2011年07月02日

『エクリプス・フェイズ』キャラクター作成術:「軍艦」と「パズル」と「古典」

『エクリプス・フェイズ』キャラクター作成術:「軍艦」と「パズル」と「古典」
 蔵原大

Homepage | Eclipse Phase
当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』(または『イクリプス・フェイズ』)公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。
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【ご注意】以下の説明では、2011年現在の英語版「Eclipse Phase Core Rulebook」PDFルールブック"EclipsePhase-2nd.pdf"( http://www.eclipsephase.com/releases )を使うという前提で説明しています。

Eclipse Phase Core Rulebook
 SFゲーム『エクリプス・フェイズ』(以下EP)のキャラクター作成は思うにさほど難しくないはずです。EPルールブックでその手順が解説されています(第5章の「CHARACTER CREATION AND ADVANCEMENT」です)。加えてウェブ上での展開(下記参照)が参考になるでしょう。

★【ご注意】 残念ながら、無料で公開されている「簡略版ルールブック」(QSR)のみではキャラクター作成はできません。EPの公式サイトから「Eclipse Phase Core Rulebook」をお買い求めいただきたくお願いします★http://www.eclipsephase.com/releases

★ ところでEP世界の背景情報についてはこちら「『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase):さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」で概要を紹介しました。


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【ウェブ上での展開】

http://www.eclipsephase.com/resources#homebrew
 EPの公式サイトにあるサポートです。ここの「Character Sheets and Player Tools」をご参照ください。EPファンの皆さんが作成したツールが便利です。

http://sites.google.com/site/eclipsephases/home/cabinet
 「Kindalas」さん(https://sites.google.com/site/eclipsephases/)が作成された半自動キャラ作成シート(エクセル形式)がダウンロードできます(EPの公式サイトのページにもリンクあります)。

http://www.enworld.org/forum/general-rpg-discussion/260785-eclipse-phase-character-creation.html
 こちらの「18th August 2009, 07:16 AM」の「Alikar」さんのコメントが分かり易い。具体的にキャラクター「Mark Griffon」を作りながら、ルール通りの作成手順である「Concept」から始まって「Gear」(装備)や最終的な数値の調整まで解説してくれています。

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html
 EP世界の背景についてはこちら「『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase):さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」で概要を紹介しました。

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 しかし他の方々のご意見を尊重し、蔵原独自の三路線を簡単に書き出しました。皆さんには釈迦に説法だと思いますので、読み飛ばしていただいて結構です。


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■1)キャラクターを軍艦になぞらえて基本構想を組み立てる。

The aircraft carrier USS George Washington (CVN 73) approaches the Military Sealift Command fleet replenishment oiler USNS John Ericsson (T-AO 194)
 軍艦、それはただの道具です。軍艦の設計はまずユーザー側の要望、すなわち行政府が組み立てる国家戦略から始まります。どんな国防を行うのか、攻めるか守るか、攻撃力か機動力か、それは全て政治的状況から決定されるということです(クラウゼヴィッツ的観点と言い換えられるでしょう)。その中で政策上で求められるのが、攻撃であれば大火力の「戦艦」、機動性の高い船であれば高速の「巡洋艦」、商船の保護なら小型の「フリゲート」、ステルスがご入用なら「潜水艦」、敵味方の動向をさぐるのは「情報収集艦」、制空権の確保や長距離爆撃まで視野にいれるなら「航空母艦」......軍艦は単体では何の意味もありません。国家戦略あっての道具です。本質的には価格100円のハサミと何ら変わりはありません。

艦船の種別についてはアメリカ海軍のウェブページ"US Navy Ships." Navy.mil the Official Web Site of the United States Navy. ( http://www.navy.mil/navydata/our_ships.asp )をご参照ください。それから「クラウゼヴィッツ的観点」についてはこの章の末尾に『戦争論』から引用しました)

 これと同じくEPのキャラクター作成も、まずはプレイの方針から始まります(EPルールブックの120頁にある"concept"〔概念〕のことです。どんなプレイスタイルを行うのか、攻めるか守るか、攻撃力か機動力か、そこからキャラクターの方向性が演繹的に導かれます。力技で相手を粉砕するのか〈→ファイター〉、策略で労せずして勝つのか〈→マジックユーザー〉、敵の目を盗んで重要な資材を略取するのか〈→シーフ〉、目先の事柄ではなく理念を尊重するのか〈→クレリック〉......ハサミと同じように、キャラクターはただ在るだけでは何の意味もありません。プレイの基本方針あっての道具/資源です。個々のキャラメイクには(サンプルキャラクターを含めて)作成者のプレイ方針が自ずと反映されます。

Pearl Harbor, Hawaii, Feb. 21, 2001
 それから「軍艦」を建造する以上、建造の工程というものがあります。軍艦を作る際にはプロでさえ複数の要素を組み合わせるのに苦労します。大砲、ミサイル、装甲、エンジン、居住区画、レーダー......組み合わせには傑作もあれば駄作もあります。ただし「傑作」⇒「最強」ではありません。旧日本海軍の戦艦「大和」、ナチスドイツの戦艦「ビスマルク」、いずれも不沈艦と謳われながら結局は連合国軍によって撃沈されました。こうした史実の先例はEPのキャラにも当てはまります。

This image is quoted from U.S. Navy - Submarine Images: http://www.navy.mil/navydata/images/imagesub6.html

 さてキャラ作成の詳細は、EPルールブック第5章の「CHARACTER CREATION AND ADVANCEMENT」にある通りですが、実践的な「工程」の手順は大体こんな感じです。

 1. Select a character concept (キャラクターの基本構想を選ぶ)
 2. Choose a background (背景を選ぶ)
 3. Choose a Faction (勢力を選ぶ)
 4. Starting Aptitudes (能力を決定する)
 5. Free Language (母国語を選ぶ)
 6. Free Moxie Point (勇気ポイント〔Moxie Point〕を1点得る)
 7. Credit (初期の資金5,000クレジットを得る)
 8. Reputation (初期の社会信用通貨〔Rep〕を選ぶ)
 9. Customization Points (詳細情報を設定する)
 9.1 Morph Selection (身体〔Morph〕を選ぶ)
 9.2 Traits (特徴〔Traits〕を選ぶ)
 9.3 Skills (技能〔Skills〕を選ぶ)
 9.4 Gear (装備〔Gear〕を選ぶ)
 9.5 Moxie (勇気ポイントを追加する)
 9.6 Additional Rep (社会信用通貨を追加する)
 9.7 Final skill increase (技能を追加する)
 10. Calculating the final stats (最後に数値が適切かどうか計算する)

