2012年04月30日

日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご報告


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日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご報告

 蔵原大、高橋志行


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[アーカイブズ学会での報告その後] 蔵原大

 2012年4月22日、学習院のアーカイブズ学会で、社会学研究生(D3)の高橋志行さんと一緒に報告してきました。
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 報告の内容は、以前に書きましたが、簡単にいえばゲーム・メディアのアーカイブ化の現状と課題についてのものです。
 http://analoggamestudies.seesaa.net/article/261905231.html

 ゲームといいましても、教育用の「シリアス・ゲーム」や軍事用の「モデリング&シミュレーション」を始めとするデジタル・ゲーム・メディアの話がメインでして、40人の聴衆の皆様にはお楽しみいただけたようです。経済産業省メディアコンテンツ課を始めとする関係者へ取材した際のこと、ゲーム・アーカイブズの概念が産学官連携による法的枠組みを欠かせない課題に直面していること、等々を実証的に言及したことが、好印象の一因だったように思います(この辺の問題意識は自分のアーカイブズ業務経験が活きているように改めて感じました)。

 さて今回取り上げました「クールジャパン」産業の内幕、立命館大学での「GAP」(Game Archives Project)の最新事情など、これからもメディア研究者として目が離せないところです。今やデジタル・ゲームは一つのメディアとして勃興しつつあるのが実情ですが、欧米やイスラームでの実例は2月に立命館大学(DiGRA大会)で報告しましたので、学習院では簡単にまとめました。

 ところでお聴きくださった方々の中に、国立公文書館にいた頃の元同僚(〜Ham氏とSak氏に御礼〜)に混じって、天皇制研究のエース瀬畑源さんがいたのには驚き(パンフで蔵原の名前をみて足をお運びくださったそうで、どうも恐縮です)。

 なんでも瀬畑さんの新刊本『公文書をつかう: 公文書管理制度と歴史研究』は売れ行きを伸ばしているらしく、実に羨ましい限り。
公文書をつかう: 公文書管理制度と歴史研究 [単行本] / 瀬畑 源 (著); 青弓社 (刊)
 この本は、公文書(例えば議事録とか機密文書)がどんな風につくられ、誰によって管理されるのかといったプロセスを、ご自身の体験を踏まえて解説しています。ゲーム・メディアと政治との関わりを研究する際には参考となること間違いなし。

 午後からは、3・11東日本大震災におけるアーカイブズ救援活動の報告を拝聴。被災した陸前高田の行政文書(津波のせいでカビだらけの危機)を救うため、神奈川県横浜市の県立公文書館から「公文書レスキューチーム」が出動していた、というのは初耳でした。報告者は隊長の木本洋祐さんでして、厳しい環境で十四万枚の文書をなんとか読めるまでに修復するエピソードにはちょっと感動(この文章を書いている現在、作業は継続中だとか)。

 ところで話は変わりますが、学会大会には業者の方々も出展されていて、ちょっと面白いパンフとかグッズがありました(資料保存につかう乾燥剤の新製品で、使用期限が迫ると色が変わるヤツなど)。色々ご説明いただいた「ニチマイ」の担当者の方に改めて御礼申し上げます(マイクロフィルムやデジタルアーカイブの業者さんです)。
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[蛇 足]
 いま学習院の史料館では、無料展示として「大正の記憶 絵葉書の時代」というのをやっているそうです(2012年4月5日〜6月9日:http://www.gakushuin.info/2012/04/post_243.html)。
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 それから今回取り上げた「クールジャパン」産業の件に関連して、こんなニュースが。

 <クール・ジャパンを脅かす韓流、官民一体モデルが鍵>
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120427-00000003-rcdc-cn

 数年前から半ば公然のことだったのに何を今さら、という話ですが、ご参考までに。

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 [アーカイブズ学会での報告その後] 高橋志行

 高橋です。蔵原大さんと共同で発表してきました。
 今回学会が開催された学習院大学は、人文科学研究科内にアーカイブズ学専攻という部門が2008年から創設され、ここ数年特にアーキビスト育成に注力している大学でもあります(参考URL: http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/ )。

 また今回、会場で頒布されていた『GCAS Report vol.1』(学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報)は、「アーカイブズ学」という立脚点から、どのような学術的展開が望めるのかについて、非常に刺激的な研究雑誌になっていました。

 特に、学習院大学アーカイブズ学専攻の院生たちによる Keeping Archives (The 3rd edition,2008) 読書会の記録は、まだアーカイブズ学それ自体に不案内な私としては、読書案内としても、またアーカイブズという営みにまつわる理論的な困難を掴む上でも、とても勉強になりました。

 ところで、『GCAS Report』および、当日の学会発表を振り返って感じたのは、(少なくとも、日本における)アーカイブズ研究の潮流は、おおまかに2つの分野があるのかな、ということでした。
 ひとつは、(1)「公文書」という、厳密に記録・保管された資料からどんな知見が導き出しうるのかという、史学的アプローチに寄り添った研究。そしてもうひとつは、(2) 世に流通し使用されるさまざまな「情報」のうち、後世に残す価値のあるものを具体的にどのように収集・管理していくのかという、どちらかといえば図書館情報学的なアプローチに近い研究です。

