2011年05月25日

『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(4):SF文学の場合

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『エクリプス・フェイズ』ゼロ年(Eclipse Phase: Year-0)―(4):SF文学の場合

 岡和田晃 (協力:阿利浜秀明)

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Homepage | Eclipse Phase

 SFゲーム『エクリプス・フェイズ』(Eclipse Phase, http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html )は未来の太陽系社会を扱った作品です。その中で描かれているテクノロジーや社会情勢が今のわたし達を原点としているのは言うまでもありません。サイエンス・フィクションをさらに理解し、さらに楽しみたいのだとしたら、まず現実のサイエンスをさらに理解し、さらに楽しむという所から入るのも一つの手法でしょう。

 そこで今後は"『エクリプス・フェイズ』ゼロ年"という連載コラムを通じ、未来技術・複数の領域での先端研究に関連しそうな研究成果・講演・セミナー等を随時ご紹介していきます。この第四回では、『エクリプス・フェイズ』と密接な関係のある、SF文学の最先端についてご紹介いたします。

 日本におけるSF文学の育ての親、柴野拓美は、SFを「人間理性の産物が人間理性を離れて自走することを意識した文学」として捉え、科学と文学の止揚に留まらない、いわば新たなポストヒューマニズムの形を考えました(*)。「SFマガジン」の創刊から50年がすでに経過し、もはやSF文学は、(会話型RPGがそうであるように)単なる読み捨ての暇つぶしに留まるものではなくなっています。そして、『エクリプス・フェイズ』がそうであるように、SF文学の最先端は、人間とテクノロジーのありうべき関係を旧来の人間像の更新の中から紹介するものとなっています。そこで今回は、日本におけるSF文学の最先端を体感するための情報をご紹介いたしましょう。

 もともと『エクリプス・フェイズ』もまた、デザイナーのロブ・ボイル氏(Mr.Rob Boyle)曰く「私たちは『エクリプス・フェイズ』を通じて、単に楽しいSFゲームを生み出す以上のことを成し遂げたいと思い、また私たちが重要と考えたテクノロジーの発展によって引き起こされた社会的・政治的な問題を紹介したいとも思っていました」とのこと( http://analoggamestudies.seesaa.net/article/199514106.html )でした。Analog Game Studiesではロブ・ボイル氏の精神に共鳴し、『エクリプス・フェイズ』をさらに楽しむための材料を提示いたします。

 なお以前の記事も併せてお読みいただけますとありがたく思います。

○「ゼロ年」第一回「東京大学の場合」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198290624.html
○「ゼロ年」第二回「現役研究者ブログの場合」: http://analoggamestudies.seesaa.net/article/198693657.html
○「ゼロ年」第三回「ボードゲームの場合」:http://analoggamestudies.seesaa.net/article/201383672.html

○Homepage | Eclipse Phase: http://eclipsephase.com/

SF文学 (文庫クセジュ) [新書] / ジャック ボドゥ (著); 新島 進 (翻訳); 白水社 (刊)SF Japan 2010 AUTUMN [単行本(ソフトカバー)] / SF Japan 編集部 (編集); 徳間書店 (刊)

(*)拙稿「柴野拓美のメソドロジー――「『集団理性』の提唱」再読」(「SF JAPAN」2010 Autumn、徳間書店)を参照されたい。

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【@.SF Prologue Waveの場合】


●日本SF作家クラブ公認ウェブマガジン「SF Prologue Wave」
http://www.env.go.jp/chemi/communication/1-6.html


 こちらは1963年より続く日本SF作家クラブが、このたび新しく開始したプロジェクト「SF Prologue Wave」のホームページになります。

 『光を忘れた星で』が話題となっている代表の八杉将司氏に始まり、日本SF新人賞、小松左京賞出身の実力派作家たち、日本SF評論賞受賞者、あるいはあっと驚くベテラン作家陣まで、多様な顔ぶれが魅力あふれるコンテンツを提供していきます。現在は、ショートショートやコラムを、無料で楽しむことができるようになっています。