(ref: Alikar's comment on 18th August 2009, 07:16 AM in http://www.enworld.org/forum/general-rpg-discussion/260785-eclipse-phase-character-creation.html )


iPad Sample Characters: Free
 余談ですが、本論筆者はサンプルキャラクターを使うプレイを好しとはしません。サンプルキャラが役に立たないという意味ではなく、むしろキャラ作成時の指針としてモデルとして、大いに意義があるとは思います。優れた規範に準拠するのは上達の第一歩です。でも手放しで受け入れるわけではありません。とどのつまりサンプルキャラを使うプレイとは、言わば他人のプレイ方針に束縛されるようなものです。人に強制されたプレイ方針なんて面白いと思いますか

ごくたまにサンプルキャラで市販シナリオをプレイした事もありますので、完全否定する気はありません。ただ単に既成のキャラに感情移入がしにくいだけのことです。完璧な味付けのコンビニ弁当と彼女の手作り料理、どちらがおいしいと思うか。前者の人もいれば後者の人もいる。それだけの話です

 ちなみに(あくまでゲームでは)一人のキャラクターは、単体の軍艦ではなく複数の艦船によって編成される「機動部隊」(RPGですと「パーティ」になるんでしょうか)の「一戦力」として考えると、さらに作成しやすくなるでしょう。社会の中にいる人間は、単独では「社会人」として生きてはいけません。軍艦がその任務を果たすためには僚艦や補給設備を必要とするように。なお海軍の事例としては以下をご参照ください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%AF%8D%E6%89%93%E6%92%83%E7%BE%A4
● マハン海上権力史論: http://www.amazon.co.jp/dp/4562041641
● 戦略論大系8 コーベット: http://www.fuyoshobo.co.jp/b-sen-4829503858.html


戦争論〈上〉 (中公文庫)
 かくてわれわれは次のごとき原則を了解するに至った。すなわち戦争は単に一つの政治的行動であるのみならず、実にまた一つの政治的手段でもあり、政治的交渉の継続であり、他の手段による政治的交渉の継続にほかならない、ということを。戦争がもし特異なものであるというのなら、それは戦争のもつ手段としての特異性のことにすぎないだろう。政治の方向や意図をこれらの手段と矛盾させないようにすること、それは一般に兵学が要求し得る事柄であり、また個々の場合にわたっては最高司令官が要求しなければならぬ事柄でもある。ところで個々の場合にわたって戦争が政治的意図にたとえどれほど強く反作用を及ぼしたにしても、その反作用は常に政治的意図に対して修正を加える以上のことができるはずのものではない。というのは政治的意図は目的であり、戦争はあくまで手段だからである。目的のない手段などとはおよそ考えられないことを見ても以上のことは明らかであろう。

  ―クラウゼヴィッツ、清水多吉訳『戦争論(上)』中「第一部第一章 24 戦争とは他の手段をもってする政治の継続にほかならない」: http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122039398/seesaashoppin-22/ref=nosim



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■2)ギミック選びの際には買い物/パズルを意識すること

 EPのギミックは多岐に渡っています。超小型コンピュータから大型宇宙船まで網羅している約400頁(2011年現在)の基本ルールブックをいちいち見ていったら、情報量の多さに困惑してしまうでしょう。でもそんな必要はありません。一覧から選択するのではなく、コンセプトに合わせて欲しいものを選ぶ、それが基本だと思います。出だしから全部を見る必要はありません。個々の章立てに目を通し、時間をかけて徐々に全体像を理解していけばいいのです。

 いいかげんなやり方? 考えてみてください。デパートで買い物する時、欲しい品を求めて店内を一ミリ一ミリ這いずり廻るでしょうか? なかなか品物が見当たらなくとも、店の案内を読むか(PDFですと「目次」です)、店員に聞くか(PDFですと「検索」です)、とにかく効率的な探し方があるはずです。ここで説明する方法はそれと大差ありません。普段のやり方をそのまま踏襲すればいいのです。

 ところでPDF形式のファイルは、中の情報検索が便利です。電子書籍には限界もありますが、使い方次第では紙の書籍にはない利便性が引き出せます。どんな道具でも使い方に応じて価値が変わるということです。

 例えばこうです。あなたは「戦艦」のような「ファイター」を作りたいと仮定します。「Eclipse Phase Core Rulebook」のPDFルールブックを使って試してみましょう。

EP's Creators, Writers, Artists, and Publishing Partners
◆ 戦艦ですから強力な主砲が必要です。ミサイルで標的を爆砕したい? よろしい、では「missile」のキーワードで「基本ルールブック」(Eclipse Phase Core Rulebook)を検索しましょう。「追尾兵器」(Seekers)の項目が見つかります(基本ルールブック339〜341頁にあります)。

◆ 副砲も欲しい? ならレーザー兵器あたりがいいのかな。「laser」で検索しましょう。すると「ビーム兵器」(Beam Weapons)という箇所が見つかります(338〜339頁)。

◆ でも待ってください。敵と撃ちあうのですから、当然ながら装甲が不可欠です。ならば「armor」でルールブックに検索をかければいい。ちょうど「装甲値一覧」(ARMOR VALUES, 312頁)という表が見つかりました。ここから任意の装甲に目星をつけて、細かく各項目を参照しましょう。


 これで最低限の装備である「主砲」「副砲」「装甲」まで揃いました。最初の「基本構想」が固まっていれば欲しい装備も決まってきますから、あとはそれに該当するキーワードで検索をかけていけば参照したいところにたどり着けます。そうして通信機器("radio"や"communication"で検索)、修理("repair"または"fix"で検索)......といった具合に備品を揃えていけば良いのです。

iPad Sample Characters: Free
 ところで備品を揃える最中に「この買い物は妥当なんだろうか?」と疑問に思われるとしたら、むしろそれは自然な話です。スーパーでも買いすぎたら品物を棚に戻したり、財布と相談することはよくあることのように。そこで役に立つのが先ほど申し上げた「優れた規範に準拠する」こと、つまりサンプルキャラクターという「定番商品」です。それと比較しつつ作成していけば、極端な逸脱を避けられるでしょう。そしてPDFルールブックのサンプルキャラは、具体的にはこんな風に類型化できるでしょうか(あくまで本論筆者の独断による区分です)。

◆ 「戦艦」キャラなら... → 161, 165, 168頁
◆ 「巡洋艦」キャラなら...→ 162, 164, 167頁
◆ 「潜水艦」キャラなら...→ 163, 164頁
◆ 「情報収集艦」なら... → 155, 160頁
◆ 「航空母艦」キャラなら...→ 158頁
(ref: http://rpg.drivethrustuff.com/product_info.php?products_id=64135&affiliate_id=50261&src=EPReleasesPage )


