとグータッチしたネ。


3.屈強なる酒場

“タクシー”の移動は快適で、島で唯一の集落である、名もなき村に安全に到着できたヨ。
ウカに礼を言うと、「てめえらはせいぜい長生きしていきやがれ」と捨て台詞を吐いて去っていったサ。
「あいつ、何だかんだでいい奴だったな」
「きっと帰り道に小銭を拾うとか、いいことに出会えるネ」
あたしらはそう言いながら、村を一望したヨ。
前方には渦森という名の暗い森が広がっている。ダークスモークのダンジョンは、その森を抜けた先にあるようだ。
初めて来た村なのに、なんであたしらが知っているかと言うと、ウカの“タクシー”の中に置いていた「ご自由にお取り下さい」という村のパンフレットをもらってきたからネ。
「このパンフレットによると、『木造・石造りのクラシカルな建物が点在している閑静な村です。ダークスモークのダンジョンへ赴いた者の多くが帰って来ないか、戻ってきても狂気に陥ってしまっているからみすぼらしいし活気づいていない印象を受けるかもしれないけど、あくまでもうちは閑静な村です』だとよ」
「言葉を選びまくったパンフレットだネ。他にめぼしいこと書いてない?」
「『村に唯一の酒場〈七つの呪い〉亭は、アップルブランデーとピーチブランデー、蜂蜜酒が名物! 寡黙な男主人のプーカスさんが出迎えてくれますよ』とある。ほら、ここだ」
「パンフレット読み上げるふりをして、まんまと酒場に誘導しやがったヨ!」
あたしのツッコミも何のその、シックス・パックはスキップして〈七つの呪い〉亭へ入っていく。
「ひゃあ、アップルブランデーに、ピーチブランデー、そして蜂蜜酒! ここは甘ったるい酒がうまい店だにゃあ、はらほろひれはれ……。よーし、つぎはエールだあっ!」
わかってはいたけど、酒場のカウンターにフェードインした途端、シックス・パックは勝手に酒を飲み始めやがったネ。
果たして、プーカスがこの傍若無人飲んだくれアル中岩悪魔を目の当たりにした感想は? あたしは、気になって寡黙な酒場の主人ことプーカスを見てみたヨ。
……すごい。眉一つ動かさないし、冷静に空き瓶を数えて勘定をしているネ。
もう、寡黙とか冷静とかぶっきらぼうの領域を通り越して、無関心の領域ヨ。虚無すら感じるサ。
あたしは酒に夢中のシックス・パックの財布から5gpを抜き取ってから、自分の財布から出した5gpと一緒にプーカスに払ったヨ。
そして、一息ついてからエール酒を注文し、酒場の他の客の様子を観察したネ。
ダークスモーク島に来る連中なだけあって、みんな一癖も二癖もありそうな奴らばかりヨ。
“ダークスモークの喜び”を扱う商人もいるけど、こいつもあきらかにタダモノじゃない気配がプンプンしているネ。
あーぁ。絶対に“ダークスモークの喜び”には関わりたくないと思っていたのに、どっちにしろ関わる運命にあるみたいヨ。
覚悟を決めて、あたしは“ダークスモークの喜び”について訊ねてみることにしたネ。
「おぢさん、さっきから“ダークスモークの喜び”って言葉を何度も話しているけど、どんな喜びサ?」
エール酒片手に小首を傾げながら質問するロリ体形の美少女戦士に話しかけられ、返事をしない男はごく少数派ヨ。
「“ダークスモークの喜び”はカイワ草の別名なんだ。ただし、カイワ草は、緑色の苔のようで脂がかって見えるため、コレーラという接触毒によく似ているんだ」
商人の説明が終わったと思ったら、隣に座っていた商人その2まで説明してきた。
「カイワ草をいぶせばトリップでき、2時間の間、目につくものをランダムに《念動》の呪文を5レベルで使ったのと同じ効果を発揮できるんだ。わかりやすく言えば、6メートル以内で、君たちが持ち運べる重さの2倍までの無生物を、視線内のどこかへ瞬間移動できるんだ」
今度こそ説明が終わったと思ったら、商人その2の脇から、新手の商人その3が現れたヨ!
「知られている限り、ダークスモーク・ダンジョンにのみ自生しているが、迷宮探検家の乱獲に業を煮やした魔術師が、持ち帰る者から取り上げているそうだ」
ほー、さよカ。
これで説明終了かと思いきや、あたしの背後から新手の商人その4が耳元でこっそりとこうささやいたネ。
「タクシー屋のウカには気をつけろ。あいつはイヌなんだ」
思った以上に饒舌な商人達にお礼を言ってから、あたしは自分の席へ戻ろうとして、目つきの危険そうな魔術師が酒場の隅の席に座っていることに気がついたヨ。
あたしは、こいつにも話を訊いてみることにしたネ。
「あー、もしもし。そこの魔術師さん?」
あたしが声をかけても、狂った眼差しの魔術師はぶつぶつ呟きながら杯を傾けて、何やらぶつぶつ呟いていたヨ。
しかも、記憶を失った戦士が言葉を被せてくる。
どちらも言っていることがわけがわからないけど、世界の秘密の一端に触れたような気がしたネ。あたしは思わず持っていたエール酒をあおったヨ。
ふう、うまいネ。
こうして必要な情報を得られたところで、あたしはまだ酒を飲もうとするシックス・パックを引きずって酒場を後にしたヨ。


4.屈強なる集落

〈七つの呪い〉亭を出ると、お向かいにハイプリックス食料品店があったので、さっそくそちらへ赴いたネ。
パンフレットには「ハイプリックス食品店は、品揃え豊富! しっかり者の店主ハイプリックス・バゴットが経営しています」と書いてあったけど、扉を開けて見えたのは、いかにも吝嗇家って気配が溢れかえっている店主だったヨ。
さっきからこのパンフレット、言葉を選びまくっているサ。
冒険必需品が定価の5倍で売っていると知った時には、店の壁に「ぼったくり商店のぼったくり店主、昇天」という落書きと天使のわっかのついた棒人間を書きこんでやろうかと真剣に検討しかけたネ。
だけど、大金を支払えば呪いのアイテムにかかった呪いを《厄払い》の巻物で解呪してくれるし、干し肉で作られて、いざという時には食糧にもなる優れモノのビーフ・ジャーキンを取り扱っているので、思いとどまったヨ。
「ここではまだ買う物はないようだな」
シックス・パックがそう言ったのを合図に、あたしも食料品店を後にした。
次に行くことにしたのは、ティントン・ティリーの宝石店ネ。
理由は簡単。
食料品店に近いから。
宝石店の扉を開けると、ぽっちゃりとした店主のティントン・ティリーが見えたネ。
直後、あたしは目をハートにしたシックス・パックという信じられないものを目撃したヨ!
全力で店主を口説き始めるシックス・パックに、あたしは茫然とするしかなかったネ。
酒好き飲んだくれ岩悪魔が、人間の女性に興味を持つなんて……。
しかも、ぽっちゃり豊満陽気で小悪魔系の美女が好みだなんて……。
「おまえ、意外と女の趣味はまともだったのカ!」
「え、翠蓮? 何だよ、いきなり? あ、ティントン嬢。俺様が迷宮で見つかる最大の宝を楽しみにしていてくれ!」
シックス・パックは、今までに見たこともないくらい男前な表情で、ティントン・ティリーにウィンクする。
こんなうざい客にも笑顔を保てるとは、さすが店主ネ。
あたしは、意気揚々と店を後にする勘違い岩悪魔を追いかけ、彼女へ「うちのバカがすみませんねぇ」という顔で頭を下げてから店を出たヨ。