 今回、私達は、上記の区分で言えば(2)、つまり図書館情報学的な関心がアーカイブズ研究においても強まりつつあることを背景として、発表を作ってきました。対象を「収集」し、「保存」し、「登録」して「公開」する、その営みの総体を "archives" と呼ぶとして、今、デジタルコンテンツにはどのようなアーカイブズのあり方が求められるのか。

 個人的な課題としてはいささか大きすぎますし、また今回の発表だけで解決できたとは全く言えませんが、今後も継続的に考えてゆきたいと考えています。

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2012年04月19日

Analog Game Studies(アナログ・ゲーム・スタディーズ)&イイトコサガシ交流ワークショップ「現代によみがえるわらべ遊びの数々」IN 豊島区心身障害者福祉センター、レポート!(付記:「わらべ歌」歌詞リスト)

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Analog Game Studies(アナログ・ゲーム・スタディーズ)&イイトコサガシ交流ワークショップ「現代によみがえるわらべ遊びの数々」IN 豊島区心身障害者福祉センター、レポート!(付記:「わらべ歌」歌詞リスト)

 岡和田晃、協力:草場純

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 2012年3月29日(木)、Analog Game Studies&イイトコサガシ交流ワークショップ「現代によみがえるわらべ遊びの数々」が、豊島区心身障害者福祉センターにて開催されました。本ワークショップは、発達障害当事者の方々、支援者の方々、あるいは発達障害当事者の方々との楽しいコミュニケーションのチャンスを持ちたいと思われている方々が、ともに伝統ゲーム「わらべ遊び」(童遊び)を体験してみるという主旨のイベントで、今回が初の開催となります。

 Analog Game Studiesの紹介記事も併せてご覧ください。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/259355278.html

 近年、アナログゲームの福祉分野での応用が注目を集めています。Analog Game Studiesのメンバーも、さまざまな研究会やイベントに出席して学習を重ねておりますが、今回はいよいよ、東京都成人(大人)発達障害(アスペルガー・ADHD等)当事者会「Communication Community・イイトコサガシ」ピアサポート・グループ(以下、「イイトコサガシ」)さまと共催という形で、イベント開催を行なってみた次第です。

 参加者には、さまざまな経歴の方々がいらっしゃいました。発達障害当事者の方々、発達障害支援を学んでいる方々はもちろん、イイトコサガシ代表の冠地情さま、イイトコサガシ心理職アドバイザーの加藤澄江さま、Analog Game Studiesに「CBT的アプローチのセッション運営」を寄稿くださいましたゲームデザイナーの伏見健二さまも参加する形で、ワークショップは大いに盛り上がりました。

 当日の天気は快晴。屋上に上がって簡単な自己紹介を行ない、「お手ぶし」をはじめ、簡単なリズム遊びから、「石蹴り」のようにゲーム性豊かな遊びまで、草場純氏の進行のもと、無理をせず、休憩を挟みながら3時間あまり、童心にかえって遊びに熱中した次第です。私自身、北海道の田舎で過ごした子ども時代に、いとこたちと牧場で「ケンケンパ」に興じたことを思い出しました。

 参加者の許可をいただきまして、写真をいくつか紹介いたします。「天国と地獄」(石蹴り)のレクチャーを受けているヒトコマです。
天国と地獄.jpg
レクチャー.jpgジャンプ成功.jpg

 イイトコサガシの「会話によるコミュニケーション能力開発ワークショップ」では、メインの会話のワークショップの前に、「アイスブレイク」として、緊張を取り除くための簡単なゲームを行っています。童遊びには、こうした「アイスブレイク」の効果もあるのではないかと感じた次第です。

 これまで草場純氏は、さまざまな場所でわらべ遊びのレクチャーを行なってきました。また、ミニコミ誌「子どもプラスMini」連載の「草場純の遊び百科」にて、伝統ゲームの一貫として童遊びを紹介してきました。「子どもプラスMini」40号[2011年3月号]では、Analog Game Studiesを紹介いただいております。

 この童遊びは古くからの口承伝統という側面があり、時として差別や悪口に近いものが混じっていたりします。そうしたものについても、成立事情や背景情報がわかりやすく解説されることで、「差別」が容認されたり、ゲームを通して「差別」が助長されたりすることなどは一切なく、童遊びの本質を体感することができました。

 総じて参加者は皆、気分良くゲームに参加することができました。アンケート結果からみても、ご好評をいただいていたことが改めて確認できました。今後、またこのようなイベントを開催していければと感じた次第です。



 さて、童遊びはパフォーマンスなので記録に残りにくく、複雑ではないもののなかなか覚えにくいという面があります。しかし「わらべ歌」(童歌)と密着しているために、歌詞を見ればやった人は比較的簡単に遊びを思い出すことができるものと思います。

 そこで、本レポートでは童歌の歌詞をご紹介していきます。当日ワークショップに参加された方も、また童遊びに興味がある方も、知っている歌、聞いたことがある歌を探してみてください。

〈「わらべ歌」歌詞リスト〉(採録:草場純)

■青山墓地

♪青山墓地からお化けがひょ〜ろひょろ
♪お化けの後から子豚がブーブー
♪子豚の後から桶屋さんがオッケオッケ
♪桶屋さんの後から子どもがジャンケンポン


■お手ぶし

♪おてぶしてぶし てぶしのなかは へ〜びのなまやき かえるのさしみ いっちょうばこやるから まるめておくれ い〜いや!


