2011年04月23日

会話型RPGのシナリオ・デザインのコツ――「謎」を活かす設定と構造、『Pathfinder RPG』編――

 本稿は齋藤路恵氏の「高嶺格と会話型RPG 身体をめぐって」で提起されていた「1回のセッションにふさわしい謎のあるシナリオはどのようにしたら作れるのでしょうか? PCの追及を適度にかわす謎はどうしたら作れるのでしょうか?」という問題への応答として、須賀谷朋さまよりAnalog Game Studiesに寄せられた原稿を再構成したうえで、Analog Game Studiesで公開させていただくものです。

 具体例として『Pathfinder RPG』という会話型RPGのルール・システムが挙げられていますが、この方法論は、その他のRPG――たとえば『ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版』や『ウォーハンマーRPG』――に、適用することも可能でしょう。

 また、本稿でのシナリオ・デザイン方法は、「謎」を可能にする構造はどのようなものか、という観点からまとめられているため、ミステリ小説の読解や創作などにも応用することができるかもしれません。
 皆さまの問題意識に合わせ、本稿を活用なさっていただければ幸いです。(岡和田晃)

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会話型RPGのシナリオ・デザインのコツ
 ――「謎」を活かす設定と構造、『Pathfinder RPG』編――


 須賀谷朋 (改稿協力:岡和田晃、仲知喜)

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 Analog Game Studiesの記事、特に齋藤路恵氏による「高嶺格と会話型RPG 身体をめぐって」を非常に興味深く、また大いに共感をもって読ませていただきました。
 
 ここで提起されていた、「1回のセッションにふさわしい謎のあるシナリオはどのようにしたら作れるのでしょうか? PCの追及を適度にかわす謎はどうしたら作れるのでしょうか?」という問題について、今までゲームマスターをしてきた経験上、1つの方法があります。そのことを、応答としてまとめてみました。最適かどうかはさておき、何かしらのヒントになるかもしれません。


●「謎」を可能にするもの

  「謎」をストーリーの中心においたフィクションの形式と言えば、まず、ミステリが思い浮かびますが、ミステリでは往々にして、フーダニット(Who done it?=犯人)、ホワイダニット(Why done it?=動機)、ハウダニット(How done it?=手段)という3つのポイントに焦点が当てられます。

 こうした3つのポイントのように「謎」そのものを多角的に考え、「謎」の(シナリオにおける)あり方を工夫することも重要ですが、一方で、私は解き明かし甲斐のある「謎」の提示を可能にするような、(前提となる)シナリオの構造に気を配ることが、シナリオ・デザインにあたっての最重要事項であると考えています。

 以下、最近私がメインで遊んでいる『Pathfinder RPG』(D&D第3版系列のシステムを受け継いだRPG)を使って、単発シナリオのデザインを、主に設定と構造の観点から考えていきたいと思います。

 『Pathfinder RPG』のシステムはキャンペーン・ゲームを重視したルール・システムですが、単発のセッションにおいて、特にコンベンション(RPGなどのゲームを遊ぶことを目的とした大規模な集会)のように時間制限が用いられている場合でも、工夫次第で面白く遊ぶことができます。この記事は、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の第3版や第3.5版でのセッションに応用することも可能です。

Pathfinder Roleplaying Game: Core Rulebook [ハードカバー] / Jason Bulmahn (イラスト); Paizo Publishing (刊)Pathfinder Roleplaying Game: Bestiary [ハードカバー] / Jason Bulmahn (著); Paizo Publishing (刊)

シナリオ作法

●【シーン】の定義

 まず、シナリオを構造化して3つのシーンに分けます。各シーンにはゲーム上の機能があります。

1) 【導入シーン】:シナリオの目標を明らかにします。
2) 【探索シーン】:目標の達成に向けて情報収集を行ないます。
3) 【ダンジョン・シーン】:目標達成のための最後の試練です。シナリオの核となるダンジョン攻略です。