5.屈強なる“タクシー”

「麗しのティントン嬢に最大の宝を捧げるべく、ダークスモークの迷宮へいざゆかん!」
「おい。冒険の目的は、ダイアラ嬢ちゃんの落とし物を拾いに行くことヨ。ちゃんと覚えているネ?」
恋する男になったシックス・パックという世にも珍しい珍獣と連れ立って歩きながら、あたしらはウカの“タクシー”へ向かった。
「またおまえらか。どこへ行きたいんだ?」
「ちょっと待って。えーっと……」
確かダイアラは迷宮に閉じこめられ、アシュヴィラに助けてもらってやっと出られたと話していたネ。
すると、迷宮のわかりやすい場所にはいなかったことになるから……。
あたしの考えは、まとまった。
「ダークスモークのダンジョンの『知られざる別エリア』まで運んでほしいヨ」
「どこでその話を聴いた? こいつらはあのお方にとって脅威かもしれんな……」
「考え抜いた末の当てずっぽうの頼みネ。そこまで真剣に受け止めなくてもいいヨ」
何かきなくさくなりそうだったので、あたしは言いわけをしたけど、ウカは話もきかずにトレードマークの眼帯を外したネ。
そこにあったのは、つぶれた目ではなく、赤い宝石だったヨ!
「かっちょいー! マジで目に宝石が入っているぜ!」
「タクシー運転手にしてはやたら存在感あると思っていたら、やっぱりただ者じゃなかったネ!」
あたしらがはしゃいでいると、ウカが少し頬を赤らめてから、魔法の通信を始めたヨ。
「ええ。何と言うか……こう、骨があるというより、中身が濃いと言うか、こちらの予想をことごとくはずしてくると言うか、手に負えないと言うか……」
その通信が終わるか終わらないうちに、あたしらの前に突然人影が現れたネ!
「面白そうな連中だな。私の迷宮へご招待しよう……」
そう言い終えるか言い終えないうちに、人影は《あなたをどこかへ……》の呪文を唱えて、あたしらは……。


6.屈強なる第2層

……気がつくと、ダークスモークの迷宮の第2層にいたヨ。
「ここ、気味が悪いネ。鳥肌が立つヨ」
「妙だな。ここは物質界のはずなのに、奈落のようなニオイがするぜ」
「よくわからない時は、調べてみるに限るサ」
「それもそうだ」
あたしらは知性度を駆使して、今いる場所を調べてみたネ。
そこは、細長い通廊で左右に扉がついていたヨ。
「とりあえず、東の扉を開けてみるか」
シックス・パックが扉を開けると、時間が巻き戻るような感覚がしたネ。
そして、さほど広くない部屋に小さな祭壇が置かれていて、傍らには手首や足首、腰、額に謎めいた宝石を填められた裸の人物が鎮座していたネ。
それは、無事に迷宮から救出されたはずのダイアラだったヨ!
「ダイアラ嬢ちゃん、どうしてここに?」
「これはきっと、過去に迷宮にしかけられていた魔術の罠に囚われていた時のダイアラだ!」
シックス・パックが叫んだところで、ダイアラの周囲にあった様々な色の人影が、虹人間となって襲いかかってきたネ!
てなわけで、戦闘開始!
最初に襲いかかって来たのは、無駄に頑丈な緑色の虹人間。
次に襲いかかって来たのは、魅了をしかけてくる赤色の虹人間。
三番目に襲いかかって来たのは、器用度のSRにさえ成功すればノーダメージな青色の虹人間。
「なんて奴らだ……だんだんキャラが立って来やがったぜ!」
「これは、四番目のキャラも立ちまくりネ!」
あたしらにハードルを上げられた橙色の虹人間は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません……わたしの攻撃、耐久度と幸運度を減らすだけなんで、キャラは薄いかと……」
「幸運度を減らす攻撃をしかけてくる奴のキャラのどこが薄いんだ!」
あたしとシックス・パックのツッコミと攻撃が決まって倒された時、橙色の虹人間は影だけで顔がないくせに、満足そうに微笑んでいるように見えたヨ。
すべての虹人間を倒し終えると、不思議なもので、いつのまにかダイアラの姿はどこにもなくなっていたネ。
「これは夢だったカ……?」
「そんなことより、祭壇の向こうに別の扉がある。行ってみようぜ、翠蓮」
シックス・パックが見つけた扉の前に、あたしらも駆けつけた。


7.屈強なる通廊

「せーの!」
「ドラー!」
あたしとシックス・パックが扉を蹴破ると、またもや通廊だったネ。
あたしらが出てきた扉のちょうど正面、南に扉が一つあったので、そこを開けてみることにしたヨ。
さっきの戦いで幸運度がけっこう減っていたので、知性度で扉を調べてみたら、運よく成功!
扉の向こうは、長方形の部屋だったネ。
中央には、4本腕の彫像と石造りの長椅子があって、植物が垂れ下がっているヨ。
そして、南には扉がある。
「いかにも何かありそうな彫像と長椅子だが、まずは南の扉を開けて先へ行ってみるか」
「賛成ネ」
今度の扉は素直だったので、あたしらが蹴破らなくてもすぐに開いた。
扉の先はL字型の通廊になっていて、折れ曲がる途中に不思議なシンボルがついた扉があったヨ。
その扉の前で何やら相談しているパーティーが見えたけれど、すぐに消えてしまったネ。
どうやら、今のは幻のようサ。
さらに進むと、綴れ織りで行き先が塞がれた上り階段が、階段を上らず直進した先にはまたL字型に折れ曲がった道があったネ。
「俺様、シンボルのついた扉なら行っていいが、階段や通路の先は絶対に行きたくねえ!」
「わかったヨ。では、シックス・パックの言うとおりにシンボルのついた扉を開けるネ」
シックス・パックは、自分の身が危険になることに関しては絶対に嘘をつかないと、これまで一緒に冒険してきてよく学習しているあたしは、いい子にシンボルのついた扉を開けてやった。
すると、えらく見覚えのあるタイタンが仁王立ちで扉の前で待ちかまえていたヨ!
「我はマニュマー、エフティラ次元界のタイタンなり。汝らは、我がタロットの試練を受けるか?」
「またおまえかよ! いいか、翠蓮。またトンチンカンな答えを言って冒険終了になっちまう前に、試練を放棄……」
「リベンジマッチのために来たカ、マニュマー! 試練、受けて立つネ!」
何かあたしの傍らでシックス・パックが「ノォォォー!」だか「ウオォォォー!」だか絶叫しているけど、関係なし!
今度こそ、タイタンの試練に合格してみせるサ!
「よかろう」
マニュマーは、あたしの前に巨大なタロットカードを渡した。それは見る見るうちにあたしにぴったりの手のひらサイズに変わったヨ。
カードを見ると、ピラミッドの絵が描かれていたネ。
「望むなら、一度のみ交換を許そう」
「大丈夫サ。ここはカードの巡り合わせに賭けるヨ!」
「おいぃぃー! 翠蓮、タロットカードにそんな絵柄はないぞ!? 本来の絵柄に交換しなくていいのかよ!」
シックス・パックの取り乱す声をバックに、あたしは試練を受けた。