■からすかずのこ

♪か〜らすかずのこ にしんのこ おしりをねらって かっぱのこ


■黒猫

♪家(うっち)のうっらの黒猫は、白粉つけて、紅つけて、ひっとに見られてちょいと隠す!


■堂々巡り

♪どーどーめーぐり こーめぐり あーわのめーしもいーやいや そばきりそうめん 食べたいな


■なかなかホイ

♪なかなかホイ そとそとホイ なかなかそとそと なかなかホイ
そとそとホイ なかなかホイ そとそとなかなか そとそとホイ


■あぶくたった

♪あーぶくたった にえたった にえたかどうだか食べてみよう
  むしゃむしゃむしゃ まだにえない
 あーぶくたった にえたった にえたかどうだか食べてみよう
  むしゃむしゃむしゃ まだにえない
 あーぶくたった にえたった にえたかどうだか食べてみよう
  むしゃむしゃむしゃ もうにえた
「戸棚にしまって、鍵閉めて、…(以下家庭生活を即興で演じる)…、電気を消してもう寝ましょう。」
鬼「とんとんとん」
子「何の音?」
鬼「風の音。」
子「ああよかった。」
鬼「とんとんとん」
子「何の音?」
鬼「(即興)の音。」
子「ああよかった。」
 (以下任意に繰り返す)
鬼「とんとんとん」
子「何の音?」
鬼「おばけの音!」
 で、コドモ達は逃げる。


■あんたきらい(罰ゲーム)

♪ばかあほまぬけ おたんこなすかぼちゃ そっぱそっぱみそっぱ あんたきらい フン


■いろはに金平糖(身体感覚と課題解決の遊び)

♪いろはにこんぺいと


■ えべっさん(鬼決め)

♪どっちどっちえべっさん えべっさんにきいたらわかる


■おじいさんおばあさん(鬼交代)

♪おじいさんおばあさん なにくってかがんだ えびくってかがんだ


■今年の牡丹

  [コドモは内向きの一重円、オニは少し離れたところにいる。]
コドモ [輪になって踊る]
 ♪今年の牡丹はよい牡丹 お耳をからげてスッポンポン もひとつからげてスッポンポン
 ♪今年の牡丹はよい牡丹 お耳をからげてスッポンポン もひとつからげてスッポンポン
  [オニが来る]
オニ 「入れて」
コドモ「いや」
オニ 「どうして?」
コドモ「しっぽがあるから」
オニ 「しっぽ切ってくるから入れて」
コドモ「血が出るからいや」
オニ 「川で洗ってくるから入れて」
コドモ「川坊主が出るからいや」
オニ 「海で洗ってくるから入れて」
コドモ「海坊主が出るからいや」
オニ 「そんなら今度うちの前を通ったとき、天秤棒でひっぱたくぞ」
コドモ「じゃあ入れてあげる」
  [オニが輪に入る]
コドモとオニ  [輪になって踊る]
 ♪今年の牡丹はよい牡丹 お耳をからげてスッポンポン もひとつからげてスッポンポン
 ♪今年の牡丹はよい牡丹 お耳をからげてスッポンポン もひとつからげてスッポンポン
  [オニが抜ける]
オニ 「わたし帰る」
コドモ「どうして?」
オニ 「晩ご飯だから」
コドモ「おかずはなあに?」
オニ 「蛙となめくじ」
コドモ「生きてるの? 死んでるの?」
オニ 「生きてるの」
コドモ「じゃあさようなら」
  [オニが去って行く]
コドモ「だれかさんの後ろに蛇がいる」
オニ 「わたし?」
コドモ「違うよ」
オニ 「ああよかった」
コドモ「だれかさんの後ろに蛇がいる」
オニ 「わたし?」
コドモ「違うよ」
オニ 「ああよかった」
コドモ「だれかさんの後ろに蛇がいる」
オニ 「わたし?」
コドモ「そう!」
  [以下鬼ごっこ]


■どんど橋 (とおりゃんせ遊び)

 ♪どんどばしわたれ、さあわたれ。こんこがくるぞ、さあわたれ。


■なべなべ (ミキシング)

 ♪なべなべそっこぬけ、そっこがぬけたら かえりましょ。
  なべなべそっこぬけ、そっこがぬけたら まわりましょ。



12/04/20追記:
 本レポートをお読みになった松本由香子さまが、「あぶくたった」の歌を歌い、動画としてご提供してくださいました。
 伝承遊び(童遊び)「あぶくたった」の歌です。
 以下、松本由香子さまのコメントとなります。
 私は昭和40年代後半〜昭和50年代前半(1970年代)、神戸市灘区と中央区(旧・葺合区)で小学校時代を送りました。当時は近所の年齢の違う子どもたち十数名が小学校-や幼稚園が終わると集まって、路地や空き地、公園で様々な外遊びをしていました。
「あぶくたった」は怪談やごっこ遊び的な要素が含まれているためか、人気の遊びの一つでした。
 Analog Game Studies(アナログ・ゲーム・スタディーズ)で「あぶくたった」の歌詞の採録を拝見して、懐かしくなったので歌ってみました。