NPC File 01: Prime
 さらに便利なことにEPのサプリメント「NPC File 01: Prime」では、ゲーム中に登場するであろうNPCの事例を紹介してくれています。こちらでは兵士、パイロット、医師、破壊工作員などと銘打って個々の対象を説明しているので、非常に参考になります。

 もちろん以上に挙げた先例をどの程度逸脱するか、そっくりマネするかどうかは皆さんの自由です。ピカソやミケランジェロは先例を学びつつ、天才的逸脱あるいは見事な独自スタイルを開発しました。EPにおいて自分なりの「独自色」をどう表現するか、各人のセンスが問われます。

 とはいえ結局のところ、装備の選択に関しては基本的にはデパートでの買い物、でなければパズルを意識しましょう。穴埋め作業なのですから、空白箇所に適切な部品を入れればいいだけです。気張る必要はありません。お知り合いと相談しながら気軽にゆっくり「ショッピング」されるのも楽しいですよ?


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■3)公式の世界設定との整合性

Resources | Eclipse Phase
 ここからは要注意です。むしろ「基本構想」「ギミック」よりも時間をかけた方がいいでしょう。EPの世界設定にはデザイナーのしかけた「落とし穴」があります。そこを見落とさないように。

 この「穴」とは不備ではありません。キャラの「背景」(background)に合わせてキャラメイキングを進めるとき、その背景世界についての解説を参照しないと、不自然なキャラになってしまいます。その点を(当然了解しているとして)デザイナーは明示していない、そこが「落とし穴」なのです。

 例として日本人のキャラクターを考えてみましょう。生まれも育ちも日本社会の外に一歩たりと出ていないなら、母国語は当然ですが日本語でしょう。でもEPではその点が作成者の自由に任されています。技術的には日本語を話せない日本人キャラだって可能です。でもそれは背景情報を無視したキャラを作っていいという意味でしょうか? なぜなら背景情報を懇切丁寧に設定しているということは、それを尊重してくださいね、というデザイナーの無言のメッセージのはずだからです。

 それではEP世界の事例として、タイタン連邦の市民を考えてみましょう。タイタンは土星の衛星で、そこに建国された民主主義国家「タイタン連邦」は極寒のメタン大気の下に多数のドーム都市を建設しています。青空の下にある21世紀の地球社会とはずいぶん異なる環境です。そこで暮らす市民をゲームのキャラクターとして作成する場合、タイタンについての公式情報をよくチェックするのが当然です。それではPDF版ルールブックの中を"Titan"(タイタン)で検索してみましょう。すると79、106頁などにタイタン社会の解説があると分かります。

なぜタイタン連邦なのかというと、最初にEPをプレイした時に「よう分からんから何でもいいや、ダイスで決めよう」と振って決めたキャラクターの出身世界がタイタンだったからです)

「外国におけるスイスの軍隊の将来的役割」に関する国民投票のポスター(2001年)quoted from http://www.swissworld.org
 EPルールブック106頁によると、タイタン市民は成人になった時点で何らかの社会奉仕(主に兵役/治安部隊への配属、原文には"compulsory civil service at the age of majority, with an emphasis on military and security forces"とあります)に従事する義務があるのだそうです。ルールブック中の設定ですと、現実のスイス(2011年現在)のように、その家屋に国防用のライフルを備え付けている人がいるのだとか。ですからタイタン市民であれば、徴兵忌避者を除けば一応は武器の扱い/戦い方の基礎を知っていて当然ということになります。なにしろ公式設定によれば、タイタン連邦は国防のために小型衛星を三つ動かしてきて(!)本星の軌道上に置いたそうですから、この国の人々が軍事に寄せる関心は並々ならぬものがあると推測できます(ルールブック107頁の「PHOEBE, SKATHI, AND ABRAMSEN」を参照)。さらにまた106頁の解説によれば、タイタンの主要言語はノルウェー語、フランス語、ドイツ語、デンマーク語、北京中国語等なのだそうです。タイタンは北欧国家をモデルの一つとして設立されたとあるのですから(79頁)、北ヨーロッパ系の言語が主流なのは当然です。

上記の「墓地」のポスター画像は「スイスの公式情報サイト - スイスの情報」中の「中立と孤立主義」にある「「外国におけるスイスの軍隊の将来的役割」に関する国民投票のポスター(2001年)」( http://www.swissworld.org/jp/politics/foreign_policy/neutrality_and_isolationism/ )から引用しています。ちなみに現在のスイス等で行われている「銃の家庭保管」については実見された方がいるので、ご参考までに野島利彰「スイスレポート」へのリンクを張っておきます)

 けれども、もしここで日本語しか話せず、社会奉仕も体験していない二十歳過ぎのタイタン市民を作成したとしたらどうでしょう? ルール上は可能であるにしても、その人は(ゲーム世界において)実在可能なのでしょうか。平均的(と仮にしますが)日本人しかいない環境に、ノルウェー語以外は解さず、しかも日本社会における市民の義務を果たしていない人が孤立無援で放り込まれたとします。その人はその社会で円滑に暮らしていけるのでしょうか? あるいはその人は「自分はれっきとした日本人だから、自分に市民権をくれ」(とノルウェー語のみで)主張した時、周囲の人はどう反応するでしょうか? ルール上は可能だとしても、社会状況との整合性が合わないキャラを論拠なく押し通すのはロールプレイとは言えません。ただの我儘、駄々っ子です。

EP世界には一種の自動翻訳機が存在しますが、翻訳の業務を本格的におやりになった方々なら「自動翻訳」の本質的限界についてはご承知のことだと思います。これまで政府公文書の訳出や自動翻訳システム開発などの業務を経験してきた本論筆者から言わせていただくと、いわゆる「自動翻訳」はせいぜい原文の意味の50%を訳出できれば大成功というところです)

 もちろんこれは「社会状況との整合性が合わないキャラ」を作成してはいけないという意味では全くありません。そういうキャラには独特の面白みがあります。しかし面白いだけでは周囲の人は納得しないかもしれません。現実の軍艦にも様々な亜種、変種がありますが、どんな変り種にも理由があります(それが戦略というやつです)。明快な存在理由のないキャラがどうしてプレイに参加できるのでしょう?