 セッションに占めるシーンの割合は均等ではありません。これはケース・バイ・ケースですが、プレイ時間の配分は1:2:3ほどを見込んでください。

 ここから、シーン順にシナリオの作成過程を見ていきます。


●【導入シーン】

 【導入シーン】では、ミステリアスな魔法使い、人目を忍んだ伯爵夫人、深手を負った行商人などが登場します。彼らは問題を抱えており、問題解決のため冒険者に冒険を依頼します。

 まず、シナリオの目標を設定します。ある遺跡に行って特定のアイテムを見つける、あるいは特定の魔物を退治する、盗まれた貴重品を奪回する、誘拐された要人を救出するなど、簡単なもので構いません。

 『Pathfinder RPG』では基本的な意思決定は「パーティ1つで1単位」なので、導入と目的は基本的に1つで構わないかと思います。

 次に、目標に関わる設定を決めます。遺跡を探索して特定のアイテムを探すシナリオであれば「誰が何のために、いつまでにそのアイテムが必要なのか」、「そのアイテムはどういった由来があるのか」、「そのアイテムがなぜその遺跡にあるのか」、「遺跡の内外にはどんな障害があるのか」、「なぜその遺跡がいままで探索されなかったのか」、「その遺跡はどこにあるのか」などを決定します。

 シナリオの重要NPC、モンスター、冒険の舞台となる地域などについてもキーワードをリストアップしておき、大まかな情報を書き出します。

 次に、目標に関わる設定から「謎」を作り出します。ここで、2つのキーワードを定義します。「謎」と「秘密」です。

・謎:「原因と結果の結びつきが明らかにされていない状況」のことです。

・秘密:「原因と結果の結びつきが明らかにされていない状況」において、「結びつき」を明らかにする情報のことです。


 難しく考えないでください。あなたの目前に結果があり、原因が不明なら、それを「謎」と呼びましょう。「冷蔵庫のプリンが消えた」、「メガネが見当たらない」、「車に傷が付いている」すべて「謎」です。

 「秘密」はいわゆる種明かしです。「プリンは同居人が食べた」、「メガネは洗面台に置き忘れている」、「車の傷はノラ猫の仕業」、といった具合です。「秘密」は隠されているときは神秘的ですが、わかってしまえば、なんだそんなことか、ということが多いです。原因の意味は「謎」とは関係がありません。重要なのは、判らないという状況そのものなのです。

 例えをファンタジーに置き換えて、典型的なゴブリン退治シナリオの導入シーンを考えてみます。

 村長:「村がゴブリンに襲われた! 奴らを退治してくれ!」

 少し変化させてみます。

 少女:「夜中に怪物が襲ってきたの。みんな連れていったわ。黒い小さい化け物よ!! お願い、助けて!」

 1番目の例では、村の襲撃とゴブリンという原因と結果の関係が明らかになっており、「謎」はありません。

 2番目の例では、村が襲撃されたという結果は明白ですが、犯人が何者かという原因の部分がはっきりしません。そこには、誰が村を襲撃したのか?という「謎」が含まれています(フーダニットWho done it?)。

 ご覧のとおり、両方の導入部分でもまだ明らかになっていないことが多数あります。ゴブリンが村を襲った理由は何でしょう? ゴブリンはどこからやってくるのでしょう? これは、ホワイダニット(Why done it?=動機)、ハウダニット(How done it?=手段)の部分でもあります。付け加えるなら、犯人がゴブリンかどうかさえ決まったわけではありませんし、村人がそう思い込んでいるのかも知れません。さらに、村人はどこへ連れていかれたのでしょうか? その目的は何? まだまだ判らないことばかりです。まさに、謎は深まるばかりというわけです。

 ここで先ほど私が述べたことを繰り返します。

 「秘密」は隠されているときは神秘的ですが、わかってしまえば、なんだそんなことか、ということが多いです。原因の意味は「謎」とは関係がありません。重要なのは、状況そのものなのです。

 少女に依頼された冒険者たちは村に出向いて探索を開始するでしょう。おそらく、農場に残された足跡を検分し、襲撃者はゴブリンであるという結論にたどり着くはずです。人数はどのくらいか、足跡はどちらの方角へと向かっているのか、その方角にゴブリンの住んでいそうな場所はあるのか、その情報はどうやれば手に入るのか……。

 というわけで、2番目の襲撃者の「秘密」は「ゴブリンである」となります。ここで大切なことはミステリアスな導入のシナリオでも、基本構造は「ゴブリン退治」でしかないということです。どうです、簡単でしょう?