 あぶくたった」がどんな歌だったのかご存知ない方、あるいは、久しぶりに「あぶくたった」を聞いてみたい方は、ぜひアクセスしてみてください。

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2012年04月17日

【活動報告】Analog Game Studies第5回読書会報告&イベントのお知らせ

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【活動報告】Analog Game Studies第5回読書会報告&イベントのお知らせ

 岡和田晃、高橋志行

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 3月某日、Analog Game Studiesの第5回読書会が開催されました。

 課題図書は、ロバート・エマーソンほか『方法としてのフィールド・ノート 現地取材から物語作成まで』(新曜社)および、井上明人『ゲーミフィケーション――〈ゲーム〉がビジネスを変える』(NHK出版)の2冊でした。
方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで [単行本] / ロバート エマーソン, リンダ ショウ, レイチェル フレッツ (著); Robert Emerson, Linda Shaw, Rachel Fretz (原著); 佐藤 郁哉, 山田 富秋, 好井 裕明 (翻訳); 新曜社 (刊)ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える [単行本(ソフトカバー)] / 井上 明人 (著); NHK出版 (刊)
 『方法としてのフィールド・ノート』は、AGSメンバーの「社会調査」に関する活動が増加している現状に鑑み(「アイヌ」研究、文化政策論、発達障害支援等)、現場の調査を構造化する「フィールドノーツ」の方法論を再検討するという観点から選択されました。

 『方法としてのフィールド・ノート』は大著でしたが、発表者によって要点が的確にまとめられたため、議論そのものはスムーズに進みました。

 まず、フィールドでの現象を「記録」することの意味合い、またフィールドワークを通じて、どのような作業を経ればそれが「研究」として成立するのかということが話し合われました。

 次いで、インタビュー調査・記録の方法論を用いた実例との相同性と差異が検討されました。例えば、次の3点の事例は、「記録された会話を読みものとして編集する」という点では似通っていますが、そのコンセプトは本質的に異なります。よろしければ、皆さまも考えてみてください。

1:雑誌媒体等で行なわれる企画インタビュー
2:会話型RPG(テーブルトークRPG、TRPG)のリプレイ、プレイレポート
3:社会学や文化人類学、ポストコロニアリズム研究の領域等で行われる「エスノグラフィー」作成


 また、これまで日本の学術的調査の方法論は、「文献主義」が最重要なものとして採られてきましたが、例えば伝統ゲームの記録・収集一つとっても、記録されている文献に誤りがあったり、コミュニティごとの独自の風習があったりと、的確な調査を行なうためには文献主義だけでは不十分で、フィールドワークを通じた聞取り調査が欠かせません。そこで今回は、聞取り調査の具体例として、福井県矢船町に伝わる伝統ゲーム『かっくり』について調査した事例が報告されました。


 2冊目『ゲーミフィケーション』については、まず、「ゲーミフィケーション」という言葉がバズワード(定義や意味が曖昧なまま流通してしまう言葉)と化している状況に対し、最新のゲーム研究の立場からゲーミフィケーションをめぐる状況を整理し、その上でゲーミフィケーション利用の今後の指針を示すという目的で書かれたことが確認されたうえで、いくつかの論点が提示されました。その論点を紹介しておきましょう。

 ・「定量化」の簡便化、「測るテクノロジー」の進化[P.40,144]
 ・「三河屋のサブちゃん」はいかに実現困難か[P.58]
 ・「シリアスゲーム」と「ゲーミフィケーション」の区別[P.65]
 ・「サービスタイム」[P.87]と、放置系ミニゲーム
 ・退屈なゲーム『風呂』[P.132-4]
 ・井上によるゲームの定義分類[P.155]
 ・MDAモデル(Mechanics, Dynamics, Aesthetics)[P.173]
 ・フィアネス・ゲージの事例を利用した「ゲーム脳」議論への批判[P.190-200]
 ・ゲームを「選択」可能な未来社会について[P.233-9]


 そのうえで、アナログゲームの「ゲーミフィケーション」とはいかなるかということが検討されました。

 現状、Analog Game Studiesでは広義の「ゲーミフィケーション」に分類される、さまざまな活動を行なっており、その中には商業媒体での翻訳業務や、企業・福祉団体へのアドバイスも含まれます。そうした問題に引き寄せて話し合いが行なわれました。

 また、ゲームと「政治」(プロパガンダ)、あるいは「ゲーミフィケーション」と「ダイレクト・マーケティング」の方法論の関連性等が、熱い議論を呼びました。


 読書会の途中では、Analog Game Studies顧問草場純氏が出演した「いしかわGOODニュース」(2012年1月24日放送分)の「世界に広がるごいた」(リンク先で放送内容の紹介を読むことができます)を鑑賞しました。