例えば「変り種」の筆頭としては「Qシップ」というのをご存知でしょうか? さらに面白いのは第二次世界大戦のさいに急造されたリバティシップ。従来の手作り的造船からベルトコンベア式大量生産の手法で建造されたこの船舶は、その後の造船業におけるお手本となります。詳しくはProject Liberty Ship: http://www.liberty-ship.com/

 では「社会状況との整合性が合わないキャラ」をどう処理するか? 簡単です。「整合性が合わない」キャラがなぜ実在可能なのか、関係者一同を納得させるに足る実証的根拠があればいいのです。その「根拠」はどこにあるかって? 簡単です。歴史学、心理学、社会学などの概説書を参照するだけですぐに見つかります。あるいは人間性を描いた不朽の古典、例えば東洋史なら『史記』『漢書』『三国志』、西洋史なら『聖書』『対比列伝』『ガリア戦記』等を読めばよろしい。長く愛されてきた作品の深みを十分に噛み締めましょう

CIA FOIA - Search Results
私事ですが、本論筆者はかつて『中国古代の歴史家たち』(福井重雅編)という本の執筆に関わりました〔http://www.amazon.co.jp/dp/465706309X〕。この中では『史記』『漢書』『三国志』の著者が味わった波乱の生涯を解説しています。お読みいただき、古代世界において事実に即した歴史を描くことがどれほど困難で勇気のいることだったか、文筆家の苦悩に思いを馳せていただけますと幸いです)

 例えばこういう状況を想定しましょう。見かけは普通のタイタン市民ですが、実はテレパシー能力を備えたキャラクターがいると仮定します。普通の人にはテレパシーなんて不可能です。ではなぜその人物は例外なのか? そうです、実はその人はタイタン市民を装っている外国のスパイで、特別な医学的処置を受けた後でタイタン社会に潜入し、無邪気な同僚の心を勝手に覗いているのです! 実在したマタ=ハリやキム=フィルビー等に関するスパイ事件を思い返せば「超能力スパイ説」にはそれなりの根拠があると言えます。日本に関する話としては、かつて北朝鮮に拉致された人は日本に潜入するスパイの教育をさせられていたそうですね。

CIA FOIA - Search Results
 このようにキャラクターの実在性に説得力を持たせたければ、そのキャラクターの「基本構想」を補強する実在の参考文献を頼りにすればいいのです。そういうコンテンツを見つけたいのであれば大手の書店/図書館に行くだけのことです。立ち読みするだけで十分勉強になります(購入すればなお結構ですが)。インターネット上でも様々な公共の機関が「情報活動」についての報告書を公開しています。例えばアメリカのCIAの文書を公開しているサービス等はいかがですか: CIA FOIA - Search Results. http://www.foia.cia.gov/search.asp

CIAサイトの所在は以前の上司でアーカイブズ研究者でもあった故牟田昌平氏に教えていただきました。なお本論筆者もその末席におります「日本アーカイブズ学会」では優秀な研究者〔ゲーム関係でも構いません〕を求めております:http://www.jsas.info/)。

 あと一点付け足すとすれば、無敵の「万能キャラ」というのはEPでは作成できませんので、ご注意ください(たとえ作成用のCPポイントをルール無視の"2000"にまで上げても無理です)。しかし逆の言い方をすれば、EP世界に登場する人物は必ず何らかの手段で打倒できるということです。現実の軍艦でも万能選手はいません。そういうコンセプトが追求された船もありましたが、大抵はどこかで中途半端になりました。万遍なく技能を配分するより、先に述べたように「機動部隊」における「一戦力」としての役割分担を想定し、強さと弱さ、得手と不得手とを並存させる方が建設的キャラクターを作成できると思います。「建設的」とは他人と協力し合う方が生き残りやすいという意味です。この点は現実の生命進化をお考えいただけますと宜しいかと思います。この世の中は「弱肉強食」なのか、力が強ければ生き残れるかというと、マンモスのことをお考えいただければ、必ずしもそうではないでしょう。

 細かくなりましたが、ここでまとめます。EPのキャラメイキングに際してはルールの一字一句、数値データの大小にこだわるのではなく、ルールブックやサプリメントで解説されている社会状況、そして現実の社会研究が提示している数多くの成果を参照した上で、キャラクターの基本構想を描き出すとやりやすいかと思います。EP世界の「今」は21世紀の「今」を色濃く反映しています。どんな社会にも光と影が並存しています。ゲームもまた然りです。EPルールブックの冒頭に「トランスヒューマンの陰謀と恐怖を扱うRPGゲーム」(The RPG of Transhuman Conspiracy and Horror)と記されている意味をお考えください。そして現実世界への理解が深まれば深まるほど、現実世界が生み出したゲームという文化的コンテンツへの理解も深まる、それは至極当然の話です。


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【改めてウェブ上での展開】

http://www.eclipsephase.com/resources#homebrew
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http://sites.google.com/site/eclipsephases/home/cabinet
 「Kindalas」さん(https://sites.google.com/site/eclipsephases/)が作成された半自動キャラ作成シート(エクセル形式)がダウンロードできます(EPの公式サイトのページにもリンクあります)。

http://www.enworld.org/forum/general-rpg-discussion/260785-eclipse-phase-character-creation.html
 こちらの「18th August 2009, 07:16 AM」の「Alikar」さんのコメントが分かり易い。具体的にキャラクター「Mark Griffon」を作りながら、ルール通りの作成手順である「Concept」から始まって「Gear」(装備)や最終的な数値の調整まで解説してくれています。

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html
 なおEP世界の背景についてはこちら「『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase):さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」で概要を紹介しました。

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Eclipse Phase Core Rulebook
★【ご注意】 改めて申し上げますが、ゲーム『エクリプス・フェイズ』のキャラクター作成には基本ルールブックが欠かせません。EPルールブック「Eclipse Phase Core Rulebook」はこちらのEP公式サイトから入手できます★http://www.eclipsephase.com/releases

 それでは今後もさらなるサポートを続けたく思います。



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クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
『エクリプス・フェイズ』キャラクター作成術 by 蔵原大(Dai Kurahara) is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 継承 3.0 非移植 License.
posted by AGS at 14:37| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月30日

『エクリプス・フェイズ』の体験イベントに朱鷺田祐介さまが参戦します!

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『エクリプス・フェイズ』の体験イベントに朱鷺田祐介さまが参戦します!

 岡和田晃

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 来たる7月30日にゲームショップ「Role & Roll Station」とRPGを中心としたアナログゲーム総合情報誌「Role & Roll」の協力をいただきまして、『エクリプス・フェイズ』を体感するイベントを開催する運びになりましたことは、すでにお伝えをいたしました。これは実際に「Role & Roll Station」での入門ゲーム・プレイを行なうことで、「ゲームとしての」『エクリプス・フェイズ』を実体験いただく機会を提供することを目的としたものです。ただし、入門用ということで、チュートリアルを兼ねたシンプルな内容になると思います。

 この体験会ですが、希望者多数につき、急遽、ゲストGMとして『シャドウラン』第4版の翻訳監修等で知られるゲームデザイナーの朱鷺田祐介さまをお迎えする形での、増卓が決定いたしました。ふるってご応募ください!