 Analog Game Studiesをお読みの方々、そして『エクリプス・フェイズ』に興味がある方々には、日本SF新人賞受賞作家たちの力作、伊野隆之『樹環惑星――ダイビング・オバリア――』および山口優『シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約』、『光を忘れた星で』が参考となるでしょう。著者紹介から、一部を抜粋してお見せします。

樹環惑星――ダイビング・オパリア―― (徳間文庫) [文庫] / 伊野 隆之 (著); 奥瀬 サキ (イラスト); 徳間書店 (刊)
 「樹環惑星−ダイビング・オパリア−」では、SFの醍醐味の一つである異世界の創造にこだわり、熱病を巡るエコロジカルな謎解きを軸に、星系外に広がる薬物汚染や、成層圏に近い高度からのスカイダイビング、自治政府内外の政治的な軋轢等々を盛り込んだ、ある意味で今できる事をすべて盛り込んだ小説です。この異世界を、是非、一緒に旅をしていただけることを期待しております。(http://prologuewave.com/archives/582


シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約(ちかひ) (徳間文庫) [文庫] / 山口 優 (著); 徳間書店 (刊)
「シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約」は、技術的特異点、即ち人類の知能を人工知能が凌駕する歴史上のポイントを描いた小説です。人の頭脳は、速度や記憶量では既にコンピュータに到底及ばないものの、パターン認識能力やフレーム問題の超越によって未だにコンピュータを遙かに超える知性を保っています。ですが、これらの優越点も、いずれ人工知能は獲得していくでしょう。それもあと数十年以内に。(http://prologuewave.com/archives/583


光を忘れた星で (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)] / 八杉 将司, 中山 尚子 (著); 講談社 (刊)
もちろん人類が失明したという話は小説でも映画でもたくさんありますけど、この小説の世界ではもとより人類が生まれつき視覚を持っていません。とうの昔にそんなものはなくしてしまって、だから視覚を失ったからといって右往左往することもなく、また嘆いたりもせず、そんなものなどなくともなんとも思ってなく、普通に生活をし、文化を築き上げています。まあ、H・G・ウェルズの「盲人の国」もそんな世界の話ですが。ただ、語り手をその世界の住人にしたことで、当人にとっては視覚が何か想像もつかないわけで、文章にしても視覚に関係するものがあってはいけない……ということでこんなことに。
http://prologuewave.com/archives/600


 今回の「Prologue Wave」には、お二人のショートショートも掲載されていますので、併せてお楽しみください。

 また、「SF Prologue Wave」では、出版不況、あるいは震災を乗り越えていこうという強い決意を込めたエッセイも掲載されています。SF作家たちがかような切り口からものを書くのは意外に思われるかもしれませんが、彼らの問題意識を知り、打開策を模索する一助とするためにも、ぜひとも目を通していただけましたらありがたい限りです。

○SF Prologue Wave(片理誠): http://prologuewave.com/archives/570#extended
○東日本大震災について(町井登志夫): http://prologuewave.com/archives/571#extended

 『エンドレス・ガーデン―ロジカル・ミステリー・ツアーへ君と』の片理誠氏については、Prologue Waveでショートショートも公開されました。
 また、第5回日本SF評論賞選考委員特別賞受賞者の高槻真樹氏による「星新一展」のレビュー記事も掲載されておりますので、お楽しみください。

 そして、「SF Prologue Wave」のほかにも、若き才能が募るプロジェクトは、着々と進行しています。

 たとえば、第1回創元SF短編賞の最終候補作を集めた『原色の想像力』というSF短篇集が発売されました。

 創作に興味ある方、あるいは日常を一味違った切り口で捉えた方、新鮮な書き手によるSF短編をお求めの方は、『原色の想像力』にアクセスしてみてください。きっと損はしません。

 なお、『原色の想像力』に収められた短編「盤上の夜」(宮内悠介)は、アナログゲーム(囲碁)を題材にしたSF作品であり、Analog Game Studiesの読者の方には一見の価値があるでしょう。

原色の想像力 (創元SF短編賞アンソロジー) (創元SF文庫) [文庫] / 大森 望, 日下 三蔵, 山田 正紀 (編集); 東京創元社 (刊)

 ウェブを題材にしたプロジェクトと言えば、「SF Prologue Wave」に先駆け、東京創元社からはウェブマガジン「Webミステリーズ!」が毎月更新されています。