 次回のAnalog Game Studies読書会では、草場純『ゲーム探検隊』(グランペール)および、古井由吉『杳子・妻隠』(新潮文庫ほか)が課題図書となっております。
ゲーム探検隊-改訂新版- / グランペール古井由吉自撰作品 1 杳子・妻隠/行隠れ/聖 (古井由吉自撰作品【全8巻】) [単行本] / 古井 由吉 (著); 河出書房新社 (刊)



 また、Analog Game Studies協力イベントとしては、第9回『エクリプス・フェイズ』体験会が4月28日、および第4回『ウォーハンマーRPG』体験会が4月22日にそれぞれ予定されています。それぞれ、参加をご検討いただけましたら幸いです。
 以下、会場をご提供いただいている「Role&Roll Station」さまのウェブサイトからの引用となります(http://www.arclight.co.jp/r_r_s/03_event.html)。


■タイトル:新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』体験イベント(第9回)
第9回『エクリプス・フェイズ』体験イベント

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「Role&Roll」掲載中のリプレイが大好評!
 まったく新しいRPGを体感せよ!
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 『エクリプス・フェイズ』。
 特異点(シンギュラリティ)を迎えたコンピュータの反乱で地球が崩壊した後、陰謀と恐怖に満ちた黄昏の太陽系で問われるのは……そう、あなたの生き様。
 冒険スペースオペラとサイバーパンクのスタイルを融合させた、まったく新しいRPG。
 「Role&Roll」Vol.88より、朱鷺田祐介氏による公式リプレイ「金星の人狼―Garou in the Venus―」が連載開始! アメリカで各種ゲーム賞にノミネートされた世界のRPGシーン最大級の話題作を、無料で体験しよう!

・プレイヤーは科学技術によって強化された未来人「トランスヒューマン」を演じます。肉体が破壊されても、なんとセーヴ・ポイントから復活できる!?
・「アルゴノーツの異星考古学者」、「ハイパー・コープの闇商人」、「火星のレインジャー」、さらには変形型ロボット、知性化されたタコや群体(スウォーム)など、個性豊かなサンプル・キャラクターをご用意しました。
・JGC2011やSF関係のイベント等で大好評、最新のSFシーンを反映した世界観。
・技能システムをベースにした、柔軟でわかりやすいルールシステム。
・デザイナーはシャドウラン』第4版のライン・ディヴェロッパーだったロブ・ボイル氏(Posthuman Studio)。日本語版監修は、世界観にこだわったゲーム・デザインで知られる朱鷺田祐介氏が担当。
・特定の条項を守れば、この世界観を利用し、小説・リプレイ・コミックなどを自由に創作することができます。
・ご希望の方には、クイックスタートルール日本語版(ルールパート、シナリオパート)を無償頒布させていただきます(申込時に明記ください)
 日本語化された各種サマリー等をご用意しております。英語が苦手な方もご安心ください。複雑なSF設定や世界設定も、じっくり丁寧に解説いたします。
 『エクリプス・フェイズ』をまだ遊んだことのない方も、過去にイベントに参加された方も、お誘い合わせのうえでお気軽にお越しください。よろしくお願いいたします。

■開催日:4月28日(土)
■時間:14:00〜19:00(予定)
■会場:Role&Roll Station プレイルーム
■ゲームマスター:朱鷺田祐介 岡和田晃または畠山望(『エクリプス・フェイズ』日本語版翻訳チーム) (予定)
■主催:『エクリプス・フェイズ』体験会実行委員会
■協力:「Role&Roll」編集部、スザク・ゲームズ、戦鎚傭兵団、『エクリプス・フェイズ』日本語版翻訳チーム、Analog Game Studies
■定員:10名
■参加費:無料
■締切り:4月26日(応募者多数の場合は抽選、あるいは締め切り前でも申込みを終了させていただくことがございます)
■予約受付用アドレス:eclipsephase.jp.convention@gmail.com
■参加予約方法:参加申し込みはeメールで承ります。件名を「0428EP体験会参加予約」として、「お名前(ハンドル不可)」・「電話番号(携帯)」・「メールアドレス」・「好きなSF作品」・「TRPG歴と(経験者の方は)よく遊ぶルールシステム」、体験会に期待すること、およびクイックスタートルールの無償頒布希望の有無(ルールパートか、シナリオパート)を明記のうえ、
eclipsephase.jp.convention@gmail.com
 にまで送信してください(特に電話番号は緊急連絡用に必要ですので、お間違えなきようお願い申し上げます)。
 折り返し「『エクリプス・フェイズ』体験会実行委員会」より、予約確認のメールを返信させていただきます。1週間程度経過しても返信のない場合、お手数ですが再度メールにてご連絡ください。

※応募者多数の場合は抽選、あるいは締切り前でも申込みを終了させていただくことがございます。あらかじめご了解ください。
※「好きなSF作品・TRPG歴・よく遊ぶルールシステム・体験会に期待すること」および、当日のゲーム終了後ご記入いただくアンケートシートの内容は、『エクリプス・フェイズ』日本語展開および体験会をより良いものとするために使用させていただきます。お名前を伏せてWeb等で公開される可能性もありますので、あらかじめご了承ください。