表紙レイアウト (1)_01.jpg
 

■新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』体験イベント(第1回)

申込み殺到につき増卓! ゲストGMとして朱鷺田祐介先生が参戦!

 『エクリプス・フェイズ』とは、『シャドウラン』第4版のライン・ディヴェロッパーだったロブ・ボイル氏(Posthuman Studio)がデザインを担当した新世紀のSF-RPG(未訳)。プレイヤーは科学技術によって強化された未来人「トランスヒューマン」を演じ、「地球崩壊」後の時代、陰謀と恐怖に満ちた黄昏の太陽系を生きることとなります。

 「トランスヒューマン」は「精神」(Ego)と「義体」(Morph)が分かれているため、シチュエーションによって「義体」を取り替えたり、ナノ兵器で分解されてもセーヴポイントからバックアップを呼び出して復活できたりと、従来のRPGでは体験できなかった斬新な冒険を愉しむことが可能です。

 また、『エクリプス・フェイズ』にはCreative Commonsが付記されているため、(特定の条項を守れば)この世界観を利用し、小説・リプレイ・コミックなどを(著作権侵害とならずに)自由に創作することができるのも大きな魅力となっています。

 そして今回、『エクリプス・フェイズ』の面白さを少しでも身近に感じていただくため、体験会を開催するはこびとなりました。『エクリプス・フェイズ』をまだ遊んだことがない方を対象に、この魅力的なRPGを実際に体感してもらうことを目的としています。皆さまのご応募をお待ちしております。

・ルールシステムの根幹はシンプルなd100下方ロール。ゲームに慣れていない方でも、すぐに憶えることができます。
・「サイバーパンク」以後の最新のSFシーンを反映した世界観。SFについて詳しくない方でも丁寧に解説いたします。
・ルールブックは未訳ですが、日本語に翻訳されたキャラクターシートやルール・サマリーを持参いたしますので、英語がわからない方でも安心してお越しください。

※『エクリプス・フェイズ』はAnalog Game Studies(AGS)というプロジェクト(http://analoggamestudies.seesaa.net/)で継続的に紹介を行なっております。詳しくは、AGSの『エクリプス・フェイズ』紹介コーナー(http://analoggamestudies.seesaa.net/category/9644582-1.html)をご覧ください。なおAGSは『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。

■開催日 7月30日(土)
■時間 14:00〜19:00(予定)
■会場 R&Rステーション フリープレイルーム
■ゲームマスター 岡和田晃 朱鷺田祐介
■協力 「Role&Roll」編集部、戦鎚傭兵団、Analog Game Studies
■定員 5名→10名
■参加費  無料
■締切り 7月23日(応募者多数の場合は抽選、あるいは締め切り前でも申込みを終了させていただくことがございます)
■予約受付用アドレス analoggamestudies1★gmail.com(★→☆)
■参加予約方法
 参加申し込みはeメールで承ります。件名を「EP体験会参加予約」として、お名前(ハンドル不可)・電話番号(携帯)・メールアドレスを明記のうえanaloggamestudies1★gmail.com(★→☆)
 にまで送信してください(特に電話番号は緊急連絡用に必要ですので、お間違えなきようお願い申し上げます)。
 折り返し、予約確認のメールを返信させていただきます。
※応募者多数の場合は抽選、あるいは締切り前でも申込みを終了させていただくことがございます。あらかじめご了解ください。

http://www.arclight.co.jp/r_r_s/03_event.html
posted by AGS at 16:44| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月29日

新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』の体験イベントを開催します!

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新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』の体験イベントを開催します!

 岡和田晃

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 これまで、Analog Game Studiesでは、ポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』について、力を入れて紹介を行なってまいりました。ウェブでの情報提供と連動する形で、「SFセミナー2011」ならびに、第12回文学フリマ、ゲームマーケット2011というイベントに参加して参りました。

 そしてこのたび、ゲームショップ「Role & Roll Station」とRPGを中心としたアナログゲーム総合情報誌「Role & Roll」の協力をいただきまして、『エクリプス・フェイズ』を体感するイベントを開催する運びになりました。
 
 5月の「SFセミナー2011」では、『エクリプス・フェイズ』の概要、ならびにコンセプトワークを、RPG、科学、ジェンダー/セクシュアリティとの関わりといった観点から説明し、実際にごく簡単なテスト・セッションを行なってみました。

 6月の「第12回文学フリマ」&「ゲームマーケット2011」においては、『エクリプス・フェイズ』の世界観を、Creative Commonsを活用し、シェアード・ワールド小説型式で紹介した「Eclipse Phase Introduction Book For 2011 Japanese」を無償頒布することで、その世界観の魅力と、総合創作ツールとしての可能性を読み物を通じて知っていただけるよう工夫しました。

 そして7月は、実際に「Role & Roll Station」での入門ゲーム・プレイを行なうことで、「ゲームとしての」『エクリプス・フェイズ』を実体験いただく機会を提供いたします。ただし、入門用ということで、チュートリアルを兼ねたシンプルな内容になると思います。

 現状1卓スタートとなっていますが、要望が多数に至れば増卓も検討させていただきますので、ふるってご応募ください!

表紙レイアウト (1)_01.jpg
 

■新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』体験イベント(第1回)

 『エクリプス・フェイズ』とは、『シャドウラン』第4版のライン・ディヴェロッパーだったロブ・ボイル氏(Posthuman Studio)がデザインを担当した新世紀のSF-RPG(未訳)。プレイヤーは科学技術によって強化された未来人「トランスヒューマン」を演じ、「地球崩壊」後の時代、陰謀と恐怖に満ちた黄昏の太陽系を生きることとなります。

 「トランスヒューマン」は「精神」(Ego)と「義体」(Morph)が分かれているため、シチュエーションによって「義体」を取り替えたり、ナノ兵器で分解されてもセーヴポイントからバックアップを呼び出して復活できたりと、従来のRPGでは体験できなかった斬新な冒険を愉しむことが可能です。

 また、『エクリプス・フェイズ』にはCreative Commonsが付記されているため、(特定の条項を守れば)この世界観を利用し、小説・リプレイ・コミックなどを(著作権侵害とならずに)自由に創作することができるのも大きな魅力となっています。

 そして今回、『エクリプス・フェイズ』の面白さを少しでも身近に感じていただくため、体験会を開催するはこびとなりました。『エクリプス・フェイズ』をまだ遊んだことがない方を対象に、この魅力的なRPGを実際に体感してもらうことを目的としています。皆さまのご応募をお待ちしております。