8.屈強なる試練

たちまちカードから閃光がほとばしり、あたしはいいとして、試練に参加してないシックス・パックにまで光が覆って来たネ。
光が消え去ってから目を開けると、そこにはスタイル抜群のボディラインがくっきりとわかるように包帯を巻いた、マミーの美女が立っていたヨ!
「ハァイ、わたしはプリンセス・ルナ。あなたは?」
「〈屈強なる〉翠蓮。人間の戦士サ」
「すると、冒険者ね? だったら、魔力度かお金、お宝を捧げてくれたら、冒険の仲間になってあげなくてもなくてよ」
「ファビュラスな美女の恋人に誤解されそうなので、あんたみたいなセクシー美女を仲間にはできないネ」
「え? あなた、同性の恋人がいるの?」
そこで、あたしはかいつまんでジーナとのなれそめから現在に至るまでの関係をプリンセス・ルナに語ってやったサ。
「複数性愛主義なわたしだけど、同性の恋人はいなかったわ。まだまだわたしも青いってことね。いいわ、あなたと恋人に幸あれ!」
女子トークみたいなノリで会話した後、プリンセス・ルナは現れた時と同じように閃光と共に消え去っていったヨ。
「試練終了! 合格だ、翠蓮。褒美に多元宇宙の真理を一つ授けよう。『小ちゃい女の子と美女の組み合わせは眼福!』」
「おい、翠蓮! このタイタン、大声で自分の趣味を真理とか言い出してやべえ! とっととこの部屋を出ようぜ!」
自分でこの部屋以外入りたくないと言い張ったくせに、シックス・パックはあたしの手を引っぱって、元いた彫像と長椅子のある通廊に引き返していったヨ。


9.屈強なる長椅子

「あのタイタンと関わると、ろくなことにならねえな」
「何を言っているネ。今回はあたし、試練に勝ったヨ?」
「その代わり、知りたくもねえタイタンの趣味を知っちまって、こっちは気分悪い。おい、翠蓮。酒樽一個頼む。あそこの長椅子で休みながら飲んで、気分を直す」
「はいはい、わかったサ」
あたしらは、そこで長椅子に腰かける。
たちまち、ぶら下がっていた植物があたしらに巻きついてきたネ!
「よく見たらこの植物、吸血植物のストラングラー・ヴァインじゃねえか!」
「あの伝説の飲血者クル……クル何とかの呪いがあたしらに降りかかるってことカ!」
「やべえよ……血を吸われてヴァンパイアにクラスチェンジした日には、俺様の魅力度が上がってイケメン度が上がっちまう。そうなったら、ティントン・ティリー嬢以外の女のハートまでかっさらっちまうことに……」
「ヴァンパイアになったら夜型生活になって、朝方生活のジーナと環境の不一致でふられてしまうヨ……」
あたしらが呪いを覚悟していると、意外なことが起きたネ。
吸血されたけれど、耐久度が1減っただけで、体力度が2回復したヨ!
「どうやら、瀉血効果で健康になったみてえだな」
シックス・パックはそう言いながら何かに気づいたようで、長椅子に目を凝らす。
「『廃都コッロールより愛を込めて。瀉血王ピピン13世より』だとよ。ジョーク大好きなヴァンパイアの、いわばジョークアイテムだったようだな、この長椅子は」
「サプライズもいいところだったサ」
元気になったら、頭もさえてきたあたしらは、通廊でまだ調べていない唯一の物、彫像を調べることにしたネ。


10.屈強なる彫像

彫像は4本腕で、やけに精巧な造りをしていたヨ。
「どうやらダークスモークに挑んで、呪文で石にされた探検家のなれの果てのようだぜ」
「悪趣味なことをしていやがるネ」
あたしがダークスモークに呆れていると、シックス・パックがひきつった顔で彫像の影を指差したヨ。
「おい、あの影を見てみろ!」
言われた通り彫像の影を見てみると、どんどん影が実体化してシャドウ・デーモンへと変身していくヨ!
4本腕から繰り出される攻撃は、予測不能から仕掛けられてくるから厄介ネ!
しかも、シャドウ・デーモンは2戦闘ターンに1回で、耐久度が高いシックス・パックに絞め落としを仕掛けてくるヨ!
「シャドウ・デーモンって不死なるものだったか? だったら、この前ゲットした夢歩きの両手剣の攻撃力は2倍になるか?」
「わからないけど、とにかく戦い続けるネ、シックス・パック!」
あたしらががむしゃらに戦ううちに、ついにシャドウ・デーモンを倒せたヨ。
「ふう、ようやく倒せたぜ……」
「泥仕合になったネ……」
ヘナヘナと彫像の台座の下に腰を下ろしたところで、台座と床の溝に鷲と百合の紋章があしらわれている野太刀が収納されているのを見つけたヨ!
「これはまさにダイアラ嬢ちゃんから頼まれていた野太刀ネ!」
「すげえな。グランド・シャムシールじゃねえか。こいつを構えて『カルマロ』と叫んでいる間だけ妖気が発せられて、かけられている呪いのどれかを一つ、一時的に18レベルで《厄払い》できるって代物だ!」
「よくそこまで鑑定できるナ、シックス・パック!」
毎度のことながら、シックス・パックは底知れないヨ。
もしかしたら、この世界の最大の謎は、神々やら多元宇宙でもなく、シックス・パックかもしれないネ!
でも、そんな細かいことは気にしている暇はなし!
今回の冒険は無事に成功ヨ!
あたしらは急いで来た道を引き返し、波止場に停泊しているゾラグ男爵のガレー船で待っていたダイアラへ鷲と百合の紋章の野太刀を届けたネ!
「かたじけない! これでご先祖さまへの申し訳が立つわ」
「へっへっへっへ。では、約束の物を……」
「シックス・パック、手を揉みながら言ったら、あたしらの品位が落ちるネ。こういう時は、相手が言い出すまで言わないものヨ」
「面白いわね、あなた達。正直でいいわ。ゾラグ男爵、約束の物を彼女達へ」
「承知いたしました、ダイアラ様」
ゾラグ男爵は、3000gpの入った金貨の袋をあたしらにくれたネ。
「よっしゃ! さっそくティントン・ティリーの宝石店へ行くぜ!」
恋に狂った男と化したシックス・パックという、世にも血迷った生物は、自分の取り分の1500gpを手に走り去っていったヨ。
あたしはと言うと、名もなき村にあった書記マングの元を訪ねようかと検討中ネ。
ウカのタクシーに置いてあった村の案内パンフレットによると、そこでは手紙の代筆をしてくれて届けてくれるサービスをしているからヨ。
「今回の冒険は、ジーナに報告できるネ」
あたしは手紙の内容を考えながら、ウカのタクシー乗り場へのんびりと歩いて行ったサ。