 まとめると、【導入シーン】では、シナリオの目標を提示する祭に、目標に関わる設定をすべて明らかにせず、部分的に提示するということになります。

 全ての設定を使用しなくても、会話型RPGのシナリオで提示されるミッションの達成には支障が無いものとします。つまり、マスターはそもそも全部の設定を使わないつもりでセッションに挑むわけです。

 このパートはかなり重要です。しかし、最終的にはテストプレイしてみないと、目標を具体化する際の問題点はわかりません。最後までシナリオをデザインした後に、テストプレイを行ない、改めてこの項目に立ち返って問題点を洗い出し、改善をかさねます。

 シナリオの目標が明確になったら【導入シーン】は終了です。

 プレイヤーたちは【導入シーン】で得た断片的な情報(「謎」)を元に、冒険を完遂するため、より詳しい情報(「秘密」)を集めることになります。【探索シーン】のスタートです。

▼サンプル・シナリオ「薬草を求めて」【導入シーン】

・ 依頼人:村の司祭。

・ シナリオの目標:難病の特効薬「エラスティルの慈悲」という薬草を採取し持ち帰る。

・ 設定:近隣の村々の子供達があいついで風土病の熱病に倒れた。この熱病は村の未熟な司祭の能力では治療できない。特効薬「エラスティルの慈悲」はこれまで森の奥に一人で住む腕利きのレンジャーが定期的に調達してくれていたのだが、そのレンジャーは姿を見せなくなっており、連絡の取りようもなかった。最後の薬草も使い果たした。薬草はデイヴォン沼のマカラ丘で採れるという話である。

・ 謎:薬草の特定方法、生える場所、保存方法など。

・ 謎:マカラ丘における薬草の植生場所。

・ 謎:デイヴォン沼の地形。マカラ丘までの道順。地図。

・ 謎:連絡の取れないレンジャーの安否。


●【探索シーン】

 探索シーンでは、さまざまな情報収集活動を扱います。探索行動には、酒場での聞き込み、図書館での文献調査、装備品の調達などが含まれます。時間制限が設定され、冒険者はできるだけ効率よく行動する必要に迫られます。

 シナリオに期限(デッドライン)を設定します。

 「期限」は、たとえば3日間だとか1週間といった時間制限が一般的です。もしくは本当は時間制限がなくても迅速にミッションをこなさなければいけないような状況です。例えば、特定の条件を決めておき、条件が満たされると制限切れとすることもできます。

 時間制限の場合は、「探索行動」のための時間や、必要なら目的地へ往復するための移動時間も含めます。

 適当な期限が思いつかないのなら、期限を「3日間」にすることをお勧めします。

 【探索シーン】では以下のようなハウス・ルールを使用します。探索行動におけるゲーム性を、より高めるための方法です。

『探索シーン用ハウス・ルール』

・「拠点」と「集合地点」を決めます。拠点はダンジョンから離れた安全な場所(村、街、国境の城砦など)です。「集合地点」は宿屋。酒場、広場の噴水前などがよいでしょう。

・各キャラクターが拠点で活動することができるのは1日8時間とします。

・拠点でなんらかの探索行動をとると1d4+1時間を消費します(これは酒場で情報を聞きまわっても、特定の人物に会って話を聞いても図書館で文献を調べても、店に行って装備品を調達しても同じです。アイテム作成などルール的に必要時間が決まっている場合はそのルールに従います)。

