2026年03月06日
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.28
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.28
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
前面の虎に後門の狼ではないが、魔狩人をはじめ、異形のクリーチャー群に狙われ続けるのは、なかなかにしんどい。
うまく魔女の術を用いて、追跡されずには済んだのだが、やはり、後援者が必要だ。ナルンのベッカーリン街112には、鼠人間に関する膨大な資料が収められているという。
そして、そこを管理するのは……。名探偵シェリーことシーアリア・ソーンコッブル。またの名をスケイヴン狩人。
――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より
在外研究で長期渡航しているアルゼンチンの中華街にほど近いショップで、『ウォーハンマーRPG』のサプリメントを見つけました! 〈内なる敵〉の第5巻『Empire in Ruins』のスペイン語版です。価格こそ140000アルゼンチンペソ(約17000円)と、なかなか高価ではありましたが、隣に並んでいるのは、フリーリーグのボックスRPG『Dragonbane』や『パスファインダーRPG』第2版に『Starfinder』(いずれも未訳)といった“わかっている”ラインナップ。現地のゲーマーの謦咳に接した気持ちになり、嬉しくなりました。
さて、2025年8月に発売された『血と茨』に続き、新たなPDFサプリメントが日本語でも続々刊行されています。今回紹介する『オールド・ワールドのパトロンたち』は、4人の強力でカリスマ性のあるパトロンNPCを紹介するサプリメントです。パトロンNPCとは何か、というと、冒険者たちの冒険の支援をするだけの力を有したキャラクターのことを指すのですが、単に善意や正義感から応援してくれる、というのではなく、一癖も二癖もある奴ばかり。腹の底では、うまくPCたちを使い倒してやろう、と目論んでいるのかもしれません。
パトロンNPCの大きな特徴として、データ的に抜きん出ている、ということが挙げられます。それこそ100%を超える技能を保持していることも、珍しいものではありません。冒険者たちがピンチのときに駆けつけてくれるかもしれませんし、反対に、裏で陰謀をめぐらせている首魁として、登場させても違和感はないでしょう。
また、パトロンNPCには特別な「冒険外活動」が用意されているのも、大きな特徴です。『オールド・ワールドのパトロンたち』には1と2がありますが、今回紹介するのは1冊目。以下、4体のパトロンNPCが紹介されています。
●シーアリア“シェリー”ソーンコッブル:スケイヴン狩人。オールド・ワールドの根幹を脅かすラットマンどもの脅威を世に訴えようと躍起になっている探偵。
シーアリアはハーフリングの貴族にして探偵、そしてスケイヴン狩人という“設定盛り盛り”なキャラクターですが、一貫性はあります。調査の途中で、鼠人間の脅威に気づいてしまったから、なんですね。なにぶん、彼女が暮らしているのはナルンのベッカーリン街(シュトラーセ)112。世界一有名な諮問探偵の住所、ベーカー街221Bを思わせるではありませんか!
●ファーフォリアン・ホワイトショア:ハイ・エルフの諸王国を代表するサーフェリィの大使。エンパイアで最も長くエルフの外交官を務めたが、外交に飽き飽きしているという噂もある。
ファーフォリアンは、なんと“すべてを知るもの”テクリスから直々に薫陶を受け、レイライン(魔力の風が流れる龍脈のような経路)を管理する術を学んだ実力者。“敬虔帝”マグナスとも面識があり、テクリスがマグナスに協力して魔法諸学府を設立したとき、新設されたアルトドルフ大使館の駐在大使を任じられたほど。こうした華々しい経歴が霞むような秘密を、ファーフォリアンは抱えています……。
●ナヤダリン“白骨商人”フロストウィールド:ウッド・エルフの闇商人。盗まれた古代エルフのアーティファクトを取り戻そうとしている。その過程で犯罪帝国を築き上げた。
ある意味でファーフォリアンと対照的なパトロンNPCです。一族と因縁が深いアーティファクトを探し出すためには手段を選ばず、構築されたネットワークはかなりのもの。他のエルフたちにどう思われるか頓着せず、本音で語るナヤダリンは人間以上に人間らしい存在かもしれません。付属する「エルフの宝具」の追加ルールも必見です。
●グートラ・モルビンシュニッツ:才能溢れる女優であり、剣術の達人。オールド・ワールド最大の富豪ヤーン・ファン・デ・コイパースの代理戦士にして密偵である。彼らはその目的を達成するために助けを必要としている。また、豊富な知識と有益な情報を持つパトロンたちは、君のパーティーにとってかけがえのない存在となるかもしれない。
代理戦士といえば、熊のようにいかつい大男ばかりと思われがちですが、そうした通念を裏切り、社交界の花、芸能スター、決闘者、代理戦士といういくつも顔を使い分けるパトロンNPCが、グートラなのです。八面六臂の活躍には、彼女の生い立ちが深く関わってきてきます。鍵になるのは、オールド・ワールド最大の富豪とも噂されるヤーン・ファン・デ・コイパース理事。彼女と接触すれば、必然的に、彼との因縁へ巻き込まれることになるでしょう。
これらのNPCは、エンパイアのどこを舞台にした冒険にも登場させることができ、シナリオ・フックも多数、用意されています。個性豊かな存在ばかりなので、『ウォーハンマーRPG』のみならず、他のRPGや創作のための参考にもなるでしょう。が、やはり、読んでいると、どうにかしてキャンペーンに関わらせたくなると思います。
翻訳は見田航介さんが担当。翻訳協力は岡和田晃、阿利浜秀明、待兼音二郎、田井陽平という面々になります。パトロンNPCの卓越した技能の数々を、是非あなたの目でご確認あれ!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG オールド・ワールドのパトロンたち』
ウォーハンマーRPGの冒険を彩る強力な後援者NPC
発売日:2025年11月
価格:700円(+税) *PDF版ダウンロード販売のみ
・コノス
https://conos.jp/product/wh_old-world-patrons_pdf/?__cf_chl_rt_tk=57x187xkIAF0UQ1dV79gbxz7coIaLT3WVBZpMY7C2EQ-1771418371-1.0.1.1-7xp7XaONXXLSBKsv1n5_YWvK1aYQfaVnbN3nkMEkvgk
・DLsite
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ01509965.html/?utm_medium=affiliate&utm_campaign=sns_link&utm_content=RJ01509965&utm_source=hobbyjapan.co.jp%2F
『ウォーハンマーRPG』ホビージャパン公式サイト
https://hobbyjapan.co.jp/whrpg/
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4775(2026年2月18日)
FT書房作品オンリーコンベンション・レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT書房作品オンリーコンベンション・レポート
けいねむ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんにちは、モンスター!モンスター!TRPGファンのけいねむです。
去る9月28日(日)に名古屋市中村区で開催された「FT書房作品オンリーコンベンション」(以下、FTコン)の主催者兼 GM を務めました。本稿では当日の流れを振り返りつつ、その内容と今後の予定を皆様に共有したいと思います。また、次回の開催予定等についても本稿末にてお知らせしたいと思います。
■FTコン開催までの経緯
本コンベンションはもともと、6月1日に開催された「モンスター!モンスター!TRPGオンリーコンベンション」(以下M!M!コン)の第二回として企画いたしました。実は第一回M!M!コン開催直後から第二回の企画自体はできあがっており、M!M!コン終了直後に杉本=ヨハネさんにゲスト参加を打診、中山将平さんをゲストに加え第2回M!M!コンとして企画が始動しました。コンベンションで『ローグライクハーフ』も取り扱おうと検討を行って各所に相談をさせていただいておりましたが、そのうちの一人、天狗ろむさんにコンベンション運営にご参加いただけることとなり、名前を「FT書房作品オンリーコンベンション」と改めて開催することとなりました。
■コンベンション概要
開催日程:2025年9月28日(日)
会場:愛知県名古屋市中村区 椿町 19-7 チサンマンション椿町 901号室
開催時間:10時00分〜17時00分予定
プレイヤー定員:16名 予約制
参加費:2000円
主催:トロール洞(代表:けいねむ)
・会場タイムスケジュール予定
10:00 開場・ルール講習会/10:30 開会式/11:00 セッション開始/12:00 −12:45 昼食&物販/16:00 GM&ゲストトーク
■卓紹介
A卓 M!M!TRPG 定員4名 GМ:けいねむ卓
シナリオ: 『Battele With Lamasthu』
ある日、邪神ラマシュトゥの領域近くへ哨戒任務に出ていたテン=メアが赤ちゃんを拾ってきた!その赤ちゃんがエヂプトランドとラマシュトゥの戦争のきっかけになるとは誰も予想していなかった……。猫の女神セクメトの傭兵として、一癖も二癖もあるセクメト軍の重臣たちと共に、城塞都市エレゴンティスを邪神ラマシュトゥの手から防衛する戦略シナリオです。
B卓 M!M!TRPG 定員4名 GM:K-SAN卓
シナリオ:『VS(バーサス) 魔法帝国カザン』
「私の名はレロトラーの娘オリガ。ズィムララは狙われている」
ポータルから飛び出してきた女性を助けた君たちに告げられたのは異世界ドラゴン大陸からの侵略。追手ならびにオリガが持ち込んだ魔法の品物を使い、知恵と勇気、カオスファクターを武器に立ち向かえ!