 創元SF短編賞受賞者の新作や、ヴィクトリア朝イングランドを舞台にした怪異譚『死美人辻馬車』等で知られる北原尚彦氏の古書探求コラムの連載など、非常に充実した内容となっております。
 SF関係の解説やレビューも多い号ですので、こちらもお楽しみください。

●Webミステリーズ!
http://www.webmysteries.jp/

エンドレス・ガーデン ロジカル・ミステリー・ツアーへ君と死美人辻馬車 (講談社文庫) [文庫] / 北原 尚彦 (著); 講談社 (刊)

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【A.SF評論の場合】


 イオ/角川春樹事務所が発行している、「小松左京マガジン」という雑誌があります。

 小松左京氏責任編集という形をとりながら、今回発売された41号まで、季刊のペースを崩さず、刊行を継続しています。

ksm41.jpg
小松左京マガジン 第41巻 [単行本] / 小松 左京 (編さん); イオ (刊)


 今回の41号では、SF評論関係の記述が、特に強化されています。
 

・石和義之「実存のラスト・イグニッション――男祭りとしての『日本沈没』」

・下村健寿「『復活の日』を生命科学史の中で考察する(1)」

・山田宏明「『果てしなき流れの果に』論――ヘーゲルとダーウィンとダンテの見た夢


 といったように、それぞれSFと高度消費社会、SFと生命科学、SFと最新の宇宙論との関わりを、「小松左京」という固有名を主体としつつ論じたものであり、『エクリプス・フェイズ』と現代社会との関わりを考えるためには、いずれも役に立つアプローチを提示してくれることと思います。


 本日25日に発売される「SFマガジン」2011年7月号では、第6回日本SF評論賞選考委員特別賞を受賞した「『高い城の男』――ウクロニーと易経」が掲載されます。『エクリプス・フェイズ』をプレイすると、時折フィリップ・K・ディックの目眩く狂気の世界を体感したような錯覚にとらわれることがあります。それは、『エクリプス・フェイズ』で表現されるポストヒューマニズムのあり方――あるいはキャラクターの「死」の位置づけ――によるのではないかと考えます。スタニスワフ・レムはディックを「にせ者たちに取り巻かれた幻視者」と評しましたが、ディックの世界と、『エクリプス・フェイズ』のポストヒューマニズムのあり方については、考えを深めていく必要があるのではないかと考えています。

 ディックといえば、『ハーモニー』が、フィリップ・K・ディック記念賞を受賞したことも記憶に新しいですが、彼の功績をどのように今後に活かしていくのかが、今後のSFの趨勢を占っていくのは間違いないでしょう。

 「SFマガジン」の特集記事は「伊藤計劃以後」となっておりますが、何より『エクリプス・フェイズ』は、伊藤計劃氏にこそ触れてほしかったRPGでもあります。

S-Fマガジン 2011年 07月号 [雑誌] [雑誌] / 早川書房 (刊)

 「伊藤計劃以降」の特集では、先に述べた八杉将司氏をはじめとした「Prologue Wave」の作家たち、また他の時代を担う作家たちを紹介したガイド記事、あるいは伊藤計劃氏の『ハーモニー』と英訳版のHARMONYの違いに焦点を当てた評論なども掲載されています。さらには、「現代SF作家論シリーズ」では、先ほどの石和氏によるアーシュラ・K・ル=グィン論も掲載されています。


 なお、下記のSF作家や評論家たちが集う下記のウェブサイトでは、数々のSF評論やコラムが公開されており、頻繁に更新がかかるので、ご興味のある方はチェックなさることをお薦めいたします。

●Speculative Japan:
http://speculativejapan.net/

●21世紀、SF評論:
http://sfhyoron.seesaa.net/


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【B.『エクリプス・フェイズ』参考資料の場合】


 『エクリプス・フェイズ』は、おそらく今まで発売されたSF-RPGの中でも、サイバーパンク以降のSF文学の美観に、最も正面から向き合った作品となっているのは間違いありません。