・消費時間の決定は、実際の行動の前に行ないます。もし、その日の活動時間が不足した場合、行動判定する以前にその行動は時間が足りずに失敗します。

・複数のPCが一緒に行動する場合は、そのPC同士は同じ時間を費やします(活動時間を共有するものとします)。

・探索行動が苦手なキャラクターであれば下手に単独行動するよりはほかのPCの交渉などへの支援をするほうが効果的です。

・原則、1つの探索行動が終了するごとに「集合地点」に帰ります。同じ時間に集合地点にいれば別の情報を集めに行ったPCと情報交換をし、その集めた情報をもとにして、翌日もともに行動を続けるか、あるいは各自別れて次の行動を行なうかを決めることができます。うまく時間が合わなかった場合は、集合場所で待機して時間調整をすることができます(『Pathfinder RPG』はパーティで行動することが前提のシステムですが、私は基本的に拠点では各人に自由な行動を認めています)。


・情報の設定

 【探索シーン】で与える情報を、階層化させた形で提示します。以下、情報収集判定の難易度とその結果をリスト化してみました。

難易度以下:信憑性の低いあいまいな情報しか入手できません。

難易度以上:対象の大まかな情報を得る

難易度5以上の差:対象の詳しい情報を得る。さらに、次の探索行動につながる情報を1つ得る。

難易度10以上の差:対象のとても詳しい情報を得る。さらに、次の探索行動につながる情報を2つ得る。以降、5以上の差ごとに追加の情報を1つ得る。


 例として、遺跡の位置に関する情報で考えてみましょう。遺跡の存在は地元では比較的よく知られているので、噂話を集めるのはそう難しいことではないと設定します。

難易度以下:「塔は沼地のまんなかにあるよ」「荒地は無人じゃ」「沼地には幽霊が出るよ」

難易度10:遺跡の大まかな場所が特定できます。遺跡にたどり着く際の判定にボーナスを得ます。

難易度15:遺跡の正確な場所が特定できます。濃霧や大雨など状況が極めて困難でなければ、遺跡にたどり着くのに「出目10」(差し迫った危険がない際に、技能判定での1d20で「10」が出たとみなすこと)を選択することができます。さらに、図書館に遺跡の古い図面が存在していることが判ります。

難易度20:遺跡の正確な場所が特定できます。濃霧や大雨など状況が極めて困難でなければ、遺跡にたどり着くのに「出目20」(約2分間、じっくりと作業に集中し、技能判定での1d20で「20」が出たとみなすこと)を選択することができます。さらに、図書館に建造物の古い図面が存在していることが判ります。加えて、道に迷った行商人が遺跡近くで空を飛ぶ怪物を見かけたという情報を得ます。

難易度25:遺跡の正確な場所が特定できます。濃霧や大雨など状況が極めて困難でなければ、遺跡にたどり着くのに「出目20」を選択することができます。さらに、図書館に建造物の古い図面が存在していることが判ります。加えて、道に迷った行商人が遺跡近くで空を飛ぶ怪物を見かけたという情報を得ます。そのうえ、遺跡のある沼地では枯れ木など特徴物に地元の狩人やレンジャーが連絡用の符丁を残すことがあるかもしれないと判りました。それらしい場所を、注意深く観察すると符丁を見つけられるかもしれません。

 難易度の高い情報は、1回の情報収集の判定で集めることは困難です。しかし、ある情報について知った状態でさらに詳細に情報収集する場合、難易度の階層1段階ごと易しくします。

 時間をかけ、詳しく調べるほどより低い達成値でも詳しい情報が入手できます。しかし、ピントの外れた情報収集の場合は高い達成値でも何も分からないという事態も発生します。

 各PCの持っている記憶だけの知識判定の場合、時間は費やしませんが、階層の高い(難易度が高い)情報は入手できないとします。あくまで詳細な情報を集めるには街での交渉や文献調査など、とにかく時間を必要とします。



