2011年07月29日

ある初心者の『エクリプス・フェイズ』体験記

 7月30日に開催予定の『エクリプス・フェイズ』体験会、たくさんのご応募をありがとうございました。体験会に向けて開催したテストプレイの模様を、渡邊利道さまが初心者プレイヤー視点でレポートしてくださいました。
 当日このシナリオを使用するかどうかはまだ秘密ですが、SFをはじめ無類の読書家でありながらゲームについては初心者という渡邊さまの視点から、『エクリプス・フェイズ』のさらなる可能性が垣間見えるように思います。(岡和田晃)

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ある初心者の『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase)体験記

 渡邊利道

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当ブログAnalog Game Studies(AGS)は『エクリプス・フェイズ』(または『イクリプス・フェイズ』)公式サイト(Homepage | Eclipse Phase)で承認されているファンサイト(Fan Websites)の一つです( http://eclipsephase.com/resources )。

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 というわけで、岡和田晃さんに誘われて、海外RPGゲームの『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase、以下EP)の、体験会に先駆けたテストプレイに参加した。メンバーは、岡和田さんと私と、Analog Game Studies(アナログ・ゲーム・スタディーズ)でEPの紹介に携わっている蔵原大さん、ゲーマーの畠山さんと中野さんの五人。私以外はみなさんRPG連戦の猛者で、初心者なのでけっこうビビっていたのだがとても親切にいろいろと教えてくれたので、少々調子に乗っちゃったかなあ、というくらい楽しめた。

 EPというゲームについては、

「さぁ黄昏の未来世界にようこそ!」

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html

 という紹介記事に詳しいのだが、大雑把には人間が精神と身体に分割され、精神はデータとして複製再生可能、身体は人工改造その他データの容れ物としていくらでも改変可能、というテクノロジーが発達したポストサイバーパンク的な未来社会、いわゆるマザーコンピュータの反乱的な人工知性による大戦争を経由して、中央政府を失い複数の権力と企業体のせめぎあいによる多重化した世界が、物理的に太陽系外宇宙への入口まで発展しているが、どうやらそこには謎の異星人が存在しているらしく(彼らは地球人類に関心がない模様)、また、分散した権力をめぐる闘争が激化している現在はいまだ人々の関心は「外」へは向っていない、という背景設定のもと、さまざまな設定のキャラクターを参加人数分用意し、ゲームマスターの誘導に応じてミッションを実行する、というもの。べつにどういうミッションにしなければならない、という決まりはないらしいのだが、まあ基本的にはエスピオナージュのスタイルがもっとも似つかわしいのではないか、ということだった。

 これはテストプレイだったせいなのか、ともかく最初のEPの世界設定の説明や、それに関する参加者のディスカッションが多岐にわたって流動的で非常に面白かった。設定が設定なので、現代社会の政治状況や経済、技術などの話題に触れることも多く、物語的にもたとえばイスラームが大きく要素としてとりこまれているので、自然そういう話にもなり、なかなかきわきわな話題でもあるので、そこらへんの常識のラインのとりかたのかけひきなども、ゲームの前哨戦のようでちょっと面白かった。

 本来はキャラクターも参加者自身で作るものらしいのだが、まあ、初心者用にサンプルキャラクターというのが用意されていて、蔵原さんはお手製のキャラがすでにいらっしゃるということでロシアのスナイパーというけっこう頭が悪そうな素敵なキャラ(編注:『Eclipse Phase Introduction Book for 2011 Japanese』に登場したアルアラミル)に、私はマッドサイエンティスト、中野さんは性転換自由自在のジゴロ、畠山さんは探検家というキャラをそれぞれ選んで、ゲーム開始。

