2011年12月12日

例えばまちは Alternative Reality Game だろうか

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例えばまちは Alternative Reality Game だろうか

 齋藤 路恵、協力:フーゴ・ハル、写真:高橋志行

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 2011年11月8日、わたしは墓の上を歩いていた。
 正確に言えば、歩いていたときはそれが墓の上だと知らなかったのだ。
 いっぱい記念碑があるなぁと思っていたら、それが墓だった。

 わたしはその日、東京の区界(くかい)を歩くつもりでいた。
 区界、あるいは区境(くざかい)は、区と区のあいだのさかい目のことだ。
 その日は、JR浅草橋駅西口から新橋駅烏森口まで歩くつもりだった。
 千代田区の区界にそって歩こうとしたのだ。

 浅草橋駅からあるいて少しすると、川があって屋形船がたくさん泊まっていた。
 隅田川の支流らしい。

例えばまちは1.jpg

 フーゴ・ハルさんが教えてくれた。
 この川の真ん中は、千代田区と台東区と中央区の3つの区のさかい目なんだそうだ。
 このような3つの区のさかい目になっている地点は珍しいらしい。
 


 フーゴさんはゲームブック作家/イラストレーター/パズル創作者/ボードゲームデザイナーと多彩な才能を持つ方だ。趣味で十数年にわたって区境を少しづつ歩き回っているという。奥谷道草名義で雑誌「散歩の達人」に取材記事を書くことも多く、いわばプロの散歩者だ。 

 橋の手前には小さな公園があって、遊具はピンクとか 黄色とか みず色とか パステルカラーにぬられている。

 まっすぐな道が続いて、見通しがいい。

 歩道橋の上で、街灯のボールに触れられるような変わった道もある。

例えばまちは2.jpg

例えばまちは3.jpg




 むかしの江戸は水上交通が盛んな街だったらしい。
 橋を埋めたときの碑やら記念の小さな公園があちこちに作られている。

 その日、わたしは32歳の誕生日だった。それをご存じだったフーゴさんからサイン入りの著書をいただいた。『虹河の大冒険』という、ゲームブックならぬ「ブックゲーム」だ。
迷宮キングダム ブックゲーム 虹河の大冒険 (Role&Roll Books) [新書] / フーゴ・ハル (著); 河嶋 陶一朗, 冒険企画局 (監修); 新紀元社 (刊)
 途中の道の一角に、取り壊された橋の一部が解説付きで展示されていた。
 かなり以前に設置されたとみえ、ぼろぼろになっていた。
 あるいは放置されていると言ったほうがよいかもしれなかった。
 いまさら注目する人もいないだろう。

「何もしてないから、どんどん傷んでいくでしょうねぇ」

 と同行者のKさんが言った。
 かなり廃れた橋げたのすきまから、猫が座ってこちらを見ていた。
 警戒するでもなく、気を許すでもない距離だった。




 銀座では区界を少し外れて、三越に寄り道した。
 フロアを貫くような巨大な彫刻をみて、素材を推測した。
 天女像(まごころぞう)と言うらしい。

例えばまちは4.jpg




 最後はニュー新橋ビルの喫茶店でみんなでお茶を飲んだ。
 打ち合わせ中の会社員が大勢いた。窓際のテーブルに大きな声で電話をしているサラリーマンもいた。関西弁が店内によく響いた。
 喫茶店は活気があって、わたしたちもアナログゲームやブックゲームや、そのほかのいろいろな話を時間の許す限りつづけた。

 ビル内の喫茶店の近くの店では、媚薬と名指しされた商品が売られていた。
 わたしはトイレに行ったときそれを見つけた。
 お土産にほしかったが、高かったので購入はしなかった。

 後日、フーゴさんにお礼のメールを出して、
「橋を埋めるとき、人は記念碑を建てたいのですね。(笑)」
 と書いた。

 フーゴさんは
「暗渠とは河の生物を生き埋めにするのと同じことですし、」
 と返事をくれた。

 わたしは、墓の上を歩いていた。


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posted by AGS at 22:10| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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