 時間制限があるので『探索シーン』は遅かれ早かれ終了します。【ダンジョン・シーン】に移ります。

▼サンプル・シナリオ「薬草を求めて」【探索シーン】

・ シナリオの目標:「エラスティルの慈悲」を採取せよ。

・ 情報A:薬草「エラスティルの慈悲」の情報。

・ 情報B:「マカラ丘」の情報。

・ 情報C:野外活動と登山道具の調達。

・ 情報D:レンジャーの住居を訪れる(この探索行動は2d4+2時間を消費します)。無人の小屋からのレンジャーの日記や地図を入手できる可能性があります。

・ 制限: 3日(うち「沼地」への移動に1日)。4日目から10%累積で1日超えるごとに子供が1d6−1人死亡します。死者が10人に達したらシナリオ失敗とみなします。


▽問題発生!! 

 私は、冒険者たちが、あなたがせっかく準備した【探索シーン】をすっとばして先に進む可能を否定できません。功を急いだか、善は急げと考えたか、底なしの自信過剰からか、ともかくそれは起こりえます。そんなときGMは落ち着いてゲームを【ダンジョン・シーン】へと進めてください。いったん休憩を宣言して、今後の展開について考えをめぐらせるといよでしょう。【探索シーン】をスルーした冒険者をとっちめてやろうとか罰を与えてやろうとか考えないでください。もちろん、彼らは重要な情報を知らぬまま危険なダンジョンへと急行したのですから、戦闘や時間制限などあらゆる場面において、不利な状況に陥る危険があります。それでも、過度に不幸な「ペナルティ」を与えようという考えは控え、できりかぎり公平な判定を心がけましょう。むしろ、処分は甘いくらいで十分です。ギリギリでゲームをクリアーできるようにバランスを調整しましょう。大切なのは、冒険者に敗北の二文字を突きつけることではありません、次はもっと上手くやろうと感じてもらうことなのです。

●【ダンジョン・シーン】

【ダンジョン・シーン】はシナリオのメイン・イベントです。冒険者の前に直接的なモンスターや罠が登場します。戦闘能力と機転で目標をクリアーしなければなりません。

 このシーンでは、お馴染みのダンジョン探検を扱います。

 【ダンジョン・シーン】とありますが、ダンジョンとはいわゆる地下牢でなくてもかまいません。廃墟となった砦、廃棄された鉱山、山賊の根城、迷路のような下水道、地下墳墓、瘴気の漂う沼地、暗い森の中、あらゆる場所が考えられます。ここでは、冒険者は【導入シーン】で提示された目標を達成するために、さまざまな障害を乗り越えていきます。ときに正面から戦い、ときに迂回することになるでしょう。

 ここまでの手順を踏んでしまえば、もう、シナリオはほとんど完成したようなものです。あとはクリーチャーや罠などの障害を決定するだけです。

 以下、障害を出す際のポイントを、まとめてみました。

 マップを準備する。手描きでも既製品でもよいので、ダンジョンのマップを準備します。

 パーティの強さを考慮したうえで、そのマップ上に相応しい障害を用意します。コンベンションのシナリオなら3〜5回くらいの遭遇が妥当かと思います。

 ただし、実際に用意する遭遇はその1.5倍程度(4〜7回)、用意します。

 すべての遭遇を「回避」または「戦闘」の2つの条件で分類します。それから、遭遇の結果に「評価プラス」「評価マイナス」の2つの評価を定めます。「評価」は遭遇の条件を満たしたときに「評価プラス」の結果をあたえ、逆に満たさなかったときに「評価マイナス」の結果を与えます。

 ▼遭遇例(1):リザードマンの狩猟隊

“100メートルほど先の藪のなかを9匹のリザードマンが移動しています。”

条件:「回避」

評価プラス:リザードマンは姿を消します。準備した遭遇から「リザードマンの待ち伏せ」を除外します。

評価マイナス:戦闘。リザードマンは角笛を鳴らそうとします。角笛が鳴ったら、後の遭遇「リザードマンの待ち伏せ」の人数を増やします。


 ▼遭遇例(2):リザードマンの狩猟隊

“100メートルほど先の藪のなかを9匹のリザードマンが移動しています。”