C卓 M!M!TRPG 定員4名 GM:ホーリーえっくす卓
シナリオ:『雪原の白氷城』
一年に一度、冬至の日だけに雪原に現れる白氷城。なぜか冬至の日を過ぎても消えぬ城を舞台に、若き竜が、神の血をひく巨人が、満たされぬ不死者が、力を欲する悪魔が、集う。強力な種族での冒険になります。ハンドアウト有り。
D卓 RLH 定員2名 GM:水波流卓
シナリオ:『フーウェイキャンペーン』
蛮族都市フーウェイを舞台にした水波流のシナリオ『常闇の伴侶』→『名付けられるべきではないもの』→『汝、獣となれ人となれ』(新作)を、時間の許す限り連続でプレイします。フーウェイ独自のキャラクターを作成して、ロールプレイを楽しみましょう!
E卓 RLH 定員2名 GM:天狗ろむ卓
シナリオ:『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』
GM自身がコンベンション初参加のため、ほぼほぼ見学卓です。
PLさんは女性のみとさせていただき(GMも女性です)、諸事情で開場時間に間に合わない方も、11時〜16時までの間で自由にご参加いただけます。
(途中参加、途中離脱も可能です。GMは最後までいます)。
GMの自作シナリオを持っていきます。もしPLさんが遊びたい・気になるシナリオがありましたら、そちらをそれぞれ1人プレイで一緒に遊んでみる試みをする予定です。
コンベンション、気になるけど勇気が……という方、一緒に「冒険」してみませんか!
■来場者への配布物:(作者敬称略)
M!M!TRPG関連
・Steve.S.Crompton著/岡和田晃訳『First Meeting』 ・モンスター!モンスター!TRPGルールサマリー・プレイヤー種族カタログ・キャラクターシート・冒険点記録シート・エヂプトステッカー
・ソロアドベンチャー『双界の守り人―エーテル・ドラゴンを撃退せよ―』(天狗ろむ作)
―今回、けいねむ卓『Battle With Lamasthu』の卓資料としてシナリオ付属の小説『First Meeting』を翻訳・配布の許可を西村彰平ことさくべたのちちさんと共にスティーブ・クロンプトンさんに取った際に「せっかくだから来場者全員に配ってシナリオのプロモーションとしては?」というお話になりまして、杉本=ヨハネさん、岡和田晃さんに確認したところ、私の翻訳を下訳として岡和田晃さんに上訳をいただけることとなり来場者の方全員に配布となりました。また、この際スティーブ・クロンプトンさんより日本のM!M!TRPGファンへの原作者からのメッセージをいただき、会場にて読み上げさせていただきました。
ローグライフハーフ関連
・ルールサマリー(成田砂男作)・公式・ファンメイドシナリオ一覧
・FTコン参加証・ルーズリーフ三種一枚ずつ
・FTコン書き下ろしd33シナリオ『双界の守り人―裂界龍を撃退せよ―』
■各卓のプレイの様子(セッション終了後のGMトーク&来場者アンケートより要約)
・けいねむ卓
GMより:このシナリオはセクメト側、ラマシュトゥ側両方でプレイ出来て、既にトロール洞のオンラインセッションでラマシュトゥ側をプレイしていましたが、今回はセクメト側で、完全勝利とはいきませんでしたがPLの皆様から非常に独創的なアイデア(ソロバン投げてボス倒したり…)が出ていい感じな結末になったと思います。
PLより:事前の情報共有やPC作成相談が丁寧で、安心してプレイに集中できました。一方で決断や相談に時間を要し、反省点も残りました。シナリオは内容が濃く時間配分が難しかったものの、緊張感のある展開を楽しめました。発想力で不利を覆すM!M!らしい魅力を体験でき、古典的な動的プレイにも挑戦してみたくなりました。NPCの設定がもう少し明らかであれば、より工夫の余地があったと感じますが、全体として非常に充実した卓でした。
・K-SAN卓
GMより:今回のシナリオのコンセプトとして、人間のPCとは半歩ずれた「PCがモンスターでのプレイとは?」というところを体験してほしい所がありました。シナリオの意図を汲んでいただいたプレイヤーさんに「今回はいつもと違って楽しかった」とのお言葉をいただいて感無量でした。
PLより:開催ありがとうございました。Kさんの巧みなマスタリングと、プレイヤー同士が協力して解決へ導かれる構成が印象的でした。久しぶりにオフラインでM!M!を遊べたことも嬉しく、GMの配慮や自由度の高い進行で安心して楽しめました。知力の高いキャラクターによる情報戦や、作戦が成功したときの一体感も魅力的で、単なる力比べに終わらない多彩な戦闘を満喫できました。全体を通して非常に満足度の高い卓で、参加して本当に良かったです。
・ホーリーえっくす卓
GMより:今回は「ちょっと強力なモンスターを使ってみよう」という意図を込めたシナリオで、最序盤にMR500のモンスター二匹と戦闘になって驚かれましたが、無事それらが1ターンで消滅させられました。もう少しでダメージ2000点も見えましたが、それには届かず、そこだけが心残りでした。PCの個性も非常に強く、大変満足いくセッションが出来ました。
PLより:ホーリーえっくすGMの迅速で丁寧なマスタリングにより、自由にのびのびとプレイできました。個性豊かなモンスターたち―優しい巨人、ネイル命のギャルドラゴン、腹に一物あるアンデッド、そして行動の先陣を切るデーモン―による多彩な掛け合いが印象的で、強化魔法による2000点超えの大ダメージなど迫力ある戦闘も楽しめました。対立要素を含む展開や普段触れない種族での体験も新鮮で、最終的に全員が円満に目的を果たせたことが嬉しかったです。細かな反省もありつつ、笑いと熱気に満ちた満足度の高いセッションでした。
・水波流卓
GMより:せっかくの複数人プレイですので、あえてキャラクターの設定や出来事などをランダムで決めて、その結果をPLとGMで話し合ってそれから冒険に出る形を取りました。すごく楽しかったです。当初、ローグライクハーフなのであっという間に終わってしまうと心配していましたが、キャラクター創作に時間をたっぷり取ったこともあり、d66シナリオの途中で時間切れとなりました。キャンペーンのシナリオはPLに全てお渡ししておりましたので、続きは一人で、という形になりました。ローグライクハーフの新しい遊び方を私自身知ったな、と思い大変良かったです。
PLより:ローグライクハーフを複数人で遊ぶのは初めてで、ソロとは異なるテンポや時間配分の難しさを実感しつつも、その経験が良い学びになりました。ランダム作成による意外性のあるキャラ設定も新鮮で、自分では思いつかない展開を楽しめました。さらに、憧れの作品の作者本人がGMを務めるという夢のような企画で、作品に込められた意図を直接感じ、作者から話を聞けたことが何よりの喜びでした。ファンとしてもプレイヤーとしても大満足のセッションでした。
・天狗ろむ卓
GMより:初GMで心配もありましたが、当日はPLのお二人のお陰で楽しくGMする事が出来ました。「せーの!」で3人同時に振ったダイスが全員クリティカル(出目6)だった時がかなり盛り上がりました!オフでセッションする醍醐味を沢山感じさせて頂きました。ありがとうございました!
PLより:女性限定卓という安心できる環境の中で、自然体で楽しくプレイできました。事前に知っている方もいて和やかな雰囲気が生まれ、天狗ろむさんの丁寧で練り込まれた準備と的確な進行により、最後まで心地よい時間を過ごせました。時間の都合で完走はできなかったものの、温かく充実した素晴らしいセッションでした。
■当日の四方山話
・ゲストトークの際の参加者の質問により「竜鍵諸島」の読みを(りゅうけん)派と(りゅうかぎ)派と読む派閥に分かれることが明らかになりました。
・後述する会場の広さの問題により、杉本=ヨハネさんの座席がFT書房物販ブース裏の押し入れ内になってしまいました。しかし、杉本さんご自身はまんざら悪くもなかったご様子でした……?
