2011年03月20日

デヴィッド・ヌーナン/ビル・スラヴィクシェクほか『ダンジョン・デルヴ』:「詰めD&D」集。DM指南に、そして新しい遊び方のために!

【新作紹介】デヴィッド・ヌーナン/ビル・スラヴィクシェクほか『ダンジョン・デルヴ』:「詰めD&D」集。DM指南に、そして新しい遊び方のために!
 岡和田晃

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 世界最初のRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)。その最新版であるD&D第4版は、現在でも精力的に日本語展開がなされていますが、展開の当初から、未訳のサプリメント(追加の設定資料集)に親しんでいるゲーマーたちの間で、ひそかに評価の高いサプリメントが存在しました。それが今回邦訳された『ダンジョン・デルヴ』Dungeon Delve,2009です。初出から2年あまり。待望のサプリメントがついに日本語でお目見えしたという次第です。
ダンジョン・デルヴ (ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版サプリメント) [大型本] / デヴィッド ヌーナン, ビル スラヴィクシェク (著); 待兼 音二郎, 鈴木 康次郎, 阿利浜 秀明, 見田 航介, 岡和田 晃 (翻訳); ホビージャパン (刊)
 なぜ、人気があるのでしょうか? それはおそらく、この『ダンジョン・デルヴ』が、ダンジョンマスター用の指南の書として機能しながら、D&Dの新しい遊び方を提示してくれるサプリメントでもあるためでしょう。その点、もう少し詳しく説明していこうと思います。


●ダンジョンマスター用の指南の書として

 D&Dは数ある会話型RPGの中でも、血沸き肉踊る戦闘の楽しみに重点を置いたシステムとなっています。そして、第4版になってからのD&Dは、戦闘システムに大胆な単純化と抽象化が施されたため、容易にルールを習得でき、手軽にダイナミックな戦闘が楽しめるようにもなりました。

 D&D第4版においてキャラクターは「パワー」という特殊能力を用いますが、このパワーはダメージを与えたりキャラクターを強制的に移動させたりする要素と、朦朧状態や支配状態などの「状態異常」を与える要素に大別されます。また「遭遇」という単位でゲーム内時間を抽象化することにより、戦闘やイベントの管理が手軽に行なえるようにもなっています。

 こうした諸々の刷新事項の中でも特筆すべきは、D&D第4版がチームワークを重視している点でしょう。PC一人ではとても敵わない強力な敵であっても、パーティ内の連携次第で、十分に打ち勝つことが可能であること。この楽しさといったら! 言い換えれば、D&D第4版での戦闘の醍醐味は、チームワークによって「遭遇」という名の苦難を乗り越える過程にほかならないのです。

 この「遭遇」は、白紙のマップに敵と味方を配置し、殴り合うだけの単純なものから、複雑なストーリー的ギミックや、地形効果などと組み合わせたものなど、さまざまなものが考えられますが、プレイヤーたちに嬉しい驚きを与えるためには、やはり「遭遇」の質にはこだわりたいもの。しかし慣れないうちには、なかなか面白い「遭遇」が思いつかないのもまた事実です。

 会話型RPG、特にD&Dを深く楽しむためには、優れたダンジョンマスター(略称DM、D&Dにおけるゲームマスター)の存在が大事になってきますが、D&D第4版において優れたDMたるには面白い「遭遇」を作成し、鮮やかに運用する技術がやはり、必要不可欠です。『ダンジョン・デルヴ』は、そうした技術を身につけるための指南の書として活用することができます。

 『ダンジョン・デルヴ』には、すぐに使える「遭遇」が、各レベル帯ごとに3つ、合計90(!)も収められているのですが、これらの「遭遇」には、それぞれストーリー的な背景設定や、運用のコツ、描写の仕方、拡張案が記されています。こうした情報を参考に運用を行なえば、自然とD&Dのダンジョンマスターとしての技術を上達させることが可能になります。


●手軽な遊び方の提示として

 また『ダンジョン・デルヴ』は、D&Dのより手軽な遊び方を提示するサプリメントともなっています。遠慮せず、『ダンジョン・デルヴ』に掲載されている「遭遇」を使って、D&Dをボードゲーム的な(プレイヤーとDMの)対戦ゲームとして遊んでしまいましょう! 1998年のGencon Game Fair(北米最大のゲーム・コンベンションの一つ)でお披露目された遊び方に由来するということからもわかるとおり、『ダンジョン・デルヴ』は、お祭りで行なわれるような――明快でダイナミックなスタイルに――めっぽう相性がよいのです。

 『ダンジョン・デルヴ』には、レベルごとに3つの遭遇が収められています。手持ちのリソースを考えながら、この3つの遭遇を生き延び、所与の目的を達成しましょう! 『ダンジョン・デルヴ』の遭遇は、決してやさしいものではありません。特に「デルヴ3」は、多くの冒険者を闇に葬った悪名高いデルヴです。不敵に笑うDMの鼻を明かしてやるか、無残にもダンジョンの果てで朽ちるのか。すべては、あなたの勇気と機知にかかっているのです!
 いわば本書は「詰めD&D」の問題集。もっとも、詰将棋のように一人で解法を模索するのではなく、仲間たちとワイワイ楽しむ類のものですが。