条件:「戦闘」

評価プラス:リザードマンの荷物から、レンジャーのものと思しき地図を発見します。地図にはリザードマンの拠点が記してあります。

評価マイナス:リザードマンは姿を消します。


 ▼遭遇例(A):ニンフの宴

“森の空き地から楽しげな歌声と笛の音が聴こえます。こっちへいらっしゃい、と若い女性の声が響きました。”

条件:「戦闘」宴に参加する。

評価プラス:1d4時間消費。ニンフたちはたいへん喜んで、情報と贈り物をくれます。

評価マイナス:ニンフはひどい言葉を浴びせかけ姿を消します。


 ▼遭遇例(B):ニンフの宴

“森の空き地から楽しげな歌声と笛の音が聴こえます。こっちへいらっしゃい、と若い女性の声が響きました。”

条件:「回避」宴に参加しない。

評価プラス:急にあたりは静かになり、無人になった空き地で、やつれた男性を見つけます。もしかしたらあのレンジャーかもしれません。

評価マイナス:大変盛り上がり、酒に酔って夜明けまでぐっすり眠り込んでしいます。


 当然、プレイヤーに遭遇の「条件」を明らかにしません。プレイヤーは状況に応じて遭遇に適切な対処を講じていくでしょう。遭遇の結果がどうあれ、仮にそれらの遭遇を「プラス」でクリアーできなくても、シナリオの目標達成は可能にしておきます (マイナスを連続したら目標達成の難易度は上がるかもしれません)。

 私の場合、コンベンションのようにプレイ時間が制約されている場合では途中で休息できるような時間的余裕を与えていません。基本的にダンジョン探索は1日間だけです。時間的なリソースが限られ、目的がはっきりしているのであれば、【探索シーン】や遭遇の結果で新しい情報やヒントをもとにして、余計と思われる遭遇は避けるはずだからです。

 ただし、シナリオの最後だけは、絶対にPCたちは戦闘を行なわなければならないような設定(最終戦が起こるような設定)を用意します。『Pathfinder RPG』は戦闘が重要な位置にあるシステムである以上、最終戦闘は避けられません。逆に言えば、それ以外は無駄に戦わずに通過することができても問題ありません。しかし、その場合は戦闘した場合と同じくらいリソースを消費する障害がなければいけません。

 冒険者たちが選択の余地なく「戦闘遭遇」に巻き込まれてしまう場合、その遭遇はPCたちにとって(最終戦以外は)しばしば不利な状況で起きるというのが基本です。例えばパーティの半分が崖を登ったところで、まだ登っていない崖下のPC達が襲われる、といった感じです。こういった遭遇ならば、後衛にとって相性の悪い敵であればさほど 強くなくてもかなりの脅威になります。重要な資料と思われる本の山の周辺に、炎に弱いクリーチャーを何体も出すというのもありでしょう。ファイアボールで容易に全滅させることができたとしてもまず、それは行なわないでしょうから、十分脅威になりえます。

 パーティに不利な状況での戦闘は、あまりやりすぎるとプレイヤーにストレスを与えてしまいますが、プレイヤーの機転によって状況を逆転しやすいので、短時間で脅威を与えることを目指した、シナリオ途中での戦闘に向きます。このタイプの遭遇では、プラス評価の内容を普通より有利にするようにしてください。

  遭遇例(X):ヒドラだ!!