(完)


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙されたて。
2022年6月に『蝶として死す 平家物語抄』の続編で初長編『揺籃の都 平家物語推理抄』(東京創元社)を刊行。
平安時代末期を舞台に、平清盛の異母弟・平頼盛(よりもり)が遷都した福原の平清盛邸で続発した怪事件の謎解きに挑む。雪の山荘を舞台にした館ミステリ。
上記のような大人向け推理小説の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表している。

出典元:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
『T&Tビギナーズバンドル 魔術師の島』 収録
 ソロアドベンチャー『無敵の万太郎とシックス・パックの珍道中〜名もなき村を越えて〜』
 作:岡和田晃
 協力:吉里川べお
 発行 : グループSNE/書苑新社
 2022/7/1 - 3,300円
posted by AGS at 10:23| 小説・リプレイ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.9


 2022年8月25日の「FT新聞」No.3501に、『ダンジョンズ& ドラゴンズ 』リプレイ小説「カラメイコス放浪記」Vol.9が掲載されました。ファイナルストライクのぶつけ合い、ブラック・ドラゴンやナグパとの死闘から始まります!

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.9

 岡和田晃

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●はじめに

 本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照し、都度、シナリオの下敷きにしています。例えばテレリィ・フィンゴルフィンとは『シルマリルの物語』より。
 前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/490980912.html)をどうぞ。今回はキャンペーン第9話「薄明」(後編)の内容となります。

●登場人物紹介

タモト/『ジルチェフの欺きの斧』を持つドワーフ、6レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、6レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、6レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、5レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、7レベル。
ヨブ/ブラック・イーグル男爵領の避難民の戦士、6レベル。
プロスペル/ケルヴィンの貴族の息子。戦士、6レベル。

ゴリーデル/カラーリー・エルフの長。
テレリィ・フィンゴルフィン/ロスト・ドリームの島のエルフ。
ハービンガー/ロスト・ドリームの島のエルフ。
シャドウ・エルフたち/エルフの国アルフハイムの地下「星の都(シティ・オブ・スターズ)」に住まう存在。
「ルルンの」ヨランダ/対ブラック・イーグル男爵のレジスタンス。ヨブとは古い仲。
ルートヴィヒ・フォン・ヘンドリックス男爵/邪悪きわまりない貴族。通称「ブラック・イーグル」。
カルディア/リフリアンに住むエルフ。魔法の絨毯を使って人を運搬してくれる。
アンデラ/リアの姉。
占い師アルヤ/謎めいた美貌の占い師。正体は……。
インジフ/リアの祖父。元「盗賊の王国」スレッショールド支部のギルドマスター。
マレク/リアの兄。
ステファン・カラメイコス3世/カラメイコス大公国の統治者。
「盗賊王」フレームフリッカー/ギルド「盗賊の王国」のギルドマスター。
アントン・ラデュ/ギルド「ヴェールド・ソサイエティー」のギルドマスター。
シャーレーン大司教/スレッショールドの街の統治者。
ゴルサー/謎の魔法使い。
ミコラス/リアの父。

●決戦

 シャドウ・エルフたちの言うことがどうしても信用しきれなかったパーティは、結局、その申し出を断ることにした。
 怒り狂ったシャドウ・エルフたちは、手にしていた「ウィザードリィワンド」を二つに折った。
 ワンドに込められていた信じられないほど強大な力がほとばしり、閃光とともに辺りを包み込む。
 恐るべき、「ファイナルストライク」(最後の一撃)の魔力である!
 ――間一髪、テレリィがパーティの間に割り込む。
 テレリィもまた、手に持っていたワンドの封印を解いた。
 二つの強大な「ファイナルストライク」はぶつかり合い、辺りにはすさまじい振動が響き渡った。
 気がつくと、テレリィとハービンガーの姿はかき消え、疲弊した二人のシャドウ・エルフだけが残っていた。
 彼らは捨て台詞とともに、「ディメンジョン・ドアー」(次元の扉)を通って去っていった。
 だが、入れ替わりに、巨大な、腐敗したブラック・ドラゴンと、魔術師風のローブを着たハゲタカ頭の老人めいた邪悪なクリーチャー「ナグパ」が現れたのだ。

●絶望

 すぐさま激戦が始まった。
 しかし、ここでパーティはシャドウ・エルフに気を取られていたためか、重大な過ちを犯してしまった。
 ドラゴンの体力を削ることを怠ったのである。
 そのため、最前線のヨブは、ドラゴンの酸のブレスをまともに受け、一瞬のうちに溶け去り、奈落(アビス)への帰らぬ旅路に就くことになってしまった。
 絶望が一行を包み込む。
 さらには、タモトまでがドラゴンのブレスを受け、倒れてしまう。
 おまけに、ナグパはグレイに狙いを定め、「コラプション」の魔法で、彼の持っているポーションや呪文書のほぼ全てを腐らせてしまった。
 これは全滅か!?
 死の淵を彷徨いながらも、必死の連係で、辛うじてドラゴンを葬ったはいいものの、ナグパにとどめを刺そうとした瞬間、そいつは死に際に呪文を放ち、もう一体、巨大なブラック・ドラゴンを呼びだしたのだ!

