2012年12月20日

【活動報告】Analog Game Studies第8回読書会報告&各種活動報告

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【活動報告】Analog Game Studies第8回読書会報告&各種活動報告

 岡和田晃

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 2012年9月某日、Analog Game Studiesの第8回読書会が開催されました。課題図書は、上野顕太郎『さよならもいわずに』および『夜は千の眼を持つ』(ともにエンターブレイン)そして、ケイティ・サレン&エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ』(ソフトバンククリエイティブ)を使用しました。
さよならもいわずに (ビームコミックス) [コミック] / 上野 顕太郎 (著); エンターブレイン (刊)夜は千の眼を持つ (ビームコミックス) [コミック] / 上野 顕太郎 (著); エンターブレイン (刊)
ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎 上|ケイティ・サレン/エリック・ジマーマン/山本貴光|ソフトバンククリエイティブ|送料無料

 上野顕太郎の二作については、発表担当者が「上野顕太郎のマンガ表現について」という詳細なレジュメを作成し『さよならもいわずに』と「ダダ漏れの随想」の違い、末尾での再婚の話の必要性、笑いどころ、ルネ・マグリットの美術表現などとの関わりにおいて具体的な表現のあり方が考察されていきました。後半は雑誌「ガロ」についての話が中心となり、オルタナティヴ・コミック談義に花が咲きました。

 サレン&ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ』については、かつてAGSでも簡単に紹介したことのあるゲーム批評の基本書ですが、改めて一から精読を開始しました。今回は1章から7章までのレジュメが作られ、密度の高い討議が交わされました。



・Analog Game Studies顧問の草場純が、2012年11月4日に「NHK Eテレ」で放送された「日曜美術館
華麗なるシルクロードの調べ 〜第64回正倉院展〜」
に出演し、盤双六についての解説コメントを行ないました。また、草場純は最近頒布された台湾製カードゲーム『デザイア』の日本版ルールを作成いたしました。

・2012年11月11日に「明神下ゲーム研究会」および東京都成人発達障害当事者会「Communication Community ・ イイトコサガシ」が主催する、発達障害の当事者の方々と支援者の方々が共にゲームを楽しむ会話型RPGコンベンション「MISSION IMPOSSIBLE」の第2回「MI:02」が東京大学本郷キャンパスにて開催され、無事盛会のうちに終了いたしました。
 AGSからは、岡和田晃、高橋志行、田島淳、齋藤路恵、八重樫尚史がゲームマスターとして、伊藤大地、髭熊五郎がプレイヤーとして参加しました。ご参加いただいた皆さまに、厚く感謝いたします。

・2012年11月24日に「遊戯史学会 第24回例会」で、AGSメンバーの蔵原大が「ウォーゲーミングの近現代史」という講演を行ない、好評を得ました。ご来場いただいた皆さまに厚く感謝します。

・日本SF作家クラブ公認ネットマガジン「SF Prologue Wave」にて、『エクリプス・フェイズ』のシェアードワールド小説企画第2期が開始されました。AGSメンバーは翻訳チーム参加、雑誌記事チェック、イベント支援などの協力をさせていただいております。
 「SF Prologue Wave」の2012年12月20日更新回には、齋藤路恵、蔵原大、仲知喜が共同執筆した新作「蝿の娘」が公開されたばかりです。片理誠氏のコラム「デジタルの夢/アナログの夢、NEOの近況について」でもAGSとの連携を取り上げていただきました。
 その他、AGSメンバーは個々の名義で商業誌にて執筆活動を行なっております。代表・岡和田晃は新聞やゲーム専門誌、各種文芸誌、学術出版社の雑誌等に寄稿・協力しています。また岡和田晃は2012年12月22日に、筑波大学で「アイヌならざる者の現代アイヌ文学」と題した講演を行ないます。詳しくは岡和田晃の個人サイト「Flying to Wake Island」をご覧ください。

・アナログゲーム専門店Role&Roll Station秋葉原店にて、第15回・第16回『エクリプス・フェイズ』体験会が開催されました。また、2013年1月13日には、「Role&Roll」100号記念のゲーム・イベント「R.CON 100」が開催され、そこで『エクリプス・フェイズ』を遊ぶことができます(ゲームマスターは岡和田晃)。詳しい参加要項は、「Role&Roll」Vol.99(アークライト/新紀元社)をご確認いただけましたら幸いです。

・AGSが協力させていただいております、『ウォーハンマーRPG』体験会の第8回が開催され、好評をいただきました。『ウォーハンマーRPG』体験会実行委員会のウェブログでは、参加者アンケートをはじめ、もろもろの関連情報が掲載されております。ぜひお立ち寄りください。

・サンセットゲームズから発売中の会話型RPG『ハーンワールド/ハーンマスター』シリーズの新作入門アドベンチャー・モジュール『雛菊の野』が完成し、2013年に発売される予定です。AGSからは、田島淳が翻訳協力としてクレジットされ、岡和田晃と伊藤大地、仲知喜がチェックやテストプレイを行ないました。
 これ一冊、スタンドアローンで遊べる優れた冒険シナリオですが、舞台となる荘園「ファルカス庄」についての詳細きわまる設定が完備された設定集としても活用できます。プレロールド・キャラクター(作成済みキャラクター)やクイックスタート・ルール(入門ルール)、地図が完備され、『ハーン』世界の冒険が、この一冊で体感できる仕様となっています。2013年の発売を、愉しみにお待ちいただけましたら幸いです。
雛菊の野.jpg
posted by AGS at 15:28| 活動報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月13日

【レビュー】まさかのシュルレアリスムRPG『Itras By』英訳版の登場!