“腰まで水に使って移動中に、ゴボゴボと水面が泡立ち始めました。”

条件:「戦闘」

評価プラス:戦闘現場の近くにヒドラの巣があります。最終戦闘に役立つマジックアイテム数点とヒドラの卵を1d6個見つけます。

評価マイナス:戦闘によりリソースが減ります。


 逆に最終戦は事前情報や準備時間を与えるなどPCに有利な状況にする代わりに普通より強い敵を出すなどメリハリをつけます。最終戦くらいはPLに全力で戦って欲しいものですし、マスターも最終戦は力を入れて用意すべきです。

 かといって最初から最後まで常に全力で戦うという状況は、マスターの(ルール確認、運用管理などでの)負担の増大につながりかねません。『Pathfinder RPG』は戦闘が重要なファクターを占めるゲームであるがゆえに、遭遇を設定する際には、戦闘を回避可能な遭遇と、戦闘を避けられない遭遇をバランスよく配分することが最重要課題となります。

サンプル・シナリオ「薬草を求めて」【ダンジョン・シーン】

・ダンジョンの構造:野外冒険だが、基本構造は「通路」と「部屋」からなるタイプ。

・ シナリオの目標:「エラスティルの慈悲」を採取せよ。

・ 遭遇1“無人の船着場”(回避):小屋の二階にスタージがたくさん巣くっている。

・ 遭遇2“黒い石碑”(戦闘):ポイゾン・フロッグが襲ってくる。

・ 遭遇3“リザードマン”(戦闘):リザードマンが待ち伏せを攻撃。

・ 遭遇4“血塗れの島”(回避):リザードマンとオークの死体がいくつも散らばっている。グールとグレイウーズがご馳走に集まっている。

・ 遭遇5“捕虜”(回避):リザードマン戦闘隊が数名のオークに手枷をして移動している。

・ 遭遇6“リザードマンの集落”(回避):たくさんのリザードマンが集まっている。檻の中に行方不明のレンジャーが捕らわれている。

・ 最終戦闘“花の丘。あるいは”(戦闘):リザードマンを利用しているグリーンハッグが登場する。戦闘開始数ラウンド後にリザードマンの援軍が現れる。ここの岩場に、「エラスティルの慈悲」が咲く。


●【PCの作成、魔法のアイテムの制限】

 シナリオそのものからは若干離れますが、最後にPCの作成ルールについて補足的に触れておきます。

 PCの作成ルールは、ルールブックによると、能力値購入方式の場合、15(標準)、20(ハイ)、25(英雄的)と3種類用意されています。

 私は15か20で行ない、よくプレイされている25ポイント購入での英雄的なキャラクター作成は、避けたほうがよいと考えています。これはキャラクターが、1つくらい弱みがあったほうが面白いからです。

 実際にキャラクターを作成してみるとわかりますが、割り振りのポイントが15や20ですと、どうしても6つの能力値のいずれかは10(修正なし)や8(マイナス修正がつく値)にしなければなりません。

 致命的でないのであれば、欠点もキャラクターを形作る大事な特徴です。欠点があるからこそ、お互いの弱点を補い、1つのパーティとして完成するのではないかと思います。人間社会でもこれは同じです。

 また、単発セッションでは、魔法のアイテムの消耗品(矢弾を除く)は、価格を5倍(もしくは使用回数1/5)にしています。

 これはゲーム内時間に制限をつけるのと同様、PCのリソースを制限するためです。呪文やアイテムは使いたい放題ではなく、限られたリソースを最大限うまく使いこなすほうが効果的だと考えるからです。

 また、シナリオでは極端に偏ったキャラクターだけが失敗する(苦戦する)簡単な障害(あるいは雑魚の群れ)を時々用意します。

 この障害は一部の人だけで解決できない、全員で達成しなければいけないような障害とします。

 苦手な人を他の人がサポートすることで達成できても問題ありません。これは偏って作成したキャラクターは得意分野では大活躍できる代わりに、苦手分野では足手まといになることを強調するために組み入れるもの。


●【まとめ】

 基本的には以上です。要点をまとめるならこうなります。

1、PLには時間や装備など明確にリソースに限りがあることを示す。無制限にあるよりリソースが限られている方が、時間も能力もアイテムも効果的に使われることが多い。また、敵の強さも抑えられるので、マスターの戦闘への負担が減らせる。