●顛末

 第二のドラゴンは、ナグパが「ファンタズマル・フォース」の呪文によって作った幻覚であった。
 パーティはただちに見破って、幻覚をかき消してゆく。
 そして、崩れゆく神殿から、指輪の「ワード・オブ・リコール」の魔力を使って逃げ出したのだった。
 ジーンの懸命な看護の甲斐あってか、タモトは戦闘後に無事息を吹き返したものの、ヨブを運ぶのはもはや不可能だった。
 一行は悲嘆に暮れながら彼の遺品を集め、帰路についた。
 エルフの村に戻ったパーティは、顛末を報告した。
 ゴリーデルは食い入るように聞き入り、話が終わると心からパーティを歓待した。
 しかし、ヨブは戻ってこない……。
 あれだけ死体の損傷がひどければ、「生命の樹」の力も及ばないだろう。
 そもそも、「生命の樹」の力を使えば、またもやバリムーアのような存在を呼び出してしまうことにも繋がりかねない。
 そのような危険は冒せない。

●「ルルンの」ヨランダからの知らせ
 一行がこれからの行く先についてあれこれ考えていると、近くの樹の幹に一本の太矢が刺さった。
 伝達の太矢(クォーレル)である。
 伝言は、「ルルンの」ヨランダからのものであった。
 大事が起こったので、すぐにスレッショールドまで来てほしい、というのだ。
 スレッショールドには、リアの故郷がある。
 ちょうど、リアも一度実家に戻ろうかと考えていた矢先だったということもあり、行くあてのなかったパーティは、とりあえずスレッショールドへと向かうことにした。
 そうして湿原(ムーア)を越え、河を渡って、エルフの街リフリアンにたどり着いた。
 ここを越えれば、スレッショールドはもう目と鼻の先だ。

●リフリアンでの噂

 だが、彼らはここで、とんでもない噂を耳にした。
 そう、ブラック・イーグル男爵がカラメイコス大公国の首都スペキュラルムに攻め込んだというのである。
 スペキュラルムの防衛軍や、グリフォン聖騎士団の活躍もあって、何とか持ちこたえているらしいが、王都陥落も時間の問題だろう。
 また、スペキュラルムやその近くの街からは多数の難民が発生して、ケルヴィン周辺の街や村々になだれこんでいるということである。
 驚いた一行は、すぐさま、リフリアンに住むエルフ、カルディアに法外な金を払って魔法の空飛ぶ絨毯をチャーターし、スレッショールドへと急行した。

●スレッショールド

 スレッショールドはブラック・ピーク山脈のふもとにある街だ。
 山の向こうには、遠くダロキン共和国やイラルアム首長国連邦が見える。
 見下ろすと、一列に連なった難民たちの姿がうかがえた。
 ヨランダとの待ち合わせ場所は、リアの家族が経営している宿屋ということになっていた。
 スリの猛攻や窓からぶちまけられる尿瓶の中身をなんとかかわしつつ、ようやく目的の場所、すなわち「鉤と十字亭」に到着した。
 迎えに現れたのは、リアの姉、アンデラだった。
 彼女が宿に戻って呼びに行くと、しばらく経って、ヨランダが現れた。
 続いて精悍な老人、そしてローブ姿の小柄な女性が降りてきた。
 二人はリアの祖父インジフと、「占い師」アルヤだと自己紹介した。
 一行とインジフとは初対面だが、アルヤの方はそうではなかった。
 というのも、彼らは以前王都にて、アルヤに将来を予言されたことがあったからである。
 とりあえず、三人にことの経過を報告する。
 彼らはうなずき、パーティの労をねぎらうと、ふたたび何ごとかを相談するため、宿の2階へと引き上げていった。
 ヨブの形見として、一行からトゥルース・リングとノーマルソード+2を受け取ったヨランダの瞳は、心なしか涙でうるんでいたが……。

●宿の騒動

 その晩、パーティが宿の1階にある酒場で久々に羽を伸ばしていると、青白く太った男が因縁をつけてきた。
 男はリアの兄、マレクだった。
 彼らはなんとか面倒を避けようとしたがうまくいかない。
 結局、プロスペルとマレクがレスリング勝負を行い、勝った方に事の理があるということにされてしまった。
 結果、なんとかプロスペルが勝利した。
 騒いでいると、宿の二階からインジフが降りてきた。パーティを呼びに来たのである。
 マレクは泣きじゃくりながら、インジフに告げ口をしたが、女々しいことを抜かすなと一喝されるに終わった。
 マレクは、紋切り型の捨てぜりふを残し、その場を去っていった。

●占い師アルヤの正体

 インジフに連れられて宿の奥の相談室に入った一行は、そこで驚くべき事実を知った。
 待っていたのは、二人の美女だった。
 片方はヨランダだが、もう片方は?
 背格好から見るに、先ほどの占い師アルヤらしいが。
 彼女は微笑み、自分はフレームフリッカーだと名乗った。
 ――「盗賊王」フレームフリッカー!
 十代半ばで盗賊稼業を始め、十年足らずで瞬く間に、ギルドの「盗賊の王国」をまとめあげた伝説の人物である。
 それが、どうしてまたここに?

●巡らされた糸

 ヨランダが代わって説明する。
 スペキュラルムにいたころ、彼女は突然、ステファン・カラメイコス公爵の招聘を受けた。
 王都内で、対「ブラック・イーグル」男爵領のレジスタンスを組織していたおかげで、白羽の矢が立ったのだ。
 そこで公とともに姿を見せたのが、「盗賊の王国」のギルドマスターである「盗賊王」フレームフリッカーだった。
 背後には、「盗賊の王国」とは反目し合っている盗賊ギルド「ヴェールド・ソサイエティー」のギルドマスター、アントン・ラデュがいた。
 ステファン公は話し始めた。
 スペキュラルムの街は危機に瀕している。
 ブラック・イーグルこと、ルートヴィヒ・フォン・ヘンドリクス男爵が反乱を起こそうとしているのだ。
 まさしく緊急事態である。
 そのため、彼らは日頃の利害関係は当分棚上げして一致団結し、ブラック・イーグルに立ち向かう体勢を取ったのだった。
 公爵によれば、ブラック・イーグルがクーデターを起こそうとしたきっかけの一つに、手下であるゴルサーという魔法使いがブラック・ピーク山脈にて発見した禁断の武器があるとのことだ。
 そこでステファン公は、自分とアントン・ラデュが首都を守っている間に、フレームフリッカーとヨランダをスレッショールドへ向かわせることにしたのだった。
 シャーレーン公爵と話して難民の受け入れ許可を得なければならず、一方でゴルサーの陰謀を打ち砕くための協力が必要になってきたからだ。
 そのようなわけで、スレッショールドに到着したヨランダとフレームフリッカーは、かつて「盗賊の王国」スレッショールド支部のギルドマスターだったインジフに会い、協力を要請していたというわけだ。
 そのとき、突然扉が勢い良く開き、リアの父、ミコラスが駆け込んできた。
 会議中だ、とインジフが一喝する。
 が、ミコラスは耳を貸さずに、絶叫した。
「大変だ! マレクが殺された!!」

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2022年08月24日

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.8

 2022年8月11日配信の「FT新聞 No.3487」に、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説「カラメイコス放浪記」Vol.8が掲載されています。見どころは、詩を使って世界の成り立ちを説明するところでしょうか。マスタールールセットの設定を踏襲しています。戦闘も激しい!

