2011年05月06日

「SFセミナー2011」での『エクリプス・フェイズ』紹介パネルは大成功!

―――――――――――――――――――――――――

「SFセミナー2011」での『エクリプス・フェイズ』紹介パネルは大成功!

 岡和田晃、蔵原大

Homepage | Eclipse Phase
※当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。※
―――――――――――――――――――――――――

 ● 去る2011年の5月3日〜4日にかけて、1980年より30年以上の歴史を有するサーコン(Serious and Constructive)系コンベンション「SFセミナー2011」が開催されました。こちらの合宿企画「新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』を語ろう」というパネルで、RPG『エクリプス・フェイズ』の世界観やSF的な見どころについてのプレゼンテーションを行いました。
 本会企画のみの参加者にも配布されるSFセミナー2011のパンフレットにも紹介文を記載いただいたうえ、『エクリプス・フェイズ』公式サイト(英語)でも紹介をいただいておりますので、ぜひご覧ください(http://eclipsephase.com/ep-japanese-science-fiction-seminar)。


Eclipse Phase Core Rulebook

Eclipse Phase Core Rulebook

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: October 13, 2009
  • メディア: Hardcover, Full Color




 ● 合宿企画のオープニングにおいて、150名あまりの参加者へ向けて、『エクリプス・フェイズ』デザイナーのロブ・ボイル(Rob Boyle)さまhttp://www.eclipsephase.com/rob-boyle-bio)からお寄せいただいた日本向け特別メッセージを披露いたしました。

I'm glad to see that there's growing interest in Japan for Eclipse Phase and that some of the ideas posed by the game's setting are provoking thought and discussion. We wanted to do more with EP than just produce a fun sci-fi game, we also wanted to present social and political issues posed by developing technologies that we thought were important. I've always thought EP would go well with Japan's forward-thinking culture and science fiction traditions, and I am excited about the prospects of working out a Japanese translation.(Rob Boyle)

 日本における『エクリプス・フェイズ』への関心が高まっていること、そして、このゲームの設定が生んだアイデアが思考を刺激し議論を呼んでいることがわかり、私は嬉しく思っています。私たちは、『エクリプス・フェイズ』を通じて、単に楽しいSFゲームを生み出す以上のことを成し遂げたいと思い、また、私たちが重要と考えたテクノロジーの発展によって引き起こされた社会的・政治的な問題を紹介したいとも思っていました。私は常に『エクリプス・フェイズ』が、先進的な考えを持つ日本の文化とサイエンス・フィクションの伝統に見合うものだと考えてきました。日本語に翻訳・紹介されるという見通しに、胸を躍らせています。(ロブ・ボイル)


 ● 今回のプレゼンテーションを行ったのは、岡和田晃、蔵原大、齋藤路恵の計三名です。紹介パネルには、20名あまりの方々にお越しいただきました。ありがとうございました。このパネルにて、初めて会話型RPGを知ったという方も5名ほどいらっしゃいました。また、「盤上の夜」(『原色の想像力』創元SF文庫所収)で第1回創元SF短編賞 山田正紀賞を受賞された作家の宮内悠介さまや、今年のSFセミナー参加者のうちで最年少、17歳(!)の参加者の方も当パネルを訪れて下さいました。

 ● ゲストとして、ジャック・ヨーヴィル(キム・ニューマン)の『ドラッケンフェルズ』や、会話型RPG『D&D』や『ウォーハンマーRPG』シリーズ等の翻訳で知られる翻訳家の待兼音二郎さまにお越しいただきました。

 ● パネル内にて、ロブ・ボイルさまよりお寄せいただいた、2葉の未公開SFアートを披露いたしました。

・最初のSFアートは、Leanne Buckleyhttp://leannebuckley.com/)さまの"Psycosurgery"。まもなく刊行される『エクリプス・フェイズ』の基本ルールブック三刷時の際に差し替えられたSFアートの一部です(三刷から、『エクリプス・フェイズ』基本ルールブックに入っているイラストは、すべてCreative Commonsが付記されたものになるということです)。
EP Core_230_Psychosurgery_Leanne Buckley_FINAL (1).jpg

・続くSFアートは、Zachary Gravesさま(http://www.zgraves.com/)による"Atlantica"。発売予定の"Panopticon"という本(サプリメント)に掲載予定のものです。これは、neo-cetaceans(クジラ型), neo-octopi(タコ型)など、海中生活に適応したモーフ(Morph)のハビタット(居住地)を描いたものになります。
Panopticon_8_Atlantica_ZachGraves_FINAL.jpg

 ● パネルの終了後には、希望者を募って、『エクリプス・フェイズ』の体験セッションを行ないました。深夜26:00スタートにも関わらず、たくさんの方にお越しいただき、感謝しています。体験セッションはキャラクター&ルール解説、実際のセッションと二部構成になっていましたが、キャラクター&ルール解説には、『神の目の小さな塵』で知られるSF作家ジェリー・パーネルの連載コラム「新・混沌の館にて」の翻訳企画を推進しておられる、翻訳家の林田陽子さまもご参加くださり、好評をいただきました

 ● パネル参加者には、『エクリプス・フェイズ』の設定を(Creative Commonsに基づき)使用したA4で8ページのオリジナル小説「衛星タイタンのある朝」(文:蔵原大&齋藤路恵、イラスト:小珠泰之介)が限定配布されました。

 ● その他、パネルの詳細は機を改めて報告させていただきます。今月発売の「SFマガジン」(早川書房)にも、簡単なレビューが掲載されることと思います。主催者の方、関係各位、参加者の皆さまに深く感謝いたします。

―――――――――――――――――――――――――
Bibliography: EclipsePhase-2nd.pdf, EclipsePhase_QuickStartRules.pdf, which all have been produced from Catalyst Game Labs and Posthuman Studios in 2009-10;, besides message by Rob Boyle, illustration "Psycosurgery" by Leanne Buckley, "Atlantica" by Zachary Graves.