■良かった点(アンケートより抜粋)
・初の ローグライクハーフの多人数プレイを出来た。
・駅から近くアクセス良好だった。
・時間配分がちょうどよかった。
・なかなか手に入らないFT書房作品を購入出来た。
・お土産が豪華だった。
■課題点・次回での改善策
今回の課題点として、参加者の方の多くからご指摘を頂いた課題点が二つあります。
▽会場が狭く、トイレが一つしかなかった。
実は、本会場はプレイヤー募集開始前日に急遽変更を行った結果の会場でして、この課題点はある程度覚悟をしていました。本来予約した会場の下見に行った際、内部の構造上、椅子のみでないと最大収容人数の24名が入らないことが判明し、主催者であるけいねむの一存により急遽会場を変更しました。また、ほとんどの名古屋駅周辺の貸し会議室は下見に実費が発生し、複数回下見を行うことはさらに参加費・主催者自己負担を増大させることになり、下見が行えませんでした。次回以降、来場者&スタッフ&ゲストの合計人数の1.5倍の収容人数を目安に会場を選定、またトイレ等周辺設備も必ず吟味を行って会場を決めたいと思います。
▽主催者自己負担の肥大化
主催の「トロール洞」ではポリシーとして営利活動を禁止しており、今回のFTコンもある程度は赤字になるよう想定して計画を致しました。しかし、トロール洞にて収支の公表を行った結果、あまりにも主催者の持ち出しが多すぎ、継続的なイベント続行が不可能ではないか?とのご指摘をいくつか受けました。
今回は上記事情もあり、必要以上に会場費やその他費用もかかってしまった印象があるので、次回以降、費用削減を優先目的にしたいと思っています。
■おわりに
FT書房作品オンリーコンベンションはアンケート回答率100%、そして大変ありがたいことにアンケートにて9割以上の方に「また是非参加したい」と仰っていただけました。総評すると、FTコンは会場・会場設備などの不満点を多々残しましたが、それを上回る満足度を来場者に提供することが出来て、概ね成功した、と私は結論付けたいです。また不満点の全ては会場選定・予算配分に依るもので、主催者である私けいねむが責を負うものです。他の運営スタッフ、GM、ゲストの皆様には素晴らしいコンテンツ、素晴らしい仕事を提供していただけたと感じています。
■次回日程とおしらせ
第二回「FT書房作品オンリーコンベンション」の開催やその日程についてはゲストトークの際に中山将平さんより質問がありました、当日は「年末年始を目標に開催したい」と(クリティカルな誘導により?)お答えしたものの、杉本=ヨハネさんと改めて時期を検討した結果、2026年4月以降、初夏の辺りに行うのが良いのではないか?というお話になりました。開催都市については現行の名古屋の他、京都で行う案もあり、来年以降お知らせができるかと思います。今回の課題点をクリアできるよう慎重に計画を立案したいと思っています。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4671(2025年11月6日)
FT書房作品オンリーコンベンション・レポート
けいねむ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんにちは、モンスター!モンスター!TRPGファンのけいねむです。
去る9月28日(日)に名古屋市中村区で開催された「FT書房作品オンリーコンベンション」(以下、FTコン)の主催者兼 GM を務めました。本稿では当日の流れを振り返りつつ、その内容と今後の予定を皆様に共有したいと思います。また、次回の開催予定等についても本稿末にてお知らせしたいと思います。
■FTコン開催までの経緯
本コンベンションはもともと、6月1日に開催された「モンスター!モンスター!TRPGオンリーコンベンション」(以下M!M!コン)の第二回として企画いたしました。実は第一回M!M!コン開催直後から第二回の企画自体はできあがっており、M!M!コン終了直後に杉本=ヨハネさんにゲスト参加を打診、中山将平さんをゲストに加え第2回M!M!コンとして企画が始動しました。コンベンションで『ローグライクハーフ』も取り扱おうと検討を行って各所に相談をさせていただいておりましたが、そのうちの一人、天狗ろむさんにコンベンション運営にご参加いただけることとなり、名前を「FT書房作品オンリーコンベンション」と改めて開催することとなりました。
■コンベンション概要
開催日程:2025年9月28日(日)
会場:愛知県名古屋市中村区 椿町 19-7 チサンマンション椿町 901号室
開催時間:10時00分〜17時00分予定
プレイヤー定員:16名 予約制
参加費:2000円
主催:トロール洞(代表:けいねむ)
・会場タイムスケジュール予定
10:00 開場・ルール講習会/10:30 開会式/11:00 セッション開始/12:00 −12:45 昼食&物販/16:00 GM&ゲストトーク
■卓紹介
A卓 M!M!TRPG 定員4名 GМ:けいねむ卓
シナリオ: 『Battele With Lamasthu』
ある日、邪神ラマシュトゥの領域近くへ哨戒任務に出ていたテン=メアが赤ちゃんを拾ってきた!その赤ちゃんがエヂプトランドとラマシュトゥの戦争のきっかけになるとは誰も予想していなかった……。猫の女神セクメトの傭兵として、一癖も二癖もあるセクメト軍の重臣たちと共に、城塞都市エレゴンティスを邪神ラマシュトゥの手から防衛する戦略シナリオです。
B卓 M!M!TRPG 定員4名 GM:K-SAN卓
シナリオ:『VS(バーサス) 魔法帝国カザン』
「私の名はレロトラーの娘オリガ。ズィムララは狙われている」
ポータルから飛び出してきた女性を助けた君たちに告げられたのは異世界ドラゴン大陸からの侵略。追手ならびにオリガが持ち込んだ魔法の品物を使い、知恵と勇気、カオスファクターを武器に立ち向かえ!
C卓 M!M!TRPG 定員4名 GM:ホーリーえっくす卓
シナリオ:『雪原の白氷城』
一年に一度、冬至の日だけに雪原に現れる白氷城。なぜか冬至の日を過ぎても消えぬ城を舞台に、若き竜が、神の血をひく巨人が、満たされぬ不死者が、力を欲する悪魔が、集う。強力な種族での冒険になります。ハンドアウト有り。
D卓 RLH 定員2名 GM:水波流卓
シナリオ:『フーウェイキャンペーン』
蛮族都市フーウェイを舞台にした水波流のシナリオ『常闇の伴侶』→『名付けられるべきではないもの』→『汝、獣となれ人となれ』(新作)を、時間の許す限り連続でプレイします。フーウェイ独自のキャラクターを作成して、ロールプレイを楽しみましょう!
E卓 RLH 定員2名 GM:天狗ろむ卓
シナリオ:『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』
GM自身がコンベンション初参加のため、ほぼほぼ見学卓です。
PLさんは女性のみとさせていただき(GMも女性です)、諸事情で開場時間に間に合わない方も、11時〜16時までの間で自由にご参加いただけます。
(途中参加、途中離脱も可能です。GMは最後までいます)。
GMの自作シナリオを持っていきます。もしPLさんが遊びたい・気になるシナリオがありましたら、そちらをそれぞれ1人プレイで一緒に遊んでみる試みをする予定です。
コンベンション、気になるけど勇気が……という方、一緒に「冒険」してみませんか!
■来場者への配布物:(作者敬称略)
M!M!TRPG関連
・Steve.S.Crompton著/岡和田晃訳『First Meeting』 ・モンスター!モンスター!TRPGルールサマリー・プレイヤー種族カタログ・キャラクターシート・冒険点記録シート・エヂプトステッカー
・ソロアドベンチャー『双界の守り人―エーテル・ドラゴンを撃退せよ―』(天狗ろむ作)
―今回、けいねむ卓『Battle With Lamasthu』の卓資料としてシナリオ付属の小説『First Meeting』を翻訳・配布の許可を西村彰平ことさくべたのちちさんと共にスティーブ・クロンプトンさんに取った際に「せっかくだから来場者全員に配ってシナリオのプロモーションとしては?」というお話になりまして、杉本=ヨハネさん、岡和田晃さんに確認したところ、私の翻訳を下訳として岡和田晃さんに上訳をいただけることとなり来場者の方全員に配布となりました。また、この際スティーブ・クロンプトンさんより日本のM!M!TRPGファンへの原作者からのメッセージをいただき、会場にて読み上げさせていただきました。
ローグライフハーフ関連
・ルールサマリー(成田砂男作)・公式・ファンメイドシナリオ一覧
・FTコン参加証・ルーズリーフ三種一枚ずつ
・FTコン書き下ろしd33シナリオ『双界の守り人―裂界龍を撃退せよ―』
■各卓のプレイの様子(セッション終了後のGMトーク&来場者アンケートより要約)
・けいねむ卓
GMより:このシナリオはセクメト側、ラマシュトゥ側両方でプレイ出来て、既にトロール洞のオンラインセッションでラマシュトゥ側をプレイしていましたが、今回はセクメト側で、完全勝利とはいきませんでしたがPLの皆様から非常に独創的なアイデア(ソロバン投げてボス倒したり…)が出ていい感じな結末になったと思います。
PLより:事前の情報共有やPC作成相談が丁寧で、安心してプレイに集中できました。一方で決断や相談に時間を要し、反省点も残りました。シナリオは内容が濃く時間配分が難しかったものの、緊張感のある展開を楽しめました。発想力で不利を覆すM!M!らしい魅力を体験でき、古典的な動的プレイにも挑戦してみたくなりました。NPCの設定がもう少し明らかであれば、より工夫の余地があったと感じますが、全体として非常に充実した卓でした。
・K-SAN卓
GMより:今回のシナリオのコンセプトとして、人間のPCとは半歩ずれた「PCがモンスターでのプレイとは?」というところを体験してほしい所がありました。シナリオの意図を汲んでいただいたプレイヤーさんに「今回はいつもと違って楽しかった」とのお言葉をいただいて感無量でした。
PLより:開催ありがとうございました。Kさんの巧みなマスタリングと、プレイヤー同士が協力して解決へ導かれる構成が印象的でした。久しぶりにオフラインでM!M!を遊べたことも嬉しく、GMの配慮や自由度の高い進行で安心して楽しめました。知力の高いキャラクターによる情報戦や、作戦が成功したときの一体感も魅力的で、単なる力比べに終わらない多彩な戦闘を満喫できました。全体を通して非常に満足度の高い卓で、参加して本当に良かったです。
・ホーリーえっくす卓
GMより:今回は「ちょっと強力なモンスターを使ってみよう」という意図を込めたシナリオで、最序盤にMR500のモンスター二匹と戦闘になって驚かれましたが、無事それらが1ターンで消滅させられました。もう少しでダメージ2000点も見えましたが、それには届かず、そこだけが心残りでした。PCの個性も非常に強く、大変満足いくセッションが出来ました。
PLより:ホーリーえっくすGMの迅速で丁寧なマスタリングにより、自由にのびのびとプレイできました。個性豊かなモンスターたち―優しい巨人、ネイル命のギャルドラゴン、腹に一物あるアンデッド、そして行動の先陣を切るデーモン―による多彩な掛け合いが印象的で、強化魔法による2000点超えの大ダメージなど迫力ある戦闘も楽しめました。対立要素を含む展開や普段触れない種族での体験も新鮮で、最終的に全員が円満に目的を果たせたことが嬉しかったです。細かな反省もありつつ、笑いと熱気に満ちた満足度の高いセッションでした。
・水波流卓
GMより:せっかくの複数人プレイですので、あえてキャラクターの設定や出来事などをランダムで決めて、その結果をPLとGMで話し合ってそれから冒険に出る形を取りました。すごく楽しかったです。当初、ローグライクハーフなのであっという間に終わってしまうと心配していましたが、キャラクター創作に時間をたっぷり取ったこともあり、d66シナリオの途中で時間切れとなりました。キャンペーンのシナリオはPLに全てお渡ししておりましたので、続きは一人で、という形になりました。ローグライクハーフの新しい遊び方を私自身知ったな、と思い大変良かったです。
PLより:ローグライクハーフを複数人で遊ぶのは初めてで、ソロとは異なるテンポや時間配分の難しさを実感しつつも、その経験が良い学びになりました。ランダム作成による意外性のあるキャラ設定も新鮮で、自分では思いつかない展開を楽しめました。さらに、憧れの作品の作者本人がGMを務めるという夢のような企画で、作品に込められた意図を直接感じ、作者から話を聞けたことが何よりの喜びでした。ファンとしてもプレイヤーとしても大満足のセッションでした。
・天狗ろむ卓
GMより:初GMで心配もありましたが、当日はPLのお二人のお陰で楽しくGMする事が出来ました。「せーの!」で3人同時に振ったダイスが全員クリティカル(出目6)だった時がかなり盛り上がりました!オフでセッションする醍醐味を沢山感じさせて頂きました。ありがとうございました!