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リプレイ小説 「カラメイコス放浪記」Vol.8

 岡和田晃

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●はじめに

 本不定期連載は、岡和田晃が過去にプレイした、クラシックD&Dキャンペーンの小説風プレイリポート(リプレイ小説)で、新和版・メディアワークス版・未訳資料ほか各種の情報を参照しています。
 前回の内容はこちら(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/489882767.html)をどうぞ。今回はキャンペーン第9話「薄明」(前編)の内容となります。

●登場人物紹介

タモト/『ジルチェフの欺きの斧』を持つドワーフ、6レベル。
ジーン/カラメイコス国教会所属のクレリック、6レベル。
グレイ/ブラック・イーグル男爵領出身のマジックユーザー、6レベル。
シャーヴィリー/カラーリー・エルフ、5レベル。
リア/ギルド「盗賊の王国」に所属するシーフ、7レベル。
ヨブ/ブラック・イーグル男爵領の避難民の戦士、6レベル。
プロスペル/ケルヴィンの貴族の息子。戦士、6レベル。

バーグル・ジ・インファマス/悪の魔術師。
ゴリーデル/カラーリー・エルフの長。
バリムーア/リッチ。
ステスシル/バンシー。もとカラーリー・エルフ。
ハラフ、ペトラ、ジルチェフ/カラメイコスの建国神話にちなんだ伝説の人物。
テレリィ・フィンゴルフィン/ロスト・ドリームの島のエルフ。
ハービンガー/ロスト・ドリームの島のエルフ。
ロキ/「エントロピー」を司るイモータル。

●グレイの死

 「悪名高き」魔術師、バーグル・ジ・インファマスを撃破することに成功した一行。しかし、「クラウドキル」(死の雲)が晴れていくと――エルフたちの死体に混じり――グレイまでもが倒れていた。
 すでに事切れている。
 その顔は赤黒く、表情には苦悶の跡が生々しい。
 そして隣には、彼の使い魔だった黒猫も倒れている。また一人犠牲者が……。皆、途方に暮れる。
 ただ一つの慰めは、バーグルが持っていた、多量のポーションとマジックアイテム、それに数々の魔法が記されたスペル・ブック(呪文書)だけだった。
 なかでもやっかいだったのは、バーグルが身につけていた「セキュリティー・ポーチ」(警報機能付き財布)だった。自我を持っており、パーティの神経を逆撫でするようなことばかり告げるのである。

●エルフの提案

 ゴリーデルが申し出た。「生命の樹」の力を使えば、彼を生き返らせることができるかもしれない、と。
 エルフたちにも多数の犠牲者が出たという事実を考え、戸惑うパーティ。
 しかし、ゴリーデルは恩人に対する当然の報いだ、と言い張って主張を曲げなかった。
 ようやく、バーグルがかくも執拗に狙い続けるロスト・ドリームの湖の秘密に関心が向くようになったというのだ。
 ロスト・ドリームの島が湖に沈んだときに受けた呪いのために、カラーリー・エルフでは、島に近づくと気が狂ってしまう。
 だが、バーグルがあれほどまでに執着していたからには、きっと何かがあるはずだ。
 その謎に触れることのできる機会は、今しかない。
 グレイを蘇らさなければ……。
 パーティは、エルフの申し出を受けることにした。

●「生命の樹」の奇蹟

 ゴリーデルの案内によって、一行は「生命の樹」のある広場に到着した。
 天まで届くかと思われるその威厳たるや、とても言葉で言い尽くせないほど。
 けれども彼らは、むしろ不思議な親しみを感じた。
 皮肉屋のヨブでさえ、ただ黙って樹を見上げている。
 多少の陰りを見せてはいたが、樹は日の光を浴びて燦然と輝いていた。
 エルフの族長は説明する――「生命の樹」は、死者への「想い」を媒介するにすぎない、と。
 すなわち、死者を甦らせる根本的な力は、それを願う人々の内部に根付いている。
 「樹」は、その力を増幅するのだ。
 エルフの導きに従い、一行はグレイへの思慕を高めていった。
 すると、「生命の樹」からまばゆいばかりの光が発せられ、グレイのもとへと集まってきた。
 光は一度途絶えかけたが、なんとか拡散を免れた。
 そして――グレイは息を吹き返した。

●バリムーアの襲撃

 狂喜する冒険者たち。
 しかし、それも束の間、辺りに暗雲が立ちこめてきた。何やら強大で邪悪な力が近づいてきているのである。
 とっさに戦闘態勢を整える一行。
 ――ローブ姿の男がそこにいた。
 フードから垣間見える相貌は、生ける者のそれではない。
 蛆のわいた骸骨そのものである。
 そう、冒険を志す者ならば必ずどこかで耳にする、「死王」リッチの姿があったのだ。
 彼らは直感的に彼こそが、「生命の樹」を狙う邪悪な存在、バリムーアだと気づいたのである。
 リッチはすさまじく強力だった。
 パーティは初めて、全滅への恐怖というものを痛感した。
 とりわけヨブは、バリムーアの放つライトニング・ボルトの直撃(注:ダメージ20d6、セービングスロー成功でダメージ半減)をまともに受け、半死半生の重体である。
 だが、一行も伊達に経験を積んできたわけではなかった。
 恐るべき猛攻を見せ、バリムーアをたじろがせたのである。
 なかでも、彼はタモトの斧に並々ならぬ畏れを感じていたようだった。
 予定していたはずのヴァンパイアの援軍もなかなか現れず、100ポイントを超えるダメージを被ったバリムーアは、かろうじて「マジック・ドアー」の呪文で退散したのであった。

●哀しみのあとで

 次から次へと現れる、思わぬ敵の数々との戦いですっかり疲弊したパーティ。
 生命の樹への危険は回避されたが、ぐずぐずしてはいられない。
 カギは、ロスト・ドリームの島にこそある。
 その日はとりあえず、バーグルとバリムーアによって殺されたエルフたちを荼毘に付すこととなった。
 悲しみに暮れるエルフたち。
 葬式のあとの集会で、ゴリーデルは今度こそ、正式に彼らに島の探索を依頼することにした。
 今度は、誰も反対する者はいない。
 詩人ドワーフのタモトと「語り部」技能を持つプロスペルは、共に手をとり、哀しみの歌を歌う。
 シャーヴィリーはそれに合わせて得意の踊りを披露するが、転んでしまい、大失敗。
 しかし、そんなことも気にならないほど、彼らの悲哀は深かった。
 一行は「エルフの友」と認められ、永遠の友情の絆が誓われた。
 なかでも弓使いのリアには、特製のエルブン・ボウ+3が贈呈された。
 一方、甦ったばかりのグレイはその隙を見計らって、なんとエルフたちの倉庫に忍び込もうとする!
 いたずら好きの性根は、奈落(アビス)より帰還しても直っていないようだ。
 が、さすがにそうは問屋が降ろさない。
 エルフたちに乞われて、タモトがその場を見張っていたのである。