※読者の方のご指摘により、一部記述を修正済です。この場を借りて感謝いたします。(201109/09)
posted by AGS at 15:10| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(2):現役研究者ブログの場合

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年―(2):現役研究者ブログの場合
 蔵原大

Homepage | Eclipse Phase
※当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。※
―――――――――――――――――――――――――

 SFゲーム『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase, http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html )は未来の太陽系社会を扱った作品ですが、その中で描かれているテクノロジーや社会情勢が今のわたし達を原点としているのは言うまでもありません。サイエンス・フィクションをさらに理解し、さらに楽しみたいのだとしたら、まず現実のサイエンスをさらに理解し、さらに楽しむという所から入るのも一つの手法ではないでしょうか。

 そこで今後は"『エクリプス・フェイズ』ゼロ年"という連載コラムを通じ、未来技術に関連しそうな研究成果・講演・セミナー等を随時ご紹介していきます。コラムで扱う内容は特定の分野に留まることなく、惑星科学、生命科学、歴史学、シリアスゲーム研究を始めとする複数の領域での先端研究を幅広く追っていく予定です。

※このあたりの話は5月3日の「SFセミナー2011」での『エクリプス・フェイズ』紹介パネル」でお伝えしました通りです:http://analoggamestudies.seesaa.net/article/199514106.html

 『エクリプス・フェイズ』ゼロ年の第二回では現役研究者のブログ、サイトをご紹介します。なお第一回「東京大学の場合」( http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198290624.html )を併せてご参照くださると、ありがたい次第です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【@.惑星科学のこと】

●The Great Magnet, the Earth
http://www.phy6.org/earthmag/demagint.htm (English Page)
●大いなる磁石、地球
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/stern-j/demagint_j.htm (Japanese Page)

地磁気の起源 : 地球核内の自励ダイナモ 地磁気や科学史を研究されていたデビッド P. スターン博士(Dr.David P. Stern)のサイトは「大いなる磁石、地球」として京都大学のサイトで邦訳公開されています。元の英文サイト"The Great Magnet, the Earth"も併せてお楽しみください。

 なぜ地球は磁気を発するのか、誰がその原理を解明したのか、地磁気はいつごろから利用され始めたのか、スターン博士による一連の解説記事はたいへん啓発させられます。

 ○『磁石論』http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/stern-j/DMGRev2_j.htm
 ○「地磁気の起源 : 地球核内の自励ダイナモ」http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/stern-j/dynamos2_j.htm
 ○「ギルバート以前に、磁石や方位磁針について知られていたこと」http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/stern-j/upto1600_j.htm

―――――
●Sasaki Takanori Online | Just another WordPress site
http://sasakitakanori.com/en/ (English Page)
●Sasaki Takanori Online | 惑星科学者@東工大
http://sasakitakanori.com/ (Japanese Page)

 地球惑星科学者の佐々木貴教氏のブログです。研究の一環として惑星の誕生・進化の研究動向をご紹介されているのが、なかなか参考になります( http://sasakitakanori.com/research )。

Sasaki Takanori Online | 惑星科学者@東工大

 なお、佐々木氏のブログでは明確にこう宣言されています。曰く「本サイトの内容、特に惑星科学に関する内容については、常に新しい情報・解釈が出てくる性格のものであるため、その信憑性については保証いたしません。昨日までの「常識」が今日から「非常識」になってしまうことも多々ある世界ですので、特定のサイトの情報を鵜呑みにすることは非常に危険です。これは本サイトのみならず、全てのサイトの内容に関して言えることです。」( http://sasakitakanori.com/policy )

 まことにごもっともです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【A.生命科学のこと】

●脳の世界:中部学院大学 三上章允
http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/index.html

 医学博士の三上章允氏が、ヒトをヒトたらしめる生体コンピュータ「脳」の機能をご紹介されています。ここでは研究や論文紹介もさりながら

 ○「霊長類の脳の外観」http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/01/index-01.html
 ○「神経細胞はいくつ」http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/10/index-10.html
 ○「脳の変化を体験する」http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/70/index-70.html
といったコラムの充実ぶりが(画像を含めて)秀逸です。

霊長類の脳の外観

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【B.歴史学のこと】

●源清流清 ―瀬畑源ブログ―
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/

 天皇制研究から始まって、御本人曰く「深入りしてしまった」公文書管理問題までを扱う歴史学者のブログです。日本政府の文書の何が公開され、何が非公開のままなのか、そしてそれをどう見極め、どう調査したらいのか、現行法の動向をおさえながらご説明されています。情報化時代と言われながら逆に情報の真偽が分かりにくい時代にこそ、大きな意義のある内容です。

―――――
●イギリス情報部の歴史
http://britintel.exblog.jp/

 インテリジェンス研究者として知られる奥田泰広氏の成果をはじめ、日本では知られていない諜報機関の歴史を扱った専門書、学術研究を紹介しています。架空の人物「ジェームズ・ボンド」で有名なイギリス(と時々は他国)の情報機関について史学的見地から分析しているのが魅力的です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【C.シリアスゲーム研究のこと】

●A Japanese View on Games and Learning
http://anotherway.jp/enblog/ (English Page)
●Another Way - 教育・学習、シリアスゲーム、留学生活のブログ
http://anotherway.jp/index.html (Japanese Page)