PLより:女性限定卓という安心できる環境の中で、自然体で楽しくプレイできました。事前に知っている方もいて和やかな雰囲気が生まれ、天狗ろむさんの丁寧で練り込まれた準備と的確な進行により、最後まで心地よい時間を過ごせました。時間の都合で完走はできなかったものの、温かく充実した素晴らしいセッションでした。
■当日の四方山話
・ゲストトークの際の参加者の質問により「竜鍵諸島」の読みを(りゅうけん)派と(りゅうかぎ)派と読む派閥に分かれることが明らかになりました。
・後述する会場の広さの問題により、杉本=ヨハネさんの座席がFT書房物販ブース裏の押し入れ内になってしまいました。しかし、杉本さんご自身はまんざら悪くもなかったご様子でした……?
■良かった点(アンケートより抜粋)
・初の ローグライクハーフの多人数プレイを出来た。
・駅から近くアクセス良好だった。
・時間配分がちょうどよかった。
・なかなか手に入らないFT書房作品を購入出来た。
・お土産が豪華だった。
■課題点・次回での改善策
今回の課題点として、参加者の方の多くからご指摘を頂いた課題点が二つあります。
▽会場が狭く、トイレが一つしかなかった。
実は、本会場はプレイヤー募集開始前日に急遽変更を行った結果の会場でして、この課題点はある程度覚悟をしていました。本来予約した会場の下見に行った際、内部の構造上、椅子のみでないと最大収容人数の24名が入らないことが判明し、主催者であるけいねむの一存により急遽会場を変更しました。また、ほとんどの名古屋駅周辺の貸し会議室は下見に実費が発生し、複数回下見を行うことはさらに参加費・主催者自己負担を増大させることになり、下見が行えませんでした。次回以降、来場者&スタッフ&ゲストの合計人数の1.5倍の収容人数を目安に会場を選定、またトイレ等周辺設備も必ず吟味を行って会場を決めたいと思います。
▽主催者自己負担の肥大化
主催の「トロール洞」ではポリシーとして営利活動を禁止しており、今回のFTコンもある程度は赤字になるよう想定して計画を致しました。しかし、トロール洞にて収支の公表を行った結果、あまりにも主催者の持ち出しが多すぎ、継続的なイベント続行が不可能ではないか?とのご指摘をいくつか受けました。
今回は上記事情もあり、必要以上に会場費やその他費用もかかってしまった印象があるので、次回以降、費用削減を優先目的にしたいと思っています。
■おわりに
FT書房作品オンリーコンベンションはアンケート回答率100%、そして大変ありがたいことにアンケートにて9割以上の方に「また是非参加したい」と仰っていただけました。総評すると、FTコンは会場・会場設備などの不満点を多々残しましたが、それを上回る満足度を来場者に提供することが出来て、概ね成功した、と私は結論付けたいです。また不満点の全ては会場選定・予算配分に依るもので、主催者である私けいねむが責を負うものです。他の運営スタッフ、GM、ゲストの皆様には素晴らしいコンテンツ、素晴らしい仕事を提供していただけたと感じています。
■次回日程とおしらせ
第二回「FT書房作品オンリーコンベンション」の開催やその日程についてはゲストトークの際に中山将平さんより質問がありました、当日は「年末年始を目標に開催したい」と(クリティカルな誘導により?)お答えしたものの、杉本=ヨハネさんと改めて時期を検討した結果、2026年4月以降、初夏の辺りに行うのが良いのではないか?というお話になりました。開催都市については現行の名古屋の他、京都で行う案もあり、来年以降お知らせができるかと思います。今回の課題点をクリアできるよう慎重に計画を立案したいと思っています。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4671(2025年11月6日)
2025年11月12日
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(5)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(5)
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
他のメディアとRPGを分かつもっとも大きな点の一つに、「プレイヤーが能動的かつ主体的に参加しなければならない」というポイントが挙げられます。もちろん、読書や映画鑑賞なども、能動的かつ主体的でありうるのですが、それは概ね解釈や感情移入のレベルにおいてのこと。RPGにおいては、よりコミットメントのあり方が具体的かつ明確でなければなりません。
子どもに限らず、不慣れな方とRPGをするとき、ここがもっとも大きな躓きの点になるかと思います。デジタルゲームの多くは、豪華なBGMやグラフィックが用意されていたり、あるいはチュートリアルが充実したりしていて、それと意識することなく、世界観に没入することができます。アナログゲームでも、ボードゲームやカードゲームの多くは処理が自動化されており、参加型の体験といっても「何をやるのか」はわかりやすい。どういう世界観なのかは、コンポーネントにしっかりと明記されています。
RPGに発想が近い、ナラティヴ系のカードゲームを見てみましょう。『キャット&チョコレート』は、イベントカードに明記されたアクシデントを、手持ちのアイテムカードをヒントにしつつ、なんとかこじつけて回避するという内容の作品で、アイテムカードを何枚使うかはランダムなのが面白い作品です。8歳の娘ともよく遊んでいますが、この作品は「日常編」、「幽霊屋敷編」など、コンセプトに応じたバリエーションが存在します。「日常編」には小学生にはピンと来ないシチュエーションが多かったからか、「怖い」と言いながら、むしろ「幽霊屋敷編」の方を好んで遊んでいました。
『ワンス・アポン・ア・タイム』ではどうでしょうか。美麗なイラストが添えられたカードを出していき、メルヘンのような話を紡いでいくゲームで、これはウラジーミル・プロップがまとめた魔法物語の構造分析を、そのまま落とし込んだような作品です。とにかくカード種類が豊富でヴィジュアル的なイメージから話を作り上げていくことができるので、こちらもすんなりとお話に入り込むことができます。
――それでは『甲竜伝説ヴィルガストRPG』の場合は?