■第4回『ウォーハンマーRPG』体験会
第4回『ウォーハンマーRPG』体験会

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 畏れよ、神々の力。
ダークファンタジーの真髄を体感せよ!
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 暗黒時代のヨーロッパに似たファンタジー世界、オールドワールド。君はその無法地帯に踏み込み、余人があえて立ち向かおうとせぬ、あるいは歯向かうこと能わざる脅威に直面する。
 君は十中八九、どこかの糜爛した地獄穴で犬死にするに違いない。ただしことによると、かすかな望みではあるが、不浄なる変異種、身の毛のよだつ業病、腹黒い陰謀、正気の爆散を招く宗教儀式を耐えて生き延び、運命の果実をつかむかもしれない……。
 90年代に文庫版がヒットし、2006年から第2版の翻訳が開始され充実したラインナップを誇る『ウォーハンマーRPG』の世界に挑むチャンスです! この大人のためのRPGを、ぜひ一度ご体験ください。
・100種類以上のキャリア(職業)から選ばれるキャラクター。
・すっきりとまとまった、技能システムベースのわかりやすいルール(d100下方ロール)。ダンジョン探索やシティ・アドベンチャーの醍醐味を満喫できる。
・使用するダイス(サイコロ)は10面体サイコロ2個のみ。
・グリッド・マップを活用した、白熱するタクティカル戦闘。
・中世ヨーロッパのリアルな雰囲気たっぷりの濃厚ダーク・ファンタジーな世界観。
・シナリオやリプレイが無料ダウンロード可能。関連小説・サプリメントも超充実。
  『ウォーハンマーRPG』をまだ遊んだことのない方、あるいは小説やミニチュアゲーム等で『ウォーハンマー』世界を知った方、大歓迎です。ベテラン・ゲームマスターが丁寧に解説、対応。初心者でも安心してお越しください。
 もちろん、過去に体験会に参加したことのある方、すでにオールド・ワールドに親しんでいる方々の参加も大歓迎です!
 なお、今回のセッションは参加者の皆さまによるアンケートでのご希望を反映し、キャリアを一つ経たのち転職した信仰系キャリアで、「シグマー神」の聖地を巡礼しに行くシナリオとなる予定です。キャリア次第では魔法も使えます。
 あらかじめ、ご了承のほどをよろしくお願い申し上げます。

■開催日:4月22日(日)
■時間:13:00〜18:00(予定)
■会場:Role&Roll Station プレイルーム
■ゲームマスター:田島淳(Analog Game Studies)または見田航介(『ウォーハンマーRPG』翻訳チーム)(予定)
■主催:『ウォーハンマーRPG』体験会実行委員会
■協力:戦鎚傭兵団、Analog Game Studies
■定員:6名
■参加費:無料
■締切り:4月20日(申し込みは先着順で承ります)
■予約受付用アドレス:warhammerrpg.jp.convention@gmail.com
■参加予約方法:参加申し込みはeメールで承ります。件名を「0422WH体験会参加予約」として、お名前(ハンドル不可)・電話番号(携帯)・メールアドレス・ウォーハンマー関連製品(小説、ミニチュアゲーム等)の受容経験、TRPG歴と(経験者の方は)よく遊ぶルールシステム、体験会に期待することを明記のうえ、
warhammerrpg.jp.convention@gmail.com
 にまで送信してください(特に電話番号は緊急連絡用に必要ですので、お間違えなきようお願い申し上げます)。
 折り返し、予約確認のメールを返信させていただきます。1週間程度経過しても返信のない場合、お手数ですが再度メールにてご連絡ください。
※「ウォーハンマー関連製品(小説、ミニチュアゲーム等)の受容経験・TRPG歴・よく遊ぶルールシステム・体験会に期待すること」および、当日のゲーム終了後ご記入いただくアンケートシートの内容は、体験会をより良いものとするために使用させていただきます。お名前を伏せてWeb等で公開される可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
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2012年04月13日

【レビュー】エドワード・ミード・アール編『新戦略の創始者 マキアヴェリからヒトラーまで』


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【レビュー】エドワード・ミード・アール編『新戦略の創始者 マキアヴェリからヒトラーまで』

 岡和田晃

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 今回はエドワード・ミード・アール編『新戦略の創始者 マキアヴェリからヒトラーまで』Edward Meard Earle(ed), Makers of modern strategy: millitary thought from Mahiavelli to Hitler (Prinston: Prinston University Press, 1943)という、戦略研究の分野における古典をご紹介いたします。

 ルドロジー(ゲーム学)の重要な立役者の一人であるゴンザロ・フラスカは、ゲームを定義づけるにあたり、ゲームとパズルを明確に区分しました。その基準を平たく言えば、双方向性(インラタクティヴィティ)を有するか否かというものでした。自分と相手の駆け引きということです。当然そこには何らかの戦略があるとしても言い過ぎではないでしょう。ゲームの達人たろうとすれば、まず戦略の実例を学ぶことが求められます。

 今回レビューを行なう『新戦略の創始者 マキアヴェリからヒトラーまで』は書名の通り、近代の戦略研究を築き上げてきた思想家たちについて論じた「国際的・学際的戦争研究の古典」として知られており、戦略の実例の宝庫といえるでしょう。

新戦略の創始者 〜マキアヴェリからヒトラーまで 上 [単行本] / エドワード・ミード・アール (著); 山田積昭 (翻訳); 原書房 (刊)新戦略の創始者―マキアヴェリからヒトラーまで〈下〉 [単行本] / エドワード・ミード アール (著); Edward Mead Earle (原著); 山田 積昭, 石塚 栄, 伊藤 博邦 (翻訳); 原書房 (刊)

 戦略という概念はその成立にあたり、とりわけ近代の戦争形態の変化と密接な関わりを持っていました。こうした広義に渡る戦略観を概説できるように、本書はルネッサンス期からナチス・ドイツの戦略に至るまで幅広い論考を集め、戦略概念の形成と拡張の過程を体系的に理解できるようになっています。
 そして本書の頁を繰るうち否応なしに伝わってくるのは、各々の書き手が戦略論の立役者たちの読み直し(リ・リーディング)を経ることで、戦略というものをよりアクチュアルに捉え直そうとしていることです。


■本書の構成

 それでは、具体的に本書の構成を見てみましょう。

 序言(抄訳)

 第I部 近代戦の原点――一六世紀から一八世紀まで
 第1章 戦術のルネサンス マキアヴェリ
 第2章 戦争に及ぼした科学の影響 ヴォーバン
 第3章 王朝戦争から国民戦争へ フリードリヒ大王 ギベール ビューロー

 第II部 一九世紀の古典――ナポレオンの解説者たち
 第4章 フランスの解説者 ジョミニ
 第5章 ドイツの解説者 クラウゼヴィッツ

 第III部 近代戦の開花――一九世紀から第一次世界大戦まで
 第6章 軍事力の経済的基盤 アダム・スミス アレクサンダー・ハミルトン フリードリヒ・リスト
 第7章 社会革命の軍事的概念 マルクス エンゲルス
 第8章 プロイセン流ドイツ兵学 モルトケ シュリーフェン
 第9章 フランス流兵学 ド・ピック フォッシュ
 第10章 フランス植民地戦争の戦略の発展 プジョー ガリエニ リヨテ
 第11章 軍事史家 デルブリュック

 第IV部 第一次世界大戦から第二次世界大戦まで
 第12章 文民による戦争の主宰 チャーチル ロイド=ジョージ クレマンソー
 第13章 ドイツの総力戦観 ルーデンドルフ
 第14章 ソ連の戦争観 レーニン トロツキー スターリン
 第15章 マジノ リデルハート
 第16章 地政学者 ハウスホーファー

 第V部 海戦と航空戦
 第17章 シーパワーの伝道者 マハン
 第18章 大陸におけるシーパワーの教義
 第19章 日本の海軍戦略
 第20章 航空戦理論 ドゥーエ ミッチェル セヴァースキー

 終章 ナチスの戦争観 ヒトラー

 解題 国際的・学際的戦争研究の古典としての『新戦略の創始者』 中島浩貴

 文献解題
 索引

 最後「ナチスの戦争観」で締めくくられるのは、本書がナチス・ドイツが引き起こした第二次世界大戦の真っ只中でまとめられたものだからです。

 本書に収められた論考はそれぞれ、1943年に行なわれたプリンストン大学高等研究所軍事ゼミナールでの議論がもととなっています。

 1943年、ナチス・ドイツが引き起こした第二次世界大戦は、独ソ戦におけるドイツ軍の大敗・イタリア戦線の開始など、泥沼の一途を辿っていました。日本では国家総動員法が施行され、総力戦体制が敷かれつつありました。そうした現在進行形の状況を理解し的確な判断を下すためのアクチュアルな研究として、本書がまとめられたことは疑いがありません。とりわけナチス・ドイツによる迫害を逃れたドイツ人研究者たちの仕事は、本書をより意義のあるものとしたと言われています。

 本書は1978年に原書房より刊行された後、長らく絶版となっていましたが、このたび中島浩貴氏による訳文見直し・訳語統一・文献解題の確認、および詳細な解説を添えたうえでの復刊と相成りました。

 中島氏によれば、本書に収録された論考の多くは1986年に発表された新版にも引き継がれているとのことです。これは、本書は第二次世界大戦中に刊行されたものですが、戦後の社会変化や研究の進展を経てもなお、収録された論考の多くに高評価が与えられているということを意味します。


■本書の特徴

 戦略論に関する著作はいくつも刊行されていますが、本書はその歴史的意義のほかにも、下記のような特徴を有しています。


 ●1:戦略論の古典的な思想が、的確に要約されている。

 本書を一望してわかるのは、マキャヴェリから始まる近代戦の原理を構築した思想家、そしてクラウゼヴィッツなど、ナポレオン時代に活躍した戦略論の古典的思想家が、簡潔に紹介されていることです。


 ●2:戦略論の受容史を知ることができる。

 戦略論の古典がいかに読まれてきたのか、そうした受容史を学ぶためにも、本書は活用することが可能です。クラウゼヴィッツ一人とっても、長い解釈の歴史があり、それを抜きにして戦略を語ることはできません。


 ●3:思想家の意外な側面を知ることができる。

 アダム・スミスやマルクス、ロイド=ジョージなど、主に経済学的な見地から語られることが多い思想家の仕事が、本書では戦略論の観点から紹介されています。思想家の多角的な顔を知り、あるいは戦略論という分野の応用性を知るためにも有用です。経済史や政治史に興味がある方が、軍事史へ射程を伸ばそうとした際、本書はまたとない見取り図を提供してくれます。


 ●4:日本では馴染みの薄い思想を学べる。

 ヴォーパン、ジョミニ、デルブリュックなど、戦略研究に馴染みがない読者にとっては触れる機会が少ないであろう思想家・軍事史家の思想が、本書は明確に要約されています。その意味で、本書は日本人の読者にとって貴重な資料ともなっています。


 ●5:各国の兵学や戦争観を概観できる。

 モルトケやシュリーフェンらのドイツ兵学やルーテンドルフらドイツの総力戦観、ド・ピックやフォッシュらのフランス兵学、あるいはレーニン、トロツキー、スターリンらソヴィエト連邦の戦争観を概観することができます。とりわけ総力戦についての記述は圧巻です。最終章のナチスの戦争観と併せ読めば、本書が二次大戦中、実践的な必要性で編まれたものであり、何よりも戦略論という分野がアクチュアルな必要性をもって求められていたことがよくわかります。


 ●6:戦略論の新たな潮流について知ることができる。
 
 本書の下巻では、地政学・シーパワー論や航空線理論など、今日の戦略研究の基盤を形成する重要な主題についても、充実した研究が寄せられています。こうした新しい潮流についての基礎を知るためにも本書は有用です。


■終わりに

 そもそも戦略を研究することは、再現しようとする戦争行為の内在的論理を探るということを意味します。ひとえに戦争といっても、時代や社会状況、あるいは参加する兵士たちや指揮官の質によって、その性質や展開は千変万化します。

 それゆえに、どのような戦略が功を奏し、いかなる戦略が愚策に終わったのかを精査し考察を重ねることは、特定の戦争における煩瑣な事実を集積するのみに終わるものではありません。いささか大仰な言い方が許されるのであれば、戦略の研究はそのまま、(予想しがたい)未来を切り拓くための術(すべ)を探りゆくことにも繋がるのではないでしょうか。『新戦略の創始者』は、私たちが未来を考えるための、またとない手がかりを提供してくれることでしょう。

新戦略の創始者 〜マキアヴェリからヒトラーまで 上 [単行本] / エドワード・ミード・アール (著); 山田積昭 (翻訳); 原書房 (刊)新戦略の創始者―マキアヴェリからヒトラーまで〈下〉 [単行本] / エドワード・ミード アール (著); Edward Mead Earle (原著); 山田 積昭, 石塚 栄, 伊藤 博邦 (翻訳); 原書房 (刊)
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2012年04月02日

【ニュース】日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご案内

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【ニュース】日本アーカイブズ学会「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」のご案内

 蔵原大、岡和田晃

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 AGSメンバーの蔵原大と高橋志行氏が、「デジタルコンテンツのアーカイブ化の現在とその課題――文化政策論の視座から」という学会発表を行ないます(4月22日(日)の日本アーカイブズ学会〔 http://www.jsas.info/ 〕発表/学習院大学にて)。

 http://www.jsas.info/modules/news/article.php?storyid=101

 ところで皆さんは「アーカイブズ」という言葉をご存知でしょうか? 平たく言えば、図書館のように公共の場における情報が保存され、それを誰もが自由に閲覧できる場所や制度のことです。もちろん図書館はあちこちの町にあります。でもこれが「ゲームの図書館」となると、どうでしょう? ゲームは今や立派な文化に位置づけられていますが、放っておけばいずれ消えてしまいます。インターネットの世界でさえ、データに無限の寿命があるわけではないのです。

 ちなみに「ゲームアーカイブ」という産学官が連携した先駆的試み(1998年以来)はありますが、本格的な展開はまだこれから、という段階と言えるでしょう(2012年時点で)。
 http://www.gamearchive.jp/

 例えば1980年代に大流行した携帯デジタルゲーム「ゲームウォッチ」。任天堂から発売され、あんなに有名になったのに、今ではどの量販店でも扱われておらず、リサイクル店に出ることも稀です。それから家庭用ゲーム機の「ファミリーコンピュータ」や「メガドライブ」はどうでしょう? 同じように、幾百万円、幾千万円をかけてつくられたゲームも、どこかの公的機関できちんと保存され、みんなが見られるようにしておかないと、本当に消え去ってしまうのです。それって(特に商品開発のコストなどを考えると)もったいない話だと思いませんか?

 そういうわけで、本発表では、デジタル情報のアーカイブズ、特に「デジタルコンテンツ」と呼ばれる、社会に流通するひとまとまりの情報をアーカイブズの対象として見なすことの意義を、文化政策論とメディア論の双方の見地から明らかにします。その上で、物理的個体として扱うことの難しいそれらのアーカイビングを今後どのように行なっていくべきかを論じながら、いくつかの事例を踏まえてその方向性を検討することになります(多少ですがウォーゲーミング等も言及するつもりです)。

 今回は(時間の都合上)アナログゲームにはあまり触れませんが、ゲーム文化の保存、利活用という点で関係あるかと思い、お伝えした次第です。
posted by AGS at 18:16| ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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