 シリアスゲーム研究者の藤本徹氏が運営されているブログです。慶応義塾大学、東京工芸大学で教鞭をとる藤本氏は、ゲームと教育との関連について御自分の体験を踏まえて論考されています。

―――――
●Play The Past
http://www.playthepast.org/ (English Page)

 2010年10月に開設されたこのサイトは、複数のゲーム研究者が集う一種のウェブ機関誌です。最新のデジタル、アナログゲーム事情に加えてゲームの史学研究についても多数紹介されているのが面白く仕上がっています。

Play The Past

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【終わりに】

 SF作家のアーサー・C・クラーク(Arthur C. Clarke)曰く「高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」とか。新しい科学を「魔法」と称するなら、現代の例えば「仙人」「マーリン」「ガンダルフ」は人跡未踏の地にではなく大学の研究室の奥深くに棲んでいるのかもしれません。

 さてさて魔法使いにご興味のある方々、どうして映画や三文小説でご満足されるのですか。本当に生きている魔術師はあなたのすぐそば、大学で、図書館で、研究機関で暮らしているとは思わないのですか。彼らは皆、入門希望者が来るのを待っています。さあ、コンピュータ時代の妖術使いを探しにいきましょう!

 それでは次回にまたお会いしたく思います。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/201383672.html


Eclipse Phase Quick-Start Rules

エクリプス・フェイズ Quick-Start Rules

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: January 2011
  • メディア: 無料PDF




Creative Commons License
『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(2):現役研究者ブログの場合 by 蔵原大 is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivs 3.0 Unported License.

**************************************************
posted by AGS at 00:18| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月29日

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(1):東京大学の場合

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年―(1):東京大学の場合

 蔵原大

Homepage | Eclipse Phase
※当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。※
―――――――――――――――――――――――――

 SFゲーム『エクリプス・フェイズ』( http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html )は未来の太陽系社会を扱った作品ですが、その中で描かれているテクノロジーや社会情勢が今のわたし達を原点としているのは言うまでもありません。サイエンス・フィクションをさらに理解し、さらに楽しみたいのだとしたら、まず現実のサイエンスをさらに理解し、さらに楽しむという所から入るのも一つの手法ではないでしょうか。

 そこで今後は"『エクリプス・フェイズ』ゼロ年"という連載コラムを通じ、未来技術に関連しそうな研究成果・講演・セミナー等を随時ご紹介していきます。コラムで扱う内容は特定の分野に留まることなく、惑星科学、生命科学、海洋探査、歴史学を始めとする複数の領域での先端研究を幅広く追っていく予定です。

※このあたりの話は5月3日の「SFセミナー2011」での『エクリプス・フェイズ』紹介パネル」でお伝えしました通りです:http://analoggamestudies.seesaa.net/article/199514106.html

 『エクリプス・フェイズ』ゼロ年の第一回では、東京大学での動きをご紹介します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【@.5月17日(火)の「第1回深宇宙探査学シンポジウム」のこと】

 東京大学では5月17日(火)に参加無料、登録不要の「第1回深宇宙探査学シンポジウム」が予定されています。場所は東大柏キャンパスの図書館メディアホール( http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam03_04_04_j.html )です。

 詳細は公式サイトをごらんください:http://www.k.u-tokyo.ac.jp/news/20110428dspace.html

 第1回深宇宙探査学シンポジウム 2011/05/17開催

 東大大学院の「新領域創成科学研究科」( http://www.k.u-tokyo.ac.jp/ )が主催するこのシンポジウムでは月や火星への探査の状況が解説される他、「太陽系における生命生存可能性」の探査、また「我が国の宇宙開発の現状と課題」の紹介が予定されています( http://www.k.u-tokyo.ac.jp/news/news-image/20110428dspace/poster517.pdf )。


――――――――――――――――――――――――――――――――――
【A.6月4日(土)の「第11回東京大学生命科学シンポジウム」のこと】

 東京大学では6月4日(土)に参加無料、登録不要の「第11回東京大学生命科学シンポジウム」が予定されています。場所は東大本郷キャンパスの安田講堂( http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_01_j.html )です。一般の方々を含めて学内外の幅広い層から聴衆のお出でを求めていますので、覗いてみるだけでもいかがでしょう。

 詳細は公式サイトをごらんください:http://www.todaibio.info

 このシンポジウムでは、生命科学に関する最新の研究動向が紹介されるほか、東大生命科学ネットワークの紹介ブースが設置され、パンフレットや各種資料の展示も予定されています。また若手研究者による「ポスター発表の演題」を募集しているのも特徴で、連絡先は公式サイトに記載されていますが、そちらの登録の締切は5月13日(金)となっております。


――――――――――――――――――――――――――――――――――
【B.東京大学大気海洋研究所の「リサーチハイライト」のこと】

 忙しくてシンポジウムに行けません(泣)という方、諦める必要はありません。東京大学の「大気海洋研究所」( http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/ )はそんな皆さまの味方です。同研究所はご自宅とか職場に居ながらにして最新科学を楽しめる情報化社会のウリを積極的に活用しています。

 「リサーチハイライト」:http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/report/j/index.html

広い海底の下、大河は流れる 〜海底熱水系をさぐる

 大気海洋研究所は、学術研究船を駆使してえた最新の成果を「リサーチハイライト」として連載紹介しています。海底の下を流れる「鉄」や「水素」の「大河」を追跡し、未知の生命体を発見し、謎に満ちていたウナギの産卵場を探求する同研究所の活動はこれからも期待できるものばかりです。