 『エクリプス・フェイズ』P.394に記載された参考資料には膨大なSF文学・コミックとグラフィックノベル・ノンフィクション・ロールプレイングゲーム・映画とテレビドラマ等がリスト化されていますが、ここでは、SF文学の参考資料表をそのまま引用し、邦訳があるものは付記いたしました。

 リストに抜けを見つけられた場合は、お手数ですが、Analog Game Studiesの公式窓口(analoggamestudies1★gmail.com)(★→@)にまでメールにてお知らせください。

Eclipse Phase Core Rulebook

Eclipse Phase Core Rulebook

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: October 13, 2009
  • メディア: Hardcover, Full Color



 本稿のリサーチは、ライター/翻訳家集団「戦鎚傭兵団」に所属している、翻訳家の阿利浜秀明さまに行なっていただいた後、岡和田がチェックいたしました。この場を借りて、阿利浜さまに感謝いたします。

 はてさて、あなたは以下のSF文学をどれくらいお読みになったでしょうか? 

 『エクリプス・フェイズ』を楽しむための資料として、あるいは『エクリプス・フェイズ』から始まる読書ガイドとして、存分にご活用をいただけましたら幸いです。

 なお、参考資料に挙げられているSF文学が『エクリプス・フェイズ』といかなる影響関係にあるのかは、今後、また別の機会に特定の作品を取り上げ、考察していきたいと考えています。ご期待ください。


●Ian Banks/イアン・バンクス
The “Culture” Series
Consider Phlebas
The Use of Weapons
The Player of Games『ゲーム・プレイヤー』(角川文庫)
The State of the Art
Inversions
Excession
Look to Windward
Matter

●Greg Bear/グレッグ・ベア
Moving Mars『火星転移』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Queen of Angels『女王天使』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Slant『斜線都市』上下巻(ハヤカワ文庫SF)

●David Brin/デイヴィッド・ブリン
Earth『ガイア -母なる地球』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
The “Earthclan” series
Startide Rising『スタータイド・ライジング』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
The Uplift War『知性化戦争』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Sundiver『サンダイバー』(ハヤカワ文庫SF)

●Paul Di Filippo/ポール・ディ=フィリポ
Ribofunk

●Cory Doctorow/コリイ・ドクトロウ
Down and Out in the Magic Kingdom『マジック・キングダムで落ちぶれて』(ハヤカワ文庫SF)
Eastern Standard Tribe

●Greg Egan/グレッグ・イーガン
Axiomatic
Diaspora『ディアスポラ』(ハヤカワ文庫SF)
Distress『万物理論』(創元SF文庫)
Permutation City『順列都市』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Quarantine『宇宙消失』(創元SF文庫)

●Warren Ellis/ウォーレン・エリス
Crooked Little Vein

●Kathleen Ann Goonan/キャスリン・アン・グーナン
The “Nanotech Cycle”
Queen City Jazz
Mississippi Blues
Crescent City Rhapsody
Light Music

●Peter Hamilton/ピーター・ハミルトン
The “Commonwealth Saga”
Pandora's Star
Judas Unleashed
The “Greg Mandel Trilogy”
Mindstar Rising『マインドスター・ライジング』上下巻(創元SF文庫)
A Quantum Murder
The Nano Flower

●James Hogan/ジェイムズ・P・ホーガン
Voyage from Yesteryear『断絶への航海』(ハヤカワ文庫SF)

●Ken Macleod/ケン・マクラウド
The “Fall Revolution” series
The Star Fraction
The Stone Canal
The Cassini Division
The Sky Road
Newton's Wake『ニュートンズ・ウェイク』(ハヤカワ文庫SF)

●Richard Morgan/リチャード・モーガン
The “Takeshi Kovacs” series《タケシ・コヴァッチ》シリーズ
Altered Carbon『オルタード・カーボン』上下巻(アスペクト)
Broken Angels『ブロークン・エンジェル』上下巻(アスペクト)
Woken Furies『ウォークン・フュアリーズ』上下巻(アスペクト)
Thirteen

●Linda Nagata/リンダ・ナガタ
The Bohr Maker『極微機械(ナノマシン)ボーア・メイカー』(ハヤカワ文庫SF)
Deception Well『幻惑の極微機械(ナノマシン)』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Limit of Vision
Tech Heaven
Vast