・ルールシステムの根幹はシンプルなd100下方ロール。ゲームに慣れていない方でも、すぐに憶えることができます。
・「サイバーパンク」以後の最新のSFシーンを反映した世界観。SFについて詳しくない方でも丁寧に解説いたします。
・ルールブックは未訳ですが、日本語に翻訳されたキャラクターシートやルール・サマリーを持参いたしますので、英語がわからない方でも安心してお越しください。

※『エクリプス・フェイズ』はAnalog Game Studies(AGS)というプロジェクト(http://analoggamestudies.seesaa.net/)で継続的に紹介を行なっております。詳しくは、AGSの『エクリプス・フェイズ』紹介コーナー(http://analoggamestudies.seesaa.net/category/9644582-1.html)をご覧ください。なおAGSは『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。

■開催日 7月30日(土)
■時間 14:00〜19:00(予定)
■会場 R&Rステーション フリープレイルーム
■ゲームマスター 岡和田晃
■協力 「Role&Roll」編集部、戦鎚傭兵団、Analog Game Studies
■定員 5名
■参加費  無料
■締切り 7月23日(応募者多数の場合は抽選、あるいは締め切り前でも申込みを終了させていただくことがございます)
■予約受付用アドレス analoggamestudies1★gmail.com(★→☆)
■参加予約方法
 参加申し込みはeメールで承ります。件名を「EP体験会参加予約」として、お名前(ハンドル不可)・電話番号(携帯)・メールアドレスを明記のうえanaloggamestudies1★gmail.com(★→☆)
 にまで送信してください(特に電話番号は緊急連絡用に必要ですので、お間違えなきようお願い申し上げます)。
 折り返し、予約確認のメールを返信させていただきます。
※応募者多数の場合は抽選、あるいは締切り前でも申込みを終了させていただくことがございます。あらかじめご了解ください。

http://www.arclight.co.jp/r_r_s/03_event.html
posted by AGS at 11:04| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月24日

第12回文学フリマ&ゲームマーケット2011で『エクリプス・フェイズ』のファンジンを受け取っていただき、どうもありがとうございました!(付記:門倉直人さまのコメント)

第12回文学フリマ&ゲームマーケット2011で『エクリプス・フェイズ』のファンジンを受け取っていただき、どうもありがとうございました!(付記:門倉直人さまのコメント)

 岡和田晃 (協力:門倉直人、仲知喜)

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Homepage | Eclipse Phase
※当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。※


 少し時間が経過してしまいましたが、Analog Game Studiesをご覧の皆さま、第12回文学フリマ、そしてゲームマーケット2011にお越し下さり、本当にありがとうございました。

 Analog Game Studiesが二つのイベントで頒布したファンジンについての解説は、下記をご覧ください:
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/209175577.html
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/209002383.html

 この場を借りて、改めてお礼を申し上げつつ、当日の模様を簡単にご報告させていただきます。

 今回、私は文学フリマで最初から最後まで(途中交代は幾度か挟みましたが)、「幻視社」の店番をしておりました。「幻視社」のエンドケイプさま、渡邊利道さま、佐伯ツカサさまも応援に駆けつけて下さり、賑やかなブースとなったと思います。

 Creative Commonsを活用する形で、表紙フルカラー・本文モノクロ・A4版・本文24頁の書籍を、文学フリマでは100部用意し、無償で頒布させていただいた所存です。

 表紙画像と、内容を一部紹介させていただきます。
 
表紙レイアウト (1)_01.jpg


『衛星タイタンのある朝』
EclipsePhase_Introduction_Book_01.jpg


『DOG TALE』
EclipsePhase_Introduction_Book_02.jpg

 途中、Analog Game Studiesの高橋志行氏が応援に駆けつけ、iPadを用いて、「Eclipse Phase Introduction Book 2011 For Japanese」のフルカラーPDF版を紹介するなどという変化球もありましたが、終了1時間前には頒布終了いたしました。

 アートワークと表紙のデザインがとても美しいものになりましたので、普段ゲームに馴染みのない方や女性のお客さまに、数多くお手にとっていただけたのが望外の喜びです。印刷を頼んだポプルスさまが、サービスでポスターを作ってくださったのも大きかったでしょうか。ポスターの張り出しを許可してくださいました東條慎生さまに感謝いたします。

《「幻視社」ブースの様子》(顔出しOKをいただいているのは放送作家のエンドケイプさまです)
IMG_0586bokashi.JPG

 最初にブースへご来場いただいたのは、『CODE2.0』で知られるローレス・レッシグ教授と交流があるCreative Commonsの研究家の方。
 Creative Commonsを用いた『エクリプス・フェイズ』のコンセプトに注目されていました。

 ほか、『GURPS』を愛好する漫画専門店の店員の方、『ウォーハンマーRPG』オンリーコンによく来ていたを愛好するRPG者/SFファンの方、ロード・ダンセイニ研究家の未谷おとさまゲームSF短篇連作シリーズの第三作「清められた卓」が好評の小説家の宮内悠介さま、第49回日本SF大会TOKON10実行委員長の立花眞奈美さま、「筑波批評」のシノハラユウキさま、ゲーム評論誌「GAME DEEP」主催の中田吉法さま、レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』の翻訳等で知られる翻訳家の垂野創一郎さま、漫画家の三五千波さま、フランス文学者の石橋正孝さま、さらには名前は上げませんが複数の出版社の編集者の方々など、多くの方々に「Eclipse Phase Introduction Book For 2011 Japanese」を受け取っていただくことができました。

 お客様とお話させていただいた感覚では、文学的運動体としての「サイバーパンク」への期待というものは、『ニューロマンサー』日本語版から25年が経過した現在にあっても依然として根強いという印象を第一に受けました。

 また、Analog Game Studiesの高橋氏に会いに来たサイバーパンク青年、『ウォーハンマーRPG』リプレイでプレイヤー参加してくださった坂本峻平さま、また、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』のトークライブに来られた方などがわざわざ立ち寄ってくださるなど、Analog Game Studiesメンバーの活動によって『エクリプス・フェイズ』に興味をいただいてくださった方がいらっしゃることが実感できたのも感慨深いことでした。



 なお、当日配布された「Eclipse Phase Introduction Book For 2011 Japanese」には誤植が存在しました。同書に挟み込んだペーパーに正誤表を掲載いたしましたが、こちらにも掲載しておきます。

誤)表紙アートワーク:Zachary Graves

正)表紙アートワーク:Leanne Buckley


 ご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。書籍版を入手された方にサービスで配布しております、フルカラーPDF版ではすでに修正されております。
 


 私、岡和田晃は「幻視社」最新五号の販売協力もいたしました。

 こちらは表紙フルカラー・本文モノクロ・100頁・500円という体裁となっています。

 「死者/使者」をテーマにした創作群、アルバニアの国際ブッカー賞受賞作家イスマイル・カダレ、そして松籟社から刊行されている〈東欧の想像力〉叢書のガイド、さらには異端のアナーキスト作家・向井豊昭の特集を軸に、実売数にして45部程度を売り上げることができました。

幻視社5表紙.jpg

 「東欧の想像力」は、セルビア・チェコ・アルバニア・ハンガリーなど、旧共産圏の現代文学の最先端を紹介する野心的な叢書で価格帯も抑えめな叢書です。
 世界文学の最先端を知るためのブックガイドとして活用していただければ幸いです。私のおすすめは、渡邊利道さまのイスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』についてのエッセイ「類似と自由」。映画『こうのとり、たちすさんで』との比較も鮮やかなエッセイです。

 なお、先んじて「幻視社」五号内で紹介しておりました、イェールジ・コジンスキーの『異端の鳥』の新訳『ペインテッド・バード』の告知が松籟社様の方で出ております

 当日は、これを買うために大阪からわざわざお越し下った方、国書刊行会の「文学の冒険」シリーズについての本を作るからライバル調査に来たという方、SFレビュアーの橋本輝幸さま、さらには「全集を待望」と熱弁をふるった熱狂的な向井豊昭ファンの方など、豊かな出逢いがありました。

 また、「Eclipse Phase Introduction book For 2011 Japanese」を頒布された方の多くは、「幻視社」にも興味を示しお買い上げくださいました。併せてお礼を申し上げます。

 「幻視社」の三号と四号はすでに在庫がありませんが、今回の文学フリマでの新刊「幻視社」五号、そしてバックナンバーである「幻視社」二号は在庫があります。

 通信販売が行なわれておりますので、ご希望の方は、以下にまでメールをいただければ支払い方法などを案内いただけるということですので、ご興味をお持ちの方は、ご連絡をいただければ幸いです。

「幻視社」五号、二号の通信販売希望者連絡先:

inthewall★king-postman.com (★→@)




 続きましてゲームマーケット2011のレポートになります。

 Analog Game Studiesからは齋藤路恵氏と髭熊五郎氏が、50部をゲームマーケットに搬入し、正午過ぎから頒布が開始されました。

 ゲームマーケット201では、「カナイ製作所」さまのブース……。

「カナイ製作所」さまのブース
カナイ製作所2.jpeg

 そして(当日急遽決定したので、Analog Game Studiesの告知ができず、申し訳ありませんでしたが)「グランペール」さまのブースにおいて委託をさせていただき、第12回文学フリマと同じく、それぞれ無償で頒布をさせていただきました。

「グランペール」さまのブース
グランペール.jpeg
 
 それぞれ、あっという間に品切れとなってしまった模様です。

 出展者用の最後の一冊を回覧されるのみに終わった方が多数いらっしゃったようですが、この場を借りてお詫び申し上げます。

 ご来場いただきました皆さま、また、慌ただしいなか、とても丁寧なご対応を下さりましたカナイ製作所のカナイセイジさま、グランペールの伏見健二さまにこの場を借りてお礼申し上げます。

 お二人からは『エクリプス・フェイズ』紹介への期待の声が多かったとも教えていただき、改めて気を引き締める思いです。



 また、サンセットゲームズの古角博昭社長が、ウェブログで「Eclipse Phase Introduction Book For 2011 Japanese」の紹介をしてくださいました。ありがとうございます。

 ゲームデザイナーの朱鷺田祐介さまも、同書の入手報告、ならびに『エクリプス・フェイズ』のプレイレポートも掲載してくださっております。『エクリプス・フェイズ』のゲーム的な側面にご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。



 文学フリマ終了後、Analog Game Studiesに協力・応援をいただいた方々に、一足早く「Eclipse Phase Introduction Book For 2011 Japanese」のフルカラーPDFファイルを、(むろんCreative Commonsに則って)無償送付させていただきましたが、お送りした方々から、暖かい感想をいただきました。

 そのうちゲームデザイナーの門倉直人さまから、興味深いコメントをいただきました。門倉直人さまの許可をいただいたうえで、こちらに紹介させていただきます。門倉さまの感想を読み、私は、意味の性質が物理量の違いとして記述されないという指摘からイメージが広がり、ニューウェーヴSFの粋を尽くした短篇「宇宙の熱死」(パミラ・ゾリーン)を連想しましたが、皆さまはいかがでしょうか。

 また、心理学的な多重人格とEP的な考え方から、定家へと至る独創的な思考実験は、短いながらも実にスリリングであると考えます。

 新しい言葉にめっぽう弱い自分は、ポストヒューマンという言葉を初めて聞き、その発信元たるトランスヒューマニズムと合わせ今回、勉強する機会を得た。最近、ランダウアーの原理から情報量と物理量、そして「意味」の問題から情報熱力学に興味をもってきた自分にとっては、なかなか愉しい経験を与えていただいたと思う。

 現在のところ自分は、各個体、また各ヒトの精神なるものは、環境(おおげさに聞こえるかもしれないが「宇宙」と言ってよい)との量子的なつながりにより(結果的に)座標を結ばれていると推測している。よって精神転送(精神アップロード)により自意識の連続性を確保したまま自分のコピーができ、不老不死も可能という考えには否定的だ。人工精神体は、理論的に可能かもしれないが、生身の人間が自我をそれに完全に移すことは不可能と感じている。おそらく自我は、in situ(イン・サイチュ)であろう。夢野久作がなんと言うか興味深いところだが、まさにドグラ・マグラ的な因果があるので、生身から生まれた人間が途中からインフォモーフになるのは真空相転移させて宇宙をもう一ヶ創るぐらいタイヘンかもしれない。

 現在の情報論は、時の流れの中での意味論としては、ほとんど役に立っていない。それは、情報論を支えるパラダイムが、物理世界を記述する論理体系の写像でありそれ以上でも以下でもないからだ。簡単に言えば「意味の性質」が物理量の違いとして記述されないなら、どうにもならない。それゆえランダウアーの原理に照らせば「情報が少なくなれば(結果として)宇宙が冷えている」のであるが。

(この話をしだすとキリが無いのでやめる)