――――――――――――――――――――――――――――――――――
【C.朝鮮史研究会での「大会パネルの公募」の「延長」のこと】

 東京大学を拠点の一つとして活動されている「朝鮮史研究会」( http://wwwsoc.nii.ac.jp/chosenshi/index.html )では、2011年10月に予定されている「第48回大会」での「パネル(分科会)」で発表される研究者を求めています。締め切りは「5月末日」に延長されましたので、皆さまも思い切って挑戦してみてはいかがでしょう。

 詳細は公式サイトをごらんください:http://wwwsoc.nii.ac.jp/chosenshi/taikai/48/panel2011kobo.htm

 なお朝鮮史研究会では研究会のほか、会報や論文集を発行しています( http://wwwsoc.nii.ac.jp/chosenshi/katsudo/katsudo.html )。

 歴史学はあまりサイエンス・フィクションとは関係ないのでは、とお考えの方もいるかもしれません。しかし科学というものが文化や時代環境によって揺さぶられてきた過去、例えばナチスドイツによる忌むべき「優生学」思想、例えばソ連時代の「ルイセンコ主義」を思い返す時、人類が歩んできた筋道を改めて問い直すことは未来に目を凝らす上で決して無意味ではないはずです。隣邦の歴史を通じて見えてくるかもしれない今後のわたし達、それはどんな姿なのでしょうか。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
【終わりに】

 ナポレオン・ボナパルト曰く「狂人は未来を語り、賢人は現在を語る」とか。そういう意味では先端科学は部外者にとって「狂人」的領域なのかもしれません。何しろ巨額の投資を飲み込んで前進する先端研究には、ファンタジー小説そこのけの奇談が満ち溢れているのかもしれないのです。しかし今日のファンタジーが翌日には科学的事実になる可能性のある現代、アインシュタインの「相対性理論」やトーマス・クーンの「パラダイム・シフト」概念がそうだったように、本当に真摯な科学はその成果が時に奇怪に見えるからこそ、楽しく刺激的なのかもしれません。

 それでは次回にまたお会いしたく思います。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198693657.html


Eclipse Phase Quick-Start Rules

エクリプス・フェイズ Quick-Start Rules

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: January 2011
  • メディア: 無料PDF




Creative Commons License
『エクリプス・フェイズ』ゼロ年―(1):東京大学の場合 by 蔵原大 is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivs 3.0 Unported License.

***************************************************
posted by AGS at 04:07| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月08日

「世界内戦」下のポストヒューマニズム――『エクリプス・フェイズ』のアクチュアリティ

「世界内戦」下のポストヒューマニズム――『エクリプス・フェイズ』のアクチュアリティ
 岡和田晃

―――――――――――――――――――――――――

【2011.04.08追記】

 本稿は東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の前に書かれたものです。
 昨晩の大規模なマグニチュード7クラスの大規模な余震に引き続き、福島第一原子力発電所の予断を許さぬ状況、そしていまだ多くの人たちが避難所から出られずにいる現在、本コラムはともすれば不謹慎との謗りを免れない内容になっているかもしれません。
 しかし、本稿で論じた「例外状態」については、世界は今まさに、その渦中に落とし込められているといえますし、そうした状況において何よりも求められているのは、平常心での思考ではないかと判断し、そのまま掲載させていただきます。ご理解をいただけましたら幸いです。



 あなたは、蔵原大氏による『エクリプス・フェイズ』の世界観紹介記事「『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase):さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」をお読みになりましたか。

 「さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」は『エクリプス・フェイズ』の基本的な世界観を概説し、『エクリプス・フェイズ』の色調(雰囲気)の一つである、「疑心暗鬼とパラノイア」について焦点を当てた記事になっていました。

 本記事は先の蔵原氏の解説を踏まえたうえで、『エクリプス・フェイズ』の世界に関心を持たれた方のため、あるいは他のRPGはよく知っているが『エクリプス・フェイズ』はあまり知らないという方のために、『エクリプス・フェイズ』がいかなるアクチュアリティ(現代性)を有しているか、すなわち『エクリプス・フェイズ』の何が新しいのかということについて、より詳しく踏み込んだ考察を行なうものです。


【もしもあなたが未読なら】

 Analog Game Studiesでの『エクリプス・フェイズ』の記事を未読の方は、本稿をお読みになる前に、恐れ入りますが蔵原氏の記事へ先に目を通していただけますようお願い申し上げます

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html



Eclipse Phase Core Rulebook

Eclipse Phase Core Rulebook

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: October 13, 2009
  • メディア: Hardcover, Full Color






 「さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」は『エクリプス・フェイズ』の基本的な世界観を概説し、『エクリプス・フェイズ』の色調(雰囲気)の一つである、「疑心暗鬼とパラノイア」について焦点を当てた記事になっていました。

 この「疑心暗鬼やパラノイア」については、例えば『エクリプス・フェイズ』のルールブックP.41からの文化と社会(「CULTURE AND SOCIETY」)において、「FEAR AND PARANOIA」という見出しのもとに、詳細な解説が盛り込まれています。また『エクリプス・フェイズ』の基本ルールブック等に添えられている世界観を説明するために差し込まれた小説風の描写(フレーバーテキスト)等を見ても、「疑心暗鬼やパラノイア」は繰り返し強調されているものです。

 ティターンズ(TITANs)との戦争は、近代政治哲学の祖トマス・ホッブズがかつて述べた「万人の万人に対する闘争」という比喩表現がおそらく想定していた事態を、はるかに凌駕するものでした。発火源こそティターンズであるものの、相互不信を駆り立てられた人類は類を見ない規模で暴走し、核兵器や生物兵器による災禍(bioplague)が、何百万もの人々を血の海に溺れさせたのです。こうした事態は当のホッブズが予期していたものよりも、はるかに凄惨な事態だったに間違いありません。