こうした「自動化のための仕掛け」はありません。初出時の1992年は、ちょうどこの年の9月に『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』が発売され、中世風ファンタジーの世界観は共通言語としてすっかり浸透していました。ところが、娘の通っている小学校は、海外であるため全校生徒が30人ほどしかいないことを措いても、『ドラゴンクエスト』を知っている子どもすら数名しかおりません。
娘はいま、『ドラゴンクエストIII』のiOS版にすっかり夢中になっていて、これは娘が初めて、親が主導で進めるのではなく自分がメインで動かしてクリアできたコンピュータRPGなのですが、その話をしようとすると、同級生よりも先生たちの方が話は通じやすいのです。いまの小学校でもっとも遊ばれているゲームはダントツで『Minecraft』なのですね。
娘はむしろ、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』で遊んだようなシチュエーションが、『ドラゴンクエストIII』にも出てくることを後から発見して喜んでいるのです。ですから、プレイヤーの背景知識によって、「参加」が後押しされるという動機が持てないのです。TRPGの方が先、という意味では、一周回って黎明期のゲーマーたちと同種の体験をしていると言うことができるかもしれません。
最初はキャラクターメイキングを行い、武器や防具のリストを眺めるだけで楽しめていました。そのことが、ゲームの「引き」になっていたのです。何度もルールブックを眺めていると、では実際にシナリオを遊んでみたくなるのが人の常。
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』には砂漠のピラミッドを舞台にした立体ダンジョン・シナリオが1本、「村を守れ」「脱出!」というシチュエーションと地図にモンスターを添えた遭遇集のような簡易シナリオ(あるいはシナリオソースか?)が2本、収められています。娘はなんと、駄目だと言われているのに、こっそりとプレイ前に内容を読んでしまいました(!)。だからといって、興を削がれるわけではありません。「シナリオの内容を知っていること」を、世界観に馴染むための推進力へ変えていたのです。
これは危険なのではと思われる向きもあるでしょう。実際、SNSでは、事前にシナリオを読んできてしまうプレイヤーについての問題が何度も「炎上」しています。けれども、これは複数のプレイヤーを交えて、知っているプレイヤーが事前に内容を「ネタバレ」したり、自分だけが活躍しようと独りよがりなプレイをしたりしてしまうから問題なのです。1 on 1で遊び、とにかく世界観に親しむという段階では、大きな制約にはならないのです。
このあたりは、伏見健二さんと相沢美良さんの児童向けRPG『ラビットホール・ドロップス』や、『ブルーシンガーRPG』が参考になるかと思います。これらのゲームでは、シナリオアートと呼ばれるヴィジュアルマップがすでに用意されていて、マップには「ネタバレ」になるようなことも描き込まれているわけですが、デザイン上、そのことが問題にならないよう、思い切った割り切りが行なわれているのです。
子どもは同じ話を繰り返し聞きたがりますし、自分でも語りたがります。そこでは、「ネタバレ」したかといってインパクトを失うようなことはないのです。こうした反復の構造が強みであるのは、瀬田貞二『幼い子の文学』でも、るる語られていました。
むしろ問題になるのは集中力の維持、プレイ時間です。経験上、1時間以上のゲームセッションを小さい子どもと行うのは困難で、30分でも厳しいところ。1時間以上にRPGに堪えられるのは、小学校高学年以上のことが多いように思います。
私が子どもと『甲竜伝説ヴィルガストRPG』を遊ぶ際は、1回のセッションは30分ほどで終わるものとしていました。うち20分は、事前と事後のアイテム選定と成長作業です。うちの娘はこれが大好きで、自分が「参加している」「遊んでいる」という主体的な感覚を確認できるからのようですが、いざ実際のセッションは10分ほどで終わります。戦闘以外の行為判定は、基本的にすべて成功とし、2〜3種類のモンスターとの戦闘を交えて終わる、というもの。
最近では、イベント等で「1回の遭遇と前後のシチュエーションに特化してRPGを体験してもらう」10分卓というのが出現しています。自分でもプレイヤーで遊んだことがありました。正直、これでRPGの醍醐味を味わい尽くせるかというと、そんなことはありえないわけですが、それでも、集中が途切れる前にゲームを切り上げられるという点では学ぶべき点がありました。子どもはわずか10分程度のプレイ時間でも、他の遊びやテレビ、お人形なんかに、すぐに気を取られてしまいます。そのときは落ち着いて、またセッションに戻れるようにする。戻れなければその日は取りやめて、また後日再トライする――くらいの気持ちでないと保ちません。
私が子どもとプレイする際は、プリプレイとアフタープレイを子どもに委ね、かつキャンペーン・ゲーム形式にして連続したシナリオを遊んでヒキを作り、没入のための仕掛けを作ろうと腐心しています。
RPGを遊んでいて、「このセッションは何から何まで本当に楽しかった! すっかり夢中になってしまった」と掛け値無しに思えることはめったにありません。むしろ、「なんとかお話を崩壊させずに落とし所へ持って行けた。よくよく振り返ってみれば、そう悪くなかったかも」くらいのプレイ感であることがほとんどです(特に小学校・中学校の頃は)。「そう悪くなかったかも」と思え、心のどこかに引っかかりをおぼえるくらいのほうが、かえって温かみがあって長続きをする……。かような不思議なジレンマがRPGにはあるのです。娘にも、大人になってから、「あのときのゲームはそう悪くなかったな」と、あたたかく回想してもらえるようなセッションこそを目指しています。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」 No.4663(2025年10月29日)
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(5)
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
他のメディアとRPGを分かつもっとも大きな点の一つに、「プレイヤーが能動的かつ主体的に参加しなければならない」というポイントが挙げられます。もちろん、読書や映画鑑賞なども、能動的かつ主体的でありうるのですが、それは概ね解釈や感情移入のレベルにおいてのこと。RPGにおいては、よりコミットメントのあり方が具体的かつ明確でなければなりません。
子どもに限らず、不慣れな方とRPGをするとき、ここがもっとも大きな躓きの点になるかと思います。デジタルゲームの多くは、豪華なBGMやグラフィックが用意されていたり、あるいはチュートリアルが充実したりしていて、それと意識することなく、世界観に没入することができます。アナログゲームでも、ボードゲームやカードゲームの多くは処理が自動化されており、参加型の体験といっても「何をやるのか」はわかりやすい。どういう世界観なのかは、コンポーネントにしっかりと明記されています。
RPGに発想が近い、ナラティヴ系のカードゲームを見てみましょう。『キャット&チョコレート』は、イベントカードに明記されたアクシデントを、手持ちのアイテムカードをヒントにしつつ、なんとかこじつけて回避するという内容の作品で、アイテムカードを何枚使うかはランダムなのが面白い作品です。8歳の娘ともよく遊んでいますが、この作品は「日常編」、「幽霊屋敷編」など、コンセプトに応じたバリエーションが存在します。「日常編」には小学生にはピンと来ないシチュエーションが多かったからか、「怖い」と言いながら、むしろ「幽霊屋敷編」の方を好んで遊んでいました。
『ワンス・アポン・ア・タイム』ではどうでしょうか。美麗なイラストが添えられたカードを出していき、メルヘンのような話を紡いでいくゲームで、これはウラジーミル・プロップがまとめた魔法物語の構造分析を、そのまま落とし込んだような作品です。とにかくカード種類が豊富でヴィジュアル的なイメージから話を作り上げていくことができるので、こちらもすんなりとお話に入り込むことができます。
――それでは『甲竜伝説ヴィルガストRPG』の場合は?
こうした「自動化のための仕掛け」はありません。初出時の1992年は、ちょうどこの年の9月に『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』が発売され、中世風ファンタジーの世界観は共通言語としてすっかり浸透していました。ところが、娘の通っている小学校は、海外であるため全校生徒が30人ほどしかいないことを措いても、『ドラゴンクエスト』を知っている子どもすら数名しかおりません。
娘はいま、『ドラゴンクエストIII』のiOS版にすっかり夢中になっていて、これは娘が初めて、親が主導で進めるのではなく自分がメインで動かしてクリアできたコンピュータRPGなのですが、その話をしようとすると、同級生よりも先生たちの方が話は通じやすいのです。いまの小学校でもっとも遊ばれているゲームはダントツで『Minecraft』なのですね。
娘はむしろ、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』で遊んだようなシチュエーションが、『ドラゴンクエストIII』にも出てくることを後から発見して喜んでいるのです。ですから、プレイヤーの背景知識によって、「参加」が後押しされるという動機が持てないのです。TRPGの方が先、という意味では、一周回って黎明期のゲーマーたちと同種の体験をしていると言うことができるかもしれません。
最初はキャラクターメイキングを行い、武器や防具のリストを眺めるだけで楽しめていました。そのことが、ゲームの「引き」になっていたのです。何度もルールブックを眺めていると、では実際にシナリオを遊んでみたくなるのが人の常。
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』には砂漠のピラミッドを舞台にした立体ダンジョン・シナリオが1本、「村を守れ」「脱出!」というシチュエーションと地図にモンスターを添えた遭遇集のような簡易シナリオ(あるいはシナリオソースか?)が2本、収められています。娘はなんと、駄目だと言われているのに、こっそりとプレイ前に内容を読んでしまいました(!)。だからといって、興を削がれるわけではありません。「シナリオの内容を知っていること」を、世界観に馴染むための推進力へ変えていたのです。
これは危険なのではと思われる向きもあるでしょう。実際、SNSでは、事前にシナリオを読んできてしまうプレイヤーについての問題が何度も「炎上」しています。けれども、これは複数のプレイヤーを交えて、知っているプレイヤーが事前に内容を「ネタバレ」したり、自分だけが活躍しようと独りよがりなプレイをしたりしてしまうから問題なのです。1 on 1で遊び、とにかく世界観に親しむという段階では、大きな制約にはならないのです。
このあたりは、伏見健二さんと相沢美良さんの児童向けRPG『ラビットホール・ドロップス』や、『ブルーシンガーRPG』が参考になるかと思います。これらのゲームでは、シナリオアートと呼ばれるヴィジュアルマップがすでに用意されていて、マップには「ネタバレ」になるようなことも描き込まれているわけですが、デザイン上、そのことが問題にならないよう、思い切った割り切りが行なわれているのです。
子どもは同じ話を繰り返し聞きたがりますし、自分でも語りたがります。そこでは、「ネタバレ」したかといってインパクトを失うようなことはないのです。こうした反復の構造が強みであるのは、瀬田貞二『幼い子の文学』でも、るる語られていました。
むしろ問題になるのは集中力の維持、プレイ時間です。経験上、1時間以上のゲームセッションを小さい子どもと行うのは困難で、30分でも厳しいところ。1時間以上にRPGに堪えられるのは、小学校高学年以上のことが多いように思います。
私が子どもと『甲竜伝説ヴィルガストRPG』を遊ぶ際は、1回のセッションは30分ほどで終わるものとしていました。うち20分は、事前と事後のアイテム選定と成長作業です。うちの娘はこれが大好きで、自分が「参加している」「遊んでいる」という主体的な感覚を確認できるからのようですが、いざ実際のセッションは10分ほどで終わります。戦闘以外の行為判定は、基本的にすべて成功とし、2〜3種類のモンスターとの戦闘を交えて終わる、というもの。
最近では、イベント等で「1回の遭遇と前後のシチュエーションに特化してRPGを体験してもらう」10分卓というのが出現しています。自分でもプレイヤーで遊んだことがありました。正直、これでRPGの醍醐味を味わい尽くせるかというと、そんなことはありえないわけですが、それでも、集中が途切れる前にゲームを切り上げられるという点では学ぶべき点がありました。子どもはわずか10分程度のプレイ時間でも、他の遊びやテレビ、お人形なんかに、すぐに気を取られてしまいます。そのときは落ち着いて、またセッションに戻れるようにする。戻れなければその日は取りやめて、また後日再トライする――くらいの気持ちでないと保ちません。
私が子どもとプレイする際は、プリプレイとアフタープレイを子どもに委ね、かつキャンペーン・ゲーム形式にして連続したシナリオを遊んでヒキを作り、没入のための仕掛けを作ろうと腐心しています。
RPGを遊んでいて、「このセッションは何から何まで本当に楽しかった! すっかり夢中になってしまった」と掛け値無しに思えることはめったにありません。むしろ、「なんとかお話を崩壊させずに落とし所へ持って行けた。よくよく振り返ってみれば、そう悪くなかったかも」くらいのプレイ感であることがほとんどです(特に小学校・中学校の頃は)。「そう悪くなかったかも」と思え、心のどこかに引っかかりをおぼえるくらいのほうが、かえって温かみがあって長続きをする……。かような不思議なジレンマがRPGにはあるのです。娘にも、大人になってから、「あのときのゲームはそう悪くなかったな」と、あたたかく回想してもらえるようなセッションこそを目指しています。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」 No.4663(2025年10月29日)
2025年10月29日
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(4)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(4)
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』をファンブック的に読むのではなく、実際のプレイに用いるなら、まず躓くであろうポイントとして、キャラクター作成がうまく出来ない、ということを前回は取り上げました。
デザイナー・サイドの「こうしてほしい」というイメージは理解できるのです。けれども、数字が合わない。正確に解釈したら、思ったより弱くなってしまう。そんなときは、どう運用すればよいでしょう?
コアなゲーマーが集まるサークルなんかでは、不興を買ってしまう最たる要素の1つでしょう。けれども、大人しい子どもと1 on 1で遊ぶような場合は、「ルールの正確な解釈よりも、そのプレイヤーにとって満足のいく経験を提供する」ことが大事になります。
そもそもルールブックが複数の解釈が引き出せるものなら、「絶対に正しい」はありえない。あるとしたら、「プレイヤーを満足させること」が正しいわけで、その「正しさ」を他のゲーマーにとっての「正しさ」と比較する必要なんてないわけです。
そこで運用にあたっては、「最低ライン」を設けることにしました。つまり、数値計算がどうあれ、最低限のHPラインを想定し、そこより下回らない、という形で処理をしたのです。魔術師なら15、といった具合に。
選択の意味がなくなる? そうかもしれませんが、「選択の結果、どれを選んでも弱くなる」というジレンマから出られない方が問題ですので、このように処理をしました。
とりわけ、女性の魔術師の基本体力21、実際に計算すると7というのはブレも甚だしいので、中間を採ったという感じです。魔法はガンガン撃つことが想定されていると思うので、おそらくHP21の方に近いんでしょうね。
というのも、『ヴィルガストRPG』は判定にダイスを使わず、戦闘時にはHPの消費数をベット(賭け)し合って、勝利した方が武器に設定されたアクションポイント(AP)に応じたダメージを相手に与え、さらにHPを削ることができる、というルールになっています。この点、読者のポール・ブリッツさんから、さらに質問をいただきました。
(ポール・ブリッツさん)
お便り取り上げてくださってありがとうございます。
キャラ作成もそうですが、HPベット方式の戦闘も悩んでいるところで、友人と模擬戦をやったとき、相手の全力の攻撃(ベット上限乗せ)を、こちらが全力で受けた(ベット0)とき、その一撃だけで勝負が決まってしまった(そこから先はどのような戦術を行っても防御した側が負ける)、となってしまい、これはどうなのか、と。ルールの読み間違いかもしれませんが……。
自分はこのHPベット方式というもののアイデア自体は、日本の時代小説なんかによくある「詰め将棋のように偶然性が働かない実力のみの斬り合い」のルールとしては最高のひとつだと思うのですが、「読みと配分」のバランスがいまひとつというかふたつみっつくらいに未消化ではないかとしか思えません。
そこもどうやってGMしていらしたのかをぜひお聞きしたいのです。
――というお便りでした。ベットで最適解が決まってしまう、というのはよくわかる話で、そういうパターンに陥ってしまうことも、セッション内ではよくあります。『ヴィルガストRPG』は 1 on 1ではなく多人数のプレイヤーを想定しているRPGなので、敵の種別や特殊攻撃持ちの敵をバラけさせるなどすれば、最適解への固定化、というパターンを付き崩せると思います。
ベット自体はよいアイデアで、後に別のシステムでも採用されています。たとえば『ヒーローウォーズ』がそうですね。こちらは、グローランサ世界を扱うナラティヴ系のはしりとも言うべき作品で、キャラクターメイキングを100Word(日本語では200字)の作文で行うというユニークなルールになっていましたが、基幹となるルールを単純化することで、「語り」を疎外しないことが目論まれているのでしょう。
『ヴィルガストRPG』には汎用行為判定にあたるルールがありません。そこは自動成功で進めてしまって、プレイヤーたちに「成功体験」を与えてもよい、という話なのだと解釈しています。ナラティヴRPGのようにプレイしてしまう、ということです。子どもはとにかく、ふだんは大人たちがこしらえた不条理さに囲まれて窮屈な思いをしていますから、ゲーム世界で自由に羽根を広げられるだけで面白いようなのです。
子どもは最適解を発見したら、ひたすらそのパターンを繰り返そうとします。それはそれでOK、飽きるまでそれに付き合おうじゃないか――そんなスタンスで、私はセッションを遂行するにようにしています。うちの子どもの場合、負けるのが嫌で、本来は同時に宣言すべきベットについて、相手の数値を聞いてから自分の数値を宣言する(つまり絶対に勝つ)なんてことも、平気で行ってくれたりします(笑)。これは1 on 1の親子プレイだからの光景かもしれません。だからこそ、それを受け止めて話を進めるようにしています。
かつて、プレイヤーの努力にもかかわらず、自動的にストーリーを進めてしまう独りよがりなGMのことを「吟遊詩人GM」と揶揄する向きがありました。しかし、子どもとうまく遊ぶうえでは、プレイヤー側のどんな「チート」も演出のうえだと受け止めて、うまく乗せて話を進めてあげる――そんな言葉本来の意味での「吟遊詩人GM」であることが、しばしば求められるというのが現実なのです。
というのは、子どもはしばしば、セッションそのものに集中できないのです。途中でTVを見始めたり、ゴロンと転がって別の本を読もうとしたりするのは日常茶飯事。自分自身のことを思い出しても、小学校・中学校時代にGMしたときは、途中から同級生がアニソンや流行歌を歌い始めるのに夢中になったり、いきなり立って鬼ごっこを始めたり、「ゲームに集中しない」のは普通でした。
これはボードゲーム(特にユーロゲーム)やデジタルゲームのように、プレイヤーが自動的に乗っかることのできるシステムが確立されているゲームではあまり起きない事態です。「まず、ゲームをさせる」こと。RPGはプレイヤーの主体的・能動的なコミットを求められる要素が、他のジャンルよりも飛躍的に大きく求められるのですから、とにかく「遊ばせる」のを優先することが大事になってくるのです。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4593(2025年8月20日)
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(4)
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』をファンブック的に読むのではなく、実際のプレイに用いるなら、まず躓くであろうポイントとして、キャラクター作成がうまく出来ない、ということを前回は取り上げました。
デザイナー・サイドの「こうしてほしい」というイメージは理解できるのです。けれども、数字が合わない。正確に解釈したら、思ったより弱くなってしまう。そんなときは、どう運用すればよいでしょう?