●Frederick Pohl/フレデリック・ポール
Gateway『ゲイトウエイ』(ハヤカワ文庫SF)

●Alastair Reynolds/アレステア・レナルズ
Absolution Gap
Chasm City『カズムシティ』(ハヤカワ文庫SF)
The Prefect
Pushing Ice
Redemption Ark『量子真空』(ハヤカワ文庫SF)
Revelation Space『啓示空間』(ハヤカワ文庫SF)

●Kim Stanley Robinson/キム・スタンリー・ロビンスン
The “Mars Trilogy” (火星三部作)
Red Mars『レッド・マーズ』上下巻(創元SF文庫)
Blue Mars
Green Mars『グリーン・マーズ』上下巻(創元SF文庫)
The Martians

●Karl Schroeder/カール・シュレーダー
Ventus

●Dan Simmons/ダン・シモンズ
Endymion『エンディミオン』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Fall of Endymion『エンディミオンの覚醒』※上下巻(ハヤカワ文庫SF)
 ※Rise of Endymionの誤植と思われる
Llium『イリアム』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
“Hyperion Cantos”
Hyperion『ハイペリオン』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Fall of Hyperion『ハイペリオンの没落』上下巻(ハヤカワ文庫SF)
Olympos『オリュンポス』全3巻(ハヤカワ文庫SF)

●Neal Stephenson/ニール・スティーヴンスン
Diamond Age『ダイヤモンド・エイジ』上下巻(ハヤカワ文庫SF)

●Bruce Sterling/ブルース・スターリング
Caryatids
Crystal Express
※『蝉の女王』(ハヤカワ文庫SF)収録作、ならびに「間諜」(『80年代SF傑作選』(ハヤカワ文庫SF)、「テリアムド」(「SFマガジン」1987年2月号)、「美と崇高」(『20世紀SF5』(河出文庫))、「小さな魔法のお店」(「SFマガジン」2000年12月号)、「江戸の花」(「SFマガジン」1986年10月号)、「アウタゴノストの聖餐」(「SFマガジン2003年12月号)の短編をそれぞれ集めたもの。
Holy Fire『ホーリー・ファイヤー』(アスペクト)
Schismatrix Plus
※『スキズマトリックス』(ハヤカワ文庫SF)とCrystal Expressの合本。

●Charles Stross/チャールズ・ストロス
Accelerando『アッチェレランド』(早川書房)
Glasshouse
Halting State
Iron Sunrise『アイアン・サンライズ』(ハヤカワ文庫SF)
Singularity Sky『シンギュラリティ・スカイ』(ハヤカワ文庫SF)
Toast

●Karen Traviss/カレン・トラヴィス(*)
City of Pearl

●Vernor Vinge/ヴァーナー・ヴィンジ
Across Realtime
A Deepness in The Sky『最果ての銀河船団』(創元SF文庫)
A Fire Upon The Deep『遠き神々の炎』(創元SF文庫)
Rainbow's End『レインボーズ・エンド』(創元SF文庫)
True Names and Other Dangers
※『マイクロチップの魔術師』(新潮文庫)と、未訳短編(共作含む)。

●Elisabeth Vonarburg/エリザベス・ヴォナーバーグ(*)
Slow Engines of Time

●Peter Watts/ピーター・ワッツ
Blindsight
“Rifters' Trilogy”
Starfish
Maelstrom
Behemoth ([ベータ※]-Max + Seppuku)
 ※ギリシア文字のベータ

●Scott Westerfeld/スコット・ウェスターフェルド
The Risen Empire
The Killing of Worlds

●Walter Jon Williams/ウォルター・ジョン・ウィリアムズ
Aristoi
Angel Station
Voice of the Whirlwind『必殺の冥路』(ハヤカワ文庫SF)

●David Zindell/デイヴィッド・ジンデル
The Broken God
Neverness『ありえざる都市』全2巻(ハヤカワ文庫SF)
War in Heaven.
The Wild

(*)2011年5月時点で資料に慣例表記が見つからなかったので、暫定的に宛てた人名です。読み方をご存知の方はお知らせください。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
『エクリプス・フェイズ』参考資料リスト(小説) by 阿利浜秀明(Hideaki Arihama)、岡和田晃(Akira OKAWADA) is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 継承 3.0 非移植 License.