 練りに練った重厚長大なストーリーも面白いものですけれども、一方で手軽な戦闘ゲームとしてD&Dに親しむことにも、独特の面白さが存在します。いや、手軽な戦闘ゲームとして遊んでいたつもりが、その経過を振り返ってみると、ひとつの壮大な物語となっていたという、意外な驚きに出遭えるかもしれません。ひとつのゲーム経験が、かけがえのない「体験」へと昇華されること。それがD&Dを「遊んだ」ことだと、筆者は考えています。Analog Game Studiesはアナログゲームとその他の社会的要素を繋げることを目標としていますが、そのためにはまず、対象となるアナログゲームについてよく知らなければなりません。D&Dについて言えば、『ダンジョン・デルヴ』は、D&Dにに親しむ格好の機会を提供してくれるものと思います。

 いま、私は放課後『バーコード・バトラー』やカードダスに熱中していた小学生の時の自分に、「小難しいこと抜きで、もっともっと戦闘をしたい!」と戦闘に飢えていた中学生の時の自分に、『ダンジョン・デルヴ』をプレゼントしたいと切に思っています。当時有していた――今も静かに持続していますが――狂おしいまでの飢餓感に、このサプリメントは十分、答えてくれたに違いないからです。いや、社会人になった今でも、心ゆくまで戦闘を楽しみたいという機会は多いですし、「D&D Encounters」(後述)のような遊び方にも、『ダンジョン・デルヴ』は相性がよいとも思います。

 また、『ダンジョン・デルヴ』で導入された「遭遇3セット」という考え方は、「デルヴ形式」という名のもとに、公式アドベンチャーにおいても採用されています。どうもセッションにメリハリがないとお悩みのDMは、「遭遇3セット」というデルヴ形式の考え方を採用してみて下さい。長くもなく、かといって物足りなさもなく、この「遭遇3セット=デルヴ形式」が、D&D第4版のアドベンチャーを設計するにあたり、理想的なモデルとして機能するとわかるはずです。イベントでも応用することはできるでしょう。


●42種類の新モンスター!

 『ダンジョン・デルヴ』に登場するモンスターは、『モンスター・マニュアル』のほかにも、『Open Grave』、『次元界の書』、『ドラコノミコン:クロマティック・ドラゴン』に収録されたものが登場しています。

 しかし、それだけではなく、『ダンジョン・デルヴ』では、新しいモンスターが42種類も、お目見えします。モンスター好きには、見過ごすことはできないでしょう。


●調整してみましょう!

 『ダンジョン・デルヴ』の原書は2009年の2月に発売されたサプリメントであるため、『ダンジョン・マスターズ・ガイドII』等に掲載された、モンスターの調整や罠のアップデート等は反映されていません。最新の適正難易度で挑みたいDMは、適宜調整を加える必要があります。

 また、それ以外にも『ダンジョン・デルヴ』には、モンスターのカスタマイズ案やプレイヤーの人数に合わせた調整案が掲載されております。こちらも参考にしてみて下さい。

 なお、『ダンジョン・デルヴ』で紹介されているダンジョン・タイルには絶版のものもあるようですが、他のタイルでも代用が利くものも多いですし、手書きのマップ等でも比較的楽に再現することが可能です。
ダンジョン・デルヴ (ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版サプリメント) [大型本] / デヴィッド ヌーナン, ビル スラヴィクシェク (著); 待兼 音二郎, 鈴木 康次郎, 阿利浜 秀明, 見田 航介, 岡和田 晃 (翻訳); ホビージャパン (刊)

●関連リンク集

・『ダンジョン・デルヴ』に、さらに興味が出てきた人は、ホビージャパンのD&D日本語版公式サイトにプレビューが掲載されていますので、ぜひご覧ください。http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/delve/index.html

・また、吉井徹さまによる「ゆるゆるSpeak Easy」第42回では、コミック形式で『ダンジョン・デルヴ』の踏み込んだ説明が描かれています。
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/speak_easy/speak_easy42.htm

・現在、全世界でD&D Encountersというイベントが実施されています。これは、D&Dの発売元であるWizards of the Coast社が主催する世界的なイベントで、毎週水曜日に1セッション=1遭遇という形でアドベンチャーをこなすという形でD&Dのキャンペーン・ゲーム(続きもののドラマのように連続したストーリーの冒険)を行なうというものです。詳しくは、会話型RPGを中心としたアナログゲーム総合情報誌「Role&Roll」Vol.78にレポートが寄せられていますが、D&D Encountersのように、「1遭遇=1セッション」という形で、『ダンジョン・デルヴ』を遊んでみるのも面白いかもしれません。また、オンライン・セッションとの相性も抜群のようです。
Role&Roll Vol.78 [大型本] / アークライト (編集); 新紀元社 (刊)

・アドベンチャーにおけるキャラクター表現に、より深みを与えたい人には、P・ローランさまの「もう一人の自分 ―ANOTHER SELF― 〜AD&D(R)におけるキャラクター・ジェネレーションへの一考察〜」が役に立ちます。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/187513308.html
posted by AGS at 02:19| 新作紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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