●湖への旅路

 翌日となった。
 エルフたちに見送られ、湖を目指す一行。
 途中、シャルガグと名乗る奇妙な森の小人や、ジェリアンという騒々しい鳥人間をやりすごし、歩を進めていった。
 時はすでに、フラーモント(4月)の下旬になっていた。
 いつしか、周囲には霧が立ちこめている。
 しかし、そのなかから、かすかに、湖らしきものが見えてくる。
 指輪をはめ、一呼吸置くと、パーティはおそるおそる近づいていった。
 湖との距離が狭まるにつれ、霧は濃さを増していく。けれども、湖の縁にまでたどり着くと、不思議なことに、その周りだけ霧が晴れていた。
 そして、一行は、自身に奇妙な変化が起きているのに気がついた。
 なんと、ヨブとグレイ、そしてタモトとプロスペルの性格(アラインメント)が変わってしまったのだ。
 「ケイオティック」(混沌)のヨブとグレイは「ローフル」(秩序)に、反対に「ローフル」のタモトとプロスペルは「ケイオティック」になってしまった。
 ニュートラル(中立)のリアとシャーヴィリーはいつも通り、変わった様子はない。
 不思議なことに、ケイオティックの権化のような破戒僧ジーンにも、変化の兆しは見られない。
 いつもと正反対なまでに様子が異なってしまった一行は、さすがに戸惑いを隠せない。
 特にタモトとプロスペルは、日頃胸に溜めていたやりきれない思いが一気に解き放たれてしまい、まったく手がつけられないほどだった。
 だが、タモトはアラインメントが変わると、手にしている斧が、いつもよりしっくりくるように思えてならなかった。
 ともあれ、目的は果たさねばならない。
 一行は湖に足を踏み入れた。

●ロスト・ドリームの湖

 彼らは湖を底に向けて歩いていった。
 水はとても澄んでいて気持ちいいが、生息している生き物も多くてうんざりさせられる。
 電気ウナギやサメの猛攻をくぐり抜け、マン・オー・ウォー(80本の触手を持つ大クラゲ)をやりすごし、さんざんあたりをさまよった。
 数時間経って、ようやく、神殿らしきものが見えてきた。
 朽ちた門に手をかけ、ゆっくりと中に足を踏み入れる一行。
 神殿そのものは、かなり古い作りになっている。
 あちこちを探索し、スペクターを退治したり、ちょっとしたマジックアイテムを発見したりする一行。
 そして、いよいよ神殿の中央部の柱が林立する部分に足を踏み入れると、突如、魔法の罠が発動し、パーティの半数が麻痺してしまった。
 呼応するかのように、前面に据えられていたオリハルコンと青銅の像が動き始めた。
 青銅の像はグレイの呪文「ウェブ」によってすぐさま無力化されたが、問題なのはオリハルコンの方である。
 なんと、像は2ラウンドに1回、「ライトニング・ボルト」を放つことができるのだ。
 しかも、麻痺したキャラクターたちに対しては、背後からシャドウが4体襲いかかってきた。
 またもや危機であるが、彼らは大ダメージを受けつつも、辛くも勝利をおさめることができた。
 忌々しげに、ばらばらになったオリハルコンの像を眺める一行だったが、軍資金とするため、回収するのを忘れない。
 リアには像の形が、以前ヴォーテックスにて出会った、「ザ・ウゥープス・マン」と名乗った謎の男とどこか似ているように思えてならなかった。

●第一のタペストリ

 ジーンの持つ「ヒーリング・スタッフ」でなんとか傷を治し、さらに奥へと進んでいくパーティ。
 そこにはタペストリが掛けてあった。何やら詩文のようなものと、それに則した絵が描かれている。

 新王は深い思いに沈んでいた。
 清らの花の話をはじめて耳にし、その予言に
 心をひそかに打たれ、激しい愛を覚えた夜の夢と
 聞きおよんだ物語がこよなく偲ばれてきた。
 胸にしみる声は今なお耳にやきつき、
 旅の人が宴を辞したのはつい今しがたのよう。
 ときおりさす月光が風にがたつく窓辺を照らし、
 青年の胸を灼熱の炎が燃えさかるようだった。

 不思議な時代が過ぎ去り、まるで淡く消えゆく夢のようだった。

 「ペトラよ」と王が言った。
 「愛する者の心の切なる願いとは何であろうか。
 教えておくれ、その者に手を貸そうではないか。
 力はわれらのもの。そなたが天上にまた幸福をもたらすとき、
 すばらしき時代がやってこよう」

 「時がたがいに睦み合うならば、
 未来が現在と、また過去と結ばれ、
 春が秋に近づき、夏が冬と交わり、
 青春が戯れる真面目さで老年に肩を寄せれば、
 わがいとしの殿方、そのときこそ苦痛の泉は枯れ、
 すべての感覚を満たす望みは叶えられましょう」

 王妃はそう答えると、麗しい王に抱擁された。

 「よくぞ話しておくれた。
 ついに至上の言葉がまことそなたの口から発せられた。
 それは、心ある人の口元に浮かんではいたが、
 そなたの口をついてはじめて、清らに力強く響きわたった。
 急ぎ馬車を曳け、われ自らおもむいて、
 まずは一年の四季を、それから人間の四季を迎えるとしよう」

 「王」がハラフを指し、「ペトラ」が伝説にあるハラフの妻、女王ペトラであることはわかったものの、謎を解くカギにはなりそうにない。
 やむをえず歩を進め、二つ目の神殿に入る。

●ステスシルの悲劇

 二番目の神殿も、基本的な構造は最初と同じだった。
 またもやタペストリがある。
 そしてその前には、エルフの形をとった幽体が立って、すすり泣きをあげていた。
 不死の魂、ハウント(ホーント)である。なかでも、これは「バンシー」という種類のハウントらしい。
 「ローフル」なグレイが近づくと、バンシーの周りのエクトプラズムに阻まれ、結果、彼は10歳老化してしまった!
 だが、リスクは大きかったものの、なんとか話を聞くことができた。
 このバンシー(名前はステスシル)は、かつてはこの神殿に住んでいたカラーリー・エルフだった。
 神殿は、この地を統べる「力」を統御するための施設で、ステスシルはその守護者だったのである。
 しかしある時、「力」が暴走し、調和は破れた。
 こうして島は湖の底に沈み、エルフたちはアンデッドとなってこの地に縛り付けられたのだった。
 ここまで語るとバンシーは、これ以上生きていることほど苦しいことはない、自分を哀れに思うのならば殺してくれ、と嘆願した。
 「ローフルの」ヨブはそれを聞き入れ、ひと思いにステスシルを斬った。
 残されたタペストリにはこう書かれていた。