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【C.宇宙的恐怖の場合】

 あなたは「クトゥルフ神話」をご存知でしょうか? これはアメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが生み出し、そしてラヴクラフトの死後も書き継がれてきた神話体系を意味します。

 彼の小説は、狼男や吸血鬼といった古典的なホラーの範疇に留まらず、また(天文学に代表される)科学的な批評意識を取り入れながら、ポオやダンセイニといった作家たちが形成した世界観を独自に咀嚼したものでもあり、「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と呼ばれる独特の色調を有しています。そして、そのスケール感は、ジェイムズ・ジョイスやミシェル・ビュトールといった、20世紀文学における最も冒険的な作家たちの仕事と遙かな照応を見せています。

 この「クトゥルフ神話」の「宇宙的恐怖」が、井上雅彦、伊藤潤二、高橋葉介ら各氏によって、ヴィジュアライズ、あるいは造形化されます。 

 東京都銀座の「スパンアートギャラリー」では、5月24日から「邪神宮 〜深〜 The Deep Exibition of Cthulhu」という展覧会が6月4日まで開催される予定となっています。

 かつて、SF評論家の野田昌宏氏は、「SFは絵だねェ」という名言を残しました。『エクリプス・フェイズ』においても、想像力を補完するアートワークの美しさは重要な要素となっています。

 加えて、『エクリプス・フェイズ』は、The Roleplaying Game of Transhuman Conspiracy and Horrorという副題にあるとおり、陰謀と恐怖が重要な主題となっていますが、宇宙を舞台に陰謀と恐怖を扱うという意味においては、ラヴクラフトの「クトゥルフ神話」の世界観とも響き合いを見せるでしょう。想像力の翼を広げるためにも、ぜひご来場ください。

邪神宮 [単行本(ソフトカバー)] / 岩井志麻子 (著); 児嶋都 (監修); 京極夏彦 (イラスト); 学習研究社 (刊)


邪神宮 〜深〜 The Deep Exibition of Cthulhu

期間:2011年5月24日(火)‐6月4日(土)
時間:11:00〜19:00 (最終日は17:00まで)※日曜休廊
場所:スパンアートギャラリー
住所:東京都中央区銀座2-2-18 西欧ビル1

http://natalie.mu/comic/news/48890



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【終わりに】

 今回は『エクリプス・フェイズ』に冠するSF文学をもろもろ紹介してきましたが、とても一回の紹介に収まる分量ではありません。ただ一つ確実に言えるのは、SF文学を知れば知るほど、『エクリプス・フェイズ』( http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html )で描かれる世界をより楽しめるようになるということです。

 大事なので繰り返しますが、『エクリプス・フェイズ』は、ただ座して口を開き、楽しませてもらうことを待つ受身の時間潰しではまったくありません。ユーザーが積極的に楽しさを模索すればするほど面白さが増す創造的なRPGであり、また、ユーザーの創造性を引き出すための総合創作ツールとして捉えることもできる作品なのです。

 事実、『エクリプス・フェイズ』はCreative Commonsが付記された作品であり、ガイドラインに従えば、この設定を用いた小説やコミック、映像などの作成を自在に行なうことが可能となっています。

 いずれにせよ、あなたなりの『エクリプス・フェイズ』の楽しさを考えるにあたって、SF文学は格好のガイドとなってくれるでしょう。ぜひ、『エクリプス・フェイズ』に、そしてSF文学に触れてみてください。

 それでは次回にまたお会いしたく思います。


Eclipse Phase Quick-Start Rules

エクリプス・フェイズ Quick-Start Rules

  • 出版社/メーカー: Posthuman Studios, LLC.
  • 発売日: January 2011
  • メディア: 無料PDF




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Bibliography: EclipsePhase-2nd.pdf, EclipsePhase_QuickStartRules.pdf, PS+21200_EP_Sunward.pdf which all have been produced from Catalyst Game Labs and Posthuman Studios in 2009-10.

※読者の方のご指摘により、一部記述を修正済です。この場を借りて感謝いたします。(201109/09)
posted by AGS at 00:28| エクリプス・フェイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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