 金星を舞台に、行方不明になった貴婦人チャタレイを探す、というゲームで、ゲームマスターの提示する状況に合わせて口頭で可能なこと不可能なことを探り、では私はこういう行動を起こします、とメンバーに宣言して骰子を振る、ときにはメンバー間で「こちらはこういう方向で、そちらはそういう方向で」というように協力体制を作ってミッションを進行させていく、といった塩梅で、成程、これは発想力とそれを言語化する能力、そして人間関係をうまく物語にはめ込んでいく微妙な気配を察知する能力が問われるゲームなのだなあと感心した。とくにそれらの行動をまとめて新たな状況を作り出し全体の展望を与えるゲームマスターの仕事はなかなか凄いものがある。物語は最終的にはギャンブル場で、まあ、私がちょっと調子に乗って続けてギャンブルし続けて負けてロシアのスナイパーがいかさまだ!なんだとてめえらやっちまえ!手榴弾でぼーん!というありえないハチャメチャな展開となり、しかも悪の親玉と手打ちで終り、というダークな結末に、私はけっこう満足だった。あれだ、ちょっとアダルト/サイバーパンクなダーティペア的世界。

 その後、EPをめぐる期待の大きさがもいろいろ熱く語られて、それを聞いているだけでワクワクさせられるものがあった。もっとも、こういうゲームにハマる人がいるのはよくわかるし、たぶんものすごくうまくいくセッションなどもあって、それは素晴らしい体験になるんだろうなあ、という気もしたが、その分、参加者の気心とか、場の空気とか、そういうことを考えるとやはり初心者にはちょっと敷居が高いのはいかんともしがたいかもしれない。私は、これからも機会があったらちょっと参加してみたいとも思った。あとEPのシェアワールドで創作してみたいという気もする。

 ともかく、今回の体験でもっとも驚いたのは、RPGゲームというのは、ともかく「言葉」がすべてだ、という点で、しかもその言葉というのは、あらゆる意味においてすべて「表現」なのである。岡和田さんがゲームに対して抱いている情熱の所以というのが少しだけ理解できるような気がした。

 大変面白い体験でした。誘っていただいた岡和田さん、一緒に遊んでいただいた皆さん、本当にありがとうございました。


2012/01/04追記(岡和田晃):渡邊利道さまはその後、「独身者たちの宴 上田早夕里『華竜の宮』論」にて、第7回日本SF評論賞優秀賞を受賞されました。おめでとうございます!


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渡邊利道(わたなべ・としみち)
 1969年愛知県生まれ。Eclipse PhaseがRPG初体験のゲーム完全初心者。
 1999年頃から本を読む専業主夫としてwebで読書感想文ほかモロモロ公開中。恥をかくのが人生です。
 「なんて退屈。」(http://d.hatena.ne.jp/wtnbt/

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2011年07月28日

ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その7)

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ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その7)

 朱鷺田祐介

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第6回はこちらで読めます。

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 「エクリプス・フェイズ」の紹介その7は、ミューズの話。

 この連載は、7/30の「Eclipse Phase体験会@R&Rステーション」でGMするための、復習的なものです。未訳RPGの紹介ということで、手探りでやっている部分が多々ありますので、訳語の揺れはご容赦ください(編注:本稿は朱鷺田祐介氏のウェブログ「黒い森の祠」からの転載であるため、初出時の時事的内容については、再掲の際にずれが生じる場合があります。あらかじめご了承ください)。


●特異点で変わる世界

 「エクリプス・フェイズ」の舞台とする未来は、かなり現代と違う部分があります。これは、現代のSFでよく言われるシンギュラリティ(特異点)を意識したものです。シンギュラリティとは、ある技術発達上のブレイクスルー、あるいは、世界的なイベントで、世界観が大きく変わることを意味します。「エクリプス・フェイズ」の未来世界も、いくつかのブレイクスルーにより、我々の世界と極端に違っています。

 いわゆる、「魂(Ego)」と「身体(Morph)」の分離は、「エクリプス・フェイズ」の特徴のひとつですが、他にも色々な違いがあります。

 例えば、貨幣を基本とする資本主義経済である「旧経済」と、常時オンライン化し、行動のすべてを記録するような全世界オンライン状態で発生した贈与経済/人物評価(Rep)をベースにした「新経済」の概念は、ゲーム的にも面白いものです。(両方が入り交じった移行中の複合経済構造の地域もあり)


●ミューズ

 今回取り上げるミューズはほとんどすべてのキャラクターが保有する「人生のパートナー」である支援AIとして、数十年前から普及しているメディア・エージェントAIです。

 〈大破壊〉以前から、人類は広大な情報ネットワーク、メッシュを作り上げ、極端なアナクロ主義者をのぞけば、すべての人類が常時、メッシュと接続し、その支援を受けています。AR、VRなどのネットによる情報補助、通信だけでなく、必要に応じて、検索し、調査し、あるいは、ネット上に広報し、つぶやき、はりつけ、あるいは介入します。

 多彩なメッシュ活動および自分の情報活動を支援するのが、ミューズと呼ばれる個人専用の支援AIです。ミューズは人間の幼い頃から、個人の情報(ライフログ)を記録し、体調をモニターし、メッシュとの関係を補助し、設定に応じて情報を検索し、必要に応じて個人の秘書役を努めます。ミューズにキャラクター付けをする人もいますが、それは、ミューズが長い間のやりとりから個人の癖や体質を読み、必要な対応を取ってくれる最適な補助プログラムとして成長していくからです。ミューズを失うのは、現代人で言えば、便利な携帯と愛するペットを同時に失うような喪失感を発生させるでしょう。

 ミューズの存在はなぜ、特異点なのか?

・ミューズは通信、生活習慣など秘書役として管理してくれます。

 目覚ましや予定管理から、友人リストの検索、ニュース検索の取捨選択まで、生活の各方面で支援してくれます。新経済、旧経済のいずれでも財産は電子化されていますので、ミューズに問えば、いつでも、現在の収支や口座の残高、Repの蓄積具合を知ることができます。

・ミューズに指示すれば、必要な情報を瞬時に検索するようにできます。

 おかげで、キーワードを投げておけば、その情報がメッシュに上がるたびに知ることができますし、誰かとの会話中に分からない単語が出てきたら、それをミューズに検索させて調べつつ、会話できます。

 脳内Googleですね。

 問題はこのおかげで、むやみに、会話に、マニアックな引用を多用するおバカさんが現れたりもしますが、それも、ミューズで検索合戦をすれば、対応できないではありません。

・ミューズは、ライフログを取りますので、近々の生活に関する記録を簡単に残せます。

 ミューズに頼らずとも、記憶は大脳皮質記憶装置のチップに記録されますが、常に、自分の行動を見ている存在がおり、必要に応じて、検索したり、質問したりできるのはまた別の世界です。

 ミューズは、あなたの人生におけるプライヴァシーをすべて共有するものなのです。

 このような存在がいる社会はどういうものなのか?
 それはある意味、恐怖と希望の入り交じった世界かもしれません。

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朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)
 TRPGデザイナー、ライター。スザク・ゲームズ代表。『シャドウラン4th Edition』の翻訳をシャドウランナーズとともに務める。代表作は『ブルーローズ・ネクサス』、『深淵 第二版』(ともにエンターブレイン)、『真・女神転生TRPG 魔都東京200X』(ジャイブ)など。TRPG以外の著作に『クトゥルフ神話ガイドブック』、『超古代文明』など(すべて新紀元社)。
 (『シャドウラン4th Editionリプレイ 旅する天使たち』新紀元社、2010より)
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※12/04/13編者付記:
 朱鷺田祐介さまによる『エクリプス・フェイズ』紹介はまだまだ続きますが、Analog Game Studiesに転載させていただく内容については、本記事で一段落とさせていただきます。続きは、朱鷺田祐介さまのブログ「黒い森の祠」の関連エントリをご覧ください。
http://suzakugames.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/eclipse-phasebl.html
posted by AGS at 00:28| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月26日

ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その6)

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ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その6)

 朱鷺田祐介

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第5回はこちらで読めます。

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 「エクリプス・フェイズ」の紹介その6は、戦闘の話。

 この連載は、7/30の「Eclipse Phase体験会@R&Rステーション」でGMするための、復習的なものです。7/16-18の北海道遠征@多彩の渦コンベンションにも持ち込む予定なので、夜の部あたりで遊べればと思っております。という訳で出かける前の最後の更新(編注:本稿は朱鷺田祐介氏のウェブログ「黒い森の祠」からの転載であるため、初出時の時事的内容については、再掲の際にずれが生じる場合があります。あらかじめご了承ください)。


●戦闘

 「エクリプス・フェイズ」でもしばしば戦闘が起こりますが、それはハードなものです。いかに技術が発達し、義体を乗り換えられるようになっても、武器も発達しますから、容易に無力化されますし、ましてや、真空の宇宙ではさまざまな状況がそのまま、死に結びつきます。

 「エクリプス・フェイズ」の戦闘の感覚は、比較的、「シャドウラン4th」に似ています。
 アクション・ターンは3秒。通常、1回の行動ですが、インプラント(改造)や戦闘ドラッグや何かで複数回動ける可能性があります。行動の順番は「イニシアティブ+d100」の高い順となります。

 攻撃の手順は対抗テストです(判定をテストと呼びます)。
 防御側の対応は攻撃の種類で異なります。

 
  格闘(Melee):回避(Fray)、または格闘
  射撃(Shooting):回避の半分。
  超能力(Psi):意志(Will)×2。


 ダメージは攻撃によって、「エネルギー(Energy)」「物理(Kinetic)」「その他」に分かれます。防具には、「エネルギー(Energy)」「物理(Kinetic)」の二種類の装甲値があり、それぞれの攻撃に対応し、ダメージを軽減します。我々が知っている、鉛玉が飛び出すような銃器は、実体弾兵器(英語ではKinetic Weapon(物理兵器))に分類され、白兵戦武器などと同様に、「物理」に分類されます。

 「エクリプス・フェイズ」は、HP制に近いシステムですが、負傷の概念があり、ダメージを受けると、ペナルティが累積していきます。基本的に、%ロールの修正が10%単位で積み重なると思ってください。

・一度に受けたダメージが、負傷値(Wound Threshold)以上ならば、負傷(Wound)を受ける。数は「ダメージ÷負傷値」(端数切捨て)、負傷1個あたり、-10の修正を受ける。蓄積したダメージが耐久値(Durability)以上になると、その義体は行動不能となり、致死値(Death Rating)以上になると完全に殺され、修復できない。

・精神的なストレスにも、同様のものがあり、一度に受けた精神的なストレスがトラウマ値(Trauma Threshold)以上なら、精神的な負傷に当たるトラウマを追う。数は「ストレス÷トラウマ値」(端数切捨て)、トラウマ1個あたり、-10の修正を受ける。蓄積したストレスが理性値(Lucidity)以上になると、行動不能、あるいは一時的な発狂となり、発狂値(Insane Rating)以上になると、完全に発狂し、もはや回復しない。

 イベント前の更新はここまで。
 次は来週後半になると思います。

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第7回はこちらで読めます。

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朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)
 TRPGデザイナー、ライター。スザク・ゲームズ代表。『シャドウラン4th Edition』の翻訳をシャドウランナーズとともに務める。代表作は『ブルーローズ・ネクサス』、『深淵 第二版』(ともにエンターブレイン)、『真・女神転生TRPG 魔都東京200X』(ジャイブ)など。TRPG以外の著作に『クトゥルフ神話ガイドブック』、『超古代文明』など(すべて新紀元社)。
 (『シャドウラン4th Editionリプレイ 旅する天使たち』新紀元社、2010より)
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2011年07月25日

ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その5)

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ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その5)

 朱鷺田祐介

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第4回はこちらで読めます。

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 「エクリプス・フェイズ」の紹介その5は、Repの話。

 この連載は、7/30の「Eclipse Phase体験会@R&Rステーション」でGMするための、復習的なものです。7/16-18の北海道遠征@多彩の渦コンベンションにも持ち込む予定なので、夜の部あたりで遊べればと思っております。という訳で出かける前に更新(編注:本稿は朱鷺田祐介氏のウェブログ「黒い森の祠」からの転載であるため、初出時の時事的内容については、再掲の際にずれが生じる場合があります。あらかじめご了承ください)。


●Rep経済

 「エクリプス・フェイズ」は、未来を舞台にしたSF-RPGなので、太陽系開拓時代にあるだろう、さまざまな政治形態、経済構造、社会構造なども、テーマになっており、場所によってさまざまな体制があります。

 例えば、お金の話。
 「エクリプス・フェイズ」の太陽系では、貨幣(クレジットという貨幣単位があります)および貨幣的な信用をベースにした旧経済、相互補助の精神と行動評価を経済レベルまで高めた新経済、双方の過渡期である過渡期経済が用いられています。

 新経済では、Rep(レプ=評判)という、なかばボランタリーな社会貢献を、数値化し、これを使って他人から有形無形の好意を得ることができます。普段から、色々な貢献を社会に対して行っている人は、他の人々から助けてもらえるというもので、人徳や業績の評判数値化というべきものです。Repはいくつかの系統に分かれていますが、基本的に、太陽系全土のメッシュ(いわゆるネット)で共有されており、ゲーム中、PCは、このRepを使って、さまざまな支援を調達できます。

 例えば、ハビタット内での情報がほしい時、Repを使って道案内情報を得たり、一夜の宿を借りたりもできます。高いRepの人は、初めていった場所ですら、かなり危険な部分での手伝いが得られるかもしれません。

 Repは以下の系統に分かれます。

【REP】
ジ・@リスト (@-rep:アナーキスト、バルスーム、外惑星、スカム、タイタン):
市民ネット (c-rep:木星共和国、月=ラグランジュ連盟、モーニングスター・コンステレーション、惑星連合、ハイパーコープ):
エコ・ウェ−ブ (e-rep:ナノエコロジスト、保存主義者、地球奪還派):
フェイム (f-rep:名士、芸術家、豪遊家、メディア):
グアンジー (g-rep:三合会他、無数の犯罪組織):
ジ・アイ (i-rep:ファイアウォール):
RNA (r-rep:アルゴノーツ、工学者、科学者、研究者):

 これは、新たな経済体制に関する思考実験ですが、すでに皆さんも、2011年現在、ネット上の評判、あるいは、Twitterのフォロワー数(別名、戦闘力)などで「Rep」の形成過程を目撃されているはずです。

 >>>先日、これに対して、米軍がネット上のペルソナを大量に偽造するソフトウェアを開発しているというニュースもありましたね。>>>

 Repはゲーム的にも便利なものです。
 なぜなら、「評判」がそのまま経済力になりますから、PCの情報収集能力や資材調達能力をRepで表現でき、さらに、この新経済環境下では、初めていった場所でも、Repを使って、物資や支援の調達ができるのです。

 ヒーロー物などで、突然、手助けしてくれる人がいますが、そういう面をこれで表現できる訳です。

 そして、Repは評判ですから、それまでの行動が反映されます。キャラクター表現にも通じますし、キャンペーンでは、背景の勢力との関係をRepの変化で表現できます。

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朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)
 TRPGデザイナー、ライター。スザク・ゲームズ代表。『シャドウラン4th Edition』の翻訳をシャドウランナーズとともに務める。代表作は『ブルーローズ・ネクサス』、『深淵 第二版』(ともにエンターブレイン)、『真・女神転生TRPG 魔都東京200X』(ジャイブ)など。TRPG以外の著作に『クトゥルフ神話ガイドブック』、『超古代文明』など(すべて新紀元社)。
 (『シャドウラン4th Editionリプレイ 旅する天使たち』新紀元社、2010より)
posted by AGS at 17:00| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月23日

ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その4)

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ファイアウォールへようこそ:エクリプス・フェイズ紹介(その4)

 朱鷺田祐介

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第3回はこちらで読めます。


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 週末に向けての準備と仕事の都合があるので、まとめて更新(編注:本稿は朱鷺田祐介氏のウェブログ「黒い森の祠」からの転載であるため、初出時の時事的内容については、再掲の際にずれが生じる場合があります。あらかじめご了承ください)。

 「エクリプス・フェイズ」の紹介その4は、キャラクター関係。

 この連載は、7/30の「Eclipse Phase体験会@R&Rステーション」でGMするための、復習的なものです。7/16-18の北海道遠征@多彩の渦コンベンションにも持ち込む予定なので、夜の部あたりで遊べればと思っております。そのためにも、キャラクター関係まで紹介してしまいます。


●キャラクター

 では、「エクリプス・フェイズ」では、どんなキャラクターが出来るのでしょうか?

 「エクリプス・フェイズ」の世界は、広大な太陽系であり、太陽のフレアの内部から、小惑星帯を越え、多数の月がある木星系、土星系、さらには、冥王星の彼方まで広がっており、それぞれが独自の文化や思想を持っています。旧弊な独裁国家もあれば、テラフォーミング中の火星の荒野に暮らす開拓農民、不老不死を得たセレブ、アナーキストの宇宙海賊、知性化されたタコやAIもいます。〈大破壊(The Fall)〉の際に、肉体を失い、デジタル化された「魂(Ego)」だけ逃げてきたまま、まだ、肉体を獲得できない「情報体の難民(Info-Refuge」もいます。

 SF-TRPGの常で、本当にとんでもなく、さまざまなキャラクターができます。
 その上、「エクリプス・フェイズ」のキャラクター作成は、1000ポイントで、能力値や特徴、装備や設定などを購入する完全構築型なので、ある意味、そのようなキャラクターでも作れます。
 例えば、サプリメント「Sunward」には、太陽のコロナの中を泳ぐ、宇宙鯨型の義体を持つキャラクター「Solarian Researcher」(ソラリアの研究者)がいますが、まあ、シナリオのPCにするにはなかなか覚悟がいりますね。

 そこで、手がかりになるのが、基本ルールブックのサンプル・キャラクターです。以下、ざっとをざっと紹介しますので、これで「エクリプス・フェイズ」のイメージが少しでもご理解いただければありがたいです。なお、訳語、解説につきましては、あくまでも、朱鷺田の私的なものですので、ご理解ください。

 また、これらのサンプル・キャラクターの中には、「ファイアウォール」との相性が悪いように見えるものもいますので、GMはシナリオに合わせて、取捨選択をするとよいでしょう。

 イラストは、ルールブックを参照してください。


●サンプル・キャラクター一覧

Anarchist Techie アナーキスト・テッキー
宇宙での機械技術者。無重力環境に適応するため、足が手になっているモーフを使用する。アナーキスト、すなわち、無政府主義勢力は、太陽系各地にいて、政府や国家体制に頼らない生き方を求めている。

イラストは「イーオン・フラックス」に出てくる相棒の雰囲気がありますが、そこまで武闘派ではなく、基本的に、技術職です。

Argonaut Xenoarcheologist アルゴノーツの異星考古学者
異星人の遺跡や遺物を研究する考古学者。アルゴノーツは科学技術推進派の科学者勢力。

Barsoomian Freelance Journalist バルスームのフリーランス・ジャーナリスト
火星独立派のフリージャーナリスト。
バルスームは昔のSF(E・R・バローズの「火星」シリーズ)における火星のことで、現在は、ハイパーコープに搾取されている下層開拓民などの主権獲得などを目指している。

Brinker Genehacker 境界民のジーン・ハッカー
太陽系辺境域で遺伝子をいじるマッド気味の遺伝子工学者で、モーフ・デザイナー。
境界民(ブリンカー)とは、太陽系外縁部などに孤立して住み、独自のライフスタイルを守るため、社会国家から距離を置いている人々の総称。

Criminal Hacker 犯罪社のハッカー
スリル好きのハッカー。
義体は群体モーフ(スワームノイド)で虫の群れのように見える。ルール上、群体として扱う。

Extropian Smuggler エクストロピアの密輸人
小惑星帯にあり、外惑星系と内惑星圏の両方に顔が利く自由商業ハビタット「エクストロピア」からやってきた、密輸業者。
下半身がヘビ型のスリザロイドという、機械式モーフを使用している。
エクストロピアとは、エクストロピー/反エントロピー主義という意味が含まれており、それは生命活動で宇宙を豊かにしようという思想だが、ここでは、ハビタット(宇宙居住区)の名前でもあり、そこを拠点とする自由商業主義者たちの勢力を示す。

Hypercorp Black Marketeer ハイパーコープの闇商人
内惑星系で、ハイパーコープの商品を闇取引しているエージェント。

Jovian Spy 木星共和国のスパイ
生体保守主義者(バイオ・コンサバティブ)の支配する独裁国家、木星共和国(別名、ジョヴィアン・フンタ)から、ハイパーコープや内惑星系に向かって放たれた秘密工作員。改造なし、遺伝子調整なし、魂のバックアップもしない「自然の肉体」で、科学の生み出した怪物たちと戦う誇りある戦士。

Lunar Ego Hunter 月から来たエゴ・ハンター
月=ラグランジェ同盟からやってきた、バウンティ・ハンターで、対人捕獲戦闘の専門家。かつて、強制的に加速成長させられ、多数が死亡した「ロスト・ジェネレーション」の生き残りで、超能力(Psi)を持つ。

Mercurial Investigator マーキュリアルの探索者
物質的な肉体を持たず、メッシュの海を徘徊しているインフォモ−フ(情報義体)。
ドローンやメッシュを操る情報生命体AGI(汎用人工知能)。
マーキュリアルは、水星の意味もあるが、同時に、AIや知性化種(アップリフト)などの自立や権利獲得を目指す勢力で、外惑星系に広まっている。

Mercurial Scavenger マーキュリアルの盗掘屋
知性化されたタコ。
主に、技術職として、廃棄された宇宙ステーションや宇宙船から資材を回収して回っている。日本語を母国語とし、水墨画を趣味にする。非常に柔らかい肉体と8本の腕を持つ。
マーキュリアルは、水星の意味もあるが、同時に、AIや知性化種(アップリフト)などの自立や権利獲得を目指す勢力で、外惑星系に広まっている。

Scum Enforcer スカムの用心棒
スカムは、小惑星帯や宇宙空間を漂う宇宙移民船、あるいは、船団で暮らす放浪の民。無政府主義で宇宙海賊や犯罪者が多い。
スカムの用心棒は、スカム社会で育った荒くれ女で、戦いとフリーセックスを愛する。

Socialite Escort 名士の随行者
内惑星圏に住む大富豪たちは、事実上の不老不死を手に入れ、堕落した退廃的な社交生活を送っている。このキャラクターは、彼らに随行し、ピエロのように娯楽を提供するとともに、ボディガードを兼ねるエスコート役。
義体は機械式で、娯楽専用のプレジャー・ポッドで、自由に外見や性別を変更できる。

Titanian Explorer タイタンの探検家
パンドラ・ゲートを使って別の太陽系の探査に挑む冒険家、ゲート・クラッシャーで、危険を愛している。
出身地であるタイタン連邦は、科学技術が発達し、サイバーデモクラシーが実現している土星最大の月タイタンを中心にした外惑星国家である。

Ultimate Merc ウルティメイトの傭兵
「戦う哲学者」とも言われる傭兵。
ウルティメイト(究極党)は、徹底した社会ダーウィニズム、選民主義、禁欲主義で、人間としての完璧を目指す思想集団で、小惑星帯や天王星に拠点を築き、自ら開発した究極の義体で軍事産業に従事している。

Venusian Negotiator 金星の交渉人
金星の大気圏上層に浮かぶ浮遊都市(アエロスタット)の連合国家である、モーニングスター・コンステレーションに所属する凄腕のネゴシエーター。政治の上層部において、メディア対策、世論の誘導、情報操作などを担当する。


注記1:この連載は、知人のゲーム・ライター 岡和田晃さんの主催するアナログ・ゲーム・スタディーズ)(編注:本サイト)にも転載されています。こちらのサイトは、アナログ・ゲームを学術的に検証しようとするゲーム学的な志向の強いサイトで、一般のゲームサイトとはかなり雰囲気が違いますので、私のぐだぐだな解説でいいのかね? とも思いますが、同サイトで行われている「エクリプス・フェイズ」紹介の、敷居を下げる意味でバランサーになればよいと思います。

注記2:今回のネタではMixiのエクリプス・フェイズ・コミュのメンバーから的確なアドバイスをいただきました。感謝します。

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第5回はこちらで読めます。

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朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)
 TRPGデザイナー、ライター。スザク・ゲームズ代表。『シャドウラン4th Edition』の翻訳をシャドウランナーズとともに務める。代表作は『ブルーローズ・ネクサス』、『深淵 第二版』(ともにエンターブレイン)、『真・女神転生TRPG 魔都東京200X』(ジャイブ)など。TRPG以外の著作に『クトゥルフ神話ガイドブック』、『超古代文明』など(すべて新紀元社)。
 (『シャドウラン4th Editionリプレイ 旅する天使たち』新紀元社、2010より)
posted by AGS at 17:26| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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