 ●第二のタペストリ

 疲れ果てた時の、疲れた心よ。
 善・悪の網をきっぱり切って、来い、
 おまえの魂は、いつまでも若い、
 霧はいつも輝いていて、薄明は灰色だ、
 中傷の火に焼かれながら、
 希望はなく、愛も失われていくけれど。
 来い、心よ、丘が丘に連なるところへ、
 そこには、虚ろな森と、丘をなす森の、
 神秘的な兄弟たちがいる、
 そこでは変わっていく月がその意志を遂げ、
 神は佇んで寂しい口笛を吹き、
「時」と「この世」はいつも飛び去り、
 愛よりも灰色の薄明が優しく、
 希望よりも朝の露が親しいところなのだ。

●最後の神殿

 3つ目の神殿は、他の二つよりもずいぶんと規模が大きかったが、基本的な構造は同じであった。
 巣喰っていたベルヤー(水中に住むヴァンパイア)を退治して奥に進むと、左右対称の四つの部屋があった。中央には台座が据えてある。
 いったん離れ、神殿の中央を進んで行くと、男女二人のエルフが立っていた。
 男はテレリィ・フィンゴルフィン、女の方はハービンガーと名乗った。
 男は手にワンドを、女の方はロッドを持っている。
 背後には、虹色の空間が口を開けていた。
 彼らこそが、この場所で一行を待ち受けていたカラーリー・エルフだった。
 二人はうなずくと、タモトの持つ斧の秘密と、この神殿のいわれを語りはじめた。

●『武器』の秘密

 ハラフ王が最後の戦いを終え、天上に召されたとき、彼が手にしていた『剣』は、この神殿に納められることとなった。
 『剣』のほかにも、彼の仲間たちが持っていた武器はそれぞれ、その最も信頼できる部下の手によって、ここに運ばれた。
 武器はそれぞれ、このカラメイコスの地を統べる、ある種の「力」を象徴していた。
 ハラフは、その「力」が拡散し、悪しきものの手に渡ることを恐れて、武器をこの地に集め、安定を保つことにしたのである。
 武器は全部で4つ。『槍』と『斧』と『メイス』、そして『剣』である。
 『槍』に属する第一の「力」とは「物質」である。それは破壊に耐え、不変と安定を象徴する。ローフルの性格とファイターのクラスに属し、「時間」と敵対し、「思考」に秩序を与える。また、それは「大地」から力を得る。
 『斧』に属する第二の「力」とは「エネルギー」である。それは数多くの力と活動の源である。ケイオティックの性格とデミヒューマンに属し、「時間」による荒廃に対抗して、「物質」を最も高い領域に押し上げようとする。それはまた、「炎」から力を得る。
 『メイス』に属する第三の「力」とは「時間」である。それは万物に変化をもたらし、大局的な安定を保つ。あらゆるところに存在し、過去の流れを再循環させる。ニュートラルの性格とクレリックに属し、変化に対応した「物質」と敵対する。そして、「エネルギー」の減少をもたらし、「思考」に歴史の教えを授ける。「時間」は「水」から力を得る。
 『剣』に属する第四の「力」とは「思考」である。すべての存在を分類し、他のあらゆる領域をその道具とする「思考」こそが、神(イモータル)の本質である。「思考」は具現にして哲学、そして理解を象徴する。あらゆるアラインメントとシーフのクラスに属し、「エネルギー」の混沌とした過剰さに敵対し、「時間」の効果を操作して、「物質」に、力と秩序と形を与えようとする。
 そう、タモトの持つ「ジルチェフの欺きの斧」こそが、この「エネルギー」に属する伝説のアーティファクトだったのである。
 しかし、他の武器はどこにあるのだろう?

●「エントロピー」

 一行の疑問に、テレリィは力無く首を振った。「エントロピー」の力によって、すべては失われてしまったのだ。
 「エントロピー」は、別名「死」と呼ばれ、その目的はあらゆるエレメントとは無関係に、この多元宇宙そのものを完全に破壊することにある。
 「エントロピー」は多元宇宙という名の織物のほころびであり、腐敗・風化・消失を象徴する。これは万物に停止をもたらし、忘却を引き起こす。
 そのうえ、「エントロピー」そのものは他の力がなくては存在できず、忘却をもたらす前に、まず征服の対象を求める。
 「エントロピー」は「物質」を破壊し、「エネルギー」を停止させ、「時間」を停滞させ、新たな「思考」を止めようとする。
 「エントロピー」を司っているのは、「ロキ」という名のイモータル(神)であった。「ロキ」は、神殿を守っていたエルフたちを、巧みな言葉でたぶらかして、神殿内に「エントロピー」の力を持ち込んだ。
 征服のための媒体を得た「エントロピー」はすぐさま膨張を重ね、「武器」の力は信じられないほど大きなものとなった。エルフたちは有頂天となり、本来の職務を忘れて、「力」を用いて気ままに振る舞った。
 そのため、彼らは神の罰を受けたのである。神殿は沈み、武器はいずこかへ拡散した。
 後に残ったのは、ロキの高らかな笑い声だけだった……。
 ――そこまで語り終えると、テレリィは一息ついた。大きく息を吸って、続ける。
 武器はしばらくの間はそのなりを潜めていた。しかし、最近になってその力の暴走が顕著になってきた。
 もはや一刻の猶予もない。武器を集め、しかるべきところにて「安定」させる必要があるのだ。
 彼らの説明によれば、一つ目のタペストリの詩句は「安定」を歌っており、二つ目のそれは「エントロピー(薄明)」の浸食を象徴しているとのことだった。

●シャドウ・エルフ

 そのときだった。
 彼らの背後の虹色の空間から、髪や肌の色が異なるほか、まったく瓜二つのエルフが現れ、絶叫した。
「騙されてはならない、こいつらの言うことはすべてまやかしだ!」
 エルフの亜種、シャドウ・エルフである。
 彼らは、エルフの国アルフハイムの地下に「星の都(シティ・オブ・スターズ)」という国を建設して住まい、地上での覇権を虎視眈々と狙っているらしい。
 アルフハイムのエルフたちの側は彼らのことを快く思ってはおらず、双方はことあるごとに敵対しているのである。
 男は告げた。
「奴らに武器を渡せば、それこそ世界の破滅が訪れる。我らと一緒に来て「星の都」を地上に建設するための力を貸すのだ。それこそが、最善の道である!」
 戸惑う一行。シャドウ・エルフたちは言葉巧みに語りかける。
 女のほうは、「星の都」がシャドウ・エルフのみならず、あらゆる生き物にとってどれだけすばらしい楽園であるのかを嬉々として歌い始める。

※途中引用された詩は、ノヴァーリス『青い花』(青山隆夫訳、岩波文庫)と、イェイツ『ケルトの薄明』(井村君江訳、ちくま文庫)の掲載作を下敷きに、シナリオに合わせて変更・改訳を加えたものです。


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posted by AGS at 20:44| 対談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする