2011年06月09日

森と芸術 私たちの中にひそむ森の記憶


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【レポート】森と芸術 私たちの中にひそむ森の記憶

 齋藤路恵 (協力:岡和田晃)

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 ファンタジーRPGのシナリオで森はおなじみの場所です。ファンタジー文学や映画でも「森」は重要な舞台になりますね。『世界の合言葉は森』という小説もあります。SF・ファンタジー作家として知られるアーシュラ・K・ル=グィンの作品です。
 ル=グィンは「ゲド戦記」の作者としてご存知の方も多いかもしれません。


 そんなわけで、今回は初夏にぴったりのイベント、森に関する展覧会をご紹介いたします。


 東京都庭園美術館(目黒駅徒歩7分、白金台駅徒歩6分)で行われている企画展「森と芸術 私たちの中にひそむ森の記憶」は森や庭園に関するさまざまなイメージを集めた展覧会です。

東京都庭園美術館:展覧会情報
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/mori/index.html

※本稿における画像はこちらのHPから引用させていただきました。



 特に、第2章「神話と伝説の森」、第4章「アール・ヌーヴォーと象徴の森」、第6章「メルヘンと絵本の森」などは、シナリオフックとして活用できるかもしれません。


 入り口ではまず、『森のカメラ・オブスクラ』がお出迎えです。静謐な空間で思わず中に入ってみたくなりますが、そこはぐっと我慢します。触れられないからよりいっそう美しく感じるのかもしれませんし。

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東京大学総合研究博物館インターメディアテク(IMT) 寄付研究部門制作 クリエーティブ・ディレクション:西野嘉章 ≪森のカメラ・オブスクラ≫


 第2章「神話と伝説の森」では、ケルト・ゲルマンの伝説に取材した森が描かれます。アルブレヒト・デューラーが描いた《アダムとエヴァ》などが展示されています。

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アルブレヒト・デューラー《アダムとエヴァ》1504年


 左側の樹の幹のぼっこりと立体的なこと!同行者は男女の身体の書き方に現在ほど違いがないことを指摘していました。

 ちなみに、アルブレヒト・デューラーのエヴァとアンリ・ルソーのエヴァはずいぶん違います。ルソーのエヴァはあんなにざわついた雰囲気があるのに、動物/人間はエヴァだけです!

 でも、ざわついているようにみえてしずかな雰囲気もありますね。しずかなのに耳をすますとざわめきが聞こえてきそうな感じです。

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アンリ・ルソー《エデンの園のエヴァ》1906-1910年頃 


 アンリ・ルソーのエヴァは第1章「楽園としての森」でみることができます。


 第3章は「風景画のなかの森」です。もともと中世における風景画は、風景を描くのではなく、キリスト教の「神」を描くものでした。風景は背景だったようです。

 美術史家のケネス・クラークは『風景画論』において、歴史や神話に限定されていた絵画の主題が徐々に風景の描出そのものに移り変わっていくさまを語りました。バルビゾン派の代表的な画家コローの絵画にはそうした中世への憧憬が強く打ち出されているそうです。

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カミーユ・コロー《サン-ニコラ-レ-ザラスの川辺》1872年


 第4章は「アール・ヌーヴォーと象徴の森」です。アール・ヌーヴォーは、19世紀末から20世紀初頭にかけて起こった芸術運動です。アール・ヌーヴォーは「新しい芸術」を意味するフランス語です。アール・ヌーヴォーでは曲線や植物の模様がたくさん用いられました。アール・ヌーヴォーでガラス工芸を代表するエミール・ガレは「わが根源は森の奥にあり」と述べたそうです。会場ではエミール・ガレのかわいいウサギの陶器にも出会えます。

 この章ではチラシなどにもっともたくさん使われているポール・セリュジエ『ブルターニュのアンヌ女公への礼賛』を観ることができます。

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ポール・セリュジエ《ブルターニュのアンヌ女公への礼讃》1922年


 小さな画像ではわかりづらいのですが、女公の左手と鉢を捧げる若者の頬が明るくなっており、自然と視線がその間にある鉢に向けられます。他にも女公の帽子のてっぺん、女公の帽子の左ふち、鉢の左側のふちなどが明るくなっており、左上から右下へ光が流れているかのような効果が出ていると感じました。

 第5章「森のさまざまなイメージ−庭園と「聖なる森」」では、川田喜久治の『聖なる森―Parco dei Mostri』シリーズを見ることができます。これはイタリアで聖なる森や怪物庭園と呼ばれている場所の写真です。苔むした神話生物たちの石造に思わずわくわくします。

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川田喜久治《地獄の入り口 ボマルツォ、ヴィテルボ、イタリア(『聖なる森-Parco dei Mostri』より)》 
1969年


 こちらのHPにたくさん写真が載っていました。
http://blogs.yahoo.co.jp/rando5757/folder/1417814.html?m=lc&p=1
 川田さんの写真の雰囲気と比べてみても楽しいかもしれません。


 第6章「メルヘンと絵本の森」では絵本のイラストからミニチュアブックセット、クリスマスピラミッドまでさまざまな作品を味わうことができます。

 こちらはギュスターヴ・ドレの描いた赤ずきんです。細密な線の生みだす質感を楽しむことができます。

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ギュスターヴ・ドレ《赤ずきんちゃん(『ペローのおとぎばなし』より)》1864年刊


 庭園美術館はその名の通り、庭園を持つ美術館です。展示室と展示室の間にある休憩室にも屋外型のものがあり、暖かい日はそこでくつろぐこともできます。

 建物自体もアール・デコ様式の瀟洒なものです。わたしは一部屋ごとに天井や足元の装飾を眺めてしまいました。わたしは出入り口付近のロッカー周りが特に気に入りました。

 森のひろがり、森の暗闇、そして森の光。

 ご興味があればさまざまな森を楽しみにお出かけ下さい。


企画展「森と芸術 私たちの中にひそむ森の記憶」
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/mori/index.html

7月3日まで開催。
開館時間10:00-18:00。(入館は閉館の30分前まで。電力供給状況によっては開館時間の変更があります)
休館日第2・第4水曜日です。
posted by AGS at 16:53| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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