2012年04月30日

日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご報告


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日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご報告

 蔵原大、高橋志行


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[アーカイブズ学会での報告その後] 蔵原大

 2012年4月22日、学習院のアーカイブズ学会で、社会学研究生(D3)の高橋志行さんと一緒に報告してきました。
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 報告の内容は、以前に書きましたが、簡単にいえばゲーム・メディアのアーカイブ化の現状と課題についてのものです。
 http://analoggamestudies.seesaa.net/article/261905231.html

 ゲームといいましても、教育用の「シリアス・ゲーム」や軍事用の「モデリング&シミュレーション」を始めとするデジタル・ゲーム・メディアの話がメインでして、40人の聴衆の皆様にはお楽しみいただけたようです。経済産業省メディアコンテンツ課を始めとする関係者へ取材した際のこと、ゲーム・アーカイブズの概念が産学官連携による法的枠組みを欠かせない課題に直面していること、等々を実証的に言及したことが、好印象の一因だったように思います(この辺の問題意識は自分のアーカイブズ業務経験が活きているように改めて感じました)。

 さて今回取り上げました「クールジャパン」産業の内幕、立命館大学での「GAP」(Game Archives Project)の最新事情など、これからもメディア研究者として目が離せないところです。今やデジタル・ゲームは一つのメディアとして勃興しつつあるのが実情ですが、欧米やイスラームでの実例は2月に立命館大学(DiGRA大会)で報告しましたので、学習院では簡単にまとめました。

 ところでお聴きくださった方々の中に、国立公文書館にいた頃の元同僚(〜Ham氏とSak氏に御礼〜)に混じって、天皇制研究のエース瀬畑源さんがいたのには驚き(パンフで蔵原の名前をみて足をお運びくださったそうで、どうも恐縮です)。

 なんでも瀬畑さんの新刊本『公文書をつかう: 公文書管理制度と歴史研究』は売れ行きを伸ばしているらしく、実に羨ましい限り。
公文書をつかう: 公文書管理制度と歴史研究 [単行本] / 瀬畑 源 (著); 青弓社 (刊)
 この本は、公文書(例えば議事録とか機密文書)がどんな風につくられ、誰によって管理されるのかといったプロセスを、ご自身の体験を踏まえて解説しています。ゲーム・メディアと政治との関わりを研究する際には参考となること間違いなし。

 午後からは、3・11東日本大震災におけるアーカイブズ救援活動の報告を拝聴。被災した陸前高田の行政文書(津波のせいでカビだらけの危機)を救うため、神奈川県横浜市の県立公文書館から「公文書レスキューチーム」が出動していた、というのは初耳でした。報告者は隊長の木本洋祐さんでして、厳しい環境で十四万枚の文書をなんとか読めるまでに修復するエピソードにはちょっと感動(この文章を書いている現在、作業は継続中だとか)。

 ところで話は変わりますが、学会大会には業者の方々も出展されていて、ちょっと面白いパンフとかグッズがありました(資料保存につかう乾燥剤の新製品で、使用期限が迫ると色が変わるヤツなど)。色々ご説明いただいた「ニチマイ」の担当者の方に改めて御礼申し上げます(マイクロフィルムやデジタルアーカイブの業者さんです)。
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[蛇 足]
 いま学習院の史料館では、無料展示として「大正の記憶 絵葉書の時代」というのをやっているそうです(2012年4月5日〜6月9日:http://www.gakushuin.info/2012/04/post_243.html)。
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 それから今回取り上げた「クールジャパン」産業の件に関連して、こんなニュースが。

 <クール・ジャパンを脅かす韓流、官民一体モデルが鍵>
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120427-00000003-rcdc-cn

 数年前から半ば公然のことだったのに何を今さら、という話ですが、ご参考までに。

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 [アーカイブズ学会での報告その後] 高橋志行

 高橋です。蔵原大さんと共同で発表してきました。
 今回学会が開催された学習院大学は、人文科学研究科内にアーカイブズ学専攻という部門が2008年から創設され、ここ数年特にアーキビスト育成に注力している大学でもあります(参考URL: http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/ )。

 また今回、会場で頒布されていた『GCAS Report vol.1』(学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報)は、「アーカイブズ学」という立脚点から、どのような学術的展開が望めるのかについて、非常に刺激的な研究雑誌になっていました。

 特に、学習院大学アーカイブズ学専攻の院生たちによる Keeping Archives (The 3rd edition,2008) 読書会の記録は、まだアーカイブズ学それ自体に不案内な私としては、読書案内としても、またアーカイブズという営みにまつわる理論的な困難を掴む上でも、とても勉強になりました。

 ところで、『GCAS Report』および、当日の学会発表を振り返って感じたのは、(少なくとも、日本における)アーカイブズ研究の潮流は、おおまかに2つの分野があるのかな、ということでした。
 ひとつは、(1)「公文書」という、厳密に記録・保管された資料からどんな知見が導き出しうるのかという、史学的アプローチに寄り添った研究。そしてもうひとつは、(2) 世に流通し使用されるさまざまな「情報」のうち、後世に残す価値のあるものを具体的にどのように収集・管理していくのかという、どちらかといえば図書館情報学的なアプローチに近い研究です。

 今回、私達は、上記の区分で言えば(2)、つまり図書館情報学的な関心がアーカイブズ研究においても強まりつつあることを背景として、発表を作ってきました。対象を「収集」し、「保存」し、「登録」して「公開」する、その営みの総体を "archives" と呼ぶとして、今、デジタルコンテンツにはどのようなアーカイブズのあり方が求められるのか。

 個人的な課題としてはいささか大きすぎますし、また今回の発表だけで解決できたとは全く言えませんが、今後も継続的に考えてゆきたいと考えています。

posted by AGS at 22:52| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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