 確かに、人類は絶滅こそ免れました。

 しかし、地球壊滅元年(「The Fall」)から10年が経過した『エクリプス・フェイズ』の「現在」においても――アメリカで起きた2001年9月11日の同時多発テロの衝撃を私たちがいまだ忘れられずにいるように――人々の内奥においてこうした猜疑心は燻(くすぶ)り続けているのではないでしょうか。

 ええ、人類は生き残りました。ですが、それは僥倖以外の何であったのでしょう。

 地球壊滅元年以降、人々の住居や生活水準は変貌を遂げました。

 多くの人は戦前よりもはるかに慎ましい暮らしを余儀なくされています。にもかかわらず、人間の基本的な関心毎がまるで変わらず、物資(モノ)の充実を求めたり、あるいは社会的地位の向上や権力闘争に躍起になっているという状況を、いったいあなたはどのように受け止めることでしょう。

 歴史は繰り返し、人間はいつの時代も変わらない。そう、皮肉屋は嘯(うそぶ)くかもしれません。

 ティターンズとの戦争は、20世紀から21世紀にかけて繰り返されてきた世界戦争の、単なる反復なのかもしれません。

 太平洋戦争の後の闇市から日本が驚異的な経済成長を果たしたように、人々は不屈の精神を発揮し、かつての繁栄を取り戻すだろう。かように淡い期待を抱きたくなるかもしれません。

 しかし一方で、宇宙時代にあっても人々は戦争状態という非日常にすら、慣れてしまったのではないか。

 そう考えると、なにやら不気味なものを感じませんか。




 こうした状況は、批評家の笠井潔氏が分析した21世紀(初頭である現在)の状況に酷似しているのではないか。そう、私は考えています。

 笠井氏は『例外社会 神的暴力と階級/文化/社会』という浩瀚な著書において、19世紀的な国民戦争が絶対的な敵を措定した戦争へと発展していくさまを丹念に追いかけ、その現代的な意味を考えました。

 ルールのあるゲームからはかけ離れ、貴族的な紳士協定とも無縁な、相手を完全に滅ぼすまで戦う国民国家(ネーション・ステート)間の殲滅戦。笠井氏によれば、こうした「絶対戦争」は、既存の公法秩序から逸脱した「例外状態」をもたらすものとなりました。


 「例外状態」とは20世紀ドイツの公法学者カール・シュミットが理論書『政治神学』で用いた言葉で、後に美学者のアガンベンがそれを援用した論考をものしていますが、シュミットが活躍した第一次世界大戦・第二次世界大戦の戦間期――「世界でもっとも民主的な憲法」であるところのヴァイマル共和制の施行から、ナチス政権に代表される「全体主義(ファシズム)」の悪夢――の時代状況の反復を、笠井氏は21世紀の世界に見ています。

 『例外社会』によれば、「絶対戦争」としての二度の大戦を経て、国民国家は世界戦争という「例外状態」を構造の内部に取り込む、いわば「例外国家」へ変貌しました。

 カール・シュミットは「例外状態」における主権者の権能を重視したあげく、結果的にナチズムを理論的に擁護してしまうことになったのですが、そのことへの反省を多分に含んだ『パルチザンの理論』において、シュミットは帝国主義的な侵略と抑圧へ一方的にさらされてきた旧植民地の人々が、パルチザン闘争を主軸として「例外国家」へ対抗を示した様子を活写していきます。

 そして『例外社会』では、2001年9月11日の世界貿易センターへの同時多発自爆テロ事件を転回点として、「例外国家」はパルチザン戦争をも呑み込みながら、世界戦争の位相を内戦へと転化させたという分析が示されるのです。

 笠井氏は『パルチザンの理論』の言葉を借りて、こうした状況を「世界内戦」と呼んでいますが、『エクリプス・フェイズ』で描かれる状況を一言で表現するにあたり、「世界内戦」という言葉ほど似つかわしいものはないでしょう(*1)。

例外社会 [単行本] / 笠井 潔 (著); 朝日新聞出版 (刊)パルチザンの理論―政治的なものの概念についての中間所見 (ちくま学芸文庫) [文庫] / カール シュミット (著); Carl Schmitt (原著); 新田 邦夫 (翻訳); 筑摩書房 (刊)サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ [単行本] / 笠井潔, 小森健太朗, 飯田一史, 海老原豊, 岡和田晃, 蔓葉信博, 藤田直哉, 渡邉大輔, 白井聡 (著); 南雲堂 (刊)

 日常と隣り合わせの戦争。いや、戦争の合間に根付く日常。かように陳腐な謳い文句が、このうえなくリアルに響いてしまう状況。

 かような私たちの状況、私たちが体験している「いま、ここ」を、RPGとSFの最良の部分を抽出する形で体感することができること。それこそが『エクリプス・フェイズ』の面白さなのではないか。私は、そう考えています。

 蔵原氏が言うように、文字通り『エクリプス・フェイズ』は私たちの世界の似せ絵なのです。優れたフィクションは、私たちが今まで目にしたこともないような方法で、世界の新たな観点を提示してくれます。

 誤解を承知で言えば、『エクリプス・フェイズ』は単なる暇つぶしのためのゲームとして閉じているものではありません

 あらゆる芸術がその芸術を成立させた社会的背景と無縁でいられないように、『エクリプス・フェイズ』は、私たちが生きる、この時代の縮図にあり、私たちの世界の変動と技術の革新を、ゲームという形式で、手軽に体感することができるのです。