コアなゲーマーが集まるサークルなんかでは、不興を買ってしまう最たる要素の1つでしょう。けれども、大人しい子どもと1 on 1で遊ぶような場合は、「ルールの正確な解釈よりも、そのプレイヤーにとって満足のいく経験を提供する」ことが大事になります。
そもそもルールブックが複数の解釈が引き出せるものなら、「絶対に正しい」はありえない。あるとしたら、「プレイヤーを満足させること」が正しいわけで、その「正しさ」を他のゲーマーにとっての「正しさ」と比較する必要なんてないわけです。
そこで運用にあたっては、「最低ライン」を設けることにしました。つまり、数値計算がどうあれ、最低限のHPラインを想定し、そこより下回らない、という形で処理をしたのです。魔術師なら15、といった具合に。
選択の意味がなくなる? そうかもしれませんが、「選択の結果、どれを選んでも弱くなる」というジレンマから出られない方が問題ですので、このように処理をしました。
とりわけ、女性の魔術師の基本体力21、実際に計算すると7というのはブレも甚だしいので、中間を採ったという感じです。魔法はガンガン撃つことが想定されていると思うので、おそらくHP21の方に近いんでしょうね。
というのも、『ヴィルガストRPG』は判定にダイスを使わず、戦闘時にはHPの消費数をベット(賭け)し合って、勝利した方が武器に設定されたアクションポイント(AP)に応じたダメージを相手に与え、さらにHPを削ることができる、というルールになっています。この点、読者のポール・ブリッツさんから、さらに質問をいただきました。
(ポール・ブリッツさん)
お便り取り上げてくださってありがとうございます。
キャラ作成もそうですが、HPベット方式の戦闘も悩んでいるところで、友人と模擬戦をやったとき、相手の全力の攻撃(ベット上限乗せ)を、こちらが全力で受けた(ベット0)とき、その一撃だけで勝負が決まってしまった(そこから先はどのような戦術を行っても防御した側が負ける)、となってしまい、これはどうなのか、と。ルールの読み間違いかもしれませんが……。
自分はこのHPベット方式というもののアイデア自体は、日本の時代小説なんかによくある「詰め将棋のように偶然性が働かない実力のみの斬り合い」のルールとしては最高のひとつだと思うのですが、「読みと配分」のバランスがいまひとつというかふたつみっつくらいに未消化ではないかとしか思えません。
そこもどうやってGMしていらしたのかをぜひお聞きしたいのです。
――というお便りでした。ベットで最適解が決まってしまう、というのはよくわかる話で、そういうパターンに陥ってしまうことも、セッション内ではよくあります。『ヴィルガストRPG』は 1 on 1ではなく多人数のプレイヤーを想定しているRPGなので、敵の種別や特殊攻撃持ちの敵をバラけさせるなどすれば、最適解への固定化、というパターンを付き崩せると思います。
ベット自体はよいアイデアで、後に別のシステムでも採用されています。たとえば『ヒーローウォーズ』がそうですね。こちらは、グローランサ世界を扱うナラティヴ系のはしりとも言うべき作品で、キャラクターメイキングを100Word(日本語では200字)の作文で行うというユニークなルールになっていましたが、基幹となるルールを単純化することで、「語り」を疎外しないことが目論まれているのでしょう。
『ヴィルガストRPG』には汎用行為判定にあたるルールがありません。そこは自動成功で進めてしまって、プレイヤーたちに「成功体験」を与えてもよい、という話なのだと解釈しています。ナラティヴRPGのようにプレイしてしまう、ということです。子どもはとにかく、ふだんは大人たちがこしらえた不条理さに囲まれて窮屈な思いをしていますから、ゲーム世界で自由に羽根を広げられるだけで面白いようなのです。
子どもは最適解を発見したら、ひたすらそのパターンを繰り返そうとします。それはそれでOK、飽きるまでそれに付き合おうじゃないか――そんなスタンスで、私はセッションを遂行するにようにしています。うちの子どもの場合、負けるのが嫌で、本来は同時に宣言すべきベットについて、相手の数値を聞いてから自分の数値を宣言する(つまり絶対に勝つ)なんてことも、平気で行ってくれたりします(笑)。これは1 on 1の親子プレイだからの光景かもしれません。だからこそ、それを受け止めて話を進めるようにしています。
かつて、プレイヤーの努力にもかかわらず、自動的にストーリーを進めてしまう独りよがりなGMのことを「吟遊詩人GM」と揶揄する向きがありました。しかし、子どもとうまく遊ぶうえでは、プレイヤー側のどんな「チート」も演出のうえだと受け止めて、うまく乗せて話を進めてあげる――そんな言葉本来の意味での「吟遊詩人GM」であることが、しばしば求められるというのが現実なのです。
というのは、子どもはしばしば、セッションそのものに集中できないのです。途中でTVを見始めたり、ゴロンと転がって別の本を読もうとしたりするのは日常茶飯事。自分自身のことを思い出しても、小学校・中学校時代にGMしたときは、途中から同級生がアニソンや流行歌を歌い始めるのに夢中になったり、いきなり立って鬼ごっこを始めたり、「ゲームに集中しない」のは普通でした。
これはボードゲーム(特にユーロゲーム)やデジタルゲームのように、プレイヤーが自動的に乗っかることのできるシステムが確立されているゲームではあまり起きない事態です。「まず、ゲームをさせる」こと。RPGはプレイヤーの主体的・能動的なコミットを求められる要素が、他のジャンルよりも飛躍的に大きく求められるのですから、とにかく「遊ばせる」のを優先することが大事になってくるのです。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4593(2025年8月20日)
2025年09月06日
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.27
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.27
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
魔女が生き延びるためには、手段を選んではいられない。
とにかく頭を使うこと。素性を探ってくるものには、さりげなく呪いをかけること。
できるだけ、周囲の者も煙に巻いていかねばならない。
それだけではなく、古来からある魔力の伝統に、自らを同調させていけば――ほら、世の理(ことわり)を転倒させることができる。
くちゃくちゃと、あらかじめ用意したニガヨモギと豚の贓物の混ぜものを噛みながら、わたしは歩き、歩き、また歩いた。こうすれば誰でも――わたしを追うものであれ、そうでない第三者であれ――跡をたどることはできなくなる。
――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より
2025年8月に開催されたオンリーコンベンション合わせで、『ウォーハンマーRPG』の新しいサプリメント『血と茨』が発売になりました。これまで、多数のサプリメントに噛んできたパドレイグ・マーフィーがデザインした作品です。似非魔術師と魔女、つまり魔法諸学府に参加せず、いわば非合法で呪文を習得・行使する者らにスポットを当てた作品になっています。本作が“長躯の火葬者”ことグットフリート・スニグソン――皮肉なことに、帝国暦2513年、魔女と通じた疑いから火あぶりに処された魔狩人――の思い込みと偏見に満ちた語りによって構成されています。
PDFオンリーの作品ですが、そのぶん安価で入手でき、「魔女と似非魔術師のための24の新たな呪文」と銘打たれています。翻訳はホビージャパンの伏見義行さん。最近では『ファイナルファンタジーXIV TTRPG』のデザイン&ルールライティングで知られていますね。こちらに、私、見田航介さん、阿利浜秀明さん、田井陽平さん、待兼音二郎さんが総出で監修に入っています。
構成としては、先だって出ている『比類なく有益なスラサーラの呪文集』(ホビージャパン、邦訳2021年)に似ています。こちらは、エルフの至高魔術師スラサーラが厳選した八色の魔法体系の各呪文を紹介するということで、八大魔法諸学府に対応した内容になっています(翻訳:伏見義行、監修:岡和田晃、待兼音二郎)。
ただ、『血と茨』には、『比類なく有益なスラサーラの呪文集』には付属していなかったNPCと関連したシナリオソースも付属しており、ともすれば“追われ、狩られる側”として一辺倒になりがちな似非魔術師や魔女に、いっそうの深みを与えることに成功しています。
似非魔術師とは“祝福されし者”などと自称し、当局公認の魔法諸学府とはまったく別個に、自己流で魔法を習得して使おうとする者のこと。魔女に至っては、自らの力や正体を隠し、何らかの手段で魔法を行使する者らのことを指します。ただし、魔女は禍つ神々(ルイナス・パワーズ)を崇拝しているわけではなく、魔法そのものに関心があり、その由来には注意を向けません――そのことは魔狩人たち自身も、重々承知していることなのです。
こうした細部の設定の魅力が、『ウォーハンマーRPG』を他のRPGと一線を画すものとするだけの魅力を与えることを成功させています。第4版になって、似非魔術師は「似非魔術師見習い」→「似非魔術師」→「上級似非魔術師」→「似非大魔術師」、魔女は「呪い師」→「魔女」→「邪術師」→「黒魔術師」と、それぞれ4段階の成長をすることができるようになったわけで、これらのキャリアをプレイヤーとして遊んだり、ゲームマスターとしてシナリオに登場させたりする際には必携と言ってしかるべきでしょう。
似非魔術師の魔法は似非魔術、魔女の魔法は俗魔術と呼ばれ、いちおうの系統を構成しています。混沌と背中合わせであるにせよ、それそのものとは言い難く、古代の伝統に連なる神々の贈り物、というのが特徴的です。
まさに土着の迷信――そう形容したくなる魔法にあふれています。「悪意」の呪文は、周囲の雰囲気を悪くする空間を生み出すもの。「接骨」の魔法は骨折の治療。「禊」の魔法は呪いを解くもの。「施肥」の魔法は大地を豊穣なものとする魔法。「夢弄り」は悪夢を見させる魔法――といった具合に、ファイアーボールやアイスストームのような派手さとは無縁ながらも、地に足のついた呪文が、多数存在しています。