2、【探索シーン】や【ダンジョン・シーン】はできるだけオープンにしておき、PLたちが相談して自主的に意思決定できるようにする。選択肢が明白すぎるとマスターのシナリオに強引に誘導されている気がして、プレイヤーは不満を抱きがちなる。現実にはマスターが特定の選択肢に意図的に誘導したとしても、それに気づかれなければ構わない。

3、キャラクター全員に見せ場を用意する。『Pathfinder RPG』はクラス(職業)を基本としたシステムなので、主要な各クラス能力が発揮できる場面を用意すればよい。その場面は戦闘だけに限らない。むしろ、戦闘以外で活躍できる場面をできるだけ用意したほうがよい(戦闘中に敵を倒すのと同時間にローグが魔法装置を解除する、人質を救出するなど力押しでは解決で きないイベントを用意するのもよい)。ただし、見せ場にある他のキャラクターが待ちぼうけにならないよう、支援でもよいので、何らかのアクションがとれる 状況を用意する必要がある。


終わりに
 
 以上、私的なシナリオ・デザインのコツを語ってきましたが、これらの方法にも欠点がいくつもあることは判っています。

 しかし、逆を言えば完璧でなくても構いません。

 いったんプレイヤーもマスターも完璧な答えが見出してしまえば、セッションはもはやつまらない単純作業になってしまいます。プレイヤーもマスターも、完璧なプレイスタイルを目指して試行錯誤と切磋琢磨を続け、ジレンマを快楽へと変換していくその過程にこそ、『Pathfinder RPG』の、ひいては会話型RPGの醍醐味はあるのではないかと私は考えています。

 欠点が見つかれば、その欠点から何かしらシナリオを面白くできないかと、欠陥を、むしろプレイヤーの向上心を掻き立てる要因へと変えられるように考えていきましょう。


 ところで、この手法に問題があるとしたら、それはシナリオ作りの負担が大きいことです。

 ある程度の負担は避けようがありませんが、シナリオに盛り込む情報に余裕をもたせるようにしておくことができれば、セッション当日も柔軟に対応することができますし、シナリオの矛盾も起き難いかと思います。

Pathfinder Roleplaying Game: Core Rulebook [ハードカバー] / Jason Bulmahn (イラスト); Paizo Publishing (刊)Pathfinder Roleplaying Game: Bestiary [ハードカバー] / Jason Bulmahn (著); Paizo Publishing (刊)


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須賀谷朋(すがたに・とも)
 1978年生まれ。大学院修了後、家業に就き、バラなどの観賞用植物の生産を行なっている。TRPGは大学在学中に開始。プレイヤー回数より圧倒的にマスターの回数の方が多い。
 『D&D』『アースドーン』などの海外RPGだけでなく『トーキョーN◎VA』『深淵』などの和製RPGも好む。

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【齋藤路恵からのコメント】


 須賀谷様、ご提案ありがとうございます!

 ひじょうに実用的な方法論で、私もさっそく家で遊んでみました。

 今回はインターネットから拾ってきたシナリオフックを2つ組み合 わせてシナリオを作りました。

 PCが解決しなければならないトラブルの原因を2つ作り、 どちらかが解決されれば問題は解決されるという構成にしました。解決までのルートが2本ある形です。

 PLは片方の ルートしかたどらなかったので、うまく謎を残すことができました。

 自宅で遊ぶ場合はセッションが短くても大丈夫なため、準備が少なくても謎を残しやすいようです。


 今後も何度か試してよりスムーズに運用できるようにしてみたいと思っています。(齋藤路恵)

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Analog Game Studiesでは、「RPGゲーマーのための『ペルディード・ストリート・ステーション』ガイド」でも、『Pathfinder RPG』の話題を取り扱っております。

また、ウェブサイト/ウェブログ「4th Cage」では、『Pathfinder RPG』の情報やTIPSが頻繁に更新されています。


posted by AGS at 01:29| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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