 あなたは、既存のゲームにどこか物足りなさを感じることはありませんか。そこで語られる物語が、愛、正義、勇気といった、誰しもが憧れる要素が、作り事めいて興ざめしてしまうことはありませんか。

 もし、少しでもそう感じたことがあるのでしたら、『エクリプス・フェイズ』は、あなたのためのゲーム、あなたのためのRPGです。


 もちろん、『エクリプス・フェイズ』も作り物です。

 しかし『エクリプス・フェイズ』を活用すれば、最も手軽な形で、私たちは現在の状況を、戦略論的に、あるいは哲学的にシミュレートすることができるのです。

 その意味で、『エクリプス・フェイズ』はあなたが創造に参画する作品であり、言い換えれば、『エクリプス・フェイズ』をプレイすることで――一人では気づかなかったような――世界のエッジを垣間見ることができるのでしょう。


Eclipse Phase Core Rulebook

Eclipse Phase Core Rulebook

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: October 13, 2009
  • メディア: Hardcover, Full Color




 『エクリプス・フェイズ』の世界において、宇宙時代にありつつ、人々は私たちと同じように、「世界内戦」下の状況を生きています。

 一般論として、RPGでは裏切りプレイや、同卓のプレイヤーを出し抜くプレイが奨励されることはごくまれで、行なわれるにして事前の合意が重要で、そして慎重に行なわれる必要があります。『エクリプス・フェイズにおいても同様に、意味もなく裏切りが奨励されたり、同卓のプレイヤーを出し抜くことが奨励されているわけではありません。

 『エクリプス・フェイズ』が戦後の復興を舞台にしているのは、おそらく『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の背景世界の一つエベロンが「最終戦争」という五つ国が骨肉相食む大戦争の2年後に設定されていること、そして『ウォーハンマーRPG』が背景世界オールド・ワールドが「混沌の嵐」(ストーム・オヴ・ケイオス)なる、無慈悲な戦乱の直後に設定されているのと共通するものがあるでしょう。

 荒廃した世界において、生きる意味を探し出すこと。プレイヤー・キャラクターの動機にリアリティを与え、また語られる物語に深みをもたらすための仕掛けであると思って下さい。

 そして『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ウォーハンマーRPG』が、プレイする者にゲームを遊んだ喜びとともに、その色調に沿った独自の知的な刺激を与えるように、『エクリプス・フェイズ』が「世界内戦」を背景とするのには、特有の意義があります。


 それゆえ、蔵原氏が「(EP世界における)生存目的は? 単純明快、まずは生き残ることです」と語るとき、この「生き残る」ということは、単なるサバイバルを意味するわけではありません。「ただ生きる」だけではなく「いかに生きるのか」が問われます。数多のイデオロギーや奇怪な宗教・信念が飛び交い、テロルや陰謀と隣り合わせの状況において、あなたは常に、自らの生き様が問い直されることになるのです。


 そもそもテクノロジーによる身体改造、あるいは人工知能(AI)やネットワークが飛躍的な発展を遂げた『エクリプス・フェイズ』の世界において、肉体(Morph)の「死」は、いわばパソコンのハードディスクがクラッシュしたようなもの。

 コストがかかるので痛くはありますが、充分な対策さえ練っていれば致命的なものにはなりません。また社会保障に寄生し、無為に暮らしていくことは比較的たやすい所業です。


 肉体がそうであるように、人々の自我(Ego)は単なる量産型のソフトウェアに過ぎません。しかし同時に、人々はどこかでその事実を疑う部分が残っているかもしれません。

 かつて、ある哲学者は、「世界という大きな書物」を放浪した後に「我思う、ゆえに我あり」という言葉を残しました。その問いかけは、はたして今でも意味を持ちうるのでしょうか。

 そもそも、人間という「器」とハードディスクの違いとは、いったいどこにあるのでしょう。


 生命とは何か。精神とは何か。そして自分とは何か。

 いや、そもそも「生きる」ことはどういうことなのか。 

 あなたの人間性を保証するものがあるとしたら、あるいは阻害するものがあるとしたら、それはいったい何なのでしょうか。

Total Solar Eclipse
 お前の精神はソフトウェア プログラムせよ Your mind is sodtware. Program it.

 お前の肉体は殻 脱ぎ替えよ Your body is a shell. Change it.

 死は病に過ぎない 治療せよ Death is a disease. Cure it.

 滅亡は迫っている 戦え Extinction is approaching. Fight it.

Ref: http://eclipsephase.com/ and the photo image is sited in ( http://images.nationalgeographic.com/wpf/media-live/photos/000/011/cache/moon-solar-eclipse_1101_600x450.jpg ) in National Geographic Official Site.


Eclipse Phase


 『エクリプス・フェイズ』の世界において、あなたはこうした問いに対する無数の答えを見出すことでしょう。

 いずれの答えにも一理あるでしょうが、仮に結論が得られたとしても、それはおそらく他の誰かの利害と衝突するはずです。

 そこで我を貫くのも、また黙って好機を待つのもまったくの自由。道を選ぶのはあなた自身なのです。


 『エクリプス・フェイズ』であなたが演じるキャラクターは「トランスヒューマン」。すなわちテクノロジーによって、人間の定義そのものが上書きされた存在です。しかし、演じるあなた自身は、(おそらく)普通の人間であるはずです。

 こうした「ずれ」に最初は面食らうかもしれませんが、日々、等比級数的な進化を遂げていくテクノロジーに囲まれて私たちが漠然と抱いている違和感と、『エクリプス・フェイズ』もまた、正面から向き合っていることがわかるでしょう。