一方、俗魔術の方はどうなのでしょうか? こちらはもっと呪術的な性格が強く、「二枚舌の呪い」は対象に思ってもいないことを喋らせる呪いをかけるもの。「ロードストーン」は、犠牲者の血液と磁鉄鉱を利用し、相手の位置を探る現代のGPSめいた効能を得るもの。「血の契約」は、遵守しなければ負傷や疲労がより悲惨になる呪いを受ける契約を結ばされるもの。「痛みの瓶詰」は死の瞬間に受けるような苦痛を一時的に与えるもの。「迷い道」は、薬草と贓物の混合物を噛みながら歩いた術者の道のりを、後に通る者が正しく進めなくするという呪文……。
いかがでしょうか? 『ウォーハンマーRPG』のサプリメントではありますが、他のRPGにも取り入れたくなるような魅力たっぷりの呪文が揃い踏みで、創作のインスピレーションにもなるでしょう。
また、3体の精霊も準備されていますが、これも皮肉たっぷりなもの。1体、「骨取りモロック」と呼ばれる死と長引く傷の精霊は、他人を骨折させたり怪我をしやすくする呪いをかけられるが、とにかくスケールの小さな悪霊めいた感覚がコミカルで愛らしく(?)、それこそ藤子不二雄のコミックにも通じるユーモアを感じさせますね(AかFかは人によって意見が分かれるかと)。
NPCも3人、6本+αシナリオソースが用意されていますが、ここでは若き魔狩人のトール・イェーガーフントを紹介しましょう。彼はなんと、自身が“魔力の風”の影響を受けているため魔法使いを見分けられるのですが、そのことに気づいておらず、人一倍教条主義的な魔狩人として、師にあたるグットフリート・スニグソンを告発して火刑台に送ってしまうのです! なんとアツい設定なのでしょうか。
そうそう、豆知識もお伝えしておくと……NPCとシナリオソースの章は「綺麗と汚い」と監訳しましたが、原題は「FAIR AND FOUL」。シェイクスピアの『マクベス』の第1幕第1章、「綺麗は汚い、汚いは綺麗(Fair is foul, and foul is fair)」から、さりげなく引用されているわけですね。「FT新聞」でもゲームブックの文学性について興味深い議論が交わされてきましたが、『ウォーハンマーRPG』もまた、世界文学の伝統に連なるゲームなのだと、この機会に言い切ってしまいましょう。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG 血と茨』
魔女と似非魔術師のための24の新たな呪文
発売日:2025年8月
価格:700円(+税) *PDF版ダウンロード販売のみ
・コノス
https://conos.jp/product/wh_blood-and-thorns_pdf/
・DLsite
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ01444533.html/?utm_medium=affiliate&utm_campaign=sns_link&utm_content=RJ01444533&utm_source=hobbyjapan.co.jp%2F
初出:「FT新聞」No.4607(2025年9月3日)
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.27
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
魔女が生き延びるためには、手段を選んではいられない。
とにかく頭を使うこと。素性を探ってくるものには、さりげなく呪いをかけること。
できるだけ、周囲の者も煙に巻いていかねばならない。
それだけではなく、古来からある魔力の伝統に、自らを同調させていけば――ほら、世の理(ことわり)を転倒させることができる。
くちゃくちゃと、あらかじめ用意したニガヨモギと豚の贓物の混ぜものを噛みながら、わたしは歩き、歩き、また歩いた。こうすれば誰でも――わたしを追うものであれ、そうでない第三者であれ――跡をたどることはできなくなる。
――魔女レジーナが書き遺した手記「ありえざる遭遇」の章より
2025年8月に開催されたオンリーコンベンション合わせで、『ウォーハンマーRPG』の新しいサプリメント『血と茨』が発売になりました。これまで、多数のサプリメントに噛んできたパドレイグ・マーフィーがデザインした作品です。似非魔術師と魔女、つまり魔法諸学府に参加せず、いわば非合法で呪文を習得・行使する者らにスポットを当てた作品になっています。本作が“長躯の火葬者”ことグットフリート・スニグソン――皮肉なことに、帝国暦2513年、魔女と通じた疑いから火あぶりに処された魔狩人――の思い込みと偏見に満ちた語りによって構成されています。
PDFオンリーの作品ですが、そのぶん安価で入手でき、「魔女と似非魔術師のための24の新たな呪文」と銘打たれています。翻訳はホビージャパンの伏見義行さん。最近では『ファイナルファンタジーXIV TTRPG』のデザイン&ルールライティングで知られていますね。こちらに、私、見田航介さん、阿利浜秀明さん、田井陽平さん、待兼音二郎さんが総出で監修に入っています。
構成としては、先だって出ている『比類なく有益なスラサーラの呪文集』(ホビージャパン、邦訳2021年)に似ています。こちらは、エルフの至高魔術師スラサーラが厳選した八色の魔法体系の各呪文を紹介するということで、八大魔法諸学府に対応した内容になっています(翻訳:伏見義行、監修:岡和田晃、待兼音二郎)。
ただ、『血と茨』には、『比類なく有益なスラサーラの呪文集』には付属していなかったNPCと関連したシナリオソースも付属しており、ともすれば“追われ、狩られる側”として一辺倒になりがちな似非魔術師や魔女に、いっそうの深みを与えることに成功しています。
似非魔術師とは“祝福されし者”などと自称し、当局公認の魔法諸学府とはまったく別個に、自己流で魔法を習得して使おうとする者のこと。魔女に至っては、自らの力や正体を隠し、何らかの手段で魔法を行使する者らのことを指します。ただし、魔女は禍つ神々(ルイナス・パワーズ)を崇拝しているわけではなく、魔法そのものに関心があり、その由来には注意を向けません――そのことは魔狩人たち自身も、重々承知していることなのです。
こうした細部の設定の魅力が、『ウォーハンマーRPG』を他のRPGと一線を画すものとするだけの魅力を与えることを成功させています。第4版になって、似非魔術師は「似非魔術師見習い」→「似非魔術師」→「上級似非魔術師」→「似非大魔術師」、魔女は「呪い師」→「魔女」→「邪術師」→「黒魔術師」と、それぞれ4段階の成長をすることができるようになったわけで、これらのキャリアをプレイヤーとして遊んだり、ゲームマスターとしてシナリオに登場させたりする際には必携と言ってしかるべきでしょう。
似非魔術師の魔法は似非魔術、魔女の魔法は俗魔術と呼ばれ、いちおうの系統を構成しています。混沌と背中合わせであるにせよ、それそのものとは言い難く、古代の伝統に連なる神々の贈り物、というのが特徴的です。
まさに土着の迷信――そう形容したくなる魔法にあふれています。「悪意」の呪文は、周囲の雰囲気を悪くする空間を生み出すもの。「接骨」の魔法は骨折の治療。「禊」の魔法は呪いを解くもの。「施肥」の魔法は大地を豊穣なものとする魔法。「夢弄り」は悪夢を見させる魔法――といった具合に、ファイアーボールやアイスストームのような派手さとは無縁ながらも、地に足のついた呪文が、多数存在しています。
一方、俗魔術の方はどうなのでしょうか? こちらはもっと呪術的な性格が強く、「二枚舌の呪い」は対象に思ってもいないことを喋らせる呪いをかけるもの。「ロードストーン」は、犠牲者の血液と磁鉄鉱を利用し、相手の位置を探る現代のGPSめいた効能を得るもの。「血の契約」は、遵守しなければ負傷や疲労がより悲惨になる呪いを受ける契約を結ばされるもの。「痛みの瓶詰」は死の瞬間に受けるような苦痛を一時的に与えるもの。「迷い道」は、薬草と贓物の混合物を噛みながら歩いた術者の道のりを、後に通る者が正しく進めなくするという呪文……。
いかがでしょうか? 『ウォーハンマーRPG』のサプリメントではありますが、他のRPGにも取り入れたくなるような魅力たっぷりの呪文が揃い踏みで、創作のインスピレーションにもなるでしょう。
また、3体の精霊も準備されていますが、これも皮肉たっぷりなもの。1体、「骨取りモロック」と呼ばれる死と長引く傷の精霊は、他人を骨折させたり怪我をしやすくする呪いをかけられるが、とにかくスケールの小さな悪霊めいた感覚がコミカルで愛らしく(?)、それこそ藤子不二雄のコミックにも通じるユーモアを感じさせますね(AかFかは人によって意見が分かれるかと)。
NPCも3人、6本+αシナリオソースが用意されていますが、ここでは若き魔狩人のトール・イェーガーフントを紹介しましょう。彼はなんと、自身が“魔力の風”の影響を受けているため魔法使いを見分けられるのですが、そのことに気づいておらず、人一倍教条主義的な魔狩人として、師にあたるグットフリート・スニグソンを告発して火刑台に送ってしまうのです! なんとアツい設定なのでしょうか。
そうそう、豆知識もお伝えしておくと……NPCとシナリオソースの章は「綺麗と汚い」と監訳しましたが、原題は「FAIR AND FOUL」。シェイクスピアの『マクベス』の第1幕第1章、「綺麗は汚い、汚いは綺麗(Fair is foul, and foul is fair)」から、さりげなく引用されているわけですね。「FT新聞」でもゲームブックの文学性について興味深い議論が交わされてきましたが、『ウォーハンマーRPG』もまた、世界文学の伝統に連なるゲームなのだと、この機会に言い切ってしまいましょう。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『ウォーハンマーRPG 血と茨』
魔女と似非魔術師のための24の新たな呪文
発売日:2025年8月
価格:700円(+税) *PDF版ダウンロード販売のみ
・コノス
https://conos.jp/product/wh_blood-and-thorns_pdf/
・DLsite
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ01444533.html/?utm_medium=affiliate&utm_campaign=sns_link&utm_content=RJ01444533&utm_source=hobbyjapan.co.jp%2F
初出:「FT新聞」No.4607(2025年9月3日)