 しかし純粋かつ敬意をこめ「遊び」としてのエクリプス・フェイズは、人の思考実験の場として、とても面白そうだ。心理学方面へ進路を変更した際、最初に学ばされたのは、16の人格を創って環境に対応せざるを得なくなった多重人格症例だった。「アイデンティティとは何か」から見えてくる人の心の不思議……。人間は成長とともに精神を急速に分化させていくが、そうして分化させた精神どうしのリンクが様々な原因で切れたり弱くなったりする。それは成長の1プロセスでもあるが、時に様々な障害をもたらすこともある。情報産業の発達と進化は、今や人の精神コピーを、たとえれば静止画から動画へとナマナマしく映すようになっていくだろう。経済活動もこうしたバーチャルエージェントが多く担うようになれば、仮想現実で自律的に活動する自分の分身へ、より大きな存在価値を見いだし依存する人も増えるだろう。そんな時代に要求されるのは「爆発的に増殖する自分の分化した精神と、どう向き合い、つき合うか」なのやもしれぬ。自我をin silico(イン・シリコ)へ完全移行することには(先述した理由で)かなり懐疑的なのだが「自分が薄くなっていく新しい感覚」には直面するだろう。これは必ずしも悪いことではないが、人によっては、かなりの危険をともなうかもしれない。

 面白いことに、近ごろ出した自分の拙著(編注:『シンデレラは、なぜカボチャの馬車に乗ったのか? 〜言葉(ことのは)の魔法〜』、新紀元社)で、藤原定家と幽玄技巧について書いた際の魔法イメージが、この『エクリプス・フェイズ イントロダクション・ブック』のPDFを読んでいるときに浮かんでならなかった。それは「ボクは、ほんの少しだけキミで、キミもほんの少しだけボクなんだ」というもので「しかし、二人の間にはボクでもキミでない、カスミのような何かが潜在している」というものだ。『エクリプス・フェイズ』は、そんな状態を想像しながら思考実験する、よい機会になるかもしれないと感じた。(門倉直人)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「Eclipse Phase Introduction Book 2011 For Japanese」へのコメント by 門倉直人(Naoto Kadokura) is licensed under a Creative Commons 表示 - 改変禁止 3.0 Unported License.

 各所で好評をいただきました「Eclipse Phase Introduction Book 2011 For Japanese」ですが、印刷版の再版・フルカラーPDF版の無償配布をそれぞれ検討中です。Analog Game Studies読者の方へのフルカラーPDF版の無償配布の方が早く実現しそうですので、もう少しお待ちください。場所や方法が決定次第、Analog Game Studies上で告知いたします。

 ご希望やご意見などがございましたら、analoggamestudies1★gmail.com(★→@)にまでご連絡をいただけましたら幸いです。

追記;
 再掲が実現いたしました!
 日本SF作家クラブの公認ネットマガジン「SF Prologue Wave」http://prologuewave.com/)において、創作者集団NEO、および『エクリプス・フェイズ』翻訳チームのご協力をいただき、会話型RPG『エクリプス・フェイズ』のシェアード・ワールド企画にAnalog Game Studiesのメンバーが参加する、という形になっています。
 岡和田晃によるコンセプト解説「シェアード・ワールドとしての『エクリプス・フェイズ』はこちら(http://prologuewave.com/ep_explanetion)。
 2012年6月5日〜7月20日の4回に分けて、2011年6月に限定発行されたファンジン『Eclipse Phase Introduction Book for 2011 Japanese』(Analog Game Studies & 戦鎚傭兵団発行)をフルカラーPDFにて再録いただいております。
 内訳は……。
「特異点への突入」(待兼音二郎)
「衛星タイタンのある朝」(蔵原大&齋藤路恵)
「DOG TALE 犬の話」(仲知喜&蔵原大)
「Feel like makin' love――about infomorph sex」(齋藤路恵)
「戦う『ショートショート』又はボーイ・ミーツ・ガール」(蔵原大)

 以上5作品です。
 是非ご覧ください!


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posted by AGS at 12:13| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月18日

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(5):「AGS」の「研究課題の募集」の場合

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(5):「AGS」の「研究課題の募集」の場合
 蔵原大

Homepage | Eclipse Phase
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 SFゲーム『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase, http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html )は未来の太陽系社会を扱った作品です。その中で描かれているテクノロジーや社会情勢が今のわたし達を原点としているのは言うまでもありません。サイエンス・フィクションをさらに理解し、さらに楽しみたいのだとしたら、まず現実のサイエンスをさらに理解し、さらに楽しむという所から入るのも一つの手法ではないでしょうか。

 そこで今後は"『エクリプス・フェイズ』ゼロ年"という連載コラムを通じ、未来技術・複数の領域での先端研究に関連しそうな研究成果・講演・セミナー等を随時ご紹介していきます。この第五回では「AGS」が行っている「研究課題の募集」について紹介します。


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東京大学/The University of TokyoAGS(Alliance for Global Sustainability)

● AGS:東京大学AGS推進室|Alliance for Global Sustainability - The University of TOKYO -:
( http://www.ags.dir.u-tokyo.ac.jp/ )

 AGS(Alliance for Global Sustainability) では現在、2011年7月1日を期限として「東日本を襲った大地震・津波からの復興を契機として、新しい社会像を目指す研究」を募集しております。また若手研究者を対象とした「将来へ向けての新しいアイデアや新機軸の研究」を募集中とのことです( http://www.ags.dir.u-tokyo.ac.jp/2011AGSinvite )。

 このAGSは東京大学・マサチューセッツ工科大学(アメリカ)・スイス連邦工科大学(スイス)・チャルマーズ工科大学(スウェーデン)の4大学が「地球環境の保全という制約条件下持続的な方策などの提言を行なう共同研究を推進している国際的なパートナーシップ」です。

 詳細は下記をご参照ください。

○ 平成23年度東京大学AGS研究会研究課題の募集 ( http://www.ags.dir.u-tokyo.ac.jp/2011AGSinvite )

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 科学は夢だけでは前進しません。夢を支える資源や制度があって始めて発展するものです。AGSのような試みはこれまでも必要でしたし、これからも必要とされています。これはゲームやSFといった知的コンテンツの領域についてもまた然りです。

 なお以前の記事も併せてお読みいただけますとありがたい限りです。

○第一回「東京大学」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198290624.html
○第二回「現役研究者ブログ」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198693657.html
○第三回「無料ボードゲーム」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/201383672.html
○第四回「SF文学」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/203913334.html

 それでは次回にまたお会いしたく思います。


Eclipse Phase Quick-Start Rules

エクリプス・フェイズ Quick-Start Rules

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: January 2011
  • メディア: 無料PDF




クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(5):「AGS」の「研究課題の募集」の場合 by 蔵原大(Dai Kurahara) is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 継承 3.0 非移植 License.
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posted by AGS at 18:15| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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