 テクノロジーの進化によって本格的な宇宙進出が進み、私たちが所与の条件とみなしていた状況は、いくらでも変化させられるようになりました。

 『エクリプス・フェイズ』においても、あなたはルールブックやサプリメント(設定資料)の記述をもとに、想像力の赴くまま、プレイングを通した思考実験を行なうことが可能になります。


 『エクリプス・フェイズ』において、キャラクターは行動の動機(Motivation)を複数設定することができますが、それらに共通したグランド・テーマとして、「自分とはいったい何だろうか?」というアイデンティティへの問いかけが存在することは間違いありません。

 そしてこの問いかけは、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のフィリップ・K・ディックや「スキャナーに生きがいはない」のコードウェイナー・スミスらSF黄金期の巨匠たちから、『へびつかい座ホットライン』のジョン・ヴァーリィや『レインボーズ・エンド』のヴァーナー・ヴィンジら、サイバーパンク運動の勃興前からサイバーパンク的な問題意識を含有した作品を書き続けてきた作家たち、そして『スキズマトリックス』のブルース・スターリングから『アッチェレランド』のチャールズ・ストロスに至る、サイバーパンク以降の優れたSF作家が常に考察してきた課題でもあります(とりわけ、『スキズマトリックス』や『蝉の女王』など、スターリングの「機械主義者/工作者」シリーズは、『エクリプス・フェイズ』の重要な屋台骨を為しています)。

 そして、アイデンティティの模索と対を為すのが他者への愛ですが、『ポストヒューマンSF傑作選 スティーヴ・フィーヴァー』の多くの収録作では、宇宙時代のポストヒューマニズム(*2)と「愛」の形が模索されています(ここでは収録作のうち、『エクリプス・フェイズ』の設計思想ともおそらく共鳴を見せるであろう、ジェフリー・R・ランディスの「死がふたりを分かつまで」をまず第一にお薦めしておきます)。
スキズマトリックス (ハヤカワ文庫SF) [文庫] / ブルース・スターリング, 小川 隆 (著); 早川書房 (刊)スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー) [文庫] / グレッグ・イーガン, ジェフリー・A・ランディス, メアリ・スーン・リー, ロバート・J・ソウヤー, キャスリン・アン・グーナン, デイヴィッド・マルセク, デイヴィッド・ブリン, ブライアン・W・オールディス, ロバート・チャールズ・ウィルスン, マイクル・G・コーニイ, イアン・マクドナルド, チャールズ・ストロス (著); 山岸真 (編集); 山岸真 (翻訳); 小阪淳 (イラスト); 金子浩, 古沢嘉通, 佐田千織, 内田昌之, 小野田和子, 中原尚哉 (翻訳); 早川書房 (刊)サイボーグ・フェミニズム [単行本] / ダナ ハラウェイ, ジェシカ・アマンダ サーモンスン, サミュエル ディレイニー (著); Donna Haraway, Jessica Amanda Salmonson, Samuel R. Delany (原著); 巽 孝之, 小谷 真理 (翻訳); 水声社 (刊)

 非情な世界のうちで、自らの実存が広大な宇宙のどこに根ざしているのかを見つけ出すこと

 『エクリプス・フェイズ』の世界を生きるにあたって、あなたは必ずこうした問題に直面することとなるでしょう。


 例えば、サイバーパンク小説の名作群において――リチャード・コールダーの小説『デッドボーイズ』のように――性差の撹乱・超越は重要な主題として扱われてきました。

 また批評家のダナ・ハラウェイは「女神よりはサイボーグになりたい」との有名な文句を残し(『サイボーグ・フェミニズム』)、SF作家の大原まり子は、コンピュータ・ネットワークの進展に、性差を超越したコミュニケーションの可能性を夢見ました(「SFの呪縛から解き放たれて」)。


 『エクリプス・フェイズ』のセッションを通して、あなたは「世界内戦」下におけるポストヒューマニズムについての考察を、それとは意識せずに進めることが可能になります。ですから『エクリプス・フェイズ』の資料を読み、実際に遊んだ経験は、決して無駄なものにはなりません。

 ところで、サイバーパンク研究の第一人者である巽孝之氏は、SFと現在をめぐる思想的状況において、以下のように述べています。

 かつてのわたしは、電脳空間以後のテクノロジーが文学的レトリックや政治的イデオロギーとも連携する効果にのみ注目して「SFが見えないジャンルとなった」「世界全体がSF化した」と発言していたと思う。しかし現在ではまったく逆に、SF的思考がそれこそネット社会のすみずみに浸透した結果、SFはニ一世紀人における文字通りの無意識を枠組み、折にふれて現在世界の深淵から一挙に姿を現す「名づけがたき怪物」(安部公房)のエネルギーを回復したのではないかと考える。
 (「SF的無意識、ジャンル的自意識」)


 SF的思考の浸透と拡散が完成し、それらが無意識の底に沈潜した現在。

 その先に待つ人間像がポストヒューマニズムの一種にほかならないことは論を待ちませんが、ともすると「名づけがたき怪物」は、案外『エクリプス・フェイズ』のようなSFとゲームのあわいから現れてくる可能性も高いと言わざるをえません。

 ゲームについて研究する学問「ルドロジー」も、映画研究・文学研究などの下敷きを経て、ようやく独立した学問として提示されてるようになってきているようですし、相互干渉性(インタラクティヴィティ)を主体としたゲームならではの考え方は、既存の文学研究、ならびにSF評論の分野においても、いまだ充分な成果が蓄積されているとは言えないからです。


 それゆえAnalog Game Studiesにおいては『エクリプス・フェイズ』をさまざまな角度から検討し、皆さまに有益なフィードバックが与えられるよう、努力したいと思います。

 その第一段階といたしまして、2011年5月3日〜4日に東京で開催されます「SFセミナー2011」の合宿企画において、実際に『エクリプス・フェイズ』を紹介する機会をいただくことができました。

 多くのSFファン、作家、評論家、編集者らが訪れるイベントです。
 Analog Game Studiesをご覧の皆さまも、是非ともご来場をいただけましたら幸いです。


Creative Commons License
「世界内戦」下のポストヒューマニズム――『エクリプス・フェイズ』のアクチュアリティ) by 岡和田晃 is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivs 3.0 Unported License.
―――――――――――――――――――――――――――――
【脚注】

*1:筆者は「世界内戦」を主軸にしたSF評論をこれまで2つ書いております。併せてご参照下さい。「世界内戦」とわずかな希望――伊藤計劃『虐殺器官』へ向き合うために」(「SFマガジン」2010年5月号)、「「世界内戦」下の英雄(カラクテル)――仁木稔『ミカイールの階梯』の戦略」(『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』、南雲堂、2010年)。「世界内戦」とグローバル・ガバナンスの関係性について、より精緻に考察した原稿としては「「世界内戦」下の英雄(カラクテル)」をご参照下さい。なお、本稿は後に加筆修正され、改めて、よりまとまった批評文として上梓される可能性があります。
*2:ポストヒューマニズムそのものについては、いずれ別件で考察を行ないたいと考えています。ここでの前提は、本稿で銘記した優れたSF作家たちの仕事、ならびにハラウェイ・サイボーグと、N・キャサリン・ヘイルズの仕事を前提として捉えていただけましたら幸いです。

Bibliography: EclipsePhase-2nd.pdf,which have been produced from Catalyst Game Labs and Posthuman Studios in 2009-10;quotation translated by Dai Kurahara and Naofumi Naegashi.
posted by AGS at 01:46| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月03日

5月3日〜4日の「SFセミナー2011」で『エクリプス・フェイズ』のパネルが立ちます!

5月3日〜4日の「SFセミナー2011」で『エクリプス・フェイズ』のパネルが立ちます!
 岡和田晃

―――――――――――――――――――――――――――――

 Analog Game Studiesをご覧の皆さまは、毎年ゴールデンウィーク頃に東京で開催される「SFセミナー」というイベントをご存知でしょうか?

 SFというジャンルは昔からファン活動が盛んですが、そのなかでも「SFセミナー」は1980年から毎年開催されているサーコン系(理論的な考察を中心とした)SFイベントの老舗であり、春の代表的なSFイベントとしての地位を不動のものとしています。

 そして、SFセミナー実行委員会さまのご厚意により、2011年5月3日〜4日に開催される「SFセミナー2011」の合宿企画で、ポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』についての企画を立てることができました。

 以下、企画の詳細になります(参加者向けの案内に掲載いただいたものを、微修正したものです)。ぜひとも参加をご検討下さい。

 追記:SF乱学者の大宮信光さまに、熱い応援をいただきました。ありがとうございます!

 企画名:
 新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』を語ろう


 出演(予定):
 岡和田晃、蔵原大、齋藤路恵(ほか)

 解説:
 『エクリプス・フェイズ』は、アメリカのRPG(未訳)。プレイヤーは、肉体改造、拡張現実など(サイバーパンク以降の)最新テクノロジーに満ちた未来の太陽系を生きる人々を演じることになります。そこでは肉体など、もはや仮初(かりそめ)の器にすぎません。データを再ダウンロードすれば問題なし。精神は人間でも外観はイルカ、なんてキャラクターも思いのままです。陰謀と頽廃に満ちた未来世界で、あなたは何を視るでしょうか?

 詳しくは、Analog Game Studiesの記事「『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase):さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」をご覧下さい。

 ブルース・スターリングやヴァーナー・ヴィンジ、チャールズ・ストロスら、サイバーパンクの基礎を築き発展させてきた、優れたSF作家たちの提示したフレームに、ゲームならではの切り口で正面から向き合い、プレイ可能なレベルにまで落とし込んだこの魅力的な作品を、日本のイベントで初紹介させていただきます。

 ゲームについて詳しくない方も歓迎いたします。ぜひどうぞ。あっと驚くゲストも参加するかも!?



Eclipse Phase Core Rulebook

Eclipse Phase Core Rulebook

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: October 13, 2009
  • メディア: Hardcover, Full Color




 おまえの精神はソフトウェア プログラムせよ
 Your mind is sodtware. Program it.

 お前の肉体は殻 脱ぎ替えよ
 Your body is a shell. Change it.

 死は病に過ぎない 治療せよ
 Death is a disease. Cure it.

 滅亡は迫っている 戦え
 Extinction is approaching. Fight it.


●日時
2011年5月3日(火)〜5月4日(水)

●会場
昼企画  全電通労働会館ホール(千代田区神田駿河台3−6) 10:00開場〜16:00終了(予定)
合宿企画 ふたき旅館(文京区本郷6−6−3) 19:00開始〜8:00終了(予定)


本年は例年と開催日が異なります。ご注意ください

なお、申込方法等、詳細は決まりしだい、SFセミナー2011の公式サイト(http://www.sfseminar.org/)で公開されます。
※合宿のみの参加はできないようですので、ご注意下さい。また、本会料金と合宿料金、ともに必要となります。

―――――――――――――――――――――――――――――
Bibliography: EclipsePhase-2nd.pdf which has been produced from Catalyst Game Labs and Posthuman Studios in 2009-10, quotation translated by Naofumi Yaegashi.
posted by AGS at 00:41| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。