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【レビュー】まさかのシュルレアリスムRPG『Itras By』英訳版の登場!

 八重樫尚史 (協力:岡和田晃)

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 あなたは『Itras By』という会話形RPG(テーブルトークRPG、TRPG)をご存知でしょうか。
 もともとノルウェーで2010年に発売され、Vagrant Workshop社(ペンギンを遊ぶRPG『Valley of Eternity』の英訳もした最近僕のお気に入りのゲーム会社)が2012/12/07に英訳版を出したばかりの新しいRPGです。
 この記事では、『Itras By』の概要を、手短にご紹介いたします。
 英文を参考にまとめたものですので、早合点や読み間違いなどがあるかもしれませんが、ご容赦いただけましたら幸いです。
itras_by_220.jpg
itras_by_slide.jpg
※(画像は公式サイトより)

 コンセプトを見た段階で、僕のハートは鷲掴みにされました。
 「1920年代で、シュルレアリスムを遊ぶRPG!」
 エッジを利かせるにも程があるというものです!
 僕も最初は「アンドレ・ブルトン(シュルレアリスム運動の理論的指導者)という名前にひっからない人はお断り」なゲームかと思っていました。
シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫) [文庫] / アンドレ ブルトン (著); Andre Breton (原著); 巖谷 國士 (翻訳); 岩波書店 (刊)
シュルレアリスム宣言;溶ける魚
 実はそういった近代美術史ファンに限定されたゲームという訳ではなくて、1920年代の架空の都市でキャラクターを演じるという『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』などに通じるゲームです(結構、欧州ではそういったゲームのニーズがあるようです。同じくVagrant Workshopが英訳したドイツ産の『Vampire City』もそんな感じでしたし)。
 そう、『Itras By』というこのゲームの名は、英語で書くと「Itra's City」、日本語では「イトラの街」という意味です。基本的にはこのイトラという名の街の一人となって遊ぶRPGになります。

 ただし、この『Itras By』はより旧来の会話型RPGから離れたシステムを持っていて、簡単に言えばダイスレスで数字データもないゲームです。その代わりに、基本的に行為判定には「Chance Card」(チャンス・カード)というカードを使用します。
 「Chance Card」には8種あって、単純な成功失敗以外の効果が出る仕組みです(ゲーム的に説明すると、“部分的”成功のようなもの)。
 また、別に「Resolusion Card」(レゾリューション・カード)というものがあり、プレイヤー各人はこれを1セッションで1回使わなければならないというシステムです。
 こちらのカードは、危険な状況などで判定を行おうとする際に使用されます。ここがシュルレアリスムという所の肝で、カードによってはとんでもないロールプレイが要求されます。

 例えば「Cut Scene」(カット・シーン)というカードを引くと、強制的に3時間ぶんの時間が跳びます。しかしプレイヤーは、そのまま続けてロールプレイしなければなりません。また、その際に空白の3時間の描写は禁止です(!)。
 中でもRPG的にとんでもないのが「Masquerade!」(マスカレード!)というカードで、これを引くとそのシーンの残り、全てのプレイヤー(ゲームマスター含む)がキャラクターをスワップしてプレイします。
 「オートマティズム(自動筆記)」とか「コラージュ」といったシュルレアリスムの手法を導入したということなのでしょう。
  カード部分は、オフィシャルページでPDFファイルとして公開されています。英語になりますが、興味のある方はご覧ください。

・Itras by Chance Cards(公式サイトより)
http://www.vagrantworkshop.com/files/itras_by_chance_cards.pdf

 これまでの他のゲームと比較するとすれば、方向的にはやはり『ローズ・トゥ・ロード』(2010年版)に近いでしょうね。
 カード使用法でも、『TORG』のサイドストーリーカードや『深淵』の運命カードの流れの延長線上に位置づけることができそうです。また、カードゲームの『ワンス・アポン・ナ・タイム』も遊び方としては似ているかもしれません。

 まだ遊べていませんが、おそらく実際にプレイしてみると、ゲーム・セッションは、「スラップスティック」なナラティヴ・スタイルのゲームになると思います。カードの助けがあるので、意外と運用しやすいかもしれません。
 ノルウェー版公式サイトには『Itras By』、というよりもシュルレアリスムの空気を掴むことができるように、ルイス・ブニュエル監督でサルバドール・ダリも参加したシュルレアリスム映画の代表作「アンダルシアの犬」等をサンプリングしたティーザー動画が用意されています。
 1920年代のシュルレアリスムとはなにかを知るよすがになるかもしれません。
 ただし、結局なにがなんだかよくわからない(これぞシュルレアリスム)かもしれませんし、映画史上に残る名シーンである「眼球切断シーン」が入っていますので、そういったものに耐性のない方は、くれぐれも再生ボタンを押さないでください。


 ここ最近、海外では2046年の日本でサイバーパンク(「ニュー公明党」が政権第1党をやる)フランス産の『Kuro』(http://www.7emecercle.com/7cercle/jdr/kuro.php?page=Inf)のような尖ったゲームが出ています。
 そして『Itras By』みたいに、英語圏以外のゲームであっても英語に翻訳されるものも登場し、PDFファイルで、ほとんどタイムラグなく手に入るようになりました。いい時代になったものです。

・Vagrant Workshop『Itras By』特設ページ
http://www.vagrantworkshop.com/index.php?categoryid=8&p2_articleid=42

※2012/12/13 一部修正。
posted by AGS